誰にでも分け隔てなく優しい彼女を僕は好きになってしまった。好きになってしまったんだ。
今思い返すと一目惚れだった。中学で初めてお話して、彼女が下北沢高校に進学希望だと聞いて精一杯勉強して同じ高校に進学した。
それから1年、必死に自分磨きをして彼女の隣に並んでも恥ずかしい男にならないよう頑張った。
──そして今絶好のチャンスを迎えている。
僕が家に帰る途中、いつも周りに囲まれている人気者の彼女が一人で駅前に佇んでいたのだ。
勝負は今!!ここで決める!!
そう思った時にはもう、身体は動いていた。
「いっ伊地知さん!お話したいんだけどちょっといいかな・・・?」
僕が勇気を振り絞って出した声が少し大きかったのか、
彼女は少し驚き微笑みながら口を開いた。
「ごめんね〜私、人待ってて、それまでなら『おーーい!虹夏!・・・ナン』ご、ごめんねっ!!」
やってきたのは他校の制服を着た爽やかなイケメン。
彼女は僕が見たことのない笑顔でイケメンと腕を組んで颯爽と街中に消えていった。
「・・・・」
なんだよ、これ。なんなんだよコレ。
僕は人生最大の勇気を振り絞ったことに対する仕打ちに脳が破壊され反って冷静になり、漸くこの結末が簡単に予想できたことに気づいた。
あんなに可愛い伊地知さんに
♪ ♪ ♪
私、伊地知虹夏は大好きな彼氏がいる。
彼との出会いは幼稚園に入ってすぐ周りに馴染めずにいた私に優しく声をかけてくれたところまで遡る。
所謂、幼馴染と呼ばれる関係だった。
しばらくすると、彼と同じマンションに住んでいるのが分かった。私は3階で彼は4階。そこから毎日行き帰りを私達とお母さん達で一緒にした。境遇も似ていて、お父さんは不在がち。
お互いの両親がいない時はどちらかの家に遊びに行ってお泊まりしたり、ほとんど家族みたいなものだ。
そうして毎日楽しい日常が過ぎ去って小学生になった。
そこでリョウと出会った。本当に放っておけない子で、私の性格と相性がよかったのかすぐに仲良くなった。
入学してから彼は常にクラスの中心で学校内では話す時間があまりなかったからその分リョウと仲良くなれたかもしれない。足が速い男の子がモテる、その通りに彼はモテモテで多くの女の子に告白されていた。
その時だったかもしれない、私が彼のことを異性として好きになったのは。私と彼でリョウの家に行って毎日3人で学校に行く毎日。幸せだった。
──でもそんな幸せはずっと続かなかった。
小学4年生の時、お母さんが交通事故で亡くなった。
彼のお母さんと一緒に彼の誕生日プレゼントを買いに行った際に2人共車に轢かれてそのまま息を引き取った。彼は昔からお姉ちゃんのギターを聴くのが好きで、ギターをプレゼントしようと帰っていた帰り道だった。
それからは彼は明るさを失い音楽に取り憑かれたように練習を始め、お姉ちゃんは現実逃避をするようにバンド活動にのめり込む様になり、家にもあまり帰らなくなった。
一時は母親の死のショックと孤独から不登校になるまで精神的に追い詰められたけど、立ち直るきっかけになればと、お姉ちゃんに彼と共にライブハウスに連れられてそこで歌う姉の姿を見てバンドに憧れた。
そうしてお姉ちゃんは私達のために「STARRY」を作ってくれた。彼はしばらくすると、他県にいる父親のところに行ってしまったけど必ず帰ってくるって約束してくれた。その時にはお姉ちゃんのようなギターボーカルになるって私達の前で宣言した時は、お姉ちゃんも恥ずかしそうに笑ってた。私にもお姉ちゃんの分まで人気のあるバンドになって「STARRY」をもっともっと有名にするという夢ができた。
「虹夏ーそんな上の空でどうしたんだ?」
そう言って彼は私のチャームポイントであるアホ毛を昔いつもしてきたようにいじってくる。
「昔のこと思い出してた、初めていっくんと出会った時のこと!」
「あー幼稚園でぼっちだった時か?」
と、彼は私で遊ぶように少し笑って言う。
「幼稚園入ってすぐだったでしょ!ぼっちじゃないもん!」
そう言って2人で笑う。
私はもう離さない。彼が帰ってきて、また掴んだ幸せを
原作開始ちょっと前