「……で、ちゃんと分かるように説明できるか?」
「……ぽい」
若干お怒り気味の俺の前には正座した明石と夕立がいた。
なんで怒ってるかと言うとコイツら2人で結託して内緒で装備を作っていた。
しかも今ハマってるゲームをモチーフにして。
「で、でも提督さん!これすごいっぽい!」
「あぁ……すごいな。なんだよ艤装にブースターって」
「それだけじゃありません!飛躍的に加速できるアサルトブーストという機能も搭載しています!」
「んな事聞いてねぇ!!」
「あ、提督さん。私の事これから621って呼んで欲しいっぽい!めっちゃイケおじボイスで!」
「なんでだよ!!」
「ほらお願いします!1回でいいですから!」
おかしい、説教のはずが何故かツッコミさせられている。
そんなことしていると……
「……ロー……スロー……」
「ん……?」
「スロー……スロー……クイッククイックスロー……」
扉の方から変な声が聞こえてきた。
なんかマーフィーの声にも聞こえる。
「コーラルよ!ルビコンと共にあれ!」
勢いよくドアが開き車椅子のマーフィーが現れた。
ていうか車椅子にブースターみたいなのが着いてる……
「なんなんだよお前ら!!」
俺が頭を抱えていると……
『司令官さん、私がサポートします』
「今度はなんだよ!!」
『私は、艦娘のシンビルスク……あなたの脳波と同期し、交信でサポートします』
今度は幽霊のシンビルスクまで出てきた。
ほんとになんだよ!!!!
ていうかお前ら絶対アーマードコアやっただろ!!!!
俺まだ出来てないのに!!!!!!
「ちくしょうお前ら絶対アーマードコアやっただろ!!」
「あらバレた?」
「人が業務忙しくて出来てないって言うのによォ!!!」
俺はもう半分ヤケクソでブチ切れていた。
「夕立はあれか!?艤装をACっぽくしたいのか!?」
「そうっぽい!」
「この際ヤケクソだちくしょう!!徹底的にやれ!」
「やったー!提督さん太っ腹っぽい!」
なんかもう一周まわってACになった艦娘も見てみたいので徹底的にやってもらうことにした。
そして波乱の数時間後、改装の終わった夕立が戻ってきた。
「見て見て提督さん!出来たっぽい!」
「お、どんなのが出来たんだ?」
フル装備の夕立を見ると右手にガトリング砲、左手にパイルバンカー、両肩に10連装垂直ミサイル発射機が装備されていた。
「完全にACだな」
「んふふー!これなら敵戦艦でも一撃っぽい!」
「それならせっかくだ、演習でもしてみるか」
そういうと夕立は目をキラキラさせて頷いた。
そしてさっそく演習を組む。
内容は簡単に戦艦VS夕立だ。
「まぁ、そういうわけで集まってもらってすまないな」
執務室でそう言って戦艦娘達に謝る。
集まったのは金剛と榛名だった。
「大丈夫デース!」
「榛名も大丈夫です!」
2人とも乗り気で助かった。
簡単に演習内容を説明した。
鎮守府正面海域での装備試験……これが建前の訓練だ。
2人には何をしてもいいから夕立に一発当てれば勝ち、逆に負けは負けたくなったら負けろ……という超アバウトな内容だった。
そうでもしないとブースターまでついた夕立に勝てないだろうと判断したからだ。
「とりあえず、怪我だけしないようにな」
「はい!」
そう言って2人は出ていく。
俺は演習を確認するためにドローンを飛ばすことにした。
指揮所に連絡するといつでも大丈夫だと帰ってきた。
「ま……お手並み拝見だな」
〜2時間後〜
「よし、訓練開始だ。ルールは分かってるな?」
《提督さん!言って欲しいことあるっぽい!》
「なんだ?」
《621、仕事の時間だって言って欲しいぽい!》
「おまえな……まぁいいか……おほん」
俺は咳払いをして頑張って声を似せる。
「621、仕事の時間だ」
《メインシステム、戦闘モード起動っぽーい!!!》
そして夕立は金剛と榛名のいる場所に物凄い速度で飛んで行った。
《な、なんですかあれ!?》
「夕立だ」
《話と違うデース!!!》
「まぁ……言ってないしな」
《か、帰ったら覚えてて欲しいデス!!!》
金剛からの怒りの無線が入った。
そりゃまぁ夕立がものすごい速度ですっ飛んできたらビックリもするだろう。
《着☆剣!!》
《きゃぁぁぁぁ!!!!》
そして夕立は榛名に急接近してパイルバンカーをぶち食らわせていた。
訓練用に固めのスポンジ製にしてあったがブーストの速度を乗せた一撃で榛名は軽く吹っ飛んでしまう。
そしてそのまままさかのKOだった。
《な、んなぁ!?》
無線機からは金剛の驚愕の声が聞こえる。
そして……
《いだだだだだだ!!!!!!》
夕立は金剛の周りを回りながらガトリング砲の弾を浴びせる。
《こ、このぉ!!》
負けじと発砲する金剛。
それをひらりと避けた夕立は再び金剛に接近した。
《着剣!!》
再びパイルバンカーの一撃。
金剛も吹っ飛びKOとなった。
《やったやった!完全勝利っぽーい!!》
「化け物だ……」
正直な感想だった。
夕立の戦闘スタイルにピッタリの装備になってしまった……。
というかこの装備割と普及させれば強いのでは……?
