続きを書くつもりのない短編置き場   作:ブドウ冷やしんす

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だみっと(破滅的、もしくは「嗚呼クソっ!」というニュアンスのスラング)



ぼっち・ざ・だみっと!

 

 

私、後藤ひとりは戦慄していた。

 

過呼吸すら起こす一歩手前である。

 

その原因は、今、目の前にいる一人の先輩女子生徒だ。

 

 

穴が開くほど私を凝視(ぎょうし)して視線を動かさないまま、再び問う。

 

「……ねぇ、聞いてる? どうして分かったの?」

 

どうしてこうなった!?

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

入学してずっと、私は『友達できないかなぁ』なんて、あの手この手

 

(他力本願とか言わないで下さい分かってます情けなさでブラックホール化してしまいます)

 

色々やってみては上手くいかず挫折(ざせつ)を繰り返し自信をなくし

 

『制服姿さえキラキラした学生の方々への冒涜では!?』

 

とジャージ登校を開始、あっという間にクソ雑魚ナメクジとして教室の片隅で細々と生息するようになったわけだけども、そんな日々の中でも様々な情報は耳に入るわけで……

 

 

ある生徒(いわ)く、この学校にはヤバい先輩がいる。

 

曰く、その人は二年生で、校内なら知らない人はいないほどの美少女、容姿端麗(ようしたんれい)頭脳明晰(ずのうめいせき)で運動神経抜群、自信に満ちたオーラを放っている。

 

曰く、中学時代は彼氏を最短三日で取っ替え引っ替え。

 

曰く、入学してすぐ全ての運動系部活に体験入部しては部長を敗北させ結局は入部せず、(ことごと)くを『道場破り』した化け物。

 

曰く、わけの分からない言動が多いものの、成績は全科目優秀で学年トップ、全ての教師が()れ物のように扱い関わるのを避けている。

 

曰く、どんな不良生徒も彼女にだけは近寄らない。

 

曰く、曰く、曰く……

 

 

私は恐怖した。

 

きっと私とは生きる世界が違う、全てを睥睨(へいげい)するような女王様みたいな人で、その実力でこの学校に君臨していて、いずれは陽キャ世界を支配する人物に違いない。

 

そんな人の目に留まり、万が一にも気分を害してしまったら……

 

 

『あなた、いい度胸ね? お前たち、やっておしまい!』

 

『『『Yes, Your Majesty!!』』』

 

 

ヒィィィ、きっと逆さに吊るされて(さら)し者にされて、翌日には追放されてしまうぅぅ!?

 

 

とはいえ、噂の先輩は二年生。

 

私が余計な行動をせず、一年フロアで慎ましく生活していれば問題ないはず。

 

 

……しかし、

 

 

「……ね、あれって」

「ウソ!? まさか噂の……」

 

授業が終わり、帰ろうと思って廊下を歩いてた時、周りの同級生のヒソヒソ話に気が付き、その視線の先に目を向けると、そこには

 

「……あれが……涼宮ハルヒ先輩」

「なんで一年の階に……?」

 

 

 

なぜぇぇぇぇぇ!?

 

 

 

涼宮先輩は何やら機嫌悪そうな顔で、まるで何かを探してるみたいに視線(ガン)飛ばしながら、海を割るモーゼが(ごと)く廊下の真ん中を歩いて来た。こわい!

 

 

いや、落ち着け! そうだ、端に寄って目を合わせなければ大丈夫だ!

 

私は嵐が過ぎ去るのを待った。

 

 

幸い、涼宮先輩からは何も接触してくる事もなく(……一瞬、こちらに視線を感じた気はするけど……いや気のせいだ! きっと!!)去って行った。

 

私は胸を撫で下ろした。

 

私みたいなナメクジが女王様の視界を汚したら処刑されてしまうに決まってる!

 

 

何にせよ、無事やり過ごした以上もう安心だ。

 

これで平穏な日々が帰ってくる。

 

 

 

……そんな風に思っていた時期が私にもありました。

 

 

 

初めて涼宮先輩が一年フロアに現れて以後、昼休みや放課後、彼女は何故か毎日やって来るようになった。

 

相変わらず何をしに来ているのかは不明なままだけど、彼女の奇行は今に始まった事ではないという感じらしく、そのうち誰も気にしなくなっていた。

 

()く言う私も『自分から接触しなければ被害を受ける事はない』と、ただ目で追うだけになっていた。

 

 

……ただ、あれから二週間近くが経過して気付いた事があった。

 

 

私の前、廊下をいつも通りに通過していく涼宮先輩。

 

彼女の髪型は毎日違っていて、どうやら曜日でローテーションしているらしい。

 

 

月曜日はストレートのロングヘアを普通に背中に垂らしている。

 

火曜日はポニーテール。

 

水曜日は頭の両脇でツインテール。

 

木曜日は三つ編み。

 

金曜日は頭の四ヶ所を適当にまとめてリボンで結ぶ。

 

曜日が進むごとに髪を結ぶ箇所(かしょ)が増えていくようだ。

 

 

この法則に従うなら最終日には6ヶ所になっているはずで、果たして日曜日に涼宮先輩がどんな頭になっているのか……見てみたい気もする。

 

 

いやいや! 私は何を考えてるのか!? これは危険な発想だ!!

