sideレイヴン
時は少し遡り、新たなる飼主、もとい新たなる父と数奇な邂逅を果たしてからすぐのことである。
「レイヴン、被服控除についてだが、個性と身体情報を提出すれば雄英専属のサポート会社がヒーローコスチューム…まあ所謂戦闘服を提供してくれる。本来ならばな…」
多頭は資料をファイルごと机に置いた。そこには公安課の文字と、丸秘というマーク。
「君には国から最新鋭の、雄英よりも更に先を走る専門家が着く。まだコーラルは雄英専属と言えど重いようだな。」
資料を手に取り目を通すと、最初に口外を禁ずるという文字と、参加する企業が書かれている。
『こ、これは…ルビコンの時とおなじ企業名…ですか……不思議なことも、あるようです…』
そこに並べられた文字列は、独立傭兵の自分には馴染み深いものであった。
「装備については、アーキバスが制作した。個性使用時と、普段用と2種作っているから、後で確認しておけ…そしてレイヴン、お前の入試の情報を受けて、様々な企業が連絡をよこした。まぁ…よく見てお前が選べ。」
『レイヴン、今のうちに各企業について調べておきました。RaD…などどうでしょうか。良い噂こそ多くはないならず者の印象ですが、技術力は確かです。そこは変わらないようです。』
RaD、「Reuse and Development」(再利用と発展)を信念とした技術者集団。ルビコンでは、自分の機体を作り上げたのも彼等と聞いている。彼等はドーザーと呼ばれるならず者集団でもあった。
ちなみに、そもそもドーザーという名前もブルドーザー等を指す「ドーザー(Dozer)」ではなく、キマりまくった(Overdose)ヤク中共という意味合いで「ドーザー(Doser)」という由来らしい。
『私は…彼らのネーミングセンスは嫌いでは無いですね。』
エアのひと押しもあり、被服はRaDに頼むことにする、そう多頭に伝えると
「…そうか…RaDか…」
と渋い顔をしたあと、それがお前の選択なら仕方ない、知り合いがいる、直接頼んでおいてやろうと言ってくれた。
後日、厳重なケースを携えて多頭が来た。
「レイヴン、お前に届け物だ。持ったまま個性を使えばいいと聞いた。」
持ち手を持って全身を変換させると、システムメッセージが届いた。
『レイヴン、新着メッセージが…起動しますね。』
「やぁビジター、RaDの責任者、灰被だよ。今回あんたのコスチュームを作るにあたって、ウチの技術を総動員させたから、安心して欲しい。」
その声は、やはりと言うべきか、懐かしいものだった。顔こそ見れないが、表示されてる個人を表すマークは、紫の蜘蛛だった。
「ビジターの個性について少し調べさせてもらったよ。ウチも少しコーラルに興味があってね。コーラルの電気信号とビジターの個性の関係性から、コスチュームも変換することに成功したよ。これからはその時着てた服と交換さね。」
試しに変換してみると、確かに全身がコスチュームに包まれた。
「あんたが改造されてることを鑑みて、解決すべきが感覚の異常な拡張だとみた。だからまぁ、不快に感じない程度に調整できるようになってる。有事の際にはリミッターを解除すれば今以上の感覚を得れるはずだよ。」
「防弾防刃はもちろん、対衝撃吸収、コーラルを流すことでパワードスーツにもなる優れものさ。見てくれはちょいとヒーローからは遠いかもしれないが、まぁ許してくおくれよ、うちにはザ・ヒーローみたいなやつは居ないのさ。」
試しにコーラルを流す。赤いコーラルの本流が、全身のスーツを駆け巡り、いつもより確実に、身体能力が補助されているのを感じる。そして、彼女が言った通り過敏に反応しすぎる感覚が、少し落ち着いていた。味や、感覚にすら過敏なそれは、少し厄介で何をするにも痺れを伴っている。
「それと、装備についてだが、腰についてるスタンニードルガンと、肩についてるスタンバトンのみだ。まぁ殺すにゃちょいと弱いが、制圧だけなら十分な威力だよ。今後ともRaDをご贔屓に。」
『…彼女、もしかしてずっと生き残ってたんじゃ…』
やめろ、他人の空似だろう…それも凄く似ている……。
「私が…普通にドアから来た!!」
昨日の個性把握テストの後は、ごく普通な日常が続いていた。ごく普通なプレゼントマイクの英語の授業を受け、午後の授業が始まろうとしていた。
ウキウキでやってきたオールマイトに、生徒達は驚きの声を隠せない。オールマイトが教師であるということについても、個性で指を折っていた彼に関しては、銀時代のコスチュームが云々と言っていたか、興味は無い。それよりも彼の顔がいつもにも増して濃い事の方が、興味深い。
教壇へと登った彼は、ためにためある1枚のカードを見せて声高々に授業内容を発表する。
「ヒーロー基礎学…ヒーローの素地を作るための様々な基礎訓練をするぞ…早速だが今日はこれ…!!!」
そのカードにはBattleとアメリカンコミック風に書かれていた。
side葉隠透
初日が終わって次の日にはすぐ授業が始まるんだから、雄英ってレベル高いよね…っ!英語はプレゼントマイク先生だったんだけど…なんか普通だった…私達が期待しすぎたせいかもだけど…
でも直ぐに楽しみだったお昼ご飯の時間になった!!レイちゃんを誘ってお昼ご飯を食べようと思ってずっと準備してたんだ、なんたって食堂にはクックヒーローのランチラッシュがいて、一流のご飯を食べれるから!!
