横須賀鎮守府の日常   作:イーグルアイ提督

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夜間パトロール

〜ネイサン・ジェームズ〜

 

「はぁぁぁぁ・・・・」

 

「さっきからでっかいため息ついてどうしたのよ」

 

「なんでもない・・・はぁぁ・・・」

 

「何でもないわけないでしょ。ここなら誰も聞いてないし話してよ」

 

提督からの指示で私とマーフィーは哨戒任務に付いていた。

哨戒海域は鎮守府から150kmほどの海域だ。

レーダー類が完全に復旧してない今、イージス艦の私たちが鎮守府の目となっていた。

・・・そして私はこの前のことを思い出してため息を付いていた。

 

「じゃあ無線機は全部OFFで・・・」

 

「分かったわよ。ほら、話してみて」

 

「うん・・・」

 

私はこの前のことを全て話した。

マーフィーはそれを聞いて何を言うだろうと思っていたら意外と冷静な返しをくれた。

 

「あらま・・・ジェームズもやるわね」

 

「あらまって・・・」

 

「私はジェームズが提督の事好きだったのには驚いたけどね」

 

「まぁ・・・うん・・・」

 

「いいじゃない。若気の至りって事で。・・・電にバレたらヤバいだろうけど」

 

「・・・私も提督もその辺に埋まってるよきっと」

 

「あはは、かもね」

 

「笑い事じゃないよ・・・」

 

なんて話をしながら淡々と任務をこなす。

正直、提督と一緒にいると顔が真っ赤になってるので電が近くにいるとバレるかもしれない・・・。

 

「そういえばジェームズ」

 

「なに?」

 

「初めてが提督?」

 

「なに・・・ぶっ!!」

 

私は意味を理解して吹き出した。

 

「な、何をいきなり!」

 

「いえ、何となくよ」

 

「何となくって・・・」

 

「で、どうなの?」

 

マーフィーは笑顔でそう聞いてくる。

 

「は、初めてだよ・・・」

 

「そっかそっか」

 

マーフィーは笑顔でそういった。

まるで妹から恋愛相談受けた姉のようだ。

・・・いや、そうなのだが・・・

 

「まぁいいじゃない、好きな人からなんだから」

 

「そうだけど・・・」

 

私は2番・・・いや、それすらなれないという事が分かっているから悲しい。

 

「まぁジェームズが最近元気ない理由が分かってよかったわ」

 

「結果深刻だよ・・・はぁ・・・とりあえずタバコでも・・・」

 

私はタバコをポケットから取り出して咥えた瞬間だった。

レーダーが何かを捕捉した。

 

「ん?」

 

私はタバコを咥えたままそれが何かを確認しようとする。

 

「マーフィー」

 

「ええ、捕らえてる。味方・・・?」

 

「提督に確認してみる」

 

「話せる?」

 

「仕事だから」

 

確かに少し気まずいが私は軍人。

気まずいからと言って無線通信ができないなんて軍人失格だ。

 

「提督、こちらジェームズ」

 

《こちら提督。なんだ》

 

「不明艦をレーダーに捕捉。横須賀への入港予定があるの?」

 

《いや、この時間帯だとなにも・・・敵味方識別装置は?》

 

「アンノウン」

 

「ジェームズ、艦載機を上げるわよ」

 

「了解。艦載機をあげて確認するよ」

 

《了解》

 

無線を切ってヘリを飛ばす。

目標はここから20km程度だ。

なんでいままで捕捉出来なかったのか・・・。

夜間のため目視確認できない。

 

「ジェームズ、武器はいつでも使えるように」

 

「分かってる」

 

武器の安全装置を解除した。

 

「向こうからは見つかってなさそうだけど・・・何者かしら」

 

「ここまで堂々と海の上移動してるから艦娘かな?」

 

「もうすぐ分かるわ」

 

するとヘリから情報が来た。

目標は艦娘のようだ。

 

「味方・・・ね。とりあえず入港予定ないっていうから所属を聞かないと」

 

「だね。私がやるよ」

 

無線をオープンチャンネルに合わせて呼びかけた。

 

「こちら日本海軍所属駆逐艦ネイサン・ジェームズ。そちらの艦名、目的地を知りたい。オーバー」

 

「・・・応答なしね」

 

「もう1度呼びかける」

 