 

下手に首を突っ込んだら血祭りに上げられてしまう!!

 

 

……それはそうと、どうして髪型をローテーションしてるのかなぁ。

 

その日の気分に合わせて?

 

それか、気分を変えるため?

 

普通なら髪型を変えるのは心境の変化があった時かイメチェン。

 

でも、どれもピンとこない。

 

だって毎日同じ不機嫌そうな仏頂面(ぶっちょうづら)だし。

 

となると、もっと違う理由、何か深い意味が……

 

 

……ハッ、まさか!?

 

何かの暗号!?

 

それか個人として特定されないための偽装とか!?

 

だとしたら一体、誰から……謎の秘密結社とか、もしくは宇宙人!?

 

 

……って、いやいや、まさかねぇ」

 

視線を足元に戻して頭を振った。

 

 

 

 

 

「なんで分かったの?」

 

 

 

 

 

「はふぇ?」

 

至近距離から聞こえた声に顔を上げると、目の前には涼宮先輩の顔が

 

「ぅへあぁぁぁッッ!?」

「……ねぇ、聞いてる? どうして分かったの?」

 

何が!? 何で!? どうして!?

 

……ぇ、まさか声に出てた!?

 

「あっあうあ、ど、どうしてと言われましてもあの結び目の数が1234……いやあのでもわかっ分かってたかというと何も分かってなかったかも知れなくてですねだって月曜日は(憂鬱(ゆううつ)な)一週間の始まりなわけでそれだったら何でポニテ(=1)じゃないのかなぁなんてぇひひぅへへ

 

「……」

 

目を合わせたままだと殺されてしまう気がして、目を泳がせながら視線を()らし、早口になりながらも誤魔化(ごまか)そうとして必死に愛想笑いをしたものの難しい表情をされてしまって……

 

粛清(しゅくせい)されてしまう!?

 

ぁッ……ぁッ……」ガタガタ

「ちょ」

 

パニック、震、止まらな、視界、ブレ……

 

かひゅ

 

自分が()ぜた気がした。

 

全ての圧から解放された世界は、こんなにも広く美しい。

 

あぁ……意識が遠退く……世界に私が融けていく……

 

 

何故か目の前の涼宮先輩は、目をキラキラ輝かせ

 

「……まさか宇宙人? 新種のUMA? アッ、待っ」

 

開いていた窓へと風で吹き散らされる私。

 

その後の記憶は無く、気が付けば自宅の前で倒れていたのです……

 

 

次の日、断りもなく急にいなくなって涼宮先輩にリンチされてしまうのではと怯えながらも、かと言って休むわけにもいかず、目立たないように登校し息を殺して一日を過ごしたんだけど、その日はついぞ涼宮先輩の姿を見る事は無く、休んだのかな、見逃してくれたのかも、と思いつつ、平穏な日を終える事ができた。

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

さらに翌日、きっと興味をなくしてくれたに違いないと、すっかり涼宮先輩への警戒心が(ゆる)んだ私は、クラスメイトの誰かが話しかけてくれたりチヤホヤしてくれないだろうかとギターを持ってバンドグッズでフル武装……したけど効果はなく、バンドTシャツをアピるために開けていたジャージのファスナーも首までしっかり閉めて、失意の帰宅をしようとしていた。

 

 

しかし、廊下に出ると……

 

 

「復活してたのね?」

 

涼宮先輩ぃぃぃ!?!?

 

長かった髪をバッサリ切って、黄色いリボンが可愛らしいセミショートになった彼女が待ち構えていた!

 

 

「昨日は街中探したのに見つからないんだもの、疲れちゃったわ?」

 

いなかったのは探してたからだった! 油断した!

 

「だから今日こそは『じっくり付き合って』もらうから。逃げようだなんて思わない事ね?」

 

り、リンチでボロ雑巾(ぞうきん)にされてしまう!?

 

 

あば、あばばばばば!?」チリチリ…

 

「ハッ!? 今度は逃さないわよ!!」

 

パン!! と猫だまし。

 

はひぃ!?

 

急に現実へと引き戻された。

 

「アッ、わわわわわざとじゃないんです精神的に限界になるとテンパっちゃって頭がボーッとなると言いますかその」

 

「……そういう生態なのかしら」

 

「あ、ぇ……せ、『生態』?」

 

 

どことなくニヤニヤしながら涼宮先輩は言った。

 

「……あなた、面白いわね。名前は?」

 

「ふへッ!? ごッ、後藤ひとりデッシュ……ヒヒ

 

あ、これ終わった。完全に目を付けられた……

 

 

「……ふーん」

 

何やら色々な角度からジロジロ見たり、急に手で私の前髪を上げ

 

「へひゃッ!? 顔近!?」

 

メッチャ正面からのぞき込まれてるけど目を逸らす事もできず……カタカタと震え続ける。

 

前髪から手を離してくれたかと思えば、

 

もにゅッ

 

「ぅえぁ?」

 

視線を下に向けたら……思いっきり両手で胸もまれてる!?

 

「ぉぱあ!?」

 

「(むにゅ、もにゅ)ふむ、ふむ……ヨシ」

 

 

何が!?

 

 

ま、ままままさか涼宮先輩『そっちの趣味』!?

