バカと俺達の召喚獣   作:ターダン8

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水中鬼

姫路「あの、明久君に織村君」

 

そこへ、梯子を使ってゆっくりと水に入ってきた姫路が近くにやってきた。

 

明久「ん?なに、姫路さん」

 

姫路「2人は水泳は得意ですか?」

 

明久「あ、うん。僕も貴浩もそれなりに泳げるよ?」

 

姫路「実は私、全然泳げないんです」

 

明久「あ、そうなの?」

 

命「私もあまり泳ぐの上手くないんですよね」

 

楓「私もです」

 

俺たちにしてみれば、凄い速さで泳ぐ3人の姿は想像できなかった。

そもそも身体が弱いと知っているので、運動自体が出来る印象は持ってない。

 

島田「ん? 瑞希って水泳苦手なの?」

 

秀吉「楓よ、水泳が苦手なのかの?」

 

優子「失礼だけど、確かに3人は運動ができるようには見えないわね」

 

姫路「はい、恥ずかしいんですけど、水に浮く位しかできなくて……」

 

命「私は少しは泳げるんですがあまり……」

 

楓「私も命ちゃんと同じぐらいです」

 

島田「そう言う事なら、いつも勉強を教えてもらっているお礼に、

   ウチが瑞樹に泳ぎを教えてあげよっか?」

 

ちょっと得意気に、美波が胸を張る。

常日頃より教わってばかりの為、意趣返しが嬉しいらしい。

 

優子「それじゃ、アタシも教えてあげるわ」

 

姫路「は、はいっ! よろしくお願いします!」

 

そのやり取りを聞いて、2人はほほ笑んだ。

勉強ではAクラスの瑞希が、Fクラスの美波にいつも教えてあげている立場。

ちなみに優子も、Aクラスレベル。

 

明久「なら楓は秀吉に習ってきなよ。秀吉は彼氏なんだから。少しぐらい甘えたら」

 

秀吉「そうじゃな////ワシでよければ指導するぞい」

 

楓「ではお願いしますねヒデ君」

 

貴浩「命は愛子が教えてあげなよ……厳しく」

 

愛子「良いよ。これでも水泳部に所属しているからね。じゃあ頑張ろう命。

   ……厳しくやるからね」

 

命「はい、お願いします。って厳しくですか!?」

 

明久「頑張ってね命」

 

命「は、はい」

 

なぜ明久にその役を任せなかったのかは、

近くに姫路と島田がいるからここで血のプールに染めたくなかったからだ。

 

明久「こうしてみると、美波がAで姫路さんがFみたいだよね」

 

貴浩「当然、優子や愛子もAだな」

 

と、2人が何となくそう口走った処で……

 

愛・優・島「「「寄せてあげればB位ある(わ)よっ!!」」」

 

貴・明「「ぐべぁっ!?」」

 

明久は島田に、俺は優子に三角絞めをかけられ、

そこから互いの頭をぶつけるように捻りあげられた。

 

愛・優・島「「「……来年には、きっと」」」

 

貴浩「なっ……何の話だ?水泳の事なのに寄せてあげるって、意味がわからないんだが?」

 

愛・優・島「「「え?……ああ、そう言う事?」」」

 

明久「3人とも、何だと思ったの?」

 

折り重なるように浮かぶ明久と俺の言葉に、3人は口を噤んだ。

 

翔子「……雄二、ちなみに私はCクラス」

 

雄二「? 何を言っているんだおまえは?」

 

その遠くでは、雄二と翔子は(2人にとって)不思議な会話をしていた

ちなみに2人どころか雄二にもわからなかったが、

ただ1人ムッツリーニは目を輝かせている。

向こうのほうでは秀吉が楓に教えてあげていた。

 

島田「……わかったわ瑞希。あんたが泳げない理由」

 

姫路「え? 何ですか?」

 

島田「その大きな浮き輪をずっと付けているから、いつまでたっても泳げないのよ!

   外しなさい! そしてウチに寄越しなさい!!」

 

優子「出来れば、アタシも欲しいわね」

 

姫路「え? ええ!?」

 

俺と明久は、その様子を見て近くにいると危ない(色々な意味で)と判断し移動した

 

貴浩「そ、それじゃ俺達、向こうに行ってるから」

 

明久「頑張ってね」

 

姫路「あ、明久君に織村君っ。なんだか美波ちゃんと木下さんがとっても怖いですっ!」

 

島田「ふふふ……瑞樹、それは無駄な脂肪の塊なのよ?

   だから、いっぱい運動して燃焼させましょうね?」

 

優子「ええ。脂肪は運動で燃焼するものだから、ね?」

 

姫路「み、美波ちゃんに木下さん。あまりいい事ばかりでもないですよ?

