バカと俺達の召喚獣   作:ターダン8

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プール編
食べ物は大切に


“雄二&霧島幸せ大作戦”から1週間後。

 

いつも通りに平穏な週末の夜、

俺は久しぶりに雄二と一緒に明久の家に泊まりで遊びに来ていた。

 

明久「あれ?雄二、何か買って来たの?」

 

雄二「食いものだ。お前の家には碌な物がないからな。

   最近は少しはマシになったが…それでもな…」

 

貴浩「まあ確かに、あっても良くてパンの耳や白米、最低で砂糖と油だからな」

 

明久「少しずつだけど、生活は改善してるよ? 

   いつまでも貴浩に迷惑かけるわけにもいかないし」

 

雄二は買って来た物をテーブルに置き、俺も自分で用意した物を準備し始める。

 

ちなみに俺のメニューは、

 

・紅茶

・親子丼

 

明久「へぇ~っ。差し入れなんて、随分気がきくね」

 

続いて雄二が取り出したのは、以下のメニュー

 

・コーラ

・サイダー

・カップラーメン

・カップ焼きそば

 

それを見て、明久は摂取できるカロリーに喜ぶ。

ちなみに明久の勘では、雄二はやきそばとコーラを選ぶと当たりを付けていた。

 

明久「それで、雄二はどっちにするの?」

 

雄二「俺か?俺はコーラとサイダーとラーメンとやきそばだ」

 

貴浩「全部だな」

 

明久「雄二キサマ!僕に割り箸しか食べさせない気だな!?」

 

そのセリフに、流石に俺も雄二も若干引いた。

 

雄二「待て!割り箸だけでも食おうとするお前の思考に一瞬引いたぞ!?」

 

貴浩「確かにビニール袋よりは、食べ物に近いのは事実だが……」

 

雄二「というか、割り箸がないと俺は素手でラーメン食うはめになるだろうが。

   心配せんでも、お前の分もちゃんと買って来てある」

 

と、1つ目の下敷きになっている、2つめのビニール袋に明久は気がついた。

 

明久「なんだ、やっぱり僕の分も買って来てくれてたんじゃないか」

 

雄二「まぁな。先週末は世話になったからな、感謝の気持ちだ」

 

明久「え?僕は何もしてないんだけどな。でもありがたく頂くよ」

 

下敷きになっていた袋を受け取り、その中にある物を喜々として取り出す明久。

 

・こんにゃくゼリー

・ダイエットコーラ

・ところてん

 

明久「僕の貴重な栄養源がぁーっ!」

 

全てカロリー0のダイエットメニューであった。

 

雄二「気にするな。俺の感謝の気持ちだ」

 

明久「くそっ! 全然感謝していないな!?」

 

明久がダイエットコーラを取り出し、構える。

 

雄二「うるせぇ!!」

 

対する雄二は、普通のコーラとサイダーを構える。

明久はそれを見て不敵に笑い、コーラを取り出す。

 

明久「……やる気、雄二?」

 

雄二「ああ。お前とは決着を付ける必要があると思っていた所だ」

 

明久「僕もだ。日頃の恨み晴らさせてもらう」

 

互いに相手を睨みつけ、牽制し合っている。

ここで下手な動きを見せれば命取りになる、まさに一色即発の空気。

 

……ピチョン

 

明・雄「「……っ!!」」

 

その音をきっかけに、2人は一斉に動き出す。

静から動へ、にらみ合いから闘いへと動く。

ちなみに俺は食べ物を粗末に扱いたくないので離れて食事中…

 

 

シャカシャカシャカシャカ(2人がペットボトルを振る音)

 

 

ブシャアアアアアアアアア(お互いに向けて炭酸飲料を射出する音)

 

 

バたバタバタバタバタ(2人が目を抑えてのた打ち回る音)

 

 

明・雄「「目が、目がぁぁぁああっ!」」

 

2人して炭酸が目にしみるのか、苦しみにのたうちまわり始めた。

 

雄二「やってくれるじゃねぇか、明久!」

 

明久「雄二こそ、流石は僕がライバルと認めた男だ!」

 

そして雄二はやきそば、明久はところてんを武器にして闘いへと身をゆだねていく。

 

 

 

――しばらくお待ちください――

 

 

 

明久「……雄二、一時休戦にしない?」

 

雄二「……そうだな。この戦いはあまりにも不毛だ」

 

貴浩「終わったのか?ってか食べ物は大事にしようぜ」

 

2人とも、互いの食べ物でべたべたになっていた。

 

雄二「明久、シャワー借りるぞ?」

 

明久「うん。タオルは適当なの使っていいよ」

 

雄二「言われなくてもそうする」

 

そう言うと、気持ち悪そうに来ているシャツをつまみながら雄二が脱衣所へと消えていく。

続いて、バサバサと景気良く衣服が脱ぎ捨てる音が聞こえてきた。

 

貴浩「そういえば明久、ガスは大丈夫なのか?」

 

確か俺が前に明久の家に泊まりに来た時──

 

明久「あっ、払うの忘れてた」

 

雄二『ほわぁぁーっ!!』

 

ガスが止まっていたことがあった

 

ガチャッ! 

