バカと俺達の召喚獣   作:ターダン8

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喧嘩と仲直りと友情

文月学園に入学して2週間が過ぎようとしていた。

 

俺と明久は同じクラスのDクラス、楓はAクラスになっていた。

最初は楓1人別クラスで心配したが早くも友人が出来たらしく兄としては一安心だ。

 

俺は部活に入らず今は校内を探索中・・・正直部活に入るか悩んでいたりする。

明久は部活に入っていない。

楓は入学してすぐに演劇部へ入部した。

楓の演劇にかける情熱は凄いからな

・・・・・・さて、今日は帰るとするか新作のゲームもまだ途中だし・・・

 

 

 

 

~1-Dの教室・放課後~

 

 

雄二「やれやれ……やってもいないことに文句ばかり抜かしやがって」

 

雄二は中学の頃は悪鬼羅刹と呼ばれていて少し性格が悪い。

 

俺は廊下を独りぐちる。そして1人で帰り支度をすませていると、

 

雄二「っと、と・・・・・・」

 

誰かの机にぶつかり中に入っていた教科書が落ちてしまった。

 

雄二「この時期からもうこのザマとは勉強熱心なヤツだな」

 

とりあえず落としてしまった教科書を拾おうと手を伸ばす。

そしてその惨状に気がついた。

 

雄二「・・・これは酷いものだな・・・・・・」

 

そこには表紙は破れ、ページはぐちゃぐちゃになっていた。

新品で受け取ったばかりなので普通に使用していればまずはこうならない。

 

その教科書を拾い裏表紙を見ると

そこには『島田美波』と名前が書かれているのがわかった。

彼女はドイツからの帰国子女でまだ日本語が上手く言えないみたいだった。

 

雄二「そういえばあいつ、初日にクラスの連中を『ブタ』呼ばわりしてたっけ」

 

おそろく本人は意味をよく理解せずに言ったのだろうが、

それに腹立てた連中がやったんだろうな・・・

 

雄二「・・・・・・まぁいいか。俺には関係のない事だ」

 

それをしばらく観察してから、机の中に戻そうとする。

 

その時だった

 

雄二「っ!?」

 

目の端に高速で動く何かが映った。

頭が判断する前に体が勝手に反応し、その場から大きく飛びのく。

間一髪で回避が間に合い、目の前の誰かの拳が通過する。

この時点でようやく、誰かが俺に殴りかかってきた、ということを理解した。

俺は体勢を立て直し、拳の主を見る。

 

そこには

 

明久「・・・・・・・・・・」

 

俺とは入学初日から因縁のある人物だった。

 

雄二「どういうつもりだ、テメェ」

 

静かに吉井に問いかける。

2人は互いを快く思っていなかった。

 

明久「………なに……やってんだよ……」

 

雄二「それを聞きたいのはこっちのほう──」

 

明久「オマエ、その子の席で何やってるんだって聞いてるんだよ!」

 

いつものマヌケな姿からは想像つかないような怒鳴り声をあげる吉井。

その視線は俺の右手へと向いていた。

・・・・・・正しくは俺の持ってるボロボロの教科書へと。

 

俺の脳内では今の状況を整理していた。

 

右手のボロボロの教科書・無人の教室

 

校内に流れる俺の風評・吉井の先ほどの台詞

 

それらから思い浮かぶ1つの結論。

 

雄二「・・・ま、まさか・・・・・・おい待て吉井。俺は」

 

明久「歯を食いしばりやがれこのクズ野郎っ!」

 

雄二「チッ、このバカ野郎が・・・・・・!落ち着け!これは俺がやったわけじゃねぇ!」

 

明久「ブチ殺す!」

 

雄二「人の話を聞きやがれ!」

 

吉井は完全に俺の話を聞いてない。

 

雄二「なら、ちょっくら相手してやらぁ!」

 

と、俺の言葉をかわきりに殴り合いが始まる。

 

明久「……絶対に……ぶっ飛ばす……!」

 

雄二「しつけぇな!まだやんのかよ!」

 

俺は吉井と殴りあいながら明久の事を考えていた。

 

なんでコイツは、諦めないんだ……?

