バカと俺達の召喚獣   作:ターダン8

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危険球と戦死とキメ顔

一塁に立っていたランナーのモヒカン先輩と、守備をしていた須川も、

2人とも仲良く上半身が消し飛んでいた。

 

 

『『ぎぃやぁああああーっっ!! 身体が! 身体が痛ぇえええっ!!』』

 

 

遅れて召喚者の二人が悲鳴を上げる。

どうやら召喚獣の設定変更はバッチリのようだ。

二人たち仲良くフィードバックによる痛みでのたうち回っていた。

 

楓「あ・・・! すみませんっ! どれくらいの力加減で投げていいのかわからなくて!」

 

楓が頭を下げて謝る。だが、当人達はそれどころじゃないみたいだが。

 

『負傷退場者の交代要員を出してください』

 

審判の先生がクールに交代を促した。

苦しむ二人をそれぞれ運び出し、向こうは男性の先輩を代走に出し、

こちらからは、須川の変わりに秀吉がファーストに入った。

 

楓「うぅ・・・失敗してしまいました。

  ・・・まさか、須川君まで巻き込んでしまうなんて・・・(ボソッ)」

 

一撃で二人を葬り去ったことに大使、楓が申し訳なさそうにしているように見える。

・・・・・・最後、何か呟いていたが、俺には何も聞こえない。

聞こえてないったら聞こえていない。

 

雄二「気にするな楓。ただ全力で投げればいいんだ」

 

楓「はい・・・」

 

雄二「大丈夫だ。キャッチャーはお前の兄だ。

   絶対にフォローしてくれるさ。貴浩の事、信じろよ」

 

楓「はいっ! そうですね・・・兄さんなら大丈夫ですよね」

 

雄二「ああ、お前の兄だからな」

 

雄二・・・お前、今のを見て俺にキャッチャーを続けされるのか!?

さっきのを見ていたが確かにボールは須川の構えるミットの収まっていた───

だが、収まったボールは勢いを止めずにミットを突き破り2人の上半身を消し飛ばしたんだぞ。

 

楓「では、いきますよ兄さん」

 

ダメだ、楓!

 

楓「え、えい─っ!」

 

夏川『ん? は───なんでっ!?』

 

楓の可愛い声と共に投げられたボールは、目にも止まらぬ速さで───

次打席の用意をしていたボウズ先輩の頭部を直撃した。

 

 

【現代国語】

 2-F       VS   3-A

 織村楓 497点       夏川俊平 DEAD

 

 

ボウズ先輩はそのまま帰らぬ人へとなった。これで犠牲者は3人目だ。

 

島村「し、審判っ! あれは危険球じゃないのか!? 退場モンだろ!」

 

雄二「おいおい、酷いこと言うなよ先輩。

   楓のあの姿を見たら、わざとじゃないってわかるだろ?」

 

楓「ほ、本当にごめんなさいっ!

  私ピッチャーなんて初めてで、緊張してしまいまして・・・!」

 

楓が3年のベンチに駆け寄り頭を必死に下げて謝っている姿が見える。

あの姿を見たらわざとだと思う人はいないだろう。

ただ・・・まぁ・・・おそらくわざとなんだろうけど・・・

 

島村「ふ、ふざけんな坂本ぉっ!

   故意じゃないにしても許されないっもんがあるだろうがっ!」

 

明久「黙ってくださいクソ先輩。先生、よく考えてくださいよ。

   苦手でも努力してクラス行事に一生懸命に参加する楓と、

   神聖なスポーツに悪意を持ち込む卑怯で愚劣で不細工な先輩。

   先生はどちらを信用して応援してくれますか?」

 

『プレイッ!』

 

島村「審ぱぁん!?」

 

「おい島村! なんてこと言いやがる! この子を見たらわざとじゃないってわかるだろうが!」

 

「ここまで謝ってくれてるんだ許してやれよ」

 

「ってか、そもそもお前らが揉めなければこんな事にはならなかったんだよ!」

 

「お前らのせいで俺達にも被害がでるじゃねぇか!」

 

「そうだ! そうだ! 逆にお前らが後輩に謝れよ!」

 

無常に告げられた審判役の教師の声の後に続き、

チームメイトである先輩達からも罵声の声が聞こえる!

 

島村「おい織村! あの女、お前の妹なんだろ? どうにかしろ!

   このままじゃお前まで死ぬぞ!」

 

貴浩「・・・先輩、教えておきますね」

 

島村「な、なんだよ・・・?」

 

貴浩「ああなった楓はいくら俺でも止められません。だから、一緒に死にましょう先輩」

 

島村「なに清ました顔で言ってやがる!? もうちょっと抗えよお前!」

 

貴浩「先輩、諦めが肝心な時もありますよ。そして今回がその時でもあります!(キリッ)」

 

島村「なに今度はキメ顔で言ってんだっ!?」

 

貴浩「だって仕方がないじゃないですか!

   ああなった楓を止められる事なんて出来ないんだからさ!」

 

楓「うぅ・・・操作が難しいですね。もっと力を込めたら良いんでしょうか?」

 

マウンドに戻った楓が溢した台詞に、思わず冷や汗が流れる。

なんだと・・・さっきのでまだ本気の投球じゃないのか・・・?

 

 


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