バカと俺達の召喚獣   作:ターダン8

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事故とザクロと怒り

 

久保「うん? 吉井君に織村君じゃないか」

 

愛子「あっ、貴浩君に吉井君だ」

 

優子「あら? 本当ね」

 

明久「あ。優子さんに工藤さんに久保君」

 

貴浩「どうしたんだ3人とも? 珍しい組み合わせだな」

 

3人がいたのは自販機の前だ。

 

優子「今から貴方たちのところに向かうつもりだったところよ」

 

久保「じゃんけんで負けちゃってね。今から飲み物を買って合流しようとしたところだよ」

 

貴浩「奇遇だな。俺達も飲み物を買いに来たところだ。ついでだから、一緒に行くか」

 

愛子「そうだね。どうせ向かう先は一緒だしね」

 

俺達は適当に人数分の飲み物を買い、皆のところに戻っていく。

 

久保「そういえば、Fクラスは3-Aに野球大会で勝ったそうだね」

 

貴浩「勝った──って言っていいのかはわからないが、一応決勝には進んだぞ」

 

久保「そうか。なんにせよ、たいしたもんだよ」

 

貴浩「そういえば久保たちは調子が悪かったのか?

   正直、お前らが勝ってくると思ってたんだぞ。

   それとも、正式競技のほうに皆出でてたのか?」

 

久保「いや、そうでもない。少なくとも代表や木下さんに工藤さんはやる気満々だったよ」

 

貴浩「へぇ~、優子と愛子もか? 意外だな。二人とも何か没収されたのか?」

 

愛子「うん、ちょっとね・・・」

 

優子「学業に関係ないものを持ってきた私達が悪いのは分ってるんだけど・・・」

 

貴浩「ふ~ん、結構大事な物なんだな」

 

明久「2人とも、まさかアレを没収されちゃったとか・・・なんて、ないよね?」

 

優子「・・・・・・そのまさかよ」

 

貴浩「ん? アレってなんだ?」

 

愛子「貴浩君は気にしなくていいんだよ」

 

明久「そ、それより、急がないとお昼が無くなっちゃうよ」

 

貴浩「それはマズいな。急がないとな」

 

そして、途中で霧島も一緒に皆のところに戻ると───

 

 

『犯人はにぎりめ─────』

 

 

地面にそんな言葉を残し、秀吉が倒れていた。

 

姫路「いっぱい食べてくださいね」

 

雄二「は、はは、は・・・・・・はははははは・・・・・・」

 

康太「・・・・・・・・・(ガタガタガタガタ)」

 

楓「ヒデ君! しっかりしてください!」

 

命「秀兄、起きて!」

 

笑顔の姫路の前に、雄二とムッツリーニが怯えている。

楓と命は必死に秀吉の蘇生を行っていた。

何が起きたか瞬時に理解した。

おそらく、おにぎりの中に姫路の特別製が紛れていたのだろう。

 

なら、姫路には悪いが───

 

貴浩「おーっと! 足がもつれてしまったぁ!!」

 

と、大げさに姫路の弁当に向かって転げ込み、弁当を巻き込んで倒れた。

 

貴浩「いててぇ・・・悪いな、姫路。足がもつれてしまって」

 

優子「何やってるのよアナタは」

 

姫路「気にしないでください織村君」

 

貴浩「本当に悪いな」

 

事情を知らない優子たちは俺の行動に呆れていたが

事情をしってるメンバーたちからじゃナイスと言わんばかりの表情をしていた。

 

 

その後は楓と命、島田が持ってきた弁当を食べていった。

 

皆で弁当を食べていると

 

姫路「そういえば、私ちょっと珍しい果物を頂いたので、持ってきちゃいました」

 

久保「珍しい果物? それは楽しみだ」

 

雄二「確かに、そう言われると期待しちまうな」

 

康太「・・・・・・なんだろう」

 

愛子「楽しみだね」

 

姫路「はい。えっと───」

 

姫路が弁当箱の蓋に手をかけ、中身を披露してくれる。

 

姫路「───ザクロを持ってきましたっ」

 

優子「へぇ~ザクロって食べた事ないのよね。どんな味なのかしら?」

 

なのは「私もだよ。楽しみだね」

 

「「「「・・・・・・・・・」」」」

 

ザクロは、まるで島村先輩が使っていた召喚獣の成れの果てによく似ていた。

 

