バカと俺達の召喚獣   作:ターダン8

65 / 231
4/24 修正


真相

誘拐騒ぎも一段落ついて

喫茶店の1日目が終了したAクラスにて、俺と明久と雄二と秀吉とムッリーニ。

そして・・・・・。

 

優子「で、いつまで待たせる気?」

 

優子が貸し切り状態の教室でお茶を飲んでいた。

巻き込まれた以上、事情を聞かないと帰らないと言ってきかないためである。

そして楓や命、なのは、霧島、工藤も一緒に居る状態だ。

さすがに島田姉妹と姫路は刀麻に頼んで家に帰ってもらった。

葉月ちゃんがいるので早めに帰らないと親が心配するだろうからな。

 

雄二「まあ待て。もうそろそろ来る頃だ」

 

秀吉「?来るって誰がじゃ?」

 

雄二「ババァだ」

 

明久「学園長(ババア)がかわざわざここに来るの?」

 

貴浩「あの学園長(ババア)がか!?」

 

優子「ちょっと待ちなさい!アンタ達なんて事を言うの!?」

 

工藤「そうだよ。いくらなんでもそれは失礼だよ」

 

普通に考えてその場にいないとは言え学園長をババア呼ばわりなど褒められた事ではない。

というより、普通にババア=学園長で通じる事に俺は驚いた。

 

貴浩「そう言えばさっき雄二が何か話してたな?あれはその事か」

 

明久「話ねぇ…ダメだよ雄二、一応相手は妖怪といえど目上の人なんだから、

   用事があるならこっちから行かないと」

 

優子「吉井君、一応は余計よ?」

 

貴浩「そうだぞ明久!一応じゃないアレは完全に妖怪だ!人間ではない!!」

 

明久「あっ、そっか!」

 

楓「突っ込むところははそこじゃないと思いますが……」

 

敬意もくそもない態度に、優子はツッコむ。

だが、誰一人気にする事もなく、話は続く。

 

雄二「用事もくそもこの一連の妨害の原因はあのババァにある筈だ。

   事情を説明させないと、気がすまん」

 

明久「ババァに原因が……えぇぇっ!?」

 

秀吉「何じゃと!? 」

 

貴浩「やっぱりか…」

 

優子「ちょっと待ちなさいよ。それに学園長がらみって、アンタ達一体何をしてるの!?」

 

明久「あ、あのババァ! 僕等に何か隠してたのか!」

 

貴浩「まあ、それは妖怪ババア長が来ればわかるだろうさ」

 

雄二「貴浩の言うとおりだ。ひとまず落ち着け明久」

 

明久「早く来い妖怪め!」

 

命「もう完全に妖怪よばわりなんですね・・・」

 

なのは「にゃはははは」

 

明久も怒りを隠せなかった。

その所為で命や楓達が危険な目に遭い、喫茶店の経営は苦労の一途。

仲間の命運がかかっている以上、文句を言わないと気が済まなくなった。

 

学園長「……やれやれ、態々来てやったのに、随分と御挨拶だねぇ、ガキ共が」

 

優子「あっ、が、学園長!」

 

優子達女性陣と秀吉はすぐさま立ち上がり学園長に礼をする。

 

雄二「来たかババァ」

 

貴浩「さて、どういう事か説明して貰うぞ?妖怪ババァ」

 

明久「出たな、諸悪の根源め!」

 

学園長「おやおや、いつの間にかアタシが黒幕扱いされてないかい?」

 

優子「ねえ秀吉、アタシがおかしい訳じゃないわよね?」

 

秀吉「奇遇じゃの、ワシもそう思っておったところじゃ姉上」

 

霧島「・・・・・・あの3人がおかしいだけ」

 

蚊帳の外の優子と秀吉は、そのまま黙る事にした。

 

雄二「確かに黒幕ではないだろうが、

   俺達に話すべき事を話してないのは十分な裏切りだと思うが?」

 

学園長「ふむ……やれやれ、賢しい奴だとは思っていたけど、

    まさかアタシの考えに気がつくとは思わなかったよ」

 

雄二「最初に取引を持ち掛けられた時からおかしいとは思っていたんだ。

   あの話だったら何も俺たちに頼む必要はない。

   もっと高得点を例えばそこにいる翔子や木下優子の様な高得点をたたき出せる

   優勝候補を使えば良いからな」

 

雄二の言葉を聞いて、学園長は周りを見回し霧島や優子の姿に気がついた。

 

学園長「ん?ああ、あんたが霧島翔子で木下優子かい?何でここにいるさね?」

 

貴浩「ここいる女子達は騒動に巻き込まれたんだよ。それで事情を聞かせろってうるさくてね」

 