俺とコイツじゃ、どっちが強いなんて一目瞭然だろ・・・

 

見ても解るが俺に比べ吉井のほうが傷が多かった。

 

雄二「いい加減にしろ、クソバカ野郎が!」

 

吉井と戦いながら小学校の頃の苦い思い出が蘇る。

 

明久「……可哀想……じゃんかよ……」

 

雄二「あァ!?」

 

俺は一瞬何を言ってるのかわからず聞き返す。

 

明久「可哀想だと思わないのかよ!あの子は日本に来て

   知り合いがいなくて、言葉がわからないのに、

   それでも1人で頑張っているんだぞ!

   どうしてそんな頑張っている子を虐めるんだよ!」

 

ボロボロのはずの吉井は、力の籠もった声でそう言った。

 

そんな吉井を見て前にも同じような状況を見ている気がした。

──いや、違うか。俺はコイツと違って逃げようと考えた。俺は我が身が大事だった。

 

だが、吉井は──

 

明久「オマエみたいなヤツ許せるもんか!」

 

ガツン!  と一際大きな音が響いた。

 

吉井は先ほどと比較にならないほどの勢いで吹き飛んだ。

 

そして俺も吉井の攻撃を食らい視界が揺らぐ

 

雄二「吉井! そんなに俺が気に入らないのならかかってきやがれ!

   2度と立てないくらい殴ってやらぁ!」

 

明久「言われるまでもない! オマエをぶっ飛ばして後悔させてやる!」

 

雄二「ごちゃごちゃうるせぇんだよ! この雑魚が!」

 

そしてお互いの拳が届く距離まで駆け寄ったところで

 

貴浩「そこまでだ!」 

 

康太「……そこまで」

 

明久・雄二「「っ!?」」

 

突如2人の前に人影が入ってきた。

 

 

 

            ☆

 

 

 

雄二の前に俺が出て拳を受け止め、ムッツリーニは明久の目の前にペン先を向けていた。

 

雄二「邪魔するな! テメェらには関係ないだろうが!」

 

康太「……それ以上暴れてもらっては困る」

 

貴浩「そうだ。土屋の言うとおりだ」

 

康太「………カメラが壊れる」

 

「「「……………はぁ?」」」

 

ムッツリーニの意味の分からない言葉に

雄二と明久だけではなくつい俺も一緒になって疑問符をあげた。

 

ムッツリーニはそういうと教室のスミに行きゴソゴソと何かを取り出した。

……あれはCCDカメラか? でもなんであんな所に?

 

貴浩「……おい、まさか盗撮か・・・?」

 

康太「・・・・・・・・・っ!(ブンブンブン)」

 

土屋はすごい勢いで否定している。

 

雄二「……けっ。なんだか気が削がれちまった。命拾いしたな吉井」

 

雄二はそう言うと鞄を肩に担ぎ明久に背を向ける。

 

明久「待てよこの野郎!」

 

雄二「ぐがっ!」

 

明久は帰ろうとする雄二の肩を掴んで殴りつける。

 

貴浩「おい! 明久落ち着けよ」

 

雄二「・・・・・・まだ続けたいようだな吉井」

 

再び一食触発の雰囲気にかわる。

 

貴浩「おい、お前らいい加減に──」

 

俺が2人をとめようとすると

 

???「キサマら、何をやっとるかっ!」

 

「「「っ!」」」

 

突如野太い声に阻まれた。

 

秀吉「どうじゃ? 頭は冷えたかの?」

 

そこには女顔で爺言葉を使う同級生、木下秀吉の姿があった。

 

貴浩「・・・・・・今の声もしかしてオマエか?」

 

秀吉「どうじゃ? 似ておったかの」

 

一時は秀吉に気をとられていると明久が雄二に殴りかかろうとしていた。

 

明久「離れて木下さんっ! くたばれ、この──」

 

雄二「けっ、ホントにしつこい野郎だ──」

 

貴浩「お互い良い加減にしとけよ」

 

ダン!!