 

それとも、もしや……

 

 

『あら、あなたクソ雑魚ナメクジ陰キャのクセに良い身体してるわね。生意気よ? 今日から学校の男共の “ 相手 ” でもしてもらおうかしら』

 

 

ぎゃあああああッ!? エロ同人誌みたいな事されてしまうぅぅぅ!?

 

チヤホヤ? 違うソレごみ箱とか便器とかの扱いだ!!

 

い、今から土下座して靴とか()めたら許してもらえるかな……

 

 

などと私が悲愴な覚悟を決めようとしていたら、涼宮先輩は

 

「あなたギターやるの?」

 

「どッ、どどどうして分かったんですか!?」

 

ヤバい! ただでさえ目を付けられてるのにイキり系だと思われたら詰む!!

 

私がテンパると涼宮先輩、とても(あき)れた表情で言った。

 

「……どうしても何も、現にギター背負ってるじゃない」

 

 そ う で し た 。

 

どうして今日という日に限って!!!

 

 

絶望で私の実存が形而上学的(けいじじょうがくてき)な崩壊を起こしそうになっていると涼宮先輩は、

 

「そうだわ! ちょっとついてきなさい!」

 

「ぇ」

 

ガシッと私の手首を(つか)ん……で走り出すぅぅぅッ!?

 

「ぴゃあああああッッ!?」

 

全力疾走する涼宮先輩に引っ張られるがまま、行く先も分からぬまま、私は校内で風になった。

 

 

 

「でりゃあッ!!」

 

ドカン! と、何かの部屋のドアを景気よく蹴り開け(……あれ?……スライドドア……あれ?)た涼宮先輩。

 

中でドラムの人とベースの人が驚いた顔で硬直しt……あぁ、たぶん軽音部だココ。

 

 

「さぁひとりちゃん! さっそ、く……?」

 

振り返った涼宮先輩は、私の手首『だけ』持った状態でキョトンとした。

 

「……ぁあ、もうッ!」

 

まどろっこしいという感じに私の手首を床にベチャッと投げ捨て、足で床ドンッッ!!

 

ぴぃッ

 

恐怖により、投げ捨てられた手首を始点として(うつぶ)せ状態で瞬間凝固、幽体離脱したように俯瞰(ふかん)で見てた視点が肉体へ引き戻される。

 

ヒトの形を取り戻した(?)私の襟首(えりくび)を掴んで引き起こし、涼宮先輩がニヤリ顔で要求する。

 

「さぁ! ()きなさい!」

 

「ぇ、あッ、え……ひくっ、て」

 

「ギターよギター! できるんでしょ? ココなら機材はあるし、腕前を見せて!」

 

 

ぅえええぇぇぇぇぇッ!?

 

 

「むッ、無理ですぅ……ひッと、人前で演奏なんて、した事ないのに、わわわ、わた、私なんかがガチで部活で演奏してる人達の前でなんてぇぇ……」

 

陽キャ様の青春の拠点に土足で上がり、ナメクジ陰キャの私が雑音を垂れ流すなど、き、きっと袋叩きにされてしまう!? おこがましい!!

 

 

半泣きで許しを乞うていると涼宮先輩、ムッとした顔になり

 

「はぁ? じゃあ学校にギターなんか持ってきて、最初から弾く気なかったの?」

 

「ぁッ、あッ、えっと、イヤホンで、その……」

 

「………………ハァァァ……分かったわよ! じゃあコッチ!!」

 

「ぇ」

 

再び私は風になって、学校の外に連れ出された。

 

えっと、軽音部の、たぶん先輩方、ヘアバンドの人と黒髪ロングの人、お騒がせしてごめんなさい……

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

気が付けば人気のない公園で倒れ伏していた私。

 

面倒くさそうに「着いたわよ」って足をまたドンッて踏み鳴らされて怖かったから意識は戻りました……

 

 

 

「さ、ココなら良いでしょ?」

 

完璧なお膳立てをしてみせたというような、自信に満ちた表情で私を見下ろす涼宮先輩。

 

 

「ぅ、ぅ……弾きます……弾きますから……」

 

私はヨロヨロと近くのベンチに這い上がる。

 

なんとか座って演奏の準備を始めると、涼宮先輩は右隣にドカッと座り、ついクセで両方とも耳に入れてたイヤホンの片方を強奪していった。

 

 

ああああ家族以外の人の前でギター弾くというだけでもハードルが高い……

 

きっ、緊張がががが!

 

それが影響して、ぎこちない音……

 

 

「……力抜きなさいよ。深呼吸、深呼吸」

 

涼宮先輩は溜め息一つ。

 

「いつも一人で弾く時みたいに……あたしはいないつもりで気にしなければ良いじゃない。ほら、目ぇ(つぶ)っててあげるから」

 

足も腕も組んで不動の姿勢。

 

 

「……ぃ、いつも通り……いつも通り……」

 

私は呼吸を整え、薄目で、なるべくギターだけ視界に入れるようにして『押入れの中と同じ、押入れの中と同じ』と自己暗示しつつ、仕切り直して弾き始めた。

 

最初は何となく『自分はギターを弾けている』と感触を確かめるように、そのうち、自分の音や、それを生み出す手とギターだけの『世界』に集中して……

 

 

……波に、流れに乗った。

 

脳に刻まれた楽譜(スコア)を通じた憑依(ひょうい)経験。

 

オリジナルの理念を理解し、感情に共感し、自分の熱を乗せ、躍動(やくどう)するままに旋律へと変換する。

 

自分だけの『世界』を作るように没入した。

 

『演奏する、この瞬間だけは私がルールだ』と()き鳴らす!!

