バカと俺達の召喚獣   作:ターダン8

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ババァとクソと提案

「「「ババァーーーーっっ!!!!」」」

 

学園長室の扉を開け放ち俺と明久、雄二は同時に叫び声を上げた。

 

学園長「なんだいクソジャリども。朝っぱらからうるさいねぇ」

 

耳を押さえて顔をしかめる妖怪ババア。

俺達は掴みかからんばかりの勢い詰め寄った。

折角昨日、聖典を没収された恨みを溜め込んで交流野球で一気に教師陣にぶつけようと

意気込んでいたと言うのに・・・今日朝、学校に来てみるといきなりこの通知だ。

俺達が怒鳴り込むのも仕方がないだろう。

 

明久「どうして今年から急に交流野球で召喚獣を使うなんて言い出すんですか!?

   これだと先生たちを痛みつけて復讐できないじゃないですか!」

 

学園長「・・・・・・アンタが今言った台詞が、そのまま召喚獣に変更した理由の

    説明になると思うんだけどねぇ・・・・・・」

 

明久「この野球大会の為に、僕らがどれだけ故意に見えないラフプレーの練習をしてきたのか、

   僕らがどれだけ努力を重ねてきたのか、学園長は何も知らないから・・・

   そんな冷たいことを言えるんですよ!」

 

学園長「その努力は別の方向に向けなクソガキ」

 

雄二「けっ。この変更、どうせまた例のごとく召喚獣システムのPRが目的だろうが・・・・・・・。

   肝心のシステムの制御はできるようになったのか?」

 

学園長「肝試しのときや夏休みはともかく、今は完全に制御してあるさね。

    そうでなければ召喚獣に野球をやらせるなんて不可能だろう?」

 

言われて瞬間考える。

そうは言っても、肝試しの時は狙ってやったんじゃなく

調整に失敗してああなったはずだ・・・。

もしかして今回も調整に失敗したんじゃないだろうか・・・・・・。

 

学園長「待ちなクソガキども。なんだいその顔は。

    まさか、アタシが調整に失敗して偶然野球仕様になって

    それを都合良く使ってるんじゃないかって、なんて思ってるんじゃないだろうね」

 

まさにその通りだ。

 

学園長「ふん。アンタらがどう思っているのか知らないないけど、

    野球用に組み替えるなんてのは並みの労力じゃないんだよ。

    フィールドの広さの拡張、バットやボールの設定に、

    ボールが仮想体の構築もしなきゃならない。

    それこそ、完全に制御できていなければ実行できない内容なのさ」

 

明久「つまり、上手く制御できるようになったから、

   皆に見せびらかしたかたってことかな」

 

学園長「・・・・・・・・・」

 

明久の発言で妖怪ババアの表情が固まった。

 

貴浩「明久。もうちょい気を使えよ。図星突かれてババアが凍りついただろうが」

 

学園長「ち、違うさねっ!これはあくまでも1つの教育機関の長として、

    生徒たちと教師の間に心温まる交流をだね」

 

貴浩「あー、そうですねー、流石ですよ」

 

雄二「あー、そうだなー、教師の鑑だな」

 

明久「凄いですねー、尊敬しちゃいますねー」

 

学園長「本当に腹立たしいガキどもさね!」

 

見え見えの嘘はお互い様だと思うがな

 

雄二「だが、そういうことなら野球のルール変更を白紙に戻すことも可能だよな。

   なんせ変更理由がババァの自慢ってだけなんだからな」

 

明久「そうだよね。野球のルールを戻してください」

 

学園長「却下だね」

 

「「「どうして!?」」」

 

学園長「そこまで人をバカにしておきながらどうして断られないと思えるんだい!?

    それに、暴言がなくても今さら変更は変更は無理だね。

    この通り、プログラムも既に発注しちまったからね」

 

明久「そんな・・・・・・僕らの同意もなしに、勝手に話をここまで進めるなんて・・・・・・」

 

学園長「バカ言うんじゃないよ。どうしてアンタらにご意見を伺う必要があるんだい?」

 

貴浩「確かに今からまた変更ってわけにはいかないだろうな・・・。

   だが、これはあまりに教師チームと生徒チームに差がないか?」

 

学園長「差っていうのは召喚獣の強さの違いかい?

