プリンツェッシンの瞳   作:めめん

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 はじめての方ははじめまして。ご存知の方はお久しぶりです。
 アプリとアニメ第3期が予想以上に面白かったので、数年ぶりに競馬史実改変もの+ウマ娘のSSを書くことにしました。
 前のウマ娘SSは事実上エタらせたのに……(苦笑。あちらを楽しみにしていた方には本当にごめんなさい)

 本作は作品1話あたりの文字数が10,000文字を超えてしまうことが多い(それによって1話当たりの投稿間隔が伸びて結果的にエタらせることに繋がってしまう)自分の長文癖をどうにかしようという考えから、1話1話の文字数は可能な限り抑え込む方針で書いていく予定です。

 相も変わらず不定期更新となりますが、どうぞお付き合いのほどよろしくお願いします。

 なお、本作は『前々世は人、前世は馬、そして現世はウマ娘』とは違う世界です。



神だってサイコロくらいは振りますよ

 ――気がついたら一面真っ白な謎の空間にいた。

 

 いや、本当にどこよここ?

 

 周りにはなにもないというか、目の前が真っ白すぎてなにも見えない。

 それこそ自分の手足や体すらもだ。

 

 ――というか、なんか全身の感覚もないような気もする。

 正直、今の自分は立っているか寝ているのかすらわからない。

 

 

『気がつかれましたか』

 

 ――!?

 

 

 突然どこからともなく声がした。

 おまけに、それは「聞こえてきた」というよりも「響いてきた」といったほうがいいと思う。

 なんというか――こう、頭の中に直接伝わってきたという感じだ。

 

 

『驚かせてしまい申し訳ありません。

 しかし、どうか私がこれから説明することを最後まで落ち着いて聞いてください』

 

 

 ――とりあえず言われたとおりにしよう。

 なぜ自分がここにいるのか、この声の主が何者なのかも気になるし……

 

 

『まず最初に、ここがどこなのか説明しましょう。

 ここは“始まり”と“”終わり”の狭間にある領域です。

 死した者がめぐり着き、生まれ出でる者が最初に訪れる場所と思ってくだされば結構――』

 

 

 ……え?

 

 「死んだ者がめぐり着く場所」ってことはつまり――

 

 

『はい。

 簡潔に申し上げてしまうとあなたは死にました。

 ですが、なぜ死んだのか、どのような生を歩まれたのかをお教えすることはできません。

 現に今のあなたは生きている間に得た知識こそ残ってはいますが、自らのことや自身が歩まれた生については一切覚えてはいないはずです』

 

 

 ――そう言われて自分のことを思い出そうとしてみたが、確かになにも思い出せない。

 

 自分の名前、自分の外見、自分が歩んできた人生――

 本当に自分が誰であったのか、その一切合切を思い出すことができない。

 まるで記憶喪失にでもなったかのようだ。

 

 いきなり見ず知らずの存在に「あんたは死んだ」と言われてもこうして冷静でいられるのは、きっと自分のことを忘れてしまっているからなのだろう。

 

 ――そして、「声」が言うように知識だけはこうして残されている。

 今の自分が用いている言語や聞こえてくる「声」が日本語で、頭の中に浮かんでいる知識が日本に関するものがほとんどであることから、生前の自分はもしかしたら日本人もしくは日本に住んでいたのかもしれない。

 

 

『――現状を理解してくださったようですので話を続けます。

 先も申し上げましたが、ここは“始まり”と“”終わり”の狭間にある領域――すなわち輪廻転生を司る場所です。

 これからあなたを新たな生命として生まれ変わらせます。

 もちろん、ヒト以外の存在に生まれ変わらせるなどということはいたしません。

 ヒトとして生まれ死んだ者は再びヒトに生まれ変わり、そして死んでいくことになります』

 

 

 ――それを聞いてちょっと安心した。

 「あなたの次の生は人間じゃなくて虫です!」などと言われようものならさすがに抗議の声をあげているところだ。

 

 しかし転生か……

 

 もしかして、この「声」の正体は神様ってやつなのか?

 

 

『そう思っていただいて結構ですし、思っていただかなくてもよろしい。

 ですが、確かに私はあなたよりもはるかに高次の存在ではあります』

 

 

 そりゃそうだろう。

 

 ――じゃあ神様(仮)、そうとわかれば早速生まれ変わらせておくれよ。

 

 

『はい――

 予めお伝えしておきますが、生まれ変わるとここでのことや前の生で得た知識はすべて失われます。

 また、次の生を歩む世は前の生を歩まれた世とは必ず異なる場所となることも一応ご了承ください』

 

 

 まあ、さすがに前世の記憶ならぬ前世の知識を持ったまま転生なんて都合のいいことはできないわな。

 

 しかし、前の世とは違う場所ね……

 

 要するに「転生先は前世とは違う世界」ってことかな?

 

 

『簡単に言ってしまえばそうです。

 ――では、始めましょう』

 

 

 ……は?

 

 

 ――神様(仮)の声と共に目の前に現れたのは、大きな赤と白の2つのサイコロだった。

 

 それも正六面体の四角いアレではなく、ダイヤ型の立体の十面ダイスである。

 

 

『これからあなたの次の生における最初の立場をその2つのダイスで決定いたします』

 

 

 ……TRPGかよ。

 

 というか、人間の出自ってダイスで決まってたんかい。

 

 

『まずはあなたが生まれる家庭の地位です』

 

 

 その声とともに2つの十面ダイスがそれぞれその場で360度回転しながら宙に浮き、やがて落ちてコロコロと音をたてながら転がった。

 

 ――数秒後、両方のダイスは動きを止める。

 

 出た面は赤が「4」、白が「9」だった。

 

 

『49……

 どうやら次の生におけるあなたの生家は並のようです。

 悪くもなければ良くもない――言ってしまえばそんなところでしょうか?』

 

 

 ――どうやら赤いダイスが10の位で白いダイスが1の位らしい。

 

 しかし普通の家庭か……

 数字がそれぞれ「(4)」と「(9)」なのがちょっとあれだが、劣悪な環境ではないのなら喜ぶべきだろう。

 

 

『続いて外見――すなわち容姿を決めます』

 

 

 そこも決めるの?

