バカと俺達の召喚獣   作:ターダン8

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強化合宿編
脅迫事件


雄二「翔子」

 

翔子「……隠し事なんてしていない」

 

雄二「まだ何も言っていないぞ?」

 

翔子「……誘導尋問は卑怯」

 

雄二「今度、誘導尋問の意味を辞書で調べて来い。んで、今背中に隠した物はなんだ?」

 

翔子「……別に何も」

 

雄二「翔子、手をつなごう」

 

翔子「うん」

 

雄二「よっと……ふむ、MP3プレーヤーか」

 

翔子「……雄二、酷い……」

 

雄二「機械オンチのお前がどうしてこんなものを……。何が入ってるんだ?」

 

翔子「……普通の音楽」

 

 

――ピッ

 

《優勝したら結婚しよう。愛している。翔子》

 

 

雄二「…………」

 

翔子「……普通の音楽」

 

雄二「これは削除して明日返すからな」

 

翔子「……まだお父さんに聞かせてないのに酷い……。手もつないでくれないし……」

 

雄二「お父さんってキサマ――これをネタに俺を脅迫する気か?」

 

翔子「……そうじゃない。お父さんに聞かせて結婚の話を進めてもらうだけ」

 

雄二「翔子病院に行こう。今ならまだ2、3発シバいてもらえば治るかもしれない」

 

翔子「……子供はまだできてないと思う」

 

雄二「行くのは精神科だ!――ん?ポケットにも何か隠してないか?」

 

翔子「……これは大したものじゃない」

 

雄二「え?、なになに!『私と雄二の子供の名前リスト』か。……ちょっと待てやコラ」

 

翔子「……お勧めは、最後に書いてある私たちの名前を組み合わせたやつ」

 

雄二「『しょうこ』と『ゆうじ』で『しょうゆ』か。……なぜそこを組み合わせるんだ」

 

翔子「……きっと味のある子に育つと思う」

 

雄二「俺には捻くれ者に育つ未来しか見えない」

 

翔子「……ちなみに、男の子だったら『こしょう』が良い」

 

雄二「『しょうゆ』って女の名前だったのか……」

 

 

 

 

         ★

 

 

 

 

次の日、めずらしく秀吉と2人でいつもより少し早い時間に登校していた。

 

貴浩「ん?今朝は早いな明久」

 

教室に足を踏み入れると、もう明久がいた

 

明久「おはよう貴浩。なんか早く目が覚めちゃってね」

 

秀吉「おはようじゃ。明日からの強化合宿で浮かれてるのじゃろ」

 

明久「あはは。そうかもしれないね」

 

俺は自分の席に鞄を下ろしながら明久と秀吉と話す

 

秀吉「学力強化が目的とは言え、また皆で泊まりがけなのじゃ。

   楽しみになるのは仕方がないじゃろうな。

   むろん、わしとて胸が躍っておるしの(楓に毎日会えるしのう)」

 

明久「やだなぁ。胸が躍るって言うほど大きくないくせに」

 

秀吉「いや、わしの胸は大きくなっては困るのじゃが・・・・・・」

 

貴浩「明久、あまり秀吉をいじるなよ」

 

明久「わかってるよ、冗談だって。秀吉は楓と付き合ってるもんね」

 

俺たちが荷物をロッカーに入れていると

 

カサ、と手の先に何かが触れる感触がした

 

貴浩「ん?何だ?」

 

とりだして見ると手紙らしきものが入っていた

 

≪ 織村貴浩様へ ≫

 

宛て名の欄に俺の名前が書いてある

 

貴浩「っ!!」

 

ま、まさか・・・・・・俺にラブレター?明久も俺と同じような反応をしていた。

 

秀吉「ん?どうしたのじゃ貴浩に明久?」

 

お、お、落ち着け、落ち着くんだ俺。

万が一俺がこんな手紙をもらっている事が発覚したら、

ここのクラスメイト達は嫉妬に狂って間違いなく俺を処刑しようとするだろう。

しかも最近は楓や木下姉妹、愛子と一緒に登校する事が多いから何かと

目につけられているし・・・・・・ここはとにかく平静を装うんだ!