 

俺は2人に前に出て2人の手を掴み床へと叩きつけた。

 

貴浩「さっきから言ってるよな。やめろって。ってかなんだこの状況は?

   荷物取りに戻ってきたら騒がしいんで覗いてみたら2人が殴り合ってるし」

 

明久「貴浩止めないで! 僕はこの外道をブチのめさないといけないから」

 

雄二「けっ、できるもんならやってみやがれ」

 

貴浩「なんだ2人とも、まだやる気なのか?

   それなら俺も本気でやらせてもらうが?」

 

これでも俺は中学の時、楓に言い寄ってくる男子連中を鎮めてきたんだ。

それなりの力は誇るぞ。

 

秀吉「まったく・・・・・・理由は知らんが、

   教室でコレ以上暴れられるのはワシもクラスメイトとして見逃せん。

   事情を聞かせて貰えんじゃろうか」

 

明久・雄二「「フンっ!」」

 

貴浩「すまないな……木下、土屋……こいつ等を止めるのを手伝ってくれてありがとう」

 

秀吉「よいのじゃ。ワシらはクラスメイトじゃろう」

 

康太「・・・・・・・・・自分のためだ」

 

貴浩「で、何が原因なんだ?」

 

だが、2人は何も喋ろうとしなかった。

 

秀吉「やれやれ参ったのう」

 

貴浩「これじゃあサッパリわからないぞ」

 

康太「・・・・・・(スッ)」

 

貴浩「ん? 何だこれは」

 

康太「・・・・・・・見るといい」

 

そんな中、土屋はカメラをいじり動画を見せてくれた。

 

秀吉「・・・・・・脚しか映っておらぬが?」

 

貴浩「・・・・・・土屋。やっぱり盗撮を・・・」

 

康太「・・・・・・・・・・・・(ブンブンブン)」

 

物凄い勢いで否定する土屋。

2人も不満気であるが動画を見ることにした。

 

その後動画を見ていくと放課後教室の掃除をしている時に

島田の教科書が落ちてしまい、掃除している人たちは

話に夢中で気づいていなく気づいた頃にはすでにボロボロの状況だった。

 

康太「・・・・・・・これが真相」

 

土屋が画面を操作して画面を消すと、

 

明久「ごごごごごごご、ごめんなさいっ!」

 

明久が突然、雄二に深々と頭を下げ謝りだした。

 

雄二「なんだ、いきなり」

 

明久「その、もう、なんてお詫びしていいか・・・・・・!

   とにかく坂本君気がすむまで僕を殴って」

 

雄二「いや。もうお前を殴る場所ねぇし」

 

明久「あ、そっか。えっと、それなら──」

 

貴浩「どうしたんだ明久。突然?」

 

明久「あ、うん。実は───」

 

つまり明久は雄二が島田の教科書をボロボロししたと勘違いしてこの惨状が出来上がったわけだ。

 

秀吉「しかし、坂本も坂本じゃな。きちんと説明したら良かったものを。

   あの様子じゃと説明しておらぬようじゃのう」

 

雄二「・・・・・・ふん!」

 

秀吉「何か事情があったのかのう?」

 

雄二「お前には言ってもわからねぇよ木下。んじゃ、用事が済んだから俺は帰るぞ」

 

明久「あ、うん。また明日、坂本君。それと、本当にゴメン」

 

雄二「けっ」

 

雄二は明久に背を向け再び鞄を肩に担ぐ。

 

明久「ねぇ貴浩、木下さん。新品の教科書ってどこに行けばもらえるか知ってる?」

 

貴浩「新品の教科書か・・・・・・」

 

正直、事情を話して教師に言えば大丈夫だろうが・・・黙ってるとしよう

 

秀吉「うん? いや、ワシは全然知らんが」

 

貴浩「明久。言っておくが木下は男だぞ」

 

明久「え?」

 

貴浩「いや、普通わかるだろ?」

 

秀吉「織村、お主はワシが男じゃとわかるのか?」

 

貴浩「はぁ? 当たり前だろ」

 

秀吉「よ、良かったのじゃ。皆、ワシのこと女子じゃと勘違いしておってのう」

 

