sideレイヴン
「時にレイヴン少女。もし君が葉隠少女のように物理的ダメージに貢献できない個性だったら、さっきどう戦った?」
緑谷出久と心を折られた爆豪勝己の最上決戦のようになってるモニターを他所にオールマイトの質問に答える。
テープの両端を凍らせてポーラにでもすれば捕獲は簡単になる。真ん中を持って地面に両端を垂らしておくだけで即席のポーラになるかもしれない。靴を結びつければ同じ効果が得られるだろう。
テープは硬さがある。硬さとは切れないかどうかということだ。足元に引けばトラップになる。
そもそも硬いロープ状のものがあれば、人間なんぞ簡単に殺せる。2〜3本をよればいい。畳んでねじって叩けばそれなりに痛い。
個性がなくたってなんでも出来る。事実自分もそうしてきた。知識はワイルドカードだ、たった一つの切り札じゃなくて、どんなものにでも代入できる。
相手に気づかれないとは、あまりにも大きいアドバンテージだ。かの戦争では、情報が作戦の大半を占める。姿が見えないとはどれだけ優位に立てるのだろうか?
弱いはずもないのだ、ヒーローという、命をかけた場面で透明というのが、どれだけの人間を救える情報を得られるか。
「私も同意見だね。レイヴン少女のおかげでこのクラスは既に変わりつつある。2年生でも触らないような本質に啓蒙されているよ。強くなるぞ、君たちは…っ」
ビルの中階層が吹き飛ぶ。
『あれは…素の人間に当てていい威力では無いですね』
「お、オールマイト先生!あれは止めなくても良いのですか!!」
八百万百の意見も間違っちゃない。でももう決着は着いている。
「いや、大丈夫。勝者、ヴィランチーム!」
少々発破をかけすぎたのかもしれない。煙が晴れれば指を使えなくした緑谷出久と、それを組み伏せた爆豪勝己。そして吐いている麗日お茶子と背をさする飯田天哉だった。
心の折れた少年は、どうやら心を薪に瞳に覚悟を宿したらしい。いい目だ。もう二度と、他人を下に見ることは無いのだろう。
side葉隠透
オールマイト先生が振った話をゆっくりだけど話してくれるレイちゃんの、その全て。言葉の一粒一粒が自分の足りなかったところを補填するかのように、レイちゃんはオールマイトの会話を通してきっと私に教えてくれてる。
「全チームが終わったか…うむ…まあだいたい想像通りの時間だな!ちょうどエキシビションマッチの時間も残ってるしね!」
再度ルールの説明、敵側…つまりオールマイト先生はヒーロー側…レイちゃんに捕縛テープを巻いて捕まえるか、時間制限まで逃げ切れば勝ち。制限時間は10分レイちゃんはオールマイト先生に捕縛テープを巻く、オールマイト先生が持つ爆弾の起爆コードを奪うのどちらかが勝利条件。オールマイト先生はハンデとして個性の使用禁止と正面しか見えないサングラス、両手を鎖で繋いだ。逆にレイちゃんは個性サポートアイテムフルで使うみたい。
「んー!まるで敵!じゃ、有精卵諸君、よく見ておくがいい。ヒーローとは、敵とは、そして戦いとはどういうものか!そうすれば少しはそのモヤモヤも取れるさ!」
見透かしたようなセリフを吐いてひとっ飛びでビルの屋上に飛んで行った。さ、さすがだ…
「…私も…見せて…あげる…翼の、使い方。」
全身が赤い光で包まれたレイちゃんに、眩しくて目を逸らすと、もう既に入試の時助けてくれた姿になっていた。ひとつ違うのは肩と両手に武器を持ってること。
入試の時の仮想敵や、工事現場にいるロボットよりも小さく、洗練されたフォルム。各部位に着いたセンサーが赤く光る。まるでアニメに出てくるような、決してマッシブでは無いけど、戦闘用には十分な剛性は見てわかる。
頭が、変形して、バイザーが着いた。バーニアに火が灯る。
「借り物の…翼で…どこまで飛べるか…」
ボソッと、聞こえるか聞こえないかの声で呟いていたレイちゃんから目が離せない。
「か、かっけー…」
「やっぱ男的にはレイヴンの個性はクソかっこいいよな…」
瀬呂範太君と上鳴電気君がレイちゃんを見て褒めてる。男子は大抵頷いていた。分かる、私でもかっこいいもん。
そう思って男子の方向を向いた瞬間、爆音と衝撃波。空気が震えて、砂埃がたってる。
「いっ…たぁ…ごほごほっ…」
レイちゃんの方向を見ると、もう屋上に到達していた。
「?!オールマイトより早い?!」
「はぁ?!」
屋上から自由落下をするレイちゃん、オールマイト先生の階層でまた火を噴いてビルに向かって飛んで、窓ガラスを割って入った。モニターが追えないスピードでオールマイト先生に近づいて、回転しながら先生を蹴りつける。危なげなく先生は下がってそれを避けた。でも既にレイちゃんは先生の後ろに回ってる。
「速っ…」
「あれは…俺より速い…俺ですら60km近く出してると言うのに…」
飯田君が画面にかじりついてる。レイちゃんの姿はほとんど見えなくて、センサー類の赤い光だけが帯を引いて残ってる。どこにもぶつかることなく先生にだけ攻撃を仕掛けられるその技術は目を張る。
「おいなんか電気みたいなのが…ビリビリって。」
「お、ほんとだ…あれレイヴンが持ってる銃見たいなやつから出てないか…?」
壁やオールマイト先生に、時々電気が走ってるように見える。レイちゃんは高速で移動しながらオールマイト先生に弾を当ててるってこと…?
「あんな動きをして、身体の中は…いやなにか個性で補助を…拡張…?でもそれじゃ血液が…いやそれよりも内臓が無事じゃ済まない…」
緑谷君はどこからかノートを取りだして画面を見ながらブツブツ呟いててちょっと怖い。でも確かにそうだ、あんな動きして大丈夫なの…?
「あっ?!」
「レイちゃん?!」
オールマイト先生の蹴りがまともに…というより置いたとこに避けれずに突っ込んだようなそんな動きだった。そのまま吹き飛んで行く。遅れて凄い音が聞こえる。車の衝突事故みたいな音。あんなの、無事なはずない…と、思ったんだけど…
「こりゃ…1本取られたなあ…」
オールマイト先生の足に捕獲テープが巻かれていた。レイちゃんは飄々と立ち上がって先生に向き合った。
「また…私の…勝ち…」
またって言った?ねえまたって言った?
評価、お気に入り登録というプレゼントをしていただけると…素敵だ…ご友人…