 

貴浩「ドウシタヒデヨシ?」

 

明久「What's up, Hideyoshi? Everything goes so well」

 

秀吉「異常事態じゃな」

 

バカな! 一瞬でバレるとは!?

 

明久「さ、流石は秀吉・・・僕の完璧な演技を一瞬で見破るなんて・・・・・・」

 

貴浩「さすが秀吉だな。楓の彼氏だけあるな」

 

秀吉「いや、演技以前に言語の問題なのじゃが・・・・・・」

 

貴浩「と、とにかく大したことじゃないから、見なかった事にしてくれないか?」

 

俺と明久は秀吉の肩を軽く(・・)掴んでお願いする

 

秀吉「ふ、2人がそういうのであれば深くは問わんが・・・・・・」

 

秀吉は疑いの表情を浮かべるものの、この場は引いてくれた。

さすが楓の彼氏だ。俺の目は間違ってなかったな。

 

明久「ありがとう助かるよ! それじゃっ!」

 

貴浩「すまんな秀吉!じゃあな!」

 

俺達は見えないように手紙を懐にしまい、ダッシュで教室を後にした。

尾行の気配がないから、クラスの皆にはバレずにすんだと見て良さそうだ

 

貴浩「もしかすると、俺にもいよいよ春が・・・・・・!」

 

はやる気持ちを抑え、早足で階段を昇る

 

貴浩「よいしょっ――と」

 

屋上へと続く重い鉄扉を押し開くと、

その向こうには澄み渡る青空が広がっていた。

なぜか明久もいたが今は気にしない。明久から少し距離を置く。

 

貴浩「これ、誰がくれたんだろうか?」

 

強い日差しから逃れるように涼しげな日陰に腰をおろし、懐から手紙を取り出した

差出人の名前は封筒には書かれていない。

一体どんな子が、どんな想いを込めて俺にこの手紙を送ってくれたのだろうか

ゆっくりと手紙の封に手をかける。

緊張しているせいか、中身を取り出すのに少しだけ手間取った

 

そして、手紙の内容を見ると――

 

≪あなたの秘密を握っています≫ ←明久

 

≪あなたの秘密を握り、天罰を下します≫ ←俺

 

俺を脅かす脅迫文だった

 

貴・明「「最悪じゃーーーーーっっ!!」」

 

俺にとっての春は、まだまだ遠かった。

 

 

         ☆

 

 

秀吉「2人とも。一体何があったのじゃ?」

 

教室に戻った俺と明久を見て、秀吉が心配そうに声をかけてきた

 

明久「べ、別に何でもないよ。あははっ」

 

貴浩「そうだぞ、別に何でもない。はははっ」

 

ラブレターだと思っていた手紙が実は脅迫状だったなんて、そんなの恥ずかしくて言えるか。

俺のプライドにかけて、ここは是が非でも隠し通しておきたいところだ。

 

島田「ウソばっかり。さっき窓から妙な叫び声が聞こえてきたし、何か隠してるでしょ?」

 

明久「あ、美波。おはよう」

 

島田「おはようアキ。それで、何を隠しているのかしら? まさか・・・・・・」

 

島田の目がいつもより更に吊りあがる。攻撃態勢まであと一歩の状態だ

 

明久「やだなぁ美波。本当に何も隠してなんか」

 

貴浩「そうだぞ島田。いきなり疑うのはよくないぞ」

 

島田「まさか、ラブレターをもらったなんて言わないわよね?」

 

明久「美波、言葉に気をつけるんだ。

   ラブレターという単語に反応して皆が僕に向かってカッターを構えている」

 

相変わらず恐ろしいクラスメイト達だ。

級友を刺殺するかのように構えるなんて普通じゃない。

俺は念のため光一から貰った仕込みトンファーを構えておく。

 

島田「で、アキ。何があったの?」

 

明久「じ、実は、今朝僕宛てに脅迫文が届いていたんだ」

 

貴浩「俺もだ」

 

島田「そうなの?大変じゃない・・・・・・」

 

秀吉「して、その脅迫状にはなんて書いてあったんのじゃ?」

 

怪訝に思っていると秀吉が声をかけてきた

 

明久「これには『あなたの傍にいる異性にこれ以上近づかないこと』って書いてあるんだ」

 