 

 

……ふと、普段と違うイヤホンの揺れに、チラリと視線を向けた。

 

楽しげな涼宮先輩が、目を閉じたままリズムに合わせて揺れていた。

 

 

……喜んでくれてる? 私の音で?

 

家族以外の人が、動画配信以外の形で。

 

それが、何だか……嬉しくt

 

 

「あッ、ギターぁぁぁッ!?」

 

 

「ふぇい?」

 

唐突に聞こえた絶叫に、なんか激しくもフワフワキラキラした世界が展開されそうだった感覚をブチ破られて、急に現実に引き戻された。

 

視線を向けた先には見知らぬ女の子。

 

公園の入り口から、すごい勢いで距離を詰めて来

ヒェッ

 

 

「急にゴメンね!? 今ギター弾いてたよね!? 上手いの!?」

 

アッ、アッ、えっと」

 

サイドテールで天使みたいに可愛くて……は、良いんだけど、ぉ、ぉ、ぉ、こ、これが陽キャの距離の詰め方……

 

 

私が驚きと混乱で反射的に美しい土下座をキメようとしていると、涼宮先輩が

 

「フッ、上手いかなんて愚問ね! このあたしが認めた自慢の後輩よ! 1000年に一度の逸材だわ!」

 

「そうなの!?」

 

「ゥエッフ!? せせせせ1000年に一度……あっいやそれほどでもぅへへ

 

承認欲求満たされて、かっ顔が緩むぅぅ……

 

 

「あ、いきなりごめんね? 私、下北沢高校二年、伊地知 虹夏」

 

「あたしは秀華高二年の涼宮ハルヒよ!」

 

「あっ、あっ、後藤ひとり、同じく秀華高校一年です……」

 

 

自己紹介してくれた虹夏ちゃんは、何やら躊躇(ためら)いがちに言った。

 

「実は私、バンド組んでドラムやってるんだけど、今ちょっと困ってて……お願い! 今日だけ私のバンドで、サポートギターしてくれないかな!?」

 

「ぇ!?」

 

「これからライブなのにギターの子が突然辞めちゃって!!」

 

「ぇ、ぇ、」

 

「ある程度弾ける人ならすぐ出来る曲だから!! なにとぞ〜!!」

 

 

私が困惑して返事できずにいると、涼宮先輩は……

 

「……んっふっふっ……ついに来たわね。ひとりちゃん! あなたの力を全世界に示すチャンスよ!!」

 

と、突然ガバッと私の両肩を掴んでガックンガックンああああああ!?

 

虹夏ちゃんも「……ぜ、全世界?」と困惑気味。

 

「さあ虹夏ちゃん! すぐに案内して!!」

 

ぇ、私の意思確にn

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

私のような陰キャが足を踏み入れたら排除されそうな多くのサブカルチャーとオシャレさんが集まる街である下北沢を歩く時も、虹夏ちゃんの家でもある『STARRY』というらしいライブハウスに続く階段を降りていく時も、前と後ろを虹夏ちゃんと涼宮先輩に挟まれて逃げる事も足を止める事も許されず、半ば強制連行されて到着してしまったそこは、

 

「わ、私の家ぇ」

「あたしの家だよ!?」

 

つい変な事を口走ってしまった。

 

アングラ感あるものの、暗さと圧迫感に押し入れを思い起こしたのだ。

 

 

「軽く紹介しておくけど、あれが照明さんで、そこにいるのがPAさん」

 

虹夏ちゃんに言われて目を向けると、PAさんが振り返り

 

「おはようございまーす」

 

「ンピ」

 

ピアスゴリゴリで目付き怖い!!

 

つい命乞いの準備に入りかけて、後ろから涼宮先輩に背を押される。

 

「どうもー! ほらひとりちゃん何してるの。時間は有限よ?」

 

はっはい、おおお御前失礼いたしますぅ……

 

「?」

 

 

などとしている私達に

 

「……やっと帰ってきた」

 

「リョウ!」

 

虹夏ちゃんからリョウと呼ばれた方、お顔は大変よろしい……のだけど、いかにもクール系で表情から感情を読み取りにくく、無関心でいてくれてるのか歓迎されてないのか、わからなくて少し怖い……土下座の準備しとこ。

 

 

「この子、後藤ひとりちゃん! 奇跡的に公園で見つけたギタリストで、一緒にいる涼宮ハルヒちゃんが言うには……まぁ、半分冗談だろうけど、1000年に一度の逸材らしいよ?」

 

「マジか。ありがたやありがたや」

 

「いや鵜呑みにするんかい」

 

あ、意外とユーモラスな人だ。良かった。

 

 

「ひとりちゃん、ハルヒちゃん、この子は幼馴染みでベースのリョウ! 変人って言われると喜ぶ変なやつ」

 

え? と思って視線を向けると満更でもなさそうに

 

「嬉しくないし///

 

……確かに変わった人だ。

 

涼宮先輩と気が合いs

 

 

「ひとりちゃん?」

 

 

ごっごごごごめんなさいぃぃッ!?