なんてしてたら部屋にジェームズが入ってきた。
「あれ、なにしてんの?」
「新装備の実験」
「ふーん……ん……!?」
画面を覗き込んで目を見開いていた。
そりゃそうだ。
戦艦娘2人KOした駆逐艦がいるんだから
「……なにこれ」
「あれだ、あの……ほら、AC」
「ACってなによ」
「アーマードコア」
「それでなに?その装備作ったって事?」
「まぁ……簡単に言うと」
そういうとジェームズは頭を抱えた。
「ほんっとウチの工廠どうなってんの……」
最近ジェームズは鎮守府の資材とか補給関係の仕事に着いていた。
それでまた訳の分からない物を作ったものだから呆れていた。
「はぁ……また書類作らないと……」
「なんかその……ほんとすまん」
「いいよ、その代わりこんど美味しいランチに連れてって」
「お安い御用だよ」
「あ、せっかくだから電もね」
「いいのか?」
「ダブルデートだよ」
「俺としては両手に花だがな」
「嬉しいでしょ」
「ここでダンスできそうなくらいには」
「ふふ、楽しみにしてるよ」
そう言ってジェームズは書類を作りに部屋を出ていった。
その時だった。
《提督さん!深海棲艦っぽい!!》
突然の夕立からの無線。
何事かと無人機からの映像を見ると敵の斥候と思われる駆逐艦が来ていた。
敵はすぐに砲撃を始める。
「嘘だろこんな時に!!!夕立!応戦できる装備はあるか!」
《砲とミサイルは訓練弾だけど……》
夕立は左手を大きく振ってパイルバンカーに装備された訓練用装備をパージする。
そして万が一にと持ってきていたパイルバンカーを本体に装着した。
《これが本当の着剣っぽい!》
「なかなかカッコよくなってるぞ。戦艦2人はお前が吹っ飛ばして戦闘不能だ、頼れるのはお前だけだ。大丈夫か?」
《大丈夫っぽい。提督さん、もう1回さっきのセリフ言ってくれると助かるっぽい!》
「はぁ……分かったよ」
俺は再び咳払いをする。
この間夕立はまったく動いていないが不思議と砲弾が当たっていない。
立ち姿はまるで戦闘前の鬼神だ。
「621、もうひと仕事だ……頼むぞ」
《メインシステム、戦闘モード再起動……っぽい!》
そして夕立はブーストを使い駆逐艦に急接近する。
《ソロモンの悪夢、見せてあげる!》
急接近にしてくる夕立に驚き硬直した敵駆逐艦に夕立は大きく左手を振りかぶる。
《着☆剣!!!》
チャージするような動作をするとパイルバンカーは火薬の力を使い鉄の杭を打ち出す。
そこにブーストの運動エネルギーも加わり敵駆逐艦に深くパイルバンカーが突き刺さった。
「すげえなおい……」
砲撃を右に左に高速移動しながら躱し肉薄してパイルバンカーを打ち込む。
夕立の航跡にはブースターの煙の後だけが残っていた。
夕立は駆逐艦が動かなくなったことを確認しパイルバンカーを抜いた。
パイルバンカーからは青い体液が滴っていた。
「……よくやった、621。戻って休め」
《……ぽい!》
この日以降、夕立は大層この装備が気に入りこの装備を使えないなら出撃しないまで言い出した。
そしてパイルバンカーの一撃でKOされた金剛と榛名は若干夕立が怖い……と言うようになってしまった。
それよりも好戦的な艦娘達は皆この装備を欲しがりせっかくだから開発してみようと思ったところ、明石曰く3つも作ったら鎮守府が破産するほどの生産費だったようだ。
そんな話聞いていなかったと問い詰めたら「言ったら怒られると思ったので☆」と言いやがったので2日くらい いそかぜ と うらかぜ の部屋に放り込んでやった。