その後何回かに渡って呼びかけたが応答無しだった。

その間にヘリから新たな情報が来た。

艦娘は大和と金剛だという。

・・・なんでそんな戦艦娘がこんな所に。

 

「提督、大和と金剛って何か任務で出てるの?」

 

《ん?その2人なら今日そもそもどこにも行ってないぞ?》

 

「なら他の鎮守府・・・?」

 

《いや、この近くに大和を持ってる所はない》

 

「じゃあ一体・・・」

 

その時、遠くで何かが光る。

そして爆音も。

これは・・・。

 

「!!レーダーに感!砲弾がこっちに来てるわ!」

 

「こちら日本海軍!!敵じゃない攻撃を中止せよ!!」

 

「ジェームズ!私が迎撃するから連絡を!」

 

「了解!提督!攻撃を受けた!!」

 

《何!?味方からか!?》

 

「味方からだよ!!どうするの!?」

 

「スタンダード、発射!!」

 

「提督!!向こうから応答はないしいきなり撃ってきてるんだよ!どうすればいい!?」

 

《クソっ・・・!》

 

「ジェームズ!発光信号を試して!」

 

「了解!」

 

私は発光信号で交信を試みるが返事がない。

 

「応答無しだよ!!」

 

「なんだってのよ!クソ!!」

 

相手側からは砲撃時の発砲炎が絶え間なく見える。

明らかに沈めるつもりだ。

その時だった。

マーフィーが迎撃した砲弾の破片が降ってきた。

 

「あたっ!?破片・・・?」

 

よく見てみるとその破片は深海棲艦の物とよく似ていた。

・・・これは・・・。

 

「提督!深海棲艦が艦娘をコピーしてるって話はないの?!」

 

《何を言ってる?》

 

「今、迎撃した砲弾の破片が私に当たったんだけどこれは深海棲艦の物だよ」

 

《・・・あの噂は本当の事かよ畜生・・・!》

 

「噂?」

 

「これ以上砲弾が増えたら迎撃しきれないわよ!!提督!!」

 

無線機越しからため息のあと提督が何かを決断した声色で言ってきた。

 

《2人ともよく聞け、あの2隻はの行動は反乱と認める》

 

「沈めろっての!?」

 

《・・・あぁ。その代わりなんでもいいからあの2隻のパーツを回収しろ。出来ることなら本体がいいが》

 

「そんな簡単に言うけどね、こっちだっていっぱいいっぱいなのよ!!とにかく反撃していいのね!?」

 

《あぁ、そうだ!ウェポンズフリー、交戦を許可する!》

 

「了解!ジェームズ、ウェポンズフリー!」

 

「了解!トマホーク用意!」

 

「大和クラスなら1発や2発じゃだめ・・・10発は撃ち込むわよ!」

 

「分かってるよ!ロックオン!」

 

「トマホーク発射始め!」

 

「ファイア!」

 

大和と金剛に対して20発近いトマホークが発射された。

 

「あとは命中祈って迎撃に専念だね」

 

「えぇ、ジェームズは金剛からの砲弾をお願い」

 

「そんなもん認識しきれないよ、手当たり次第に行こう。無傷で帰るよ」

 

「言うわね、やってやるわ!」

 

全力で砲弾を迎撃し、回避する。

時折、迎撃をすり抜けた砲弾が近くに落ちるがその瞬間に見えるのはやはり深海棲艦の砲弾だ。

 

「やっぱり深海棲艦・・・?」

 

そう考えているとミサイルは目標に命中した。

爆炎と爆音が聞こえてくる。

 

「命中!発砲炎も見えなくなったわね・・・」

 

「確認しに行こう」

 

急いで現場に向かうとやはり・・・と言うべきか、見た目は完全に大和と金剛だが被弾した部位からは深海棲艦の部品などが見える。

これは深海棲艦がコピーした艦娘だ。

・・・だがこれは少し厄介な話だ。

 

「マーフィー、写真は撮った?」

 

「ええ、パーツも回収したわ」

 

「じゃあ急いで帰ろう」

 

「ええ、そうね」

 

私たちは鎮守府に急いだ。

 

 

〜提督〜

 

「噂であって欲しかったんだがな・・・」

 