 

「いや何がよ!? 反応ないから声かけただけじゃない」

 

不服そうな涼宮先輩。考えが読まれたわけではなかったらしい。良かった……

 

「それよりリハーサルとかあるんでしょ? 時間ないんだろうし、さっさと行きましょ?」

 

「あッはい」

 

するとリョウさんが、

 

「そうだ虹夏、勝手に抜け出したから店長が怒ってた」

 

「ヤバ、見つかる前にスタジオ行こ!」

 

 

みんなに連れられスタジオに入った時、そこに並ぶ機材や雰囲気に、急に『これから本当にライブするんだ』と実感が湧き、き、ききき、緊張が!! 涼宮先輩に急かされてた分だけ心の準備ががががが!!!

 

「よし、じゃあ本当に時間もないし、早速だけど通しで合わせやっちゃおっか! ひとりちゃん、これ、今日のセットリストとスコアね。リョウはともかくとして……ひとりちゃんはどう? すぐいけ……ひとりちゃん?」

 

 

虹夏ちゃんの声を背に、私はゴミ箱(じぶんのから)に閉じ()もろうとしていた。

 

 

「どうしたのひとりちゃん!? ダメだよそんなとこ入っちゃ!! 汚いよ!!」

 

「お、パフォーマンスの練習?」

 

「離してください虹夏ちゃん! 私には見えるんです! 自分がライブめちゃくちゃにしてバンドが解散してしまう未来が!!」

 

「ネガティブすぎるよ!?」

 

「そんな心配しなくてもウチのバンド見に来るの虹夏の友達だけだよ。普通の女子高生に演奏の良し悪しなんて分かんないって。野次られてもベースでポムっとしてやるから」

 

「今すごい痛そうな音に聞こえたよ!?」

 

「ハーメルンの特殊フォントだから仕方ないね」

 

「ぇ、Pixiv版だとどう……いや何言ってるの!?」

 

「いっ、いざとなったら私がギターでハラキリショーやりますから許してください!!」

 

「ロックすぎるよ!?」

 

 

 

「ああああああもうグダグダグダグダうるさぁぁぁぁぁい!!!」

 

 

 

涼宮先輩の一喝(いっかつ)で、全員が静止した。

 

 

ツカツカと近付いて来て、私の胸倉を掴む。

 

「何やってるのよひとりちゃん! そんなんじゃいつまで経ってもギターで世界征服なんてできないじゃない!!」

 

 

……ぇ? 世界征服?

 

 

そ、そんな事一度も言って「マジか、ロックじゃん」「すごい野心!!」

 

……蚊の鳴くような私の抗議の声は二人に掻き消され、既成事実化されてしまった。

 

どうやら私はギターで世界を獲らなければならないらしい……

 

 

「あんたいっつも『自分はダメだ』みたいに言うけど、じゃあ何? そのギターの腕前までダメだって言うつもり?」

 

「ぇ、あ、いや、でも、だって私、誰かと演奏なんて一度も」

 

「当たり前じゃない。初めてなんだから上手くいかないかも、なんて当然でしょ? だからって、やる前から無駄だって決めるの?」

 

「そ、それは」

 

「それなら、あたしに聞かせた演奏は何だったのよ。1000年に一度なんて言ったのは、冗談でも何でもなく本心よ」

 

 

「そうなの!?」「よく考えたらギターの歴史って1000年も無」

 

 

「それに、あの二人はバンドマンって意味でもあんたの『先輩』なんだから、あんたが多少突っ走ったとしても合わせてくれるわよ。背中預けるくらいのつもりでやってみなさいよ」

 

涼宮先輩は二人を振り返って、ニヤリとしながら

 

「……そのくらい、余裕でしょ? それとも無理かしら」

 

なななななんでそんな(あお)るような事を……

 

 

二人は、

 

「できらあ!」「こやつ言いおるわ」

 

ぇ、ぇ、怒ってない? 怒ってない?

 

 

涼宮先輩は再び私を見て、

 

「だから、もう一度やってみせて」

 

「ぇ、う、わ、わた、私、は……」

 

 

決心しきれない私に、涼宮先輩は溜め息一つ。

 

私を無理矢理に引っ張って行き、途中で私のギターを引っ掴み、私の首にストラップをかけ、マイクスタンドを持って来た。

 

え? え?

 

「……二人とも、『God knows』いける?」

 

「え? は? リハは!?」

 

「どうせスコアなんて頭に入ってるのよ、この子。今のひとりちゃんに必要なのはリハより自信よ」

 

 

それは、まぁ、リストのは全部弾いた事ある曲だけど……

 

 

リョウさんが疑問を投げかける。

 

「あの曲、3ピースのスコアなんて出てた?」

 

「んなもん耳コピでデッチ上げるわ」

 

虹夏ちゃんが驚きの声を上げた。

 

「ハルヒちゃん絶対音感!?」

 

それに大して反応もせず、涼宮先輩は私にピックを握らせ、後ろから私の右手とギターのネックを……え!? 二人羽織ギター!?

