バカと俺達の召喚獣   作:ターダン8

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明久の姉

玲「あら……?買い物に行っている間に帰って来ていたのですね、アキくん」

 

玄関の方からは玲さん声が聞こえる。

 

明久「うわわわわっ! か、帰ってきた! 皆、早く避難を……」

 

貴浩「これじゃあもう逃げられないな。覚悟を決めるか……」

 

命「明久君のお姉さんですか……? どんな方でしょうか?」

 

島田「う、ウチ、きちんと挨拶できるかな……?」

 

明久「ダメだ! 会う気満々だ!」

 

皆がリビングの扉を見つめて明久の姉が姿を現すのを待っている中、

明久と貴浩はひたすら祈り事をしていた。

 

玲「あら。お客さんですか。ようこそいらっしゃいました。

  狭いですが、ゆっくりとしていった下さいね」

 

そう挨拶をしてきたのは玲さんだった。

 

「「「「お、お邪魔してます……」」」」

 

玲「失礼しました。自己紹介がまだでしたね。私は吉井玲といいます。

  皆さん、こんな出来の悪い弟と仲良くしてくれて、どうもありがとうございます」

 

深々とお辞儀をする玲さん。

 

雄二「ああ、どうも。俺は坂本雄二。明久のクラスメイトです」

 

我に返った雄二が慌てて頭を下げる。

どうでもいいが、雄二の敬語なんて清涼祭のとき以来だ。

 

康太「…………土屋康太です」

 

続いてムッツリーニ。

 

玲「はじめまして。雄二くんに康太くん」

 

笑顔で返す玲さん。そこに雄二が小声で明久に話しかけてきた。

あれ?あの人本当に俺が知ってる玲さんか?

 

雄二(おい明久。普通の姉貴じゃないか。これでおかしいと言うなんて、

   お前はどれだけ贅沢者なんだ。俺なんか、俺なんか……っ!)

貴浩(落ち着けよ雄二)

明久(あはは……。ふ、普通でしょ?

   だから、もう気が済んだら帰ったほうがいいと思うよ?)

 

俺と雄二と明久の会話をよそに、挨拶は続く。次は秀吉のようだ。

 

秀吉「ワシは木下秀吉じゃ。よしなに。初対面の者にはよく間違われるのじゃが、

   ワシは女ではなく……」

 

玲「ええ。男の子ですよね? 秀吉君、ようこそいらっしゃいました」

 

秀吉「…………っっ!!」

 

その言葉を聞いて、秀吉が驚いたように玲さんの顔を見上げた。

 

秀吉「わ、ワシを一目で男だとわかってくれたのは、

   貴浩や楓、家族を除けば主様だけじゃ……!」

 

相当嬉しいのか秀吉が感動していた。

 

玲「勿論わかりますよ。だって」

 

微笑を浮かべて答える。

 

玲「だって、うちのバカでブサイクで甲斐性なしの弟に、

  女の子の友達なんてできるわけがありませんから」

 

やっぱり俺が知ってる玲さんだった。

 

玲「ですから、こちらの3人も男の子ですよね?」

 

あっさりと言ってのけた。

 

明久「ちょ、ちょっと姉さん!? 出会い頭になんて失礼なことを言うのさ!

   3人ともきちんと女の子だからね!?」

 

貴浩「そうですよ! 玲さんいきなり失礼でしょそれは!!」

 

玲「あら? タカくんに楓さんお久しぶりですね。お元気にされていましたか?」

 

楓「玲さんお久しぶりです。玲さんこそお元気にされていましたか?」

 

玲「えぇ、私は元気でしたよ。それと………女の子ですか……?まさかアキくんは、

  家に女の子を連れて来るようになっていたのですか……?」

 

明久「あ、あの、姉さん。これには深い深~い事情があって……」

 

貴浩「そうですよ玲さん。明久の言うとおりこれは深い事情があって……」

 

玲「……そうですか。女の子でしたか。変なことを言ってごめんなさい」

 

明久「実は……って。あれ?」

 

と思ったらあっさりと自分の間違いを認めて命と姫路と島田に謝っていた。

 

玲「どうかしましたか、アキくん? タカくん」

 

明久「あ、いや……。姉さん、怒っていないのかな~、って思って」

 

玲「? あなたは何を言っているのです? どうして姉さんが怒る必要があるんですか?」

 

貴浩「だよな~。さすがにもう明久は高校生だから……」

 

玲「ところでアキくんタカくん」

 

明久「ん? 何?」

 

玲「お客様も大勢いらっしゃるようですし、

  2人が楽しみにしていたお医者さんごっこは明日でもいいですよね?」

 

いきなり世迷言を言い出していた!

 

明久「ね、姉さん何言ってんの!?

   まるで僕が日常的に実の姉とお医者さんごっこを

   嗜んでいるかのような物言いはやめてよ!

