バカと俺達の召喚獣   作:ターダン8

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失念と恐怖と改装作業

~翌日~

 

学園長から召喚獣についての説明、そして1週間後に肝試しをすることが決定した。

そのため一時試験戦争は中止となった。

 

貴浩「でも胆試しか…俺が提案しておいてなんだが…」

 

秀吉「どうしたのじゃ貴浩よ?浮かない顔をしておるが?」

 

貴浩「ああ…1週間後肝試しすることになっただろ?」

 

秀吉「そうじゃな。それがどうしたのじゃ?」

 

貴浩「1つ問題があってな…楓ってお化けとか苦手なんだよ…」

 

秀吉「なんじゃと!?」

 

貴浩「・・・だからな」

 

自分で提案しておきながら自分で首をしめるって・・・最悪だな

 

秀吉「そうじゃったか…じゃが安心するといい。

   楓にはワシがついておる。楓が怖い思いをせぬようにしてみせるのじゃ」

 

貴浩「……そうだな。秀吉に任せるとするか。さて……」

 

『おーい! 誰かそこの釘をとってくれー!』

 

『暗幕足りないぞ! 誰か先生に言って借りて来い!』

 

『ねぇ、ここの装飾って涸れ井戸だけでいいのー?』

 

現在、文月学園の新校舎・旧校舎の3階は肝試しのための改装作業で大いに賑わっている。

 

秀吉「それにしてもこれはまた、凄い騒ぎじゃな」

 

砂原「そうだねん♪ 織村君のおかげだねん♪」

 

貴浩「なんでそれを知ってるんだ?」

 

砂原「私の情報網をなめちゃいかんぜよ♪」

 

明久「それにしても、まさかAクラスまで協力してくれるとは思わなかったよ」

 

優子「Aクラスといっても私たちもあなた達と同じ高校生よ。

   勉強ばっかりでは息がつまるもの。

   それに期末試験も終わったばかりだし、渡りに船と言ったところよ」

 

そこへ明久の隣に来ていた優子が明久の問いに答える。

 

明久「そりゃそっか。遊びより勉強が好きな高校生なんてそうそういないよね」

 

秀吉「そうじゃな」

 

姫路「わ、私はできれば、肝試しよりはお勉強の方が……」

 

楓「私もそこまでは言いませんけど…」

 

島田「だ、大丈夫よ瑞希。どうせ周りは全部作り物なんだし、

   お化けはウチらの召喚獣なんだから、怖いことなんて一つもないわ」

 

姫路「それはそうですけど、それでもやっぱり苦手です・・・・・・」

 

楓「私も苦手です」

 

砂原「私も苦手だよん♪」

 

貴浩「嘘だっ!!」

 

砂原の発言につい大声で否定してしまう。

 

砂原「あれ? すぐにばれちゃった?」

 

貴浩「当たり前だ。すぐに気づくわ!」

 

砂原「まぁまいいけどねん。で、ミナミナはどうなの?」

 

島田「ウチ!? う、ウチはこんなもの、

   怖くも何ともないから目を瞑っていても平気なんだから!」

 

命「あの、島田さん……? 目を瞑るのは怖がっている証拠ですよ……」

 

島田「な、何よアキ、織村その目は!

   ウチの言ってることが信用できないって言うの!?」

 

明久「う~ん……だって、さっきから美波は怖がっているようにしか見えないからさ」

 

島田「じょ、冗談じゃないわ! 怖いわけないじゃない!」

 

これ以上ないってくらい動揺しているが?

 

砂原「そう言えば、噂で聞いたんだけどねん♪」

 

楓「……」

 

姫路「?」

 

島田「な、何よ」

 

砂原「この学校の建っている場所って……実はワケありらしいよ」

 

姫路「わ、ワケありって何ですか・・・・・・?」

 

楓とその隣にいる島田と姫路が砂原の発言に不安げにしている。

 

砂原「あははっ。それはね――本当にお化けが出るんだってさぁああああっ!」

 

姫路「きゃぁあああっ」

 

と、これは砂原の声に驚いた姫路の悲鳴

 

楓・島田「「いやぁあああっ!」」

 

そしてこれは、同じく驚いている楓と島田の悲鳴

 

明久「みぎゃぁああっ!」

 

ちなみにこれは、驚いた姫路と島田が勢いよく飛びついてきたおかげで

頸椎と背骨に深刻なダメージを受けた明久の悲鳴。

 

明久「美波、姫路さん……砂原さんの冗談だから、離して……くれないかな……?」

 

解放してもらえないと明久の命に関わるぞ。

 

島田「う、うそ……っ!だって、ウチには聞こえてくるもの……!」

 

姫路「そ、そうです。『呪います、殺します』って……!」

 

そんな台詞、どこからも聞こえてなんて――

 

清水「吉井明久……!お姉さまと抱き合うなんて、どこまでも憎たらしい男です……!