   肩が凝って大変ですし……」

 

優・島「「それでもいいの! 肩こり位我慢するわ!」」

 

その2人のセリフには、魂が込められていた。

 

葉月「お兄ちゃん達っ」

 

明久「わぷっ!?あっ、葉月ちゃん」

 

そこへ明久の背に葉月が乗ってきて、明久はこらえきれず沈んでしまう。

 

明久「どうしたの?一緒に遊ぶ?」

 

葉月「はい!“水中鬼”をするです」

 

貴浩「水中鬼?……水中でやる鬼ごっこか?」

 

聞いたことない遊びに、2人は首を傾げる。

名称から推測した考えに、面白さを感じる2人だった。

 

葉月「違うですっ。水中鬼は、鬼になった人がそうでない人を追い掛けるです。

   それで鬼が他の人を水の中に引きずり込んで、溺れさせたら勝ちです」

 

貴浩「鬼だ!それは確かに鬼だ!」

 

明久「というか、溺れさせちゃダメだよ。危ないから」

 

葉月「あぅ……ダメですか?」

 

ちょっと不満そうに、葉月が頬を膨らませる。

俺と明久は互いに顔を見合わせ、

どれだけ危険かを教えてあげる必要があるなと伝え合う。

 

貴浩「じゃあ見ててね? 霧島!」

 

明久「え?霧島さんを?……ああ、成程ね」

 

翔子「……何?」

 

俺が呼ぶや否や、すぐに来てくれる翔子。彼女は運動もできる為、泳ぎも上手い。

とりあえず明久が前に出て、説明をすることに

 

明久「雄二と水中鬼って遊びをやって見せてほしいんだ。

   ルールは簡単で、雄二を水中に引きずり込んで、

   溺れさせた後で人工呼吸をしたら霧島さんの勝ち」

 

翔子「……行ってくる」

 

小さくうなづくと、翔子は魚雷のように静かに、そして速く雄二に水中から接近していく。

とりあえず、俺は雄二に向けて合掌した。

 

雄二「お?何だ?いきなり足が……おわぁっ!?だ、誰だ!?

   誰が俺を水中に(ガボガボガボ)」

 

翔子「……雄二、早くおぼれて」

 

雄二「ぶはぁっ!しょ、翔子!?何をトチ狂って……!(ガボガボガボ)」

 

それを見ていた俺と明久は頷きあって、葉月ちゃんに一言。

 

貴浩「ね? 危ないでしょ?」

 

葉月「はいです……葉月、水中鬼は諦めるです……」

 

砂原「なになに?何面白そうな事してるの?」

 

明久「あっ砂原さん」

 

貴浩「葉月ちゃんに水中鬼の怖さを雄二を使って教えてたんだ」

 

砂原「そっか、それは面白そうだねん」

 

貴浩「じゃあ砂原もやってくればいいんじゃない」

 

砂原「そうだねん♪」

 

明久「でも僕達を狙わないでよ」

 

砂原「あら残念♪」

 

貴浩「あ、危ねぇな…」

 

明久「じゃあ砂原さんも葉月ちゃんと一緒に遊ぼうよ」

 

葉月「綺麗なお姉ちゃんよろしくです」

 

砂原「綺麗と言われちゃ断れないねん♪」

 

貴浩「じゃあビーチボール持ってきてるからとって来るな」

 

俺が早速プールサイドに向かおうとしたところで、騒ぎの中心が近づいてきた。

 

雄二「明久に貴浩っ!テメェラの差し金だな!?」

 

明久「うわっ!ダメだよ霧島さん!きちんと捕まえておいてくれないと!」

 

貴浩「早くしてくれ!俺達がおぼれさせれられて雄二に人工呼吸されちまう!!」

 

翔子「……ごめん。雄二、浮気は許さない」

 

葉月「わっ、お兄ちゃん達、泳ぐの取っても速いですっ」

 

俺と明久と雄二と翔子の水中鬼、スタート。

 

しばらくして

 

砂原「じゃあ私は日焼け止めでも塗ろうかな。ター君手伝ってくれる?」

 

貴浩「なにっ!?」

 

砂原「あははっ、冗談だよん。それじゃ、手伝いたかったらいつでも来てね?」

 

と言い残し、去って行った。

 

貴浩「何で俺が名指しだったんだ?(雄二、明久、刀麻聞いたか?)」

 

雄二「もしかして砂原って、貴浩に気があるとかじゃないか?(ああ、本人公認だしな)」

 

明久「良かったじゃない貴浩(うん。男として、行かない訳にはいかないよね)」

 

刀麻「うらやましいぜ貴浩(愚問だな)」

 

と、4人で笑いあう。そこへ、俺に迫る殺気。

 

優子「ねえ貴浩、さっき水中鬼がどうとかって言ってたわよね?」

 

愛子「そうだ貴浩君、水中鬼ってどんな遊びなのかな?」

 