   僕は姉さんとそんなことをする気はサラサラないからね!?」

 

貴浩「俺だって同じだ! ってか久しぶりにあったのにいきなりそれか!?」

 

姫路「あ、明久君……。お姉さんとお医者さんごっこって……」

 

島田「アキ……血の繋がった、実のお姉さんが相手って、法律違反なのよ……?」

 

明久「姉さん! お説教はあとでいくらでも受けるから、さっきの台詞を訂正してよ!」

 

貴浩「そうだ! すぐ訂正してくれ! このままじゃ変な誤解を生んでしまうだろ!」

 

玲「何を慌てているのですか2人共。

  それより、昨日アキくんに渡した姉さんナース服がどこあるか知りませんか?」

 

明久「このタイミングでそんなことを聞くなぁーっ!!」

 

貴浩「明久よく隠した! ナイス!!」

 

玲「それと、不純異性交遊の現行犯として減点を150ほど追加します」

 

明久「150!? 多すぎるよ! まだ何もしていないのに!」

 

玲「……『まだ』?……200に変更します」

 

明久「ふぎゃぁああっ! 姉さんのバカぁーっ!」

 

雄二「……すまん、明久。さっきの言葉は訂正させてもらう」

 

明久「うん……ありがとう雄二……僕、生まれて初めて雄二に癒された気がするよ……」

 

玲「ごめんなさい。話がそれてしまいましたね。

  貴女方3人の名前を伺っても宜しいでしょうか?」

 

姫路「あ、はい。申し遅れてすいません。私は姫路瑞希といいます。

   明久君のクラスメイトです」

 

島田「ウチは島田美波です。アキとは……友達です」

 

そう言ったが島田は友達ではなくガールフレンドだとでも言いたかったようだ。

もっとも明久はすでに彼女もちだがな。

 

命「初めまして木下命といいます。そこの秀吉の妹になります。

  そして明久君とは……」

 

一瞬命が言葉を区切って明久と俺を見た。

あ~ここで彼女だなんていえば凄い事になるな……絶対

 

命「明久君とは友達です。よろしくお願いします」

 

玲「………瑞希さんに美波さんに命さんですね。初めまして」

 

明久「ところで姉さんは何をしに出掛けていたの?」

 

玲「お夕食の買い物に行っていました」

 

手に提げていた袋を見てみると、中にはアサリやベーコンなどの食材が見えた。

それにしても2人分にしては明らかに分量が多すぎる気がするな。

 

明久「あれ? でも、随分と量が多いね」

 

明久もそれに気づいたようだ。

 

玲「いいえ。その量であっています」

 

明久の指摘に対して少し不機嫌そうに反論する玲さん。

 

玲「折角皆さんがいらっしゃったことですし、

  お夕食を一緒にいかがでしょうか?大したおもてなしはできませんが」

 

どうあっても分量の間違いを認める気はないようだ。

 

雄二「それじゃ、ありがたく好意に甘えさせてもらうとするかな」

 

康太「…………御馳走になる」

 

秀吉「迷惑でなければワシも是非相伴にさせて頂きたい」

 

島田「ウチも御馳走になろうかな」

 

姫路「じゃ、じゃあ、私も」

 

貴浩「じゃあ俺も」

 

楓「兄さんがいるなら私も」

 

全員が首を縦に振り、大人数での夕食が決定した。

 

玲「それはよかったです。ではアキくん、タカくんお願いしますね」

 

明久「うん。了解」

 

明久は姉の手から材料の入った袋を受け取る。

 

貴浩「……一応俺は客人だと思うんですが……仕方がないか玲さんだし……」

 

俺もしぶしぶながら明久を手伝う事に

 

島田「あれ? アキが作るの?」

 

明久「うん。そうだけど」

 

姫路「明久君って、お料理ができたんですか?」

 

どうやらまだ姫路と島田にとって明久は料理のできないイメージがあるらしいな。

 

明久「今日のお昼にも言ったじゃないか。あのお弁当は僕が作ったって」

 

島田「そ、そういえばそんなことも……」

 

姫路「確かに言ってはいましたけど……」

 

それでも2人は納得がいかないようだ。

 

雄二「そう不自然なことでもないだろう?俺だって料理くらい作るしな」

 

康太「…………紳士の嗜み」

 

貴浩「俺だって出来るしな。ってか俺以上に明久の料理は上手いと思うぞ」

 

明久「そ、そんなことないよ」

 

命「でも明久君の料理は美味しいですよ」

 

秀吉「わ、ワシは、その……あまり得意では……」

 

楓「ヒデ君は私が教えてあげますね」

 

秀吉「すまぬの楓」

 

明久「貴浩とムッツリーニはともかく、

   雄二はやっぱり家で夕飯作って覚えたタイプでしょ?」

 

雄二「おう。その通りだが……やっぱりってのはどうしてだ?」

 

明久「あはは。だって、雄二って家の中では一番地位が低そうだもん」

 

雄二「? お前は何を言っているんだ?」

 

貴浩「ああ、明久の家では飯って家の中で

   一番立場の弱い人が作るってことになっているからな」

 

「「「「……………」」」」

 

皆は明久を哀れむような目で見るしかなかった。

 

玲「母の方針で、我が家ではそういうことになっています」

 

まあ吉井家では母親が最大の権力者だからな。

 

命「そ、そうなんですか……」

 

島田「アキのお母さんって、なんだかパワフルな人っぽいわね……」

 

秀吉「普通は立場に関係なく、作れる人が作るもんなのじゃが……」

 

貴浩「この家は特殊なんだよ」

 

明久「え!? 普通の家では違うの!? おのれ母さん!

   よくも今までずっと僕を騙し続けてくれたな!?」

 

雄二「んじゃ、ちょっと早いが先に夕飯の支度から始めるか。明久、手伝うぞ」

 

康太「…………協力する」

 

貴浩「さっさと作ろうぜ」

 

明久「あ、うん。ありがと三人とも」

 

姫路「あのっ、それなら私もっ」

 

「「「「いや、女子は座ってていいから」」」」

 

姫路「は、はぁ……そうですか……」

 

姫路に料理をさせたら大惨事になってしまうからな

 


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