バカと俺達の召喚獣   作:ターダン8

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妖怪と開始とFクラスクオリティ

現在は待機場所である体育館に2年皆が集まって大型のモニタで観戦していた。

さすがに一学年が集まるので教室では狭いので待機場所は体育館になったのだ。

 

明久「本当にお金掛けてるね」

 

貴浩「召喚獣を用いた肝試しだからな。そこらのお化け屋敷じゃ比較にならんだろ」

 

雄二「システムの宣伝にもなるし、

   あのババァ長にしてみれば調整失敗さまさまって所……」

 

学園長「聞き捨てならないセリフだねえ」

 

そこへ割り込んできた声。ふと、3人が振り向くと……

 

貴浩「なんだ? 誰の召喚獣だコレは?」

 

雄二「見間違えるのも無理もないがこれはババァだ。失礼だろ」

 

明久「雄二も失礼だよ。学園長だって好きで妖怪みたいな姿をしてる訳じゃないんだから」

 

学園長「3人とも失礼だよクソジャリ共!!」

 

「「「「「……すみません、学園長」」」」」

 

3人の漫才に怒る学園長に、楓と命、優子と愛子、翔子が揃って謝った。

他の生徒は苦笑いしながら俺達を見ていた。

 

貴浩「で、どうしたんです?」

 

学園長「様子を見に来たのさ。2年3年とも血の気が多いみたいだからね」

 

貴浩「……否定はできないな。まあ自分の案だから上手くいけば良いですけどね」

 

雄二「さて、そろそろ始めるか」

 

肝試しの様子は、プラズマディスプレイにて表示される事になっている。

 

学園長「肝試しなんて久しぶりだねえ。

    アタシの若い頃なんか、墓場を通ってのチェックポイントに……」

 

明久「ババァ長、人類の歴史を語ってないでこっち来てください」

 

貴浩「違うぞ明久。それは実話だぞ。だって妖怪なんだから」

 

明久「あ。そっか。ババアは脅かす側だもんね」

 

学園長「アンタらは……」

 

いざ、肝試し開始

 

『ね、ねぇ……あの角、怪しくない……?』

 

『そ、そうだな……何かでてきそうだよな……』

 

設置したモニターから、

先兵として出撃したDクラス男女ペアの送ってくる映像と音声が流れてくる。

演出の為に光量が絞られていて、ボヤけた感じのその画は、

体育館で見ていても結構なスリルがあった。

 

『そ、それじゃ、俺が先に行くから』

 

『うん……』

 

カメラが見るからに怪しい曲がり角を中心に、周囲を映していく。

カメラを構えた2人は、入念な警戒態勢を取りながらそちらへと歩を進めていった。

 

姫路「み、美波ちゃん……あの影、何かいる様に見えませんか?」

 

島田「きき気の所為よ瑞希。何も映ってないわ」

 

島田と姫路が、手を取り合ってモニターを遠目から見ている。

そして、カメラが曲がり角の向こう側を映し出し、身構える面々。

しかしカメラには、その先に続くただの道を映し出しただけだった……が

 

『『ギャアアアアアアっ!!』』

 

「「きゃああああああっ!!」」

 

その次の瞬間、向こうから大きな悲鳴が響き島田と姫路が同時に悲鳴を上げる。

それに合わせて、各クラス面々の女子も悲鳴を上げた。

 

康太「…………失格」

 

ムッツリーニが用意してある機材を指差して呟く。

 

『ち、血まみれの生首が、壁から突然出てきやがった……』

 

『後ろにいきなり口裂け女が居るなんて……』

 

そんなつぶやきが聞こえてくる。

 

光一「……どうやら、向こうもカメラを通じてこちらの様子が見えてるらしい」

 

明久「え? そうなの?」

 

光一がそう呟くのに、明久が疑問を投げかける。

それに貴浩と雄二も参加しての談議が始まった。

 

貴浩「でないと、カメラの使用なんて俺達にとって有利だろ。

   少なくとも、何があるかが俺たち後発組に自然にわかる」

 

光一「貴浩殿の言う通りだ。向こうも見ていたとしたら、

   標的がどの位置でどの辺に注意を払ってるかが分かるからな」

 