 

「始めて!」

 

二人も『マジかよ』って顔をしつつ、演奏が始まった。

 

 

不思議な感覚だった。

 

音を出してるのは私の右手なのに、弾いているのは私じゃない。

 

一方で、歌っているのは涼宮先輩なのに、その感情さえ私を通して響くようで……

 

三人で一つの世界を奏でていて、その場に確かに私はいるのに、私の音は存在しない。

 

 

 

─────弾きたい。

 

私も、その世界に入りたい!!

 

 

 

ピックを握る手に力が入った。

 

それを感じたのか、涼宮先輩が私を見てニヤリ。

 

そして───

 

 

それは、まるで手品みたい。

 

「だから」

 

ドラムの、ほんの僅かな間隙(かんげき)に、気が付けば私の左手はネックに添えられて、

 

「わたし」

 

涼宮先輩は私の横をスルリと抜けて、マイクスタンドと踊った。

 

「ついていくよ」

 

送り出されて、ギターを繰る手は止まらない。

 

「どんな辛い」

 

だけど相対速度、涼宮先輩との世界は止まって見えた。

 

「世界の闇の中でさえ」

 

導くように加速された旋律を、私は引き継ぐ。

 

「きっと、あなたは輝いて」

 

さながら気分はクラスターロケット。

 

「超える」

 

腹に響く虹夏ちゃんのドラム、

 

「未来の果て」

 

肺を震わせるリョウさんのベース、

 

「弱さ故に」

 

そして、涼宮先輩の歌声が心臓に刺さる。

 

「魂、壊されぬように」

 

私の中で全てが混ざり合い、私はその情動を、熱量をギターで変換した。

 

「 My way 」

 

頭の中が電気信号で(しび)れ、涼宮先輩と合った目から火花が散りそう。

 

「重なるよ今」

 

混ざり合って、支え合って、(たく)して、託された何かを、届け(きけ)と願ってブチ上げる。

 

「ふたりに」

 

これが……誰かと演奏するって事?

 

「God bless . 」

 

 

 

───目指すべき天空の衛星軌道(フライト・パス)は、

もう見えてる!

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

「すごいよひとりちゃん!」

 

「合わせるの初めてでコレなら問題ない。きっといける」

 

二人がグッと親指を立てた。

 

 

「だから言ったじゃない」

 

さも当然という顔の涼宮先輩。

 

 

好きなギターで認められて、し、幸せぇぇ……

 

「そ、そそ、そうですかね。ぅへへ

 

「あぁほら、またそうやって崩れて」

 

 

「ぇ、溶け……人間?」「おもしろ」

 

 

……と、そんな時、外から誰かスタッフさんらしき声が。

 

「結束バンドさん、お時間でーす」

 

 

「「……結束バンド?」」

 

涼宮先輩とハモってしまった。

 

 

リョウさんが「ウチらのバンド名、最高でしょ?(プフッ)」と言った。

 

虹夏ちゃんは「ダジャレじゃん! 絶対いつか変えるから!」と言ってるけど、涼宮先輩は「グヌヌ……良いセンスしてるじゃない……」と、何故か悔しそう。まさかバンド名付けて私物化しようとしてたわけじゃないですよね?

 

 

リョウさんが言う。

 

「そう言えばひとり、ステージでの紹介どうする?」

 

虹夏ちゃんも、

 

「あ、そっか。本名で出るか、アダ名とかある?」

 

 

本名だけは許して下さいませぇぇぇ!?

 

 

けど、

 

「ぁ、アダ名……「なぁ」とか「あ」とか「おい」くらいしか」

 

虹夏ちゃんが、

 

「いやそれ、アダ名って言わないんじゃ……ぇ、友達とか、ハルヒちゃんは?」

 

涼宮先輩が応える。

 

「一昨日、面白そうだと思って目ぇ付けて今日捕まえて連れ回してただけだから、アダ名とか付けてないわ」

 

「ぇ」

 

虹夏ちゃんが目を点にする一方、リョウさんが「謎な関係性。逆にカッコいい」とか……ぇえ?

 

 

リョウさんが独り言でブツブツ。

 

「ひとり……一人ぼっち……ぼっちちゃん、とか」

 

「ぅおいアンタ何て事を」

 

「ぁっ、あっ、ぼぼぼぼぼっちでッす!」

 

初めてのアダ名に感動して、もしかしたら気持ち悪い笑顔を見せてしまったかも知れない。

 

あぁほらやっぱり虹夏ちゃんが、

 

「あれ、変だな、雨なんて降ってないのに……」

 

って涙を()いてる。気持ち悪い顔見せてゴメンナサイ……

 

というか、涼宮先輩が不満そうな顔してるのは何故?

