あと投稿してから誤字気づくのやめよう(戒め)
sideレイヴン
どうやら既に集合していたらしい男子は、麗しき少女に目を逸らすことが難しいようで、特に他の彼らよりも一回り以上小さい、確か峰田実と言ったか、彼の目は滑りに滑って全ての女子のコスチュームをいっぺんに見ようとする思える執念を感じる。
「ヒーロー科…来てよかった…」
涙まで流すのか。それにしても自分と同じようなフルフェイスのコスチュームをしてる男子も居るし、別に大した問題では無いでは無いかと、そう透に訴えると見えない手を振って答えた。
「な、名前で呼んでくれた…んんっ、天哉君はヒーローっぽいんだよ!そういう感じなの!」
…遠回しにそれはヒーローにはなれないということなのか。言わんとしていることは分かる。自分に崇高な英雄像なぞ無いし、そもそも…
「先生!また、市街地演習でも行うのでしょうか?」
件の飯田天哉は、その甲冑のような、しかしそれよりもはるかに機能美に優れたコスチュームから金属の擦れる音を鳴らしながらオールマイトの方へ近寄った。
「いいや、もう二歩先踏み込む!屋内の対人戦闘訓練さ!!」
概要の説明に入るオールマイト。2on2のキャプチャーザフラッグとでも言えば分かりやすいか。ビルに核兵器を持ち込んだ敵と、それを処理する英雄に分かれて行う、激しいおままごと。制限時間内に敵を捕まえるか、核兵器を守る、奪う、その攻防。缶けりとも言えるだろうか。
「真に賢しい敵は室内(闇)に潜む。」
なるほど、全くにその通りだ。しかしオールマイト、説明にカンペを持つのはどうかと思うのだが…オールマイトはその体躯に合わぬ小さなカンペを読み上げて細かなルールを説明していた。
「ちなみにチーム分けはこれ、くじ引きさ!」
「適当なのですか?!…いやしかし、それでは1人余ってしまうのでは?」
「ああ忘れていた、レイヴン少女は、私とエキシビションマッチだ」
空気が、変わる。
「おい、それはよ、このクソ包帯女が俺より強えってことか…?」
手の内を炸裂させながら、苛立ちを隠そうとすらせず爆豪がオールマイトに噛み付く。そうかっかするなよ。前頭葉が縮むぞ。
「あぁ゛?!」
おっと…
「ふぅむ…爆豪少年、間違いなく彼女は強いよ、そこらのヒーローよりも、遥かにね!!」
笑顔で答えるオールマイトに、もう一段階空気は変わる。それは悪い方向なのかは分からないが、少なくとも、良い感情では無いように見える。
「じゃあよ、俺と戦わせろや。ぶっ殺してやる!!!」
「……いいだろう、制限時間は他の子よりも短い5分、それだったらギリギリ時間が余るかな?皆ごめんね、彼女の凄さを解説しながらだからいい機会かもしれない。」
「…チッ…」
『あれ?レイヴンの意見がなかったような…まあいいです、レイヴン、やれますよね。』
もちろん、そこについては問題ない。じゃあハンデはどうするべきだ?と、爆豪に向き合う。
「テメェ…どこまで舐めてんだ!!!」
手を破裂させながらこちらに近づいてくる爆豪に、ヘルメットのモニター越しで目を合わせた。
side緑谷出久
「ハンデ…は…?」
さっきから少しづつ冷めた空気がまた温度を下げる。オールマイトに認められた彼女は、ワンフォーオールを継いだ自分以上に気にかけられているような…少しやるせない気持ちが芽生える。それはとても、ヒーローとしては良くないことだとわかっているが…
(それでも…彼女は確かに強い、でもそこまでなのだろうか…)
自分たちと歳も変わらぬ彼女は間違いなく強いだろう。入試も、個性把握テストですら、きっと普通に戦えば歯も立たないそんな相手。しかし、そんなに壁が高いとは思えない。否、思いたくなかった。
「なんだと…」
爆豪勝己が…かっちゃんに火がついた。ダイナマイトのような彼にそれは、あまりにも火種すぎる。
「…?ハンデ…どうすれば…いい…?」
「テメェ…どこまで舐めてんだ!!!」