 

ズカズカズカ

 

雄二「……もっと早く思い出せやコラ」

 

腰にタオルを巻いた雄二は、寒さで全身に鳥肌を立てていた。

 

明久「ごめんごめん。えっとね、心臓に近い位置にいきなり冷水を当てると体に悪いから、

   まずは手や足の先にかけてから徐々に心臓へと……」

 

雄二「誰が冷水シャワーの浴び方を説明しろって言った!?」

 

明久「何熱くなってるのさ雄二。そうだ、冷たいシャワーでも浴びて冷静に」

 

雄二「浴びたから熱くなってるんだボケ!……くそっ、このままじゃ風邪ひいちまう」

 

貴浩「けど、湯が出ない事実は変わらないだろ?」

 

週末で、しかも時間は遅い。

だからガス会社はもうやっておらず、どんなに急いでも明日以降になる。

 

雄二「やれやれ……仕方ない、2人とも外へ出るぞ」

 

貴浩「外?俺か雄二の家にでも行くのか?」

 

雄二「それでもいいけどな。どうせならシャワーだけじゃなくてプールもある所に行こうぜ」

 

近くにそんな場所なんてあったか?

 

雄二「ああ。シャワーもプールもあって、ここから近くて、

   尚且つ金もかからないところがあるだろうが」

 

貴浩「え?そんな好条件が……ああっ、あそこか」

 

明久「オッケー、すぐに用意するよ。水着はどうするの?

   貴浩は僕のサイズが合うから貸すけど?」

 

雄二「トランクスで泳ぐさ。水着と大して変わらないだろ」

 

貴浩「じゃあ貸してくれ」

 

手早くすまして、3人は戸締りをした後に外へ。そして目的地へと駈けだして行った。

 

 

 

 

 

 

 

その2時間後

 

西村「……で、何か言い訳はあるか?」

 

場所は文月学園の宿直室にて。

3人は揃いもそろって、鉄人こと西村教諭の説教を受けていた。

 

貴・明・雄「「「こいつ(ら)が悪いんです!」」」

 

綺麗にハモる俺達3人の声。

 

明久「雄二がまともな差し入れを持ってこないからだろ!」

 

雄二「ガス代を払い忘れていたお前が悪い!」

 

明久「水が出るだけマシだろ!」

 

雄二「水すら出ない事もあるのか!?」

 

貴浩「おい落ち着けよお前ら!」

 

目の前でボルテージが上がっている鉄人を見て、俺は焦って2人を止めようとする。

 

西村「…………もういい。よくわかった」

 

と、その様子に呆れ果てた鉄人は、額に手を当てため息をついた。

2人は特に気にはしなかったが、

俺にはそれが嵐の前兆のように思えてならなかった。

 

明久「わかってもらえました? それは良かったです」

 

雄二「んじゃ、わかって貰えたところでそろそろ帰るか。いい加減時間も遅いしな」

 

貴浩「そっそうだな。それじゃ、失礼しま……ぐえっ!」

 

頭を下げて出て行こうとした3人の首を、その太い腕ですごい力で締め付けられ、

3人は下手な抵抗をすれば首の骨を折られかねないぐらいだ。

自己防衛本能が弾きだした答えに、大人しくなる。

 

西村「そう急ぐ事もないだろう3人とも。

   帰るのは恒例のヤツをやってからでも遅くはないよな?」

 

貴浩「あっ……やっぱり……」

 

明久「そっそうですね……是非、そうさせてもらいます……」

 

雄二「お、俺も、そうさせてもらおう……」

 

こうして、3人は朝まで鉄拳付きの補習を受ける羽目になった。

 

 

 

 

 

 

 

明久「てな事があって、おかげで散々な週末だったよ」

 

週明けの教室、朝のHRが始まるまでの時間。

いつものメンバーで卓袱台を囲い、降りかかった不幸についての説明。

 

秀吉「そうじゃったか。それは災難じゃったのぅ……」

 

気遣うように柔らかな表情を浮かべる秀吉。

 

