バカと俺達の召喚獣   作:ターダン8

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勘違いとカツと意気込み

楓「すみません・・・」

 

楓がアウトをなり、これで3アウトとなり再び攻守が交代する。

3回が終わって、スコアは0対3。

スコア上では3点差だが、試合運びは最悪だ。

こちらは明久がデットボールで塁に出ただけで後は全て打ち取られている。

 

そろそろ逆転劇に仕掛けたいところだが、肝心の雄二がこの調子だからな

 

明久「雄二。気分は───」

 

雄二「あぁ?」

 

貴浩「まったく・・・雄二ももう少し大人になれよ。

   霧島だって人間だ。機嫌の悪い時もあるさ」

 

雄二「何が機嫌の悪い時があるだ!そんなもんで納得できるか!」

 

火に油を注いだがごとく、更に怒りを燃やす雄二。

 

雄二「だいたい、どうして俺が、本人の同意も無いまだない紙切れ1枚没収された程度で、

   あそこまで怒られなきゃならないんだ!」

 

と、何度目かの遠吠えを始める。

 

楓「えっ?紙切れ、ですか?」

 

そこで話が聞こえていたらしい楓と命が首を傾げていた。

 

雄二「なんだ楓、命。人の大事なものを紙切れ呼ばわりするな、とでも言いたいのか?」

 

命「いえ、そうじゃないけど・・・紙切れっていうのが聞いた話と違うなと思って・・・」

 

明久「命、楓。どういうこと?」

 

楓「はい。私たちは、翔子ちゃんが没収されたものは、

  如月グラウンドパークで坂本君からもらったヴェールだって聞きましたけど・・・」

 

命「はい、私も優姉たちからそう聞きましたよ」

 

「「「・・・・・・・・・は?」」」

 

2人の思いも寄らぬ台詞に、俺と明久まで一緒になって聞き返してしまった。

 

ヴェールっていうとアレか、

結婚式の時の花嫁衣装で、頭にかけるあの薄い布のことだよな。

確か如月グラウンドパークのウェディング体験の時もらったんだよな。

 

楓「前に翔子ちゃんが嬉しそうにお話ししてくれました。

  翔子ちゃんが大勢の前で夢を笑われた後で、坂本君が

  『俺はお前の夢を笑わない』っていいながらプレゼントしてくれた、

大切なヴェールだって」

 

命「私もお泊り会をしたときに幸せそうに言ってたのを覚えてます。

  凄く嬉しそうだったのが印象的だったので覚えてますよ。

  それだけ大事なものが没収されたんですよね・・・それはショックですよね・・・」

 

「「「・・・・・・・・・」」」

 

俺たち3人は2人が話した真実に言葉を失っていた。

 

明久「・・・・・・雄二・・・。なんてバカなことを・・・」

 

楓「雄二君・・・知らなかったんですか?」

 

雄二「・・・・・・知らなかった」

 

こうなると話は変わってくる。

勘違いだからどちらが悪いとかは言わないが、どちらに同情するかと言われたら、

間違いなく霧島に対してだろう。知らないとはいえそれだけのことを雄二はやってしまっている。

茫然自失の雄二に対して、俺は目を覚まさせるように声を掛ける。

 

貴浩「さて雄二。どうする?このままだと没収品は返ってこないぞ」

 

このまま試合に負けたら没収品は返ってこない。

それが自分の宝物でも、誰かの大切なものでも

 

雄二「どうするもこうするも・・・。きっちり守って、点数を取って勝つだけだ」

 

秀吉「そうは言うが雄二よ。次は5番の鈴村先生からじゃぞ?

   先ほどの貴浩の作戦は上手くいったが次も上手くいくとは限らぬ。

   さすがに無策で挑んで無事に済むとは思えぬ」

 

光一「それに点を取るといってもこちらのヒットは今だ0だぞ。

   こちらは3点負けている状態なんだ。そっちの策を練らんといけんだろ」

 

ここで秀吉と光一も会話に加わる。

2人の言うとうりここで0点に抑えられても点数を取れないんじゃ意味が無い。

 

横目で雄二を見るが、いまいち機能していないだろう頭で策を模索しているのがわかる。

 

すると、明久が雄二の横に立つ。

 

雄二「・・・なんだ明──」

 

バキッ

 

横に明久が来た事に遅れて気づいた雄二が振り向くと同時に明久が雄二の顔を殴る。

 

雄二「な、何をしやがるテメェっ!?」

 

明久「目さめた?」

 

雄二「あ?何を言ってる?」

 

明久「言葉の通りだよ。いつもより難しい顔してたからね。

   これで目がさめてくれると助かるよ。だって僕たちはバカだからね。

   今の状況だったら雄二の賢い頭が必要だからね。

   いつまでも気が抜けた状態でいてもらっても困るし。

   僕たちは勝つためにここまでやってきたんだ。

   雄二は僕達のリーダーでしょ、ならシャキとしないと。

   そして僕たちに命令してよ。僕たちは雄二の言うとおりに動くからさ」

 

雄二「・・・明久・・・お前・・・」

 

明久「もう、僕にこんな事させないでよね。ああ、恥ずかしい。

   じゃあ、雄二。僕たちに策を頂戴。

   僕たちはそれを実行して見せるから。今までもそうやってきたでしょ」

 

貴浩「確かに、明久の言うとおりだな。雄二、お前は俺たちの代表なんだ。

   癪だが俺たちはお前の手足、駒なんだ。さぁ指示をだせ」

 

楓「そうですね。指示をください雄二君」

 

命「うん、私たちにできることなら何でもするよ」

 

秀吉「そうじゃな。雄二、ワシらに命令を」

 

光一「目を覚ました代表の指示なら従ってやる」

 

雄二「・・・お前ら・・・・・・わかった。

   悪いが時間くれないか。策を練りたい」

 

貴浩「あいよ。時間はどれだけいる?」

 

雄二「せめて俺たちの攻撃まで時間をくれ」

 

明久「なら、この回の守備は僕達で受け持てば良いんだね」

 

雄二「すまない」

 

明久「わかったよ。それが指示なら僕たちは従う」

 

貴浩「さて、雄二をサードに置いたままとするならどうするかな。

   次は鈴村先生にスタン先生だ。生半可な策は通じないぞ?」

 

明久「簡単だよ、そんなこと」

 

秀吉「どうするつもりじゃ明久?」

 

明久「ピッチャーを貴浩に交代する」

 

秀吉「貴浩にじゃと?確かに貴浩の点数なら凡打にすることが可能かもしれぬが・・・・」

 

貴浩「誰が捕球するんだ?」

 

光一「さすがに俺の操作技術じゃ楓の球は取れても貴浩の球は厳しいものがあるぞ」

 

明久「僕がキャッチャーをする」

 

秀吉「明久が?」

 

貴浩「・・・・・・任せて良いのか?」

 

確かに4回は日本史だから明久の点数も高い事には高いが俺もその分点数が高い。

しかも、明久の場合フィードバックがあるから

捕り損ねた場合は悲惨な事に繋がる可能性がある。

 

明久「うん、任せて。僕の操作技術なら捕れる。いや、捕ってみせる」

 

貴浩「・・・・・・わかった。

   なら、皆何度もすまないが守備位置交代だ。

   ピッチャーが俺で、キャッチャーが明久、センターに光一、セカンドに楓だ。

   お前ら、この回をまず0点に抑えるぞ!!」

 

「「「おおぉぉおお!!」」」

 

4回表3点ビハインド。まだまだ勝負はこれからだ!!

 

 


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