手を炸裂させて物凄い勢いで彼女に肉薄する。誰もが危ない!!と、思うと同時に少しだけ、仕方ないと思ったかもしれない。
僕達は、努力をしてきた。きっと、誰も言ってないだけでみんな血を吐いたはずだ。それなのにそんなにも自分達を下に見るような…だって、彼女の目には僕達はきっと写ってないのだから。そう見えてしまう。正直ムカついたのかもしれない。
でもそれじゃあダメだと、ヒーローとして、それはダメなことだから、でももう間に合わない、この葛藤ですら、そこまで長いものでもないのにかっちゃんは手を彼女に伸ばしていた。
「きゃぁ!」
「おい誰か止め…」
オールマイトは動かない。そっか、それほど彼女を…信頼してるんだ…
瞬きをした瞬間には、かっちゃんは組み伏せられてた。背中に手をやられ、地面に叩きつけられたようで肺に残った酸素を全て吐ききっていた。
「かはっ…っ…」
音もなく、組み伏せられた同級生に…自分が超えるべき壁に、何も、かける言葉が浮かばなかった。オールマイトはやれやれと首を振っていた。
「君たちは…弱いよ…?」
何の悪びれもなく、彼女は言葉を吐いた。簡単に、本当に何も思ってないかのように。それはとても、僕達に火をつけた。かっちゃんだけじゃなく、クラス全員の敵意が、彼女に容赦なく突き刺さる。
「私は…強い…君達よりも…ヒーローより…も?…だから…隠さないよ…私は…それが…責任。」
でも、ヒーローの原点がオールマイトだとすれば、強さの原点は彼女なのかも、しれない。
「そうじゃないと…君たちの努力は…報われない…から…努力は…報われる…のに…強い私が…謙遜したら…誇らなかったら…馬鹿にされた…みたいでしょ…?」
ハンデは、個性を使わないこと。そう言ってかっちゃんから手を離した彼女は、オールマイトに敵でいいと伝えてビルへ向かった。
「…分かっただろう?あれが彼女の強さだ。力や、能力じゃない、彼女なりの正義をしっかり持って、責任を背負うことが出来る。例え君たちの敵になったとしても、彼女は強い。いや、強くなくちゃいけない。そしてそれを隠さない…まぁ少し危ういが…いいさ、さあ爆豪少年、揉まれておいで。」
そして君たちも見ておくといい。私を負かした最強の姿を。
ぼそりと最強の英雄が、誰にも聞こえない声でそう呟いた。
「…チッ…ふざけやがって…ぶっ殺してやる…」
かっちゃんは立ち上がってビルへと向かっていく。その顔は…なにか憑き物が落ちたような、覚悟が決まったようなそんな顔だった。
「さぁ2人とも準備はいいかな?本当は捕縛用のテープを渡すんだけど…まあいいや、制限時間は5分!よーい…スタート!!」
オールマイトは全員を連れて地下のモニタールームに、そこに着いているマイクは上のグラウンドに通じてるみたいで、かっちゃんは…ビルの中に走っていった。
「さて、ビルは5階、家具とかは無いし、核をどこに置くのも自由だと説明したね。そこでレイヴン少女がどのような戦略を取ったのか見てみようか。」
見取り図と、カメラの映像が何個もモニターに表示される。彼女は核…を模したロケット型の模型を…五階の柱の裏に置いていた。
しかし本人と言えば、その部屋の真ん中で佇んでいる。下からどんどんかっちゃんが、手を炸裂させながら軽く飛ぶように走って時折柱を破壊しながら登っていく。
「彼女はあれでもユーモアがあってね、魔王のつもりなのかな?」
HAHAHAっとアメリカンな笑いをするオールマイト。みんな画面を食い入るように見ている。彼女が負ければいいと思っているのかもしれないし、後学のために見ているのかもしれない。それは分からないけど、さっきの言葉を聞いて、あからさまな敵意は無くなったように感じる。
「さぁそろそろ接敵するよ。」
勝負は、一瞬だった。かっちゃんが5階に着いた瞬間彼女の方に両手を向けて何かをしようとしていたとこまでは、認識できた。真ん中にいたはずの魔王はいつの間にかかっちゃんの目の前にいて、頭を掴んで地面に叩きつけて組み伏せた。手から爆発するのを警戒してるのか手のひらをかっちゃんの背中に押し付けるように踏みつけ、頭は手で押さえつけてる。