雄二「それに向こう側としてもタイミングが取りやすい上に、

   視覚から襲いかかるのも簡単だ」

 

明久「あっ、そっか。おまけに僕と貴浩以外の召喚獣は物に触れないから、

   障害物を通り抜けて急襲掛けられるね」

 

刀麻「成程な。何台も固定カメラを設置しなくとも、

   俺達自身が情報を与えているのか。

   それは向こうもさぞかしやりやすいだろうな」

 

モニターでは既に、2、3組目の悲鳴が上がり、失格となった。

最初からこれでは、勝負の先が思いやられる。

 

貴浩「だからと言って、失格になり過ぎると後々のチェックポイントが辛いな」

 

明久「確かにね。数が減ればそれだけ危険性は増すわけだし」

 

雄二「だったらコッチも手を打つか。須川&福村ペア、朝倉&有働ペア出番だ!」

 

雄二がその場に座ったまま声をあげると、

 

『行ってくるぜ!』

 

『カメラは俺が持つぞ!』

 

時間をずらして突入する為、朝倉&有働ペアは待機。

須川&福村ペアがカメラを構え、2人は何の躊躇もなくスタスタと歩を進めていく

 

楓「あ、こうやって何でもないかのように映して貰うと先ほどよりも怖くなくて助かりますね」

 

命「そうですね。これならまだいいですね」

 

普通に警戒してる人のカメラワークより、

こうやって無警戒でどんどん進んでいく方が怖くない。

それにこうやってずんずん進まれると、脅かす側もタイミングが取りづらい。

 

『おっ、あそこだったか? 何かでるって場所』

 

『だな』

 

立て続けに3ペアがやられた曲がり角を映し出す。

2人がカメラを構えたまま曲がり角を曲がり、何気なく横を移すと……

 

「「きゃああああーっ!」」

 

そこには、血みどろの生首が浮いていた。

そしてそのままカメラはさらに動き、背後を映し出す。

そこに居たのは、耳まで口が裂けているキミが悪い女のひと。

 

「「「「きゃあああああっ! きゃああああああっ!!」」」」

 

もう各クラスのほぼ全員が悲鳴をあげていた。

けれど……。

 

『おっ、この人少し口は大きいけど美人じゃないか?』

 

『いやいや、こっちの方が美人だろ。

 首から下がないからスタイルはわからないけど、血を洗い流したらきれいな筈だ』

 

さすがFクラスというべきか冷静に相手を見定めていた。

 

明久「やっぱりね」

 

貴浩「さすがFクラスだな」

 

刀麻「こういう時は頼もしいな」

 

島田「な、なんでアイツらあんなに平気そうなのよ!?

   アキ達も! 怖くないの!?」

 

明久「いや、だって……」

 

明久は俺と雄二とムッツリーニに目配せをして頷く。それに答える様に、3人は頷いた。

 

明久「別に命の危険がある訳じゃないからね」

 

貴浩「姫路と島田が明久にしてる拷問とか、

   FFF団の行動からすればまだ可愛いもんだろ」

 

雄二「グロい物はFクラスで散々見慣れてるしな」

 

康太「…………あの程度、殺されかけている明久に比べれば大したことはない」

 

今更流血程度で驚くような繊細な神経の持ち主などFクラス男子には存在しないからである。

 

『それにしても暗いな・・・何かに躓いて転びそうだ。』

 

『それなら丁度良い物あるわ。あそこにある明かりを借りて行きましょう。』

 

装飾品として飾られている提灯が映し出される。 

二人が拝借しようと近づいて行った。

 

【――ボンッ】

 

「「「きゃぁあああーっ!!」」」

 

突如、提灯に鬼のような顔が現れて、寸法のおかしな手足が生える。 

あれは提灯お化けだろうな。なるほど。セットの中に召喚獣を紛れ込ませていたのか。 

上手い演出だなぁ。

 

『ん?これ掴めないぞ?』

 

『召喚獣なら掴めるでだろ。サモン。』

 

そんな向こうの粋な演出も意に介さず、

一人の喚びだした召喚獣に提灯お化けを持たせて先に進み始めた・・・

手足をバタバタと動かしている提灯お化けがちょっとだけ可哀想な気がする・・・

 