俺はため息をつく。

予想はしていたが恐れていた事態が発生しつつある。

深海棲艦が艦娘のコピーを作るという事態だ。

深海棲艦はどう考えるのかは分からないが、こっちの艦娘達に好き好んで味方を撃つヤツなんて居ない。

それに撃たれてもまずは誤射を疑うだろう。

きっとそこにつけ込んだのだろう。

人間側からしても艦娘の姿をしていたら警告もなしに発砲などしない。

まず、所属不明の艦娘が港に近づいてきたなら所属を聞く、答えなければ何度か聞く。

それでも答えなければ発砲の警告、警告射撃・・・。

しかし本体を狙う危害射撃などしないだろう。

拿捕を狙うはずだ。

その間に移動はし放題だ。

鎮守府の主要部を射程圏内に収めるまで航行を続けていても艦娘の姿をしている限りいきなりは撃たれない。

いや、撃たれることはない。

 

「これ・・・結構ヤバくないですか隊長」

 

「ヤバいってレベルじゃないぞ」

 

「もうすぐ2人とも帰ってきますが破片などはどうします?」

 

「技術班に持ってって調べさせろ。その間にこのコピーがどこから来たのか探ってそこが敵基地なら破壊する」

 

「了解しました」

 

「はぁ・・・いつ終わるんだろうな・・・この戦争は」

 

「・・・どちらかが諦めるまで・・・では?」

 

「どちらか・・・か」

 

この戦争の面倒臭い所は敵の首都を攻め落として国を占領してしまうという方法が取れない所だ。

しかし向こうはそれが可能なのだ。

人類側には取られると困る重要地点がある。

しかし敵には取られたら困る地点があるにしても首都を取られたりするほどのダメージはない。

そしてこのコピー艦娘作戦の内容を推測するに、コピーした艦娘がどこまで接近できるか。

そして上陸が可能ならそのまま首都攻略に向かうつもり・・・なのかもしれない。

そもそも一般人からすればいきなり艦娘が撃ってくるように見えるため軍全体のイメージダウンに繋がるだろう。

このコピー作戦は早めに潰さなければならない・・・。

その事について考えていると2人が帰ってきた。

 

「ただいま、無事帰ったわよ」

 

「・・・た、ただいま・・・」

 

ジェームズはこの前のことがあるからか顔を少し赤くしてそっぽを向いた。

俺も思い出して気まづくなる。

 

「報告は無線で聞いた通りだよな。お疲れ様」

 

「ええ、早めにあのコピー艦娘の出どころ見つけた方がいいんじゃない?」

 

「今全力でやってるよ」

 

「そう。あ、そうそう提督」

 

「ん?なんだ?」

 

マーフィーは俺の近くに来てコソっと言う。

 

「・・・ジェームズにやった事の責任取りなさいよ」

 

「ぶふっ!!」

 

「ふふっ、修羅場にならないようにね」

 

「もう既に修羅場だよ!」

 

そう言ってマーフィーは部屋から出ていった。

ジェームズは気まずそうに部屋に残っていた。

臨時秘書艦のアンドロメダは気を使ってか部屋から出ていった。

 

「・・・あ、あの・・・えっと・・・」

 

「なんだ?」

 

「この前はごめん・・・」

 

「・・・まだその事言ってるのか」

 

「そりゃ言うよ。薬盛られてたとはいえ・・・やっちゃいけない事やったわけだし」

 

「それを言ったらお互い様だろ。な?」

 

「そうだけど・・・」

 

「まぁなんだ。ジェームズの素直な気持ちが分かって嬉しいよ」

 

慰めになるのか分からないが優しくそう言ってみる。

ジェームズは赤くなって俯いたままだ。

 

「私は・・・2番に・・・なれないよね」

 

「・・・俺にはアイツがいるんだ。あんなことやっといていうセリフじゃないがな」

 

俺は苦笑いしながらそう言った。

 

「あぁもう!そういう一途な所が私は大好きなんだよ!」

「ただいまなのですー!」

 

・・・ジェームズさん、私に大好きと言った直後に電さんご帰宅。

 

「あ、い、電・・・おかえり」

 

「・・・」

 

黙り込む電さん。

・・・やばい。

 

「・・・司令官さん?」

 

「はい!」

 

「どうぞ続けてくださいなのです」

 

電は買い物袋を丁寧に部屋の隅に起き、普段は苦くて飲まないという缶のブラックコーヒーを持ってソファーに座った。

・・・いや、どっちかって言うとふんぞり返った。

 

「ジェームズさん?いいのですよ?」

 