貴浩「大変なんだな木下も。それより教科書だ。土屋はわかるか?」

 

康太「・・・・・・(フルフル)」

 

明久「そっか~。購買には売ってないかな?」

 

貴浩「購買には売ってないかもな。

   もしあったとしてもこの時間だともう閉まってるぞ」

 

明久「ならコピーして」

 

秀吉「何枚コピーするつもりじゃ・・・・・・」

 

康太「・・・・・そもそもきちんとした教科書にならない」

 

明久「じゃあ、アイロンをかけるとか」

 

貴浩「服じゃないんだから無理だろ」

 

明久「僕の教科書と入れ替えるとか」

 

秀吉「配布された日に全員名前を書いたじゃろうが。

   お主の名前が残っておっては入れ変えられんぞ」

 

康太「・・・・・・・根本的に解決していない」

 

明久「連帯責任で皆の教科書もボロボロにする」

 

秀吉「確かに島田の教科書は目立たなくなるかもしれんが・・・・・・」

 

貴浩「迷惑だろ」

 

明久「じゃあじゃあ」

 

雄二「あーもうっ! 頭悪いなテメェラは! んなもん教師に説明すればいいだろうが」

 

明久「あ、そっか。悪い事してるわけじゃないもんね」

 

秀吉「そういえばそうじゃな。坂本よ。よく教えてくれたのう」

 

康太「・・・・・・・・・盲点だった」

 

貴浩「さすが坂本。優しいな(ニヤニヤ)」

 

雄二(・・・コイツ最初から気づいてやがったな)

 

明久「あ、坂本君ありがとう。助かったよ」

 

雄二「・・・・・・」

 

坂本が教室から出ようと扉に手をかけると

 

西村「待て、坂本。ここで何をしている」

 

「「「「「っ!?」」」」

 

明久「筋肉教師・・・・・」

 

西村「西村先生と呼べ」

 

やばいな。今の状況は。

今の教室の状況に明久と雄二の傷跡がある。言い逃れはできない。

 

明久「先生すみませんっ」

 

西村「むぉっ!?」

 

そこで明久が上着を脱いで筋肉教師の顔にかぶせる

 

康太「・・・・・・失礼」

 

さらに康太がどこからか取り出したケーブルを上着の上から巻きつけ

簡単に取れないようにする。

 

秀吉「今のうちに。こっちからにげるのじゃ!」

 

木下が窓を開けそういうが、それは嘘だ。明久たちは扉から脱出し、身を隠す。

 

俺は囮役をかい、窓から地上に着地し逃走をはかる。

 

西村「待て、貴様ら! 逃がさんぞ」

 

筋肉教師はまんまと策にひっかかり俺を追いかける。

 

貴浩「うぉっ!? 外見に似あわず速ぇ!?」

 

あんなムキムキなのにあんなに速いんだ。

ゲームとかだとパワーキャラっていうのはスピードがないはずだろ!?

 

西村「待て織村兄っ! 詳しく事情を聞かせてもらうぞっ!」

 

いずれは捕まるだろうが今は捕まるわけにはいかない。

先ほど明久と雄二が自転車に乗って行くのが見えた。

理由はわからないが大事な事だろう。明久の顔をみてそれはすぐわかった。

なら俺の役目は時間を稼ぐ事だな。

 

楓「兄さん・・・?」

 

鉄人から逃げてる途中、楓の姿が目に入った。

隣には木下に良く似た女性と一緒にいたがアレは友達だろうか?

楓と話したいのは山々だが今は鉄人から逃げるのが優先だ。

 

俺はそのまま筋肉教師から逃げ続けたが1時間後につかまってしまった。

まあ時間は稼げただろう。

 

その後、結局明久たちも捕まったが教科書はなんとかなったみたいだ。

あの後教師が誤って新品の教科書を廃品回収にだしてしまったので、

それを明久と雄二が回収車を追いかけなんとか追いついて教科書を手に入れたみたいだ。

 

その件もあり明久と雄二は仲が良くなり、名前で呼び合うようになった。

もちろん、協力してくれた秀吉や康太。俺とも仲が良くなり名前で呼び合う仲になった。

 


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