   呪います……!殺します……!」

 

視界の隅に縦ロールの髪型をした小柄な女の子が映った。

彼女はDクラス所属の清水美春。

女の子なのに同性の島田に恋心を抱いてしまっている困った人間だ。

……どうやら明久を呪い殺したいほど妬ましいようだ

 

楓「ひ、ヒデ君……っ!私にも聞こえるんですが……っ!」

 

清水の声が聞こえたのか、楓も怯えた様子で秀吉を見ている。

周りは肝試しのために薄暗い状態だし、これは怖いかもしれないな。

 

康太「・・・・・・・・・・・・明久、貴浩」

 

「「「きゃぁあああーっ!」」」

 

3人の悲鳴と同時にコキュッと小気味良い音が明久の腰部から聞こえてきた。

恐らくこの音は腰骨から聞こえてはいけない音だろうな。

 

楓「だ、誰かと思ったら土屋君ですか……驚かさないでください……」

 

姫路「まったくです……驚きましたよ……」

 

島田「ま、まったくよ……おかげでアキの腰がおかしな方を向いちゃったじゃない」

 

康太「・・・・・・・・・・・・ごめん」

 

申し訳なさそうに謝るムッツリーニ。

 

貴浩「おい明久。大丈夫か!? 今治すからな(ゴキッ)」

 

愛子「ははは(苦笑)大丈夫だった、吉井君?」

 

明久「うん、大丈夫だよ工藤さん。貴浩もありがとうね。で、ムッツリーニ。僕に何か用?」

 

明久は苦笑しながらも心配してくれる工藤さんに返事しながらムッツリーニに尋ねる。

 

貴浩「で、俺と明久に何のようだ?」

 

康太「…………向こうのロッカーを動かして欲しい」

 

ムッツリーニがAクラスの教室の隅に置いてある大きなロッカーを指差した。 

流石はAクラス。収納スペースといい俺達の物とは比べようがないほど立派なロッカーだ。

確かにあれを人の力で動かすのは難しいだろう。アレを動かすとなると召喚獣の力が必要だろう。

しかも動かすのは教師か観察処分者の明久か特別処遇者の俺しかいないだろう。

 

明久「分かったよ。それじゃ、召喚許可を」

 

康太「・・・・・・・・・・・・もう頼んである」

 

ムッツリーニの後ろの方にスタン先生の姿が見えた。

こういう雑用の時だと先生の許可もスムーズで助かる

 

スタン「2人ともいつでもいいぞ」

 

明久「OK!んじゃ、試獣召喚っ(サモン)」

 

貴浩「じゃあ俺も試獣召喚っ(サモン)」

 

今までの召喚獣と違って手足が長いから、こういった作業の時は便利かもしれないな。

召喚獣を動かして目的のロッカーの前に立たせる

 

愛子「貴浩君の召喚獣って天使なんだ」

 

優子「そうみたいね。似合ってるわね」

 

貴浩「どもども」

 

俺はそういうとロッカーの前に向かう

 

貴浩「このロッカーをどけたらいいんだな?」

 

康太「・・・・・・・・・・・・(コクリ)」

 

明久「じゃあ貴浩。一緒にいくよ」

 

ロッカーのサイズが思ったより大きかったので2人がかりで持ち上げる事にした。

指示を受けた召喚獣がロッカーに手をかけた時、

明久の召喚獣の頭がコロリと外れてしまった。

 

「「「・・・・・・・・・・・・っ!?」」」

 

楓と姫路と島田が息をのむ様子が見て取れた。

確かに今の薄暗い教室の中でこの光景はちょっと怖いな。

 

明久「頭が外れちゃうと不便だなぁ・・・・・・」

 

康太「・・・・・・・・・・・・ガムテープで固定するとか?」

 

明久「う~ん……一旦消すとまたテープを貼らなきゃいけないなんて面倒だし、

   折角の肝試しなんだから首が外れないと意味がないし……このままでいいや」

 

それに夏休みの企画が終わったら召喚獣は元に戻されるだろうから、

今しか味わえないこの感覚を楽しむ事にしよう

 

明久「じゃあ動かすよ――よいしょっと」

 

貴浩「了解」

 

頭を床に転がしておいて両手でがっしりとロッカーを掴ませる。

人の何倍もの力を持つ召喚獣はその重たげなロッカーを抱えあげた。

 

明久「あとはこのロッカーを向こうに持って行って――痛ぁっ!

   何!? 突然頭に激痛が!?」

 

貴浩「どうした明久?」

 

いきなり明久が手で頭を押さえ始めたので明久の召喚獣の頭を見てみると

 

清水「ブタ野郎のクセにお姉さま方の抱擁を受けた罪……死しt――(シュッ)」

 

見てみると、明久の召喚獣の頭を清水さんが思いっきり踏みつけていた。

俺はそれを見てすぐさま明久の召喚獣の頭を取り戻す。

 

貴浩「……何をしているんだ清水……」

 

清水「ぶ、豚野郎!それを私に返しなさい!」

 

貴浩「……誰がお前に渡すか。お前にはお仕置きが必要だな。命……明久の顔を頼む」

 

命「あ、うん・・・・・・分かったよ」

 

貴浩「では、行くぞ(シュッ)」

 

命にアキヒサの召喚獣の頭をあずけた俺は清水を連れてOHANASIしに行った。


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