優子「な、なんか…かなりシュールな光景ね…」

 

愛子「そ、そうだね…」

 

砂原「さすがFクラスだね。話題性に事欠かないよ」

 

椎名「それお褒めてないよ」

 

貴浩「まあそれがFクラスクオリティだからな」

 

なのは「それっていいのかな?」

 

翔子「……雄二。怖いから手をつないで欲しい」

 

雄二「黙れ、翔子。お前は全然怖がってなかっただろ」

 

翔子「……怖くて声が出なかった。」

 

雄二「嘘はいけないな、悲鳴を上げるタイミングを計り損ねただけだろ」

 

明久「雄二、2人のおかげで相手の仕掛けが分かったね。」

 

雄二「そうだな。あいつ等がチェックポイントまで行くのも時間の問題だろうぜ。」

 

ほかの人達のカメラも大分先へと進んでいた。 

後発の何組かは来るものが分かっていても驚いて失格になったりもしていたけど、

概ね順調に2年生の侵攻は進んでいく。 

しかしそれはあらぬ形で崩れた。

 

『あー、畜生。何でこの俺が須川なんかと……』

 

『お前がモテないから悪いんだろ』

 

モニターから、不快そうな会話が響いてくる。まあ普通は女子と楽しむべき肝試しが、

よりにも寄ってFクラス男子と組む羽目になったら不満だろう。

 

『なんだと須川……? お前だって声かけて全滅してただろうが』

 

『ち、違う! あれは別に断られた訳じゃない!

 向こうには向こうの事情があったんだ!俺がモテない訳じゃない!

 上手くいけば、織村の様に声を掛けられてる筈なんだ!』

 

『俺だってそうだ! 俺はモテない訳じゃない! タイミングが悪いだけなんだ!』

 

康太「……失格」

 

雄二「アイツらは何をやってるんだ……?」

 

貴浩「……感心しようとした俺がバカだった」

 

アトラクションに驚く事もなく進んでいた2人はあっさりと失格。

……それも、頭の悪い言いあいにより。

 

貴浩「けどまあ、朝倉と有働がまだいるんだし、

   チェックポイントまでの仕掛けはわかるだろ」

 

雄二「そうだな。それが終わったら、貴浩に行って貰う」

 

貴浩「ん? 俺が?」

 

愛子「……チャンスかも(ボソッ)」

 

優子「……チャンスね(ボソッ)」

 

ここで俺がか? まあ雄二だから何か考えがあるんだろうな

 

雄二「まあ妥当だろ。お前の新しい腕輪の力も見ておきたいしな。

   それにおそらくチェックポイントには……」

 

そして、ついに2人のカメラが開けた場所を映し出した。 

その場所の中心には2年生の2人と、現代国語の寺井先生が待ち構えていた。

 

『どうやら、チェックポイントみたいだな。』

 

『ま、順調だな』

 

『『『『サモン!!』』』』

 

俺達がモニター越しに見守る中、先生の許可の下でそれぞれの召喚獣が喚びだされ、

その点数が表示された。 まずは3年生側の点数が明らかになる。

 

 

【現代国語】

 

3ーA モブA    モブB

    232点 & 264点 

 

 

『『ちょっとまt──』』

 

光一「やはりAクラスの人が来たな」

 

『──おい、話が──』

 

雄二「3年は予備校に通っている人達も多いだろうから、

   きっちり成績優秀な人を用意してきたな」

 

『『・・・・・・orz』』

 

普段俺や霧島等の点数をよく見るせいで勘違いするが、

普通は200点を超えるだけでも胸を張れるくらい凄い成績だ。

つまり、画面に映っている先輩たちは成績の良い人達ってことだ。

そして、対するこちら、2年生側の成績は・・・

 

2-F 朝倉正弘  &  有働住吉

      44点 &    49点

 

やはりFクラスだけあって、一瞬でやられていた。

 

貴浩「そういうことか。なら俺が行くのが納得だ」

 

雄二「そういうことだ。お前の点数と操作技術なら勝てるだろ」

 

貴浩「まあ、頑張るとするぜ」


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