命「それでは、お鍋の用意を始めますね」
命と明久が持ってきたカセットコンロとウチにあったコンロの2つをテーブルの中央に並べる。
前菜を片付けて、いよいよメインの闇鍋が始まろうとしていた。
ではここで、恒例のルール説明だ。
①素材は食べられるものであること
②一度箸をつけた料理は必ず食べきること。
③用いる食材は各自1種類のみ(ただし、最初の出汁取りの昆布は別)
④各グループずつで作られた鍋に最低一度は箸をつける。
本来なら事前に準備していた材料を入れるんだが今日はそんな時間も無いので、
現在、我が家にある食材のみを使用するというルール。
これなら死につながるような物が混入されることない。
つまり命にかかわる危険なことは───
姫路「そう言えば私、調味料と一緒に具材も持ってきたんですよ」
ピシッ───
姫路の発言に一部の人達に旋律が走る。
迂闊だった・・・そういえば何で鍋が壊れたのか考えれば
何か危険物を持ってきていることを忘れていた。
島田「食材は1人ずつ、他の人に見えないように持ってくるということで良いのよね?」
光一「ああ、見えたら面白くないからな」
優子「それで、貴浩の言ったグループに別れて別々の鍋で作るのよね」
貴浩「ああ、そのとおりだ」
愛子「えっと、それじゃあボクから持ってくるね~」
そう言って、一番手の愛子が台所に消えていった。
続いて、優子、島田、砂原、椎名、霧島、楓、命が続いていく。
秀吉「次はワシじゃな」
緊張した面持ちで秀吉が立ち上がり、しばらくしてから何かを携えて戻ってきた。
康太「・・・・・・・・・行ってくる」
更にムッツリーニ、雄二、刀麻、光一、明久も何か持ってきて、元の位置に戻る。
さて、最後は俺の番か。
翔子『・・・・・・どんな味になるんだろう』
優子『ちょっと怖いわね』
愛子『そう?ボクは楽しみだけど?』
命『私は違う意味であちらの鍋が怖いですね』
楓『そうですね。でもいつもより酷い事にはならないですよね』
何も知らない女性陣(楓、命除く)の後ろを通り、キッチンへ向かう。
貴浩「さてと、それじゃあ何を持っていくとするかな」
いくら皆が持っていったものがわからないと言ったとしても、
ここはウチのキッチンだ。
昨日の夕食は俺が作ったから中になんの食材や材料があったかは覚えている。
とりあえず、戸棚から見てみるとするか。
戸棚、流し台、調味料入れなどを確認する。
ふむふむ、なくなっているのは
①タバスコ(新品)
②タバスコ(使いかけ)
③タバスコ(ピザのおまけ)
④マヨネーズ
⑤一味唐辛子
⑥鷹のツメ
貴浩「なぜだぁぁぁぁぁぁ!!!!」
何故殆どのヤツが辛いもの系統を持っていくんだ。
どんだけ辛党なんだよ!ってか鍋にマヨネーズってどうなんだ!?
ってか何故調味料に片寄るんだ!?食材をいれようぜ、鍋なんだしさ!!
優子『どうしたの貴浩?』
俺の絶叫を聞いて優子が声をかけてくる。
いけない、いけない。こんな事で取り乱してはいけない。
「大丈夫」と一声かけ食材選びを始める。
今度は冷蔵庫を開け何が無くなったり減っているか確認してみるとみると───
長ネギ、人参、豆腐×2、コンニャク、白菜、椎茸、豚肉、チョコレート
・・・・・・・・・・・・ん?何だ、今確認した中に可笑しな物がなかったか?
もう一度確認しよう。
長ネギ、人参、豆腐×2、コンニャク、白菜、椎茸、大根、チョコレート・・・・・
・・・チョコレート!?何故そんなものをチョイスしたんだ!?
誰だ、これを選んだやつ!?
甘いものと辛いものが混ざる可能性がでやがった。
おそらく、これは砂原か椎名のどちらかなはず、
残りは料理にそんなものを入れるわけが無いだろう。
まあ、闇鍋としてはいい選択なんだろう。
で、明久達だが長ネギ、人参、豆腐、コンニャクだろう。
一見、食材としてはごくありきたりに思える選択だと普通は思うだろう。
だが、それは表向きの考えだ。
長ネギは・・・薬効成分が含まれている。
ということは、長ネギで防壁を作りながら、念のために自分の身を守ろうという作戦だな。
人参は、流し台を見てみると皮を切っているのがわかる。
そして人参の先端や破片を切り捨ててあるのも見えた。
ってことは人参をある程度を大きさで四角の形で切ったのだろう。
これも防壁代わりにするつもりだろう。
豆腐は・・・・・・まるまる2丁無くなっていたのでそれぞれ1丁ずつ使ったのだろう。
コンニャクも無くなってるのも見てわかったので、
おそらく豆腐とコンニャク、そして先ほどの人参の3つを合わせ、
バリケードを作り、強度を増してるのだろう。
なので裏では姫路の具材をそれで囲って周りに侵食するのを防ぐのが目的だろう。
なんて上手い作戦だ。そしてナイス協力プレイだ。
これならそちらの鍋に手をつけてもバリケードがあるから安心だ。
じゃあ、俺たちの鍋にアレを入れるとするか。
俺はある食材を手にとり少し加工して席に戻った。
さて、どんな鍋になるのか楽しみだ。