 

 

そんな涼宮先輩が私の背中をバシッと叩いて言った。

 

「さぁひとりちゃん! 時間なんだしキリキリ舞台に上がりなさい! たくさんのお客さんに実力を見せつけて私を楽しませなさい!」

 

虹夏ちゃんがツッコミを入れる。

 

「いやハルヒちゃんも出るんでしょ? 予備のギターならあるし」

 

「何言ってるの? あたし出ないわよ?」

 

 

「「「……え?」」」全員ハモった。

 

 

虹夏ちゃんが戸惑いつつ聞く。

 

「な、なんで!? あんなに上手いのに! あ! 何なら最後の曲ボーカルありのヤツに変更する!?」

 

涼宮先輩が何でもない風に応えた。

 

「だって、あたしがステージ出ちゃったらひとりちゃんの活躍が見れないじゃない。あたし、あくまでひとりちゃんのプロデューサー兼マネージャーとして来ただけだもの」

 

「えええええ!?」

 

 

……す、涼宮先輩が出ない……たくさんのお客さん……

 

 

虹夏ちゃんが溜め息を吐く。

 

「ハァ……仕方ないか。それじゃ! 気を取り直して……ぼっちちゃん何してるの?」

 

 

私は再びゴミ箱(じぶんのから)に閉じ籠もろうとしていた。

 

 

「どうしてまた!? ちゃんと演奏できてたのに!?」

 

「はっ離して下さい虹夏ちゃん! そんなたくさんの視線に耐えられる自信がありません! それに私を見たせいで不特定多数の方々の目玉が腐り落ちてしまう!」

 

「メデューサじゃあるまいし!?」

「ちょっとメデューサは違う気が」

 

 

「ああもうガタガタ言わない!!」

 

涼宮先輩が()えた。

 

「ならこれでも(かぶ)ってなさい!!」

 

手近にあったクシャクシャの茶色い紙袋(たぶん備品か何か入ってたやつ)に目潰しの手付きでズブッと穴を二つ開け、私の頭に被せた。

 

……あ、押し入れの臭い……落ち着くぅ……

 

あと、逆らったら今度は私自身に目潰しが来るかもという可能性は考えないようにした。

 

 

「さぁ! 今度こそ行って来なさい!! その実力を見せつけるのよ!!!」

 

そうだ、私はguitarhero。

 

ここから私の伝説が始まる!!

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 無 理 で し た 。

 

guitarheroという私の幻想(ファンタズム)は、お客さんたちの視線という情報量の圧力で破壊(ブロークン)されました。

 

演奏の手が止まる事だけはなかったものの、終始テンパり気味で走ったり逆に慌ててブレーキをかけたり……

 

 

「ミスりまくった〜!」

 

「MC滑ってたね」

 

あえて私の醜態(しゅうたい)には触れず『全力で青春した!』という空気感にしてくれる二人。

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめ」

 

「いやいや怖いから!? 頑張ってくれてたの分かってるから!!」

 

「初めてだしマジぶっつけ本番だし仕方ない(ビジュアルはロックでカッコよかったんだけどな……自分ではやらないけど)」

 

 

※ちなみに後で聞いた話だけど一部の観客から「女○ァウストがギター弾いてる」「ちゃんと白衣着なきゃダメだろ」とコスプレギタリスト扱いされてたらしい。

 

 

当然ながら涼宮先輩は不満そうな顔……

 

「ったく、しょうがないわね。その『緊張しい』治して、次こそ本領発揮しなさいよ?」

 

 

その発言に虹夏ちゃんは、

 

「あ! そうだ、ぼっちちゃん! このままウチのバンドに入ってくれないかなぁ、なんて……お願い!」

 

「ぇ、あっ、いいんですか!? ホントに!?」

 

「だって実は上手いの分かってるし超有望株じゃん!」

 

「そうそう、改善点が一つだけなんだから優秀優秀」

 

二人して持ち上げてくれて……でへっでへっ。

 

 

虹夏ちゃんは涼宮先輩に流し目を送りながら言った。

 

「……できれば、ハルヒちゃんもメンバーとして入ってくれないかなぁ。ギターボーカルほしいのは本当だし、一緒に()りたいなぁ、なんて……」

 

すると涼宮先輩、

 

「そうねぇ……」

 

ニヤリと笑って、

 

「……二人がguitarheroとタイマン張れるくらい上達したら考えてあげても良いかしら」

 

 

「そうでしょ? ひとりちゃん」

 

何故か、私の方を見て。

 

 

なじぇぇぇぇぇ!?!?

 

まさか、バっバレてる!?

 

なんで!? そんな話一度もしてないのに!!

 

 

涼宮先輩の発言に、

 

「……ふーん? 言ってくれますねぇ」

 

「安い挑発、受けて立とう」

 

ヒェッ

 

しばらくイキり投稿は自重しよう……

 

 

「ひとりちゃん」

「ふぎゅ」

 

涼宮先輩が両手で私の顔を捕まえる。

 

「期待してるからね。あなたならきっと世界征服を()()げられるわ。まずは、そうねぇ……

 

あたしを武道館に連れて行きなさい!!!」

 

 

……嗚呼、私には荷が重い。

 

そう思いながらも、涼宮先輩のキラキラした瞳に射竦(いすく)められて逃げ場はなく、怒らせたら怖いという気持ちと、寄せられる信頼の心地よさに……

 

「……は……はひぃ……」

 

半泣きで頷いてしまうのであった。

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

……今にして思えば、この時の私は露とも知らなかったのである。

 

これから始まる狂瀾怒濤(きょうらんどとう)の日々を。

 

 

例えばハルヒ先輩が「ギターボーカル確保したわ!!」と言って喜多ちゃんを私のオアシス(階段裏の謎スペース)に連行「……ここ、どこですかぁ……私、何されるんですかぁ……」と半泣きにしたり、

 

 