 

 そうツッコミを入れるよりも先に2つのダイスが再び回りながら宙に浮き、そして再び落ちて転がる。

 

 

 ――04。

 

 また「4()」か……

 

 

えっ!? ちょっ……!? マ!?

 

 

 うわっ!?

 

 どうした神様(仮)!?

 

 

『あ……失礼。クリティカルです。

 あなたは次の生では男性だった場合は美男子、女性だった場合は美少女として生まれることとなります。

 よかったですね』

 

 

 クリティカルって……

 

 というか、なんかいきなりさっきまでとは話し方のノリが変わった気がするけど気のせい?

 

 まあ、来世が不細工な外見でないことは素直に喜ぶべきだろう。

 

 しかし、言い方からして来世の性別が男になるか女になるかまでは神様(仮)でも決められないし、わからないようだ。

 神様というのは意外とこちらが思っていたほど万能な存在じゃないのかもしれない。

 

 

『続いて知能は……』

 

 

 ――三度振るわれる2つのダイス。

 

 出た数字は赤が「4」で白が「4」だった。

 

 またか!

 

 なんかさっきから「4」出すぎじゃない!?

 

 

『44――これも普通ですね。

 チッ……

 もうちょっと偏ってくれても面白いのに……』

 

 

 おい!?

 

 今あんた舌打ちしなかったか!?

 

 こっちは次の人生がかかっていると言っても過言じゃないんだから真面目にやってよ!

 

 

『仕方ないでしょ~?

 こっちはこれくらいしか仕事、もといできることないんだから……

 ちょっと滅茶苦茶なステになってくれたほうが少しは退屈しのぎになるってもんですよ』

 

 

 こいつぶっちゃけやがった!

 

 なにが高次の存在だクソッタレ!

 

 あんたのことを少しでも神様(仮)扱いした自分がバカだった!

 

 

『え~っと……

 最後に素質を決めます。

 簡単に説明すると“身体能力全般に関する才能”です』

 

 

 適当な声とともにこれまで同様にダイスが振るわれる。

 

 出た数字は――

 

 

な、なにィーーーーーーーーーーっ!?

 

 

 ――赤が「0」。

 

 そして、白が「1」――

 

 

こ、ここでスーパークリティカルだと……!?

 存在そのものがバグと言っていいほどのチート級才能持ちじゃねえか……!

 

 

 ――マジか?

 

 それってつまり――

 

 

『身体能力に関しては正真正銘の天才――

 正直に言ってしまうと、“怪物”や“バケモノ”と称していいレベルの存在になることができます。

 も、もちろんあなたがその才能を活かせる生を歩まれたらの話になりますが……』

 

 

 ……へえ、いいじゃない。

 

 もし来世がスポーツの盛んな世界だったら超一流のスポーツ選手になれる可能性があるってことじゃん。

 

 ファンタジーな世界だったら勇者的な存在になることもできたりするのかな?

 

 

『――それでは、ステータスも決定いたしましたのであなたを次の世界へと送ります。

 なお、次の生を歩む世がどのような世界かは私にも現段階では一切わかりませんのでご了承ください』

 

 

 ……その様子だと、あんた本当に全知全能ってわけじゃないみたいだね。

 

 

やかましいわ!

 

『……コホン。

 では、次の生を全うされた後またここでお会いいたしましょう。

 先も申しましたとおり、あなたはここでのことは忘れてしまわれますが――』

 

 

 ――その言葉とともに視界が少しずつ白から黒に変わっていき、意識が薄れていく。

 

 転生する時ってこんな感じなんだ――

 

 生まれ変わったら忘れてしまうのはちょっと残念だな――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ふぁ……ふぁ……

 ふぁぁぁぁっくしゅん!

 

あっ!?

 やっべ……!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――えっ?

 

 ねえ、今なにか――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おお……!

 こいつはまた……!」

 

「すげえ……!

 俺こんな綺麗な栗毛生まれてはじめて見た……!」

 

「ああ。まるで“栗毛”というより“赤毛”だな……」

 

 

 

 

 

『ぶるるるるるる……』

 

 

 

 

 

 …………

 

 ……

 

 

 

 

 

 ちょっ……!?

 

 なんですのこれはああああああああああっ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これは文字どおり神様のミスにより前世の知識を持ったまま1頭の雌のサラブレッドに生まれ変わってしまったとある元人間と、そんなことを知るわけもなくその牝馬と関わってしまったがゆえに運命が変わったり狂わされたりする人々やサラブレッドたちの物語――

 

 はたしてそれはこの世界にとって幸福なことなのか、はたまた不幸なのか――

 

 残念ながらこの時点ではまだ誰にもわからない――




●主人公ちゃん
 神のミスにより人間ではなくサラブレッドに生まれ変わってしまった可哀想なやつ。
 上記のミスが原因で前世で得た知識も喪失する(リセットされる)ことなく引き継がれてしまった。
 前世の記憶は死んだ時点で喪失しているので引き継がれていない。
 そのため、今の彼女は厳密には「ヒトの人格を宿している馬」というよりも「人間の知識を有している馬」と称したほうが正しい。
 サラブレッドとしての毛色は濃い栗毛。

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