雄二「おまけに今週末はプールの罰掃除とくれば、気が滅入るな」

 

康太「…………重労働」

 

ムッツリーニが明久の隣で、ボソリと呟いた。

 

明久「だよね。あんな広い所を掃除なんて、何か褒美が欲しい位だよ」

 

貴浩「褒美という程じゃないが掃除をするのなら

   プールを自由に使っても良いと鉄人に言われたぞ?」

 

明久「え?そうなの?」

 

貴浩「ああ。だから秀吉とムッツリーニも、今週末にプールに来ないか?」

 

折角の貸し切りなら、と早速2人を誘い始める。

まず最初にムッツリーニが頷こうとして……

 

貴浩「ただし掃除を手伝ってもらうけどな」

 

康太「…………」

 

貴浩「なあ雄二、皆にも声をかけておくな。

   それとムッツリーニ。ちゃんとなのはも呼ぶからな」

 

ムッツリ「…………ブラシと洗剤を用意しておけ」

 

俺の言葉に動きを止めたが、後のフォローにあっさりと頷いた。

 

秀吉「うむ、そうじゃな。貸し切りのプールなぞ、

   こんな時でなければ中々体験できんじゃろうし、

   相伴させてもらうかの。無論、ワシも掃除を手伝おう

   ……………それに楓の水着が見られるのじゃ(ボソッ)」

 

明久「え?結構大変だと思うけど、いいの?」

 

秀吉「うむ、お安いご用じゃ」

 

と、快諾する秀吉。

でも最後、なんかおかしな事が聞こえた気がしたが気のせいだよな

 

光一「すみません。私は今週は用事がありまして……」

 

明久「それは残念だね。次回は一緒に楽しもうね」

 

光一「その時はよろしくお願いします」

 

貴浩「んじゃ、後は……おーい命に楓、そして姫路に島田。ちょっといいか?」

 

命「どうしたの貴浩君?」

 

楓「兄さんなんでしょうか?」

 

島田「どうしたの織村? 何か用?」

 

姫路「呼びましたか、織村君?」

 

まずは命、楓、島田が、それに続いて姫路もやってくる。

 

貴浩「4人とも今週末は暇か?

   学校のプールを貸し切りで使えるんだけど、良かったらどうかな?」

 

「「「「え……?」」」」

 

プール、という単語で4人が一瞬ビクンと反応する。

 

明久「あ、もしかして4人とも予定があったりする?」

 

命「いえ、何も予定はないので、参加させてください」

 

楓「私も予定はないです。……ヒデ君が行くのなら行きますよ」

 

何気に仲良いな……兄さん少し寂しいよ……

 

島田「い、いや、別に予定はないんだけど。その、どうしようかな……?

   プールって言うと、やっぱり水着だし……」

 

姫路「そ、そうですよね。水着ですよね……その、えっと……」

 

島田は自らの胸部へ、姫路は腹部へとそれぞれ視線を送った。

水着となれば、色々と見られる訳なので自身の悩みの個所が晒されるのに、

少々躊躇いを感じているらしい。

 

貴浩「ってことは命と楓は参加だな。島田と姫路はどうする?

   無理には誘わないが……」

 

雄二「で、どうするんだ2人とも?」

 

島田「い、行くわ! その、イロイロと準備をして……」

 

姫路「そ、そうですね。準備は大事ですよね」

 

複雑そうな顔をしつつ、2人は一応肯定の意を示した。

 

秀吉「貴浩よ、姉上を誘わんのかの?」

 

貴浩「Aクラスだと優子に愛子に霧島、なのは、刀麻は誘おうかなと思っている」

 

秀吉「それなら良いのじゃが……」

 

どうしたんだ?優子に何かあったっけ?

あっそうか!秀吉と命を呼ぶのに1人仲間外れにしたら可愛そうだもんな。

秀吉は命だけじゃなく優子にも優しいんだな。これぞ姉妹愛か!

 

秀吉「……なにか勘違いされておる気がするが…」

 

貴浩「さて、雄二、霧島にはお前から声をかけておけよ?」

 

雄二「言われなくてもそのつもりだ」

 

明久「あれ?随分と素直な返事だね?」

 

雄二が意外な返事をしたことに明久は疑問を感じている。

まあ雄二と霧島は正式に付き合う事になったのだから当たり前だろうな

 

雄二「とにかく、全員オッケーなようだな。んじゃ、

   土曜の朝10時に校門前で待ち合わせだ、水着とタオルを忘れるなよ。

   Aクラスには貴浩から話しておけよ」

 

雄二のシメの台詞と同時に、鉄人が教室のドアを開ける音が響いた。


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