彼女がSNS担当大臣に任命された時、ハルヒ先輩が「まぁ集客なんて『guitarheroが在籍してるバンドです』って言ったら秒でしょうけどね」なんて軽い調子でバラされ私が瞬間凍結したり、

 

 

※どうして気付いたのか聞くと「爪の形とか弾き方のクセとかで誰でも気付くでしょ?」こわい

 

 

アー写を撮りに出かけた時「せっかくなら心霊写真も狙いましょ!」なんて言って変なスポットばかり巡るはめになったり、

 

 

※リョウさんは楽しそうだったし「実にロックだね」と高評価な一枚は撮れた(なお心霊写真は撮れなかった)

 

 

しょっちゅうハルヒ先輩が「あんたのユニフォームは今日からコレよ!!」とメイド服とかバニースーツとか持ってきて、みんなの前で服ひん()いてきたりドアの隙間から店長さんが見てたり、

 

 

みんなで江の島観光した時「ここに隠されたミステリーを解き明かすのよ!」と趣旨が崩壊したり私が体力的に限界を迎えてブッ倒れたり、

 

 

……そういえば、あの時の話になると急に皆「結局ナンニモナカッタネェ……」と片言になるのは何故だろう。

 

あと必ずハルヒ先輩が何か言おうとして、みんなに羽交(はが)い締めにされたり口を(ふさ)がれるのは一体……

 

ま、まさか……「あいつマジ体力なさすぎ使えねーし面白くなかった」と思ってるのをみんなが抑えてくれてるとかじゃなきゃいいなぁ……そんな理由だったら申し訳なさすぎる。舌を噛み切って自決せざるを得ない……

 

 

あぁ、あと、チケットノルマの件で私がお姉さんと路上ライブした話を後から聞いたハルヒ先輩が急に機嫌悪くなってバンドミーティングにも来てくれなくなったと思ったら「文化祭に出たければ、あたしを倒してみせなさい!!」とか言って生徒会副会長の古泉先輩公認(……黙認?)の放課後バンドバトルを申し込まれたり、

 

 

……軽音部を(ひき)い(強制徴用)るハルヒ先輩が熱演熱唱した『Telegnosis』と『真空のメランコリー』は強敵だった。

 

先攻後攻が逆だったら負けてたかも知れない。あと軽音部の皆さんウチの最高名誉顧問(最近そういう腕章を付けてる)がご迷惑おかけしました。

 

おまけに勝ったら勝ったで、また機嫌悪くなるし。

 

最終的には「隣にいてほしいんです!」って必死の説得で「今後あたしがいない時に面白い事するの禁止だから!!」という条件と引き換えに事なきを得たけど、リョウさん事ある毎に「プロポーズ」ってからかうの止めて下さい。そういう意味じゃないです。

 

 

それとハルヒ先輩、学校でも練習場所あった方が良いって言ってくれるのはありがたいんですけど、だからって文芸部室を占拠するのはマズいと思うんです。いくら大半が幽霊部員で長門先輩一人しかいないとはいえ読書の邪魔をするのは……その事で以前「申し訳御座いません」って土下座した時、たっぷり30秒間を空けて「……ユニーク」って一言しか返してもらえなかったし、あれ絶対「テメェらの脳内マジでユニークだな」って皮肉ですよ!?

 

あぁ、あの(さげす)むような無表情を思い出したら震えが……

 

 

……貝になりたい。

 

 

「あぁ!? どうしたの後藤さん!? また後藤さんがメンダコに!!」

 

「虹夏、前から思ってたんだけどメンダコって美味しいかな」

 

「リョウ、ぼっちちゃん食べようとしたら怒るよ?」

 

 

……ハァ……いつもいつもハルヒ先輩が私の事をUMAだ宇宙人だなんて言ってるからか、みんなまで最近おかしな事を言うようになってしまった。

 

あくまで普段のは比喩というか主観というか感覚の話なのであって、私だって一応は(社会的にはバクテリア並の存在とはいえ)人間なんだから本当に人体が突然メンダコとかツチノコになったり爆散したりするわけがないのに……

 

 

ま、まぁそれでも? そんな面白おかしいやり取りも、と、と、とも、友達同士って感じで、ぇへへ、バンドを始める前に比べたら楽しくて幸せな日々なわけで……もしや私すでに陽キャでは!? 武道館ライブも怖くない!?……そんなわけないか……アハハ……

 

……まぁ、うん、少しずつ頑張ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《16時53分 秀華高校、文芸部室》

 

 

 

 

 

 

「…………………………送信、完了」

 

 





副題『宇宙人も未来人も超能力者も現実改変能力もジョン・スミスも友達もない爆発寸前な涼宮ハルヒに執着される後藤ひとりの憂鬱』

百合タグは念のため。

副題で察して「ヒェッ」ってなってほしい←

コレ、ぼっちちゃん視点だから青春ラブコメが成立するのであってハルヒ視点なんて入れたら絶対「一つでも選択肢を間違ったら即アウト、トゥルーエンド以外は全て悲惨なバッドエンドの『ひぐらし』系スリラー」になるから()

神的存在にならない世界線のハルヒなんて歩く精密センサー付き時限爆弾だよきっと……

え? 『けいおん!』の二人?
カメオ出演なので気にしないで下さい。

ハーメルンとのマルチ投稿です。

……宇宙人いたって?
さぁ、どうでしょう。
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