「い、いやあの・・・ごめんなさいぃぃぃ!!」

 

普段はぜったいありえないジェームズの絶叫しながら逃走する姿。

 

「あら行っちゃったのです」

 

「行っちゃったな」

 

「さて司令官さん?もしかして・・・隠れて浮気なのです?」

 

あらストレートに聞いてくる。

・・・バレたら死ぬ。

 

「いや断じて違う!!」

 

「じゃあ・・・さっきのは何なのですかぁ?」

 

ズズズと音を立ててコーヒーを飲む電さん。

 

「あ、いや、あれだよ・・・」

 

「・・・はぁ、まぁアレなのです。知ってましたけどね」

 

「はい?!何がでしょうか!?」

 

「ジェームズさんが司令官さんのこと好きって事なのです」

 

「・・・マジで?」

 

「マジなのです!」

 

いったいいつから・・・。

 

「目を見れば分かるのです!最近ジェームズさん司令官さんと会うと楽しそうなのです。それに司令室の帰り道とかたまに笑顔なのです」

 

「よ、よく見てるのな」

 

「えへへ、でも司令官さんがモテモテなのは嬉しいような悲しいような・・・なのです」

 

「まぁ・・・電からしたらな・・・俺が逆の立場なら同じだよ」

 

「司令官さん、ジェームズさんのことどう思うのです?」

 

「どうっていうのは?」

 

「そういう関係として・・・なのです」

 

「俺はお前が・・・」

 

「そういうの無しで!なのです!」

 

なんてこった退路が絶たれた。

 

「まぁなんだ・・・良いとは思う。アイツの事はタイプの部類だよ」

 

ここは仕方ないので正直に言った。

 

「じゃあ司令官さん・・・」

 

俺は一瞬、最悪の事態を想像した。

離婚という最悪の事態を。

・・・だが答えは違った。

 

「重婚なのです!」

 

「・・・・・はい?」

 

「だから重婚なのです!」

 

「い、いやまて!お前自分で言ってること分かってるのか!?」

 

「?分かってますよ?」

 

「いやだったらなんで!?」

 

あまりに想定外の言葉・・・。

 

「重婚そのものは認められてますし、司令官さんの1番は私って所は変わらないのです!あ、でも3人目は許さないのです!」

 

「ふ、2人目ならいいのか・・・」

 

「まぁあの・・・私もジェームズさん好きなので」

 

「・・・え?」

 

「い、いえあの!いそかぜさんたちみたいなアレじゃないのですよ!?」

 

「ごめん、一瞬本気でそう思った」

 

「勘違いなのですぅぅ!!」

 

電曰く、強くそして優しい所が好きだそうだ。

そして・・・ジェームズが俺のことを好きだと知ってこの人となら俺が重婚したとしても許せる・・・そう言うことだそうだ。

 

「まったくモテモテなのです、司令官さん」

 

電は笑顔でそう言った。

・・・俺は心中複雑だがな・・・。

 

「ところで司令官さん。さっきまでジェームズさんと話してたのってそれだけですか?」

 

「ん、まぁ・・・後の大規模作戦の話も」

 

「大規模作戦?」

 

「仮だがな。敵泊地の強襲だよ」

 

「なるほどなのです!あ、それで話戻しますけど、司令官さんどうするのです?」

 

「何がだ?」

 

「重婚」

 

「あ、あぁ・・・」

 

どうするか・・・俺は悩む。

確かにジェームズも女性として好きだ。

だが・・・電がいる身で・・・。

 

「ふふっ、悩んでるのです。良かったのです」

 

「何がだ?」

 

「この事、一瞬で決めたらどうしようって思ってたのです。でも、司令官さんがちゃんと悩んでて安心したのです」

 

「あのな・・・悩まないわけないだろ」

 

「それでこそ司令官さんなのです!ちなみに私は賛成なので司令官さんは好きに決めたらいいのです!」

 

「お、お前は賛成なのか・・・」

 

「えへへ、司令官さんはハーレム状態なので夜は寝れないかもしれないですね!」

 

何故だ!何故今日の電はこうも大人っぽいんだ!!

 

「・・・分かったよ、俺は・・・」

 

俺は決めた。

ジェームズの気持ちは裏切らない。

・・・重婚用の指輪・・・買ってくるか。




ウェポンズフリーって言葉なんかめっちゃカッコイイ・・・カッコよくない?
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