かっちゃんは、身動ぎひとつ取れない。彼女のモノアイが、カメラ越しにこちらを覗いている。
こんなにも…高いものか…こんなにも…
「うん、まぁ、こんなものだろ…終了!地下においで!総評だ!」
side爆豪勝己
このクソ包帯女、ふざけやがって、どこまでも、どこまでも舐めてやがる。
こいつは俺の事すら、目に入れてねえんだ。雑魚を見る目ですらねえ、道端の石ころとも認識してねえ。
分かりきったような口で、責任だの言ってたけど、適当言ってる。俺にはわかる。こいつは今、口当たりのいい言葉を吐いたんだ…
煮えたぎる腹は、怒りは発汗剤にはもってこいだった。強いのはわかってる、叶わないのもわかっている。
舐めてなんかやらねえ、舐めてるうちに、叩き潰してやる。
階段を何段飛ばしたかなんていちいち数えちゃないが、体感的に5階ってことが分かる。そしてやつもきっと1番上に居るはずだ、説明は出来ねえ、でも居るはずなんだ。
5階に着いた。手を爆発させながら走ったが、汗はかいている、温存する必要もねぇ、着いた瞬間には五階ごと吹き飛ばすつもりだった。
両手を合わして、自分のいるところから放射状に爆炎を撒き散らす。大なり小なり傷をおうはずだ、核なんて関係ねぇ、ぶっ飛ばして、認めさせたらそれでよかった。
気づいた時にはまた地面に押し付けられていた。両手も使えないように押さえつけられて。
ざけんなよ…こんなに遠いはずがねえだろ…オールマイトは、俺の壁はこいつのせいでどんどん高くなっていく。
でも、それで分かったんだ、俺は弱い。今まで、井の中の蛙だったってことだ。認めてやるよ、いつか喉元噛みちぎってやる…っ!!
side緑谷出久
「レイヴン少女の勝ち…か、まあそう気を落とすな爆豪少年。君もすぐに追いつけるさ。さてこの中で彼女の動きについて解説できる有精卵はいるかな!」
恐る恐る八百万百さんが手を挙げた。
「…ほとんど、見えませんでしたわ。爆豪さんが柱を折りながら登るのは最悪ビルごと壊してしまおうという魂胆があったのでしょうけど…」
「ヒーローとしてはBAD!でも作戦としてはGood!環境を利用するのは時には必要さ!それでレイヴン少女、なんで5階に居るという選択を取ったんだい?」
皆から少し離れたとこにいる彼女はさも当たり前かのようにボソリと零す。
「…敵…ぽい…から…」
「HAHAHA!じゃあ、あの時何を考えてどう動いたのか説明できるかい?」
「ううん、身体が…勝手に…動いた…?から…怪我させない…ようにと…核の…こと…」
「核を壊さないように?」
「…?違う…何時でも…自爆…出来るように…」
「敵っぽいっていうのは…もしかして?」
「上で起爆…した方が…危害が広い… 」
衝撃だった。少なくとも、自分には。皆も、ハッとしたみたいだった。核の存在を忘れていた。彼女の一言一言が、自分達には無い概念だ。戦ってる時に、動きについて何も考えなくても動けるようにならなくては…そして、敵の考え方も…
「うん、敵のことをよく考えてるね。いいかい皆、ヒーロー側は敵を捕まえることが目標だが、そこには核を起爆させない、殺しては行けないという条件が着く。敵は最悪自爆したっていいのさ。
だからこそ、危ういが…」
ほんとに、強いのか…考え方も、信念も、理解度も、格闘技術も…全て、何もかもが、自分達に足りてない。個性を使わなくても、ここまで自分たちとはかけはなれてるのか…
「勘違いしてくれるなよ?彼女が特別なんだ。君たちは今から学んでいけばいい。なんたって有精卵なんだからね!さあ全員の組み分けを行おうか!」
オールマイトの声が今だけは聞こえなかった。誰も、動くことが出来なかった。
上手く表現できてるか分かりませんが、A組強化フラグです。かっちゃんどころか、ほぼ全員の心が折れかけ始めます。じゃないと敵に勝てないからね!なお、葉隠ちゃんだけかっこいいーっ!ってなってる模様。