 

 

 

 

 

 

翔子「・・・・・・・・・」

 

貴浩「ん? どうした霧島?」

 

そういえば静かだと思っていたが、霧島と雄二の絡みがなかったからか。

それになんだか、霧島は随分と元気が無い様に見える。

 

雄二「おい翔子、どうかしたのか?」

 

翔子「・・・・・・雄二・・・」

 

雄二が話しかけても力の無い返事をするだけ。

 

翔子「・・・・・・野球、負けちゃった・・・」

 

雄二「ああ、そうらしいな」

 

雄二「まぁ、代わりに俺らが勝ったから安心しろ。仇は討った」

 

偉そうにいう雄二。仇討ちなんて微塵もなかっただろうに

 

翔子「・・・・・・でも、私の没収品、返してもらえない」

 

優子「・・・それは私もね・・・」

 

愛子「・・・僕もだよ・・・」

 

3人ともよほど大事な物を没収されたらしいな。

俺達はなんて不純な理由で野球をやっているんだろうな。

 

雄二「没収品って、お前な・・・」

 

呆れたように額を押さえる雄二。

 

翔子「・・・・・・結婚式まで大事に保管しておくつもりだったのに・・・」

 

霧島が沈んだ声で言うと。

 

雄二「バカ言うな。あんなもん、没収されなくても、見つけたら俺が捨ててやる」

 

雄二がいつもの調子でそう応える。

 

翔子「・・・・・・え・・・・・・?」

 

なぜか霧島が驚いたように顔を上げる。

けど雄二はそんな霧島の様子はあまり気にせず、更に言葉を続けた。

 

雄二「いや。『・・・・・・え・・・・・・?』じゃないだろ。

   あんな物を没収された程度でそこまでショックを受けるなよ」

 

雄二のその言葉に今度は優子や愛子、なのは、久保まで驚きの表情を浮かべる。

 

翔子「・・・・・・あんな物。って・・・・・・」

 

雄二「そうやってつまらない物の没収で凹むくらいなら、

   常夏島トリオ如きを相手に負けたことをだな───」

 

良い気になって霧島に説教を垂れようとする雄二。

 

そこに、

 

翔子「・・・・・・・・・・・・・・っ!!」

 

 

────パシンッ

 

 

乾いた平手の音が響き渡った。

 

翔子「・・・・・・つまらない物なんかじゃ、ない・・・っ!」

 

霧島が目に涙を溜めて、唇を噛んでいる。

 

・・・・・・これは一体どういうことだ・・・?

 

翔子「・・・・・・雄二にだけは、そんな事言って欲しくなかった!」

 

霧島はそういうとこちらに背を向け走り去ってしまった。

 

優子「代表!」

 

優子や愛子、なのは、久保も霧島の後を追いかけていく。

 

楓「えっ? 翔子ちゃん・・・?」

 

俺達は霧島の行動に驚き、動きが遅れていた。

 

貴浩「・・・と、とりあえず、楓と命も優子たちと一緒に霧島のほうを頼む」

 

楓「はい、わかりました」

 

楓が返事をすると命と一緒に霧島が走り去って行った方へ向かって行った。

 

光一「・・・・・・まさか、あの霧島があそこまで怒るなんてな」

 

雄二「・・・・・・翔子のヤツ・・・!なにが『つまらないものじゃない』だ!

   俺本人がまだ同意していない婚姻届なんか、

   つまらない物以外の何物でもないだろうがっ!」

 

雄二が怒りを顕に大きく叫ぶ。

 

雄二「俺にだけは言われたくないって、俺だから言うんじゃねぇか!

   こっちはまだ承知していないんだぞ!」

 

明久「う~ん・・・。まぁ確かに、霧島さんにとっては大事でも、

   まだ同意していない婚姻届けとかであんなに怒られてもね・・・」

 

う~ん・・・本当に婚姻届なのか?

それなら、なんで優子や愛子、なのは、それに久保まで驚きの表情を浮かべたのだろうか?

まさか俺達は、とんでもない勘違いをしているのか?

でも、雄二が婚姻届って言うんだから間違いはないと思うが・・・

 

その後もしばらく、雄二は野犬のように吠え続ける。

俺達はそれを宥めながら、召喚野球大会決勝の舞台であるグラウンドへ向かって行った。

 

 


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