貴浩「え?ああ、そうだけど……え?ちょっと待て」

 

俺はすぐさま危険を察知して逃げようとしたが思ったより

2人の反応が早くて水の中に引きずり込まれてしまった。

それを見て、明久と雄二と刀麻は……。

 

明久「ゆっ、優子さん、工藤さん本気でそんな事やったら貴浩が死んじゃうから!!」

 

雄二「俺には迷いもなく翔子を嗾けたよな!?……まあいい。さて」

 

翔子「……雄二、今動いたら捻り潰すから」

 

刀麻「明久!今はしゃべってないで2人を止めないと!」

 

明久「わかってたよ!優子さん、なんか動かなくなってるから落ち着いて!!」

 

その後、砂原が日焼け止めを塗り終わった時には、

ベンチで横になっている俺の姿があった。

そばでは明久や近くで休んでいた椎名を伴い、本気で心配そうな顔で看病していた。

 

貴浩「悪いな明久、椎名さん」

 

明久「これぐらいなんでもないよ。いつも貴浩には世話になってるからね」

 

椎名「……私もです。あまり体を動かすのは苦手ですから、ここでゲームをしてましたし」

 

貴浩「そうか・・・・・・ところで何のゲームをしてるんだ?」

 

椎名「モン○ン3です」

 

明久「あっ、椎名さんもしてるんだ。面白いよねモン○ン」

 

貴浩「そうだな。俺はモン○ン2Gからだけど面白いよな」

 

椎名「2人もされてるんですね」

 

明久「うん、学校に持ってきて昼休みとかにやってるよ」

 

貴浩「ああ、俺たちのほかにもムッツリーニや雄二、秀吉、命もやってるよ。

   時々刀麻もきてやってるし」

 

椎名「学校でやってるんですか?」

 

明久「うん、昼休みだから先生達も来ないしね」

 

椎名「羨ましいです。私もやりたいです」

 

貴浩「じゃあ今度ウチのクラス来なよ。一緒にやろうぜ」

 

明久「そうだね。同じAクラスの刀麻も来てるんだしおいでよ」

 

椎名「そうですね。じゃあお言葉に甘えて今度行きますね」

 

貴浩「今度やるとき呼びに行くな」

 

そこに

 

雄二「おっ、貴浩無事だったか」

 

貴浩「なんとかな」

 

雄二「チッ・・・・・そういえば俺があげた映画のペアチケットどうしたんだ?」

 

優・愛「「え?映画のチケットがどうしたの?」」

 

貴浩「ああ、雄二から映画のチケットをもらったんだが俺が今見たい映画がアニメでな」

 

明久「タイバニだったよね」

 

貴浩「そうそう。俺の周りにアニメ好きな女子いないからな。

   せっかく雄二からタダで映画が見れるんだからな。最悪明久を女装させていくかな」

 

雄二「そういや、お前はそういうヤツだったな」

 

明久「貴浩。僕、女装したくないんだけど……」

 

優子「そういえば貴浩はアニメとか好きだったわね・・・」

 

愛子「アニメとかは僕は見ないな・・・」

 

椎名「タイバニの映画ですか?」

 

明久「あれ?椎名さん知ってるの?」

 

椎名「もちろんです!アニメ全部見ました!」

 

貴浩「見たんだ。それって砂原も?」

 

砂原「私はあんまりアニメは見ないんだよね」

 

椎名「駄目ですよ鈴ちゃん。アニメは素晴らしいですから!

   アニメは日本の誇るべき文化なんですから」

 

貴浩「そうだ椎名。タイバニの映画は見た?」

 

椎名「まだ見てないです」

 

貴浩「良かったら一緒に見に行くか?」

 

優・愛「「えっ!?」」

 

椎名「良いんですか?」

 

貴浩「良いよ。タダだしな」

 

椎名「ヤッホーです。最近グッズとか買って金欠で映画はあきらめてたんですけど良かったです」

 

明久「そうだよね。グッズとかゲームとかってお金かかるよね」

 

貴浩「そうなんだよな。俺もバイトしてないと買えないもんな」

 

椎名「では織村君。一緒に行っても良いですか?」

 

貴浩「もちろんだ」

 

明久「僕も自費で行っていいかな?映画見たかったんだよね」

 

貴浩「俺は良いけど椎名は?」

 

椎名「私もかまいませんよ。それにまさか近くにアニメ仲間がいるとは思いませんでしたし」

 

貴浩「俺もだ。じゃあ今度の休日な」

 

椎名「はいです」

 

明久「了解」

 

俺たちがアニメの話をしている間

 

優子「アタシも見てみようかしら」

 

愛子「ボクも見てみようかな?貴浩君の趣味を知っておきたいし」

 

と2人が囁いていた事を俺は知らなかった。


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