    ハッ、何を言ってるんだか・・・それにアンタと吉井には殆ど差がないだろ。

    それに、いつもの戦闘じゃなくて、今回は野球じゃないか。

    力があるだけで勝てるっていうなら、

    今頃野球選手は全員ボディビルダーで埋まってるだろうに」

 

明久「でも・・・」

 

学園長「それに、この文月学園は試験的かつ実践的な新学校だよ!

    点数の差が力の差になって何が悪いさね」

 

明久「それでも、こんなに差があったら野球なんてやる気がなくなっちゃいます!

   やっぱりルールの変更を──」

 

雄二「あー、待て明久。それはできないってさっきも言っただろうが」

 

明久「でも雄二。これじゃあ」

 

雄二「まあ確かにこれじゃあやる気が出てこないのも事実だ。だからどうだろう学園長。

   俺達がやる気を出せるように、何か賞品を用意してもらえないだろうか?」

 

学園長「これはまた、随分とくだらない提案をしてきたもんだね。

    そんなもの、急に言われて準備できるわけないだろう?」

 

雄二「いや、用意する必要もないし、費用もかからない。

   俺達が教師チームに勝てたら、持ち物検査で没収された物を返してもらう。

   それが賞品ということでどうだ?」

 

学園長「・・・・・・なるほど、名より実を取ろうってわけかい」

 

雄二「復讐ができるのならそうしてもいいが、ルール変更が決定事項となったのなら、

   ゴネても仕方がないからな。それなら実益を得られる可能性に賭けた方がいい」

 

貴浩「妖怪ババアも流石にあの問答無用な持ち物検査については、

   生徒に限らず教師陣にも色々言われたんだろ?」

 

学園長「・・・・・・フン。没収されるのが嫌なら、不要品なんかもってくるんじゃないよ。

    学校をなんだと思っているんだい」

 

雄二「そんな批判が出ているからこその提案だ。

   これを呑んでくれたらルール変更の話に大人しく従うし、

   チャンスを与える事で没収に対する不満だって抑えられる。

   悪い話じゃないはずだが?」

 

学園長「進むべき方向がわからないから不満が爆発するってことかい。

    『没収品を取り戻せる機会がある』と提示してやることで、

    その後結果として取り戻せなくても、その怒りの矛先をアタシら

    “教師陣”から“試合に負けた自分たち”に向けさせようと」

 

雄二「ま、そういうことだ。何もせずに一方的に奪われるというのは、

   人間誰でも嫌なもんだからな。一度でもチャンスがあって、

   自分で行動した上での結果なら意外と受け入れられるもんだ」

 

貴浩「という雄二からの提案だが、どうだ妖怪ババァ?」

 

明久「お願いしますババァ」

 

学園長「そうさねぇ・・・・・・。コレに関しては、取引というよりアンタらのお願いだからね。

    そんな態度で頼まれても、快く首を縦には振れないさね」

 

思わず『妖怪クソババァ』などという所だったがここは我慢だ・・・

 

明久「と言うと、どういうことですか?」

 

学園長「目上の人間をババァ呼ばわりするようなガキどもの頼みは聞けないってことさ」

 

なるほどな。ババア呼ばわりされるのが気に入らなかったのか。

それなら言い直すとしよう。

 

明久「なるほどそれは失礼しましたクソ」

 

貴浩「確かに妖怪クソの言うとおりですね。以後気をつけます」

 

学園長「待ちなガキども。アタシはクソババァからババァの部分を

    外せって言ったんじゃないからね」

 

妖怪クソが顔を歪ませる。なんて注文が多いんだ。

 

貴浩「で、どうなんだ?」

 

学園長「・・・・・・・そうだね。何か問題を起こされるよりはマシだからね。

    仕方がないね。その提案、呑んでやろうじゃないか」

 

雄二「そうか。それは助かる」

 

その後は雄二と学園長の2人がお互いを罵倒しながら召喚野球大会のルールを書き出していった。

 

 


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