学園長は成程ねと頷いた。

 

貴浩「話に戻るが…優勝者に後から事情を話して譲って貰うとかの手段も取れた筈だし」

 

雄二「なのに、俺達を擁立するなんて効率が悪すぎる」

 

雄二の言葉に、学園長は頷いた。それを見て俺は皆に事情を説明。

 

優子「成程ね、教室の改善ね……それで、教室の改修を条件に副賞の回収を?」

 

貴浩「まあ表向きはな?考えてみたら教育方針の前にまず生徒の健康状態が重要な筈だ。

   教育者側、増して学園の長が反対するなんてありえなかった」

 

明久「という事は、僕等を召喚大会に出場させる為に、ワザと渋ったと言う事だね?」

 

雄二「そう言う事だ。あの時俺がババァに1つの提案をしたのを、覚えているか?」

 

話が終わった処で、雄二が割り込んできた。

 

学園長「科目を決めさせろってヤツかい?成程ね、あれでアタシを試したってわけかい?」

 

雄二「ああ。めぼしい参加者全員に、同じような提案をしている可能性を考えてな。

   もしそうだとしたら、俺達だけが有利になるような話には乗ってこない」

 

明久「そうだよね。僕たちにとっては破格過ぎる条件だ。なのに、ババァは提案を呑んだ」

 

つまり、この3人が決勝に出なければ学園長が困ると言う事。

そして、学園長が困らなければならない連中が居る事につながる事も、

その3人の周りに起きている。

 

貴浩「じゃあ学園祭の喫茶店ごときで営業妨害が出たりして

   俺達が勝ち上がっては困る奴がいるってことか?」

 

雄二「ああ。それに何より、俺達の邪魔をしてくる連中が

   翔子たちを連れだしたのが決定的だった。ただの嫌がらせなら、ここまではしない」

 

優子「私も巻き込まれた事ね?…正直、どうなる事かわからなかったわ」

 

幼い少女も巻き込まれたと言う事もあり、流石に優子も悪寒を感じた。

下手をすると警察沙汰であることゆえに、尚更に。

 

学園長「そうかい。向こうはそこまで手段を選ばなかったのか……すまなかったね」

 

と言うと、突然学園長が明久達に頭を下げて来た。

その姿に、明久達も驚きを見せる。

 

学園長「アンタ達の点数だったら、集中力を乱す程度で勝手につぶれるだろうと

    最初は考えていたのだろうけど目論見が完全に潰されて、焦ったんだろうね」

 

雄二「さて、ここまであった以上話して貰いますぞ?あんたが俺達を選んだ真の目的を」

 

学園長「はぁ・・・アタシの無能をさらすような話だから、

    出来れば伏せておきたかったんだけどね・・・・・・」

 

だから、誰にも公言しないでほしい。そんな前置きをする学園長。

 

雄二「無能?じゃあアンタの目的は、チケットじゃなくて腕輪か?」

 

学園長「そうさね。アタシにとって、企業の目論見なんてどうでもいいのさ」

 

腕輪とは、優勝者に贈られる3種類の腕輪。

 

優勝者にはテストの点数を二分して2体の召喚獣を同時の呼びだせる腕輪。

そして教師なしで立会人になり科目指定をした上での召喚用フィールドを形成できる腕輪。

その2種類の“白金の腕輪”そして召喚獣の能力を向上させる腕輪の”深紅の腕輪”

 

学園長「そうさ。その腕輪を、アンタ達3人に勝ちとって貰いたかったのさ」

 

明久「僕たちが勝ち取る?回収してほしい訳じゃなくて?」

 

雄二「あのな…回収が目的だったら、俺たちに依頼する必要ないだろ? 

   そもそも、回収なんてマネは極力避けたいだろうし、な?」

 

明久「ねぇ雄二、どういう事?」

 

理解できなかったのか、明久が疑問を投げかける。

 

雄二「新技術は使って見せてナンボだってことだろ? 

