昼のパンを賭けたバスケの試合は俺たちの勝利を幕を閉じた。
雄二は悪鬼羅刹と言われただけあり身体がぶつかってもびくともしないし、
明久もパンというカロリーのあるものが賞品となっているのでやけに凄い運動能力を見せ、
康太は持ち前の速さを活かし敵を翻弄し、
秀吉は・・・・・・まあ女子と見られたのか少し相手が躊躇っていたりしたのでパスを回してくれた。
俺も漫画のどこぞの影君みたくバスケットボールを殴ってパスしたり、
色黒ブルーみたいにトリッキーな格好でシュートを放ったりした。
まあシュートはまぐれで入ったぐらいだけど・・・・・・
あとボールを殴ってパスしたせいで手が痛いし身体も痛い・・・・・・
現在は楓と一緒に夕ご飯を食べている最中だ。
楓「・・・・・・そういえば兄さん。この間西村先生に追いかけられてましたよね」
ああ、明久と雄二の件の時のことか・・・・・・
貴浩「ああ、それがどうしたんだ?」
楓「・・・・・・いえ、命ちゃんが言ってましたけど、私も見てたんですよね・・・」
ああ、そういえば・・・今日楓に教科書借りに言った時、
秀吉の妹?の命が俺を見たって言ってたっけ・・・?
楓「それを見て思ったんですが、兄さん足速くなりました?
あの走りを見る限り怪我する前と同じ位の速さに見えましたけど・・・?」
そのことか・・・・・・確かに俺は事故で足に怪我を負ってしまいそこまで速く走れないんだが・・・
貴浩「いや、多分、あの時だけだな。普段はあそこまで速くないぞ。
おそらくなんだが・・・鉄人に掴まったら危ないという危険信号が出たんだろうな。
で、あの時火事場の馬鹿力じゃないが、あそこまでの走りが出来たんだと思う」
正直俺も、鉄人から逃げてる時、
アレ? 俺走るの速くなった?
と思って今日のバスケに望んだんだが全然変わってなかったしな・・・・・・
実際、あの時鉄人に掴まって明久たちが掴まるまで俺1人、
生徒指導室という場所で鉄人に鍛えられたからな・・・
・・・あれは拷問に近いものだった・・・・・・今思い出しても身体が震えてしまう・・・
楓「そうなんですか・・・? そんなことで火事場の力が発揮されるなんて凄いですね」
貴浩「いやぁ~照れるな」
楓「いえ、兄さん・・・私褒めたませんよ・・・・・・あ、それと兄さんにお願いがあるんですが・・・」
貴浩「お願い? 良いよ、言ってみろよ。楓の願いなら出きる事なら何でも聞いてやるぞ」
遠慮なんてしなくて良いのにな・・・楓の願いなら何でも聞いてあげるのに・・・
俺はそう言いながら空のコップを手にとる。
楓「え、えっとですね・・・言いにくいんですが・・・・・・兄さん、もう迎えは結構ですので
わざわざ迎えに来なくて良いですよ」
カラーン
俺の手からコップが床に落ちる。
コップはプラスチック製の物だったので割れずにすんだのだが・・・
貴浩「な、な、な、なんだって・・・? む、む、む、迎えがいらないだって・・・?
ど、ど、ど、ど、どうしてだい楓・・・?」
コップが落ちた事なぞ気が付かず俺は動揺しながら楓に尋ねる。
楓「えっと・・・・・・毎日迎えに来られても・・・正直恥ずかしいですし・・・・・・
それに私ももう高校生ですから1人で帰れますし・・・・・・」
な、なんだって俺と帰ることが恥ずかしいだって・・・・・・!?
俺は兄として可愛い可愛い楓が心配だから
楓の部活が終わる時間に学校に戻って一緒に帰ってるだけだというのに・・・・・・
貴浩「・・・・・・し、しかしだな楓・・・・・・も、もし・・・楓の身に何かあったら心配なんだよ・・・・・・」
楓「兄さんが私に優しいのはわかりますが・・・私ももう高校生なんですよ。
兄さんが私のことを心配してそうしてくれてるのはわかりますけど・・・
兄さんも私のことを気にせず友達と遊んでくれて良いんですよ?」
確かに・・・楓を優先にしてるから学校終わりは明久達と遊べるのは
楓の部活が終わる時間までだからな・・・・・・
楓「なので、明日からは迎えはいりませんので、よろしくお願いしますね兄さん。
私のお願い聞いてくれるんですよね」
・・・・・・ぐぅ!