皆も楽しみにしてたみたいで、皆食堂に行ったんだけど、レイちゃんは椅子に座ったまま動かなかった。
「レイちゃん?お昼ご飯食べに行こ?」
「…?食べなくても…大丈夫…。」
きょとんってして言うの可愛いけど、食べなきゃダメだよ?!レイちゃんの手を掴んで食堂に連れて行ったけど、レイちゃんは少し困った感じで…と言うより少しだけ調子悪そう…?
「ごめんね、もしかして体調悪かったりした…?」
「…私…は、感覚を…拡張してるから…びりびりする…」
「ご、ごめんね…そうだったんだ…」
知らなかった…もしかしたら触ったりするのも…
「大丈夫…暖かい。」
言う前にレイちゃんは目を見て言ってくれた。そっか、レイちゃんが何か言う前に行動起こせるのって、そういうことだったんだね。
その後も、レイちゃんは白ご飯だけを食べて満足そうにしていた。栄養は取らないとダメだよっっっ…今までそんな生活でどうやったらそんなスタイルに…
閑話休題
お昼はびっくりしたけど、午後からはヒーロー基礎学が始まる。オールマイトが先生って噂は本当だったんだ…
オールマイト先生はうっきうきで教壇に立って、戦闘訓練だよって…戦闘訓練するの?!ヒーロー科は凄いなぁ…
「そして、そいつに伴ってこちら!!」
オールマイト先生は大袈裟に壁を指さす。皆がそっちを見ると壁が…壁がせり出してきた?!
「入学前に送ってもらった「個性届」と「要望」にそって誂えた…戦闘服!!!」
「「「おおぉおー!!!」」」
そこには綺麗にパッケージされた、出席番号順に並んだコスチュームが収められてた。
「着替えたら順次、グラウンドβに集まるんだ!!格好から入るのも大切なことだぜ少年少女…!!自覚するのだ、今日から自分はヒーローなんだと…っ!!」
「「「はいっ!!」」」
皆、ほんとに楽しそうにコスチュームを受け取っていく。でもまたレイちゃんだけは座ったまんま壁を見ていた。
「ねぇ、レイちゃんのコスチュームは?」
「…私は…もう…受け取ってる…」
「えぇ!そうなの?!なんで?」
コスチュームを受け取ったピンク色の女の子、芦戸三奈ちゃんが、話に入ってきた。他にもコスチュームを受け取った生徒が集まってきた。
「私のは………あっ…言えない…んだった…」
答えようとしてしばらく考えたレイちゃんは間を空けてやっぱ言えないって言ってた。なら仕方ないかって、皆着替えに更衣室に向かってく。物分り良すぎない???
更衣室で着替え終わった皆を見ると、コスチュームに身を包んで、自信に満ち溢れた顔をしてた…凄いなぁ…私も見習わなくちゃ…っ!
「ゲロ…私思ったことは言ってしまうのだけれど…そのコスチューム少しヒーローっぽくないのね。」
「…?」
「私は蛙吹梅雨、梅雨ちゃんと呼んで。」
「…私は…レイヴン…なんでもいい…服は…まぁ…」
レイちゃんを見てみれば、確かにヒーローとは少し遠いかもしれない。灰色の包帯が全身を包んで、身体のラインがめっちゃ出てる。肩と腰にバトンと銃みたいなのが付いて、細かい装飾はあるけど、腰からはしっぽみたいに太いコードが飛び出てる。極めつけはヘルメットで、モノアイに猫耳が着いてるロボットみたいなものだった。
「でもウチはそれかっこいいと思う。」
「確かにダークヒーローみたいでかっこいいですわね…」
イヤホンジャックが着いてる女の子と、百ちゃんが話に加わってきた。
「ウチは耳郎響香。よろしくね。」
「八百万百ですわ!」
少しだけ、自己紹介大会が始まったけど、直ぐにレイちゃんが止めてくれて授業には遅れずに済んだ。
「…遅れる。また後で…ね…」
グラウンドに走ればもう男子は集まってたみたい。
「む、揃ったな。さあ始めようか有精卵諸君!!!」
胸を張ったオールマイト先生は笑顔でこっちを見ていた。
RaDのカーラもとい灰被さんです。名前はまた今度。
個性のような、現実世界には無い概念がある世界では、科学力は先進していくのでしょうか?個人的にはこんなヒーローとヴィランの戦いでぼっかんぼっかん街が壊れて、それを毎回直すのですから、個性とは別に、MTが製作されててもおかしくないなぁと。なのでこの世界の企業はAC開発ではなく、MTやパワードスーツ、ヒーローコスチュームやアイテムを作ることを生業として、その最先端技術を走ってるという設定にしました。