   デモンストレーションもなしに回収なんてしたら、

   新技術の存在自体疑われるだろうから、このババァにしてみれば避けたいってことだ」

 

学園長「・・・・・・欠陥があったからさ」

 

貴浩「やっぱりか」

 

苦々しく顔をしからめる学園長。

技術屋にとって新技術の欠陥は耐え難い恥でありそれを生徒に明かすのだから無理もない。

 

ちなみに何故俺が予想できたのかはその腕輪の開発の実験台になったからだ

 

明久「欠陥?どんな欠陥です?」

 

学園長「入出力が一定水準を超えると、暴走を引き起こすんだよ。

    だからアンタ達が使うなら、暴走は起らずに済む」

 

雄二「成程な、だから得点の高い優勝候補を使わず

   俺達みたいな“優勝の可能性を持つ低得点者”が

   ババァにとっては理想的だったってことか」

 

優子「じゃあ、アタシ達がもし決勝に出てたら……」

 

知らないとは言え、自分達が暴走の引き金を引こうとしていた

…その事に、優子は顔を青ざめさせた。

 

明久「えーっと、つまり・・・・・?」

 

貴浩「つまり黒金の腕輪はバカにしか使えないってことだ。

   そしてババアが選んだバカが俺達って事」

 

明久「何だとババァ!!」

 

秀吉「説明されぬとわからん時点で、否定できないと思うんじゃが?」

 

秀吉のツッコミで、明久は苦々しい顔をした。

 

学園長「召喚フィールド作成用の方はある程度まで耐えられるんだけどねぇ

    もう片方の同時召喚用と召喚獣融合用は、

    現状だとBクラス程度で暴走する可能性がある。

    だからそっちは出来れば吉井専用にと」

 

明久「あのさ、これは褒められてると取っていいんだよね?」

 

貴浩「何を聞いてたんだよ明久は?Bクラス程度で暴走する可能性があるって事は、

   それ以下のバカにしか使えないってことだろ?」

 

明久「何だとババァ!!」

 

雄二「いい加減自分で気づけ!!それより、そうなると黒幕の正体は大体絞れてくるな」

 

貴浩「そうだな。明久にもわかりやすく言ってやると、

   腕輪の暴走を阻止されたら困る奴ら。

   つまり文月学園に生徒を取られた他校の経営者が絡んでると見ていい。

   後これは個人的な直観だけど、教頭の竹原も関与してる思う」

 

その言葉に、全員の視線が俺に集まった。

 

学園長「やはりそうだったかい…近隣の私立校に出入りしてたなんて話を聞いたが、

    最早間違いないさね」

 

明久「となると、僕等の邪魔をしてきた常夏島トリオや、例のチンピラは……」

 

雄二「教頭の差し金だろうな」

 

明久はふむふむ、と頷いてみてふと思う。

 

明久「あのさ…じゃあ僕たちは、文月学園の存続が掛かった問題に巻き込まれてたって事?」

 

雄二「そうなるな。試召戦争と試験召喚システムは、

   その特異な教育方針と制度で存在自体の是非が問われているシロモノだ。

   そんな状態で暴走なんて問題が起きたら、学校その物の存在意義も問われる」

 

学園長「騙していた事はすまなかったね。だが、目的は既に達成はされているんだ。

    このまま何もなければ、全てはまるく収まるんだよ」

 

確かに表向きは、既に目的は達成された。

だが、このまま向こう側が黙っているとも思えない以上、用心に越した事はない。

 

優子「はぁ…まさかアンタ達が、こんな事に巻き込まれてたなんてね」

 

明久「ごめんね、優子さん。でも……」

 

優子「良いわよ。事情はよくわかったから・・・

   それに皆の事、しっかり助け出したでしょ?だから良いわよ、それは」

 

と、優子は明久の肩をバンと叩いて、俺に駆け寄る。

 

貴浩「それじゃ、聞きたい事は聞けたし、もう帰ろうか」

 

雄二「そうだな。家に帰ってやる事もあるし・・・それに明日も早いしな」

 

学園長「それじゃアタシは学園長室に戻るとするかね」

 

学園長が静かに椅子から立ち上がる。

 

学園長「3人とも学園長としても個人としても、礼と謝罪をさせてもらうよ」

 

明久「はい」

 

そう言うと、学園長は出て行った。

 

貴浩「さて、俺達も帰るか」

 

雄二「ああ。そうだな。今日は俺達が女子を送って帰るか。

   もう何もないとは思うが用心しておいたほうがいい」

 

明久「そうだね」

 

貴浩「それじゃ優子に工藤さん、俺で悪いけどエスコートさせてもらうぞ?」

 

言わずもがな楓と命、なのはも一緒に帰る。

 

優子「ええ、そうさせてもらうわ」

 

工藤「うん、お願いするね」

 

貴浩「気にするなよ。困った時はお互い様さ。明久も一緒に帰ってくれるか」

 

明久「え!?僕も?」

 

貴浩「こっちは女子の人数が多いからな。秀吉もいるが心もとなくてな」

 

秀吉「そうじゃな…正直ワシの腕では護衛なんてできぬからの」

 

明久「そういうことなら良いよ」

 

貴浩「頼むな」

 

そうして俺達は家に帰り、学園祭初日は幕を閉じた。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。