その一言で何も言葉を返すことができずその話はそこで終了してしまった。
☆
翌日、教室にて明久達に昨日の夜の話をすると・・・・・・
雄二「・・・・・・お前シスコンすぎだろ・・・」
康太「・・・・・・・・・いつも速く家に帰ると思ったいたがそんな理由があったとは・・・驚いた」
明久「まあ、貴浩は楓には凄く優しいからね。超がつくほどのシスコンぷりだよ」
貴浩「なんだよお前ら・・・」
秀吉「お主の気持ち、ワシにはよくわかるのう・・・」
貴浩「わかってくれるか秀吉!」
秀吉「うむ。確かにそれは心配で仕方が無い行動じゃ。
もし命が何か部活をやっておったら貴浩と同じ行動をとっておったかもしれぬのう」
明久「・・・ってアレ? もしかして秀吉にも貴浩みたいに妹さんがいるの?」
秀吉「うむ。言っておらんかったがワシには姉上と妹はおるのじゃ。
ワシの妹は可愛くてのう」
貴浩「確か三つ子なんだろ? 確か2人とも楓と同じクラスだったから覚えてる」
雄二「へぇ~三つ子か・・・珍しいな」
明久「どんな子だった?」
康太「・・・・・・・・・貴浩の妹のことも含め詳しく聞かせろ」
貴浩「秀吉の姉と妹は秀吉にそっくりだった。
姉の方は少し凛々しい感じで、妹の方は少しおっとりした感じで胸があるほうだった。
で、楓はほれ・・・こんな感じだ」
俺は財布の中に入れておいた一緒にとったプリクラをみせる。
貴浩「可愛いだろ。自慢の妹だ」
雄二「へぇ~双子っていうから貴浩に似てると思ったが結構可愛いじゃねぇか」
貴浩「だろ! あ、先に言っておくが・・・・・・楓に手を出したら殺すからな?
いいな? 忠告したからな? 本当だぞ?
康太・・・もし楓の写真を無許可で撮影・販売した日には明日を拝めると思うなよ・・・?」
俺は雄二と康太の肩を握りつぶすような力で掴む。
秀吉「それにはワシも同意見じゃな。姉上なら別に良いが命に手を出そうものなら・・・・・・」
秀吉も俺と同じように殺気を出しながら明久と雄二、康太に近づいていく。
雄二「い、いてぇよ。わかった! わかった! お前の妹には手は出さねぇよ!
だから手を放してくれ!」
康太「・・・・・・・・・絶対無許可で撮らないから安心してくれ。
だから、肩にある手を放してくれ・・・!」
貴浩「なんだと雄二!? それは楓が可愛くないってか!?
テメェ殺すぞコラっ!!」
雄二「なんでそうなる!? ならなんて応えればいいんだよ!?」
明久「た、貴浩も落ち着いてよ。雄二は楓のこと可愛いって言ってたでしょ。
ただ友達として接しようとしただけだよ。それなら良いんだよね?
悪鬼羅刹っていわれた雄二が楓の友達になるんだから性質の悪いヤツが来ても大丈夫だよ。
ムッツリーニも無許可で楓と秀吉の妹さんの写真をとらないっていってるんだからさ。
だから貴浩も秀吉もその殺気抑えてよ。僕らだけじゃなく周りの皆も怯えてるよ」
明久の言われ周りを見てみると、震えている者や、冷や汗を流している者、腰を抜かしている者がいた。
貴浩「む・・・確かにそうだったな・・・・・・悪い。少し可笑しくなってた」
秀吉「うむ・・・すまぬの・・・少し熱くなっておった。頭を冷やさねばのう」
雄二「い、いや・・・俺は大丈夫だ」
康太「・・・・・・俺も大丈夫」
貴浩「本当に悪かった」
これは反省しないとな・・・どうにも楓のことになると少し熱くなってしまうな。
さて・・・・・・楓のことをどうにかしないとな・・・・・・今日から俺は迎えに行けないし・・・さて、どうするか・・・
・・・・・・ん? 確か秀吉は楓と同じ演劇部だったよな・・・それに家も正面だから帰り道も同じだ。
・・・・・・だが・・・しかし・・・でも・・・う~ん・・・仕方がないか・・・
貴浩「なあ、秀吉・・・」
秀吉「どうしたのじゃ?」
貴浩「頼みがあるんだが・・・部活が終わったら楓と一緒に帰ってくれないか?
知ってると思うが俺の家はお前らの家の正面らしいからな。
1人で帰らせるよりは秀吉がいれくれた方が安心だしな」
秀吉「そうじゃったのか? まさか貴浩の家と正面じゃったとは・・・気がつかなかったのう。
帰る件は任せるのじゃ。貴浩の気持ちはわかるからのう。
ワシに任せて欲しいのじゃ」
貴浩「本当か! よろしく頼む」
よし! さすが秀吉! 本当に俺の気持ちがわかるみたいだな。
それに秀吉なら狼になることはないだろうし・・・安心できるな。
だが、1年後にまさか楓と秀吉が彼氏彼女の関係になるとは今の俺には知る由もなかった。
貴浩が秀吉にお願いしている時、明久たちは
雄二「明久助かった。礼を言う」
明久「あ、うん。まあ前にも似たような光景があったからね・・・・・・」
康太「・・・・・・・・・それにしてもあの殺気秀吉も凄かったが・・・貴浩はその非ではなかった」
雄二「・・・ああ、貴浩の殺気には俺も冷や汗が出てしまったぞ・・・」
明久「・・・・・・ああ、仕方がないよ。だって貴浩は中学の時雄二ほどじゃないけど名あがってたからね・・・」
康太「・・・・・・それは、もしかして妹絡みなのか?」
明久「うん、まあ貴浩隠してるけど、そこそこの実力はあるからね。
足を怪我してる分、僕より少し足は遅いけどでも力なら僕以上だね。
で、楓絡みになると多分・・・雄二と同等かそれ以上だと思う・・・ただその前に凄い殺気を放つけどね・・・」
雄二「・・・・・・マジか・・・あまり妹絡みでちょっかい出さないほうがいいか」
明久「うん、自分の身が惜しいならそうしたほうがいいと思うよ」
という会話があったとかなかったとか・・・・・・