秀吉「ふむ。その文面から察するに、

   手紙の主は明久の近くにおる異性に対してなんらかの強い気持ちを抱いておるな。

   大方嫉妬じゃろうが・・・」

 

貴浩「俺のは『あなたの傍にいる男性にこれ以上近づかない事。

これを聞き入れてくれなければ天罰を下す』って書かれていたな」

 

秀吉「それはなんじゃろうの?」

 

貴浩「だよな」

 

島田「それで何をネタに脅迫を受けてるの?」

 

明久「あ、そういえばまだ知らないや。えっと・・・

   『この忠告を聞き入れない場合、同封されている写真を公表します』か。

   写真って、こっちの封筒に入っているやつかな?」

 

丁度写真が入るようなサイズの封筒が同封されていたので、その中身を改める。

そこに入っていたのは、三枚の写真だった

1枚目を手にとって確認する。写っていたのは――女性物の着物姿の明久

 

明久「こ、これは!?」

 

島田「アキ、可愛いわね///////(これ欲しいわ)」

 

明久「これって去年罰ゲームできた衣装だよね」

 

貴浩「そうだな。なんでその写真がここに?」

 

秀吉「で貴浩のには何が入っていたのじゃ?」

 

貴浩「えっと俺のには──」

 

明久と同じように写真が入っていた。

写っていたのは──清涼祭の時に着たコスプレ姿の俺だった。

思わずため息が出てしまう。何なんだ、一体・・・

でも、こんなものが写されているのなら誰にも見えないようにした方が良いだろう。

そんなわけで、俺以外には見えないように隠しながら2枚目を見る。

2枚目に移っていたのは――涙目姿でいるコスプレした俺。

明久も俺と同じように2枚目を誰にも見せないように見ていたが

 

貴・明「「・・・・・・・・・・・・」」

 

島田「アキ、織村?」

 

秀吉「どうしたのじゃ?」

 

貴・明「「・・・・・・何これ、何これ、何これ、何これ・・・・・・」」

 

島田「あ、アキ、織村!?」

 

秀吉「自我が崩壊するほどのものが映っておったのか!?」

 

大丈夫! これは偽造されたものだ! 強迫なんか怖くないさ!

 

気合を入れて3枚目。写っていたのは――コスプレを着替えている俺の姿

 

貴・明「「もういやぁぁぁっっ!」」

 

島田「何!?」

 

秀吉「一体何が写っておったのじゃ!?」

 

明久「見ないで!こんなに汚れた僕の写真を見ないでぇっ!」

 

貴浩「俺を見るなぁああああ!」

 

島田「よ、よく分からないけど落ち着きなさい!皆が注目してるわよ!」

 

言われてみると周囲の視線が痛い。落ち着こう。今注目を集めるのはかなりまずい

 

貴浩「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・恐ろしい威力だった。

   ・・・・・・これは俺を死に追い詰めるための卑劣な計略と

   言っても過言じゃないな・・・・・・」

 

明久「そうだね・・・・・・」

 

島田「そんなに凄い写真だったの?」

 

秀吉「考えすぎではないかのう。着物姿くらい、人間一度は着るものじゃ」

 

イヤ、明久のは着物姿だが俺のはコスプレ姿だぞ。

これだけ見たらかなり痛い人じゃないか!!

 

姫路「明久君、木下君、美波ちゃん、織村君おはようございます」

 

後ろから姫路の声が聞こえてきた

 

明久「この声は――やっぱり姫路さんか。おはよう」

 

島田「瑞希、おはよう」

 

織村「おはよう姫路」

 

秀吉「おはよう。今朝は遅かったんじゃな」

 

姫路「はい。途中で忘れ物に気がついて一度家に帰ったのでギリギリになっちゃいました」

 

秀吉「そうじゃ。先ほどの写真が騒ぐほどの物ではないと姫路に

   証明してもらうとしようかの。姫路、少々良いか?」

 

姫路さんと島田を見て、秀吉が急にそんな事を言いだした

 

姫路「はい、何でしょうか?」

 

秀吉「うむ。姫路に質問なのじゃが。

   明久の女性物の着物姿の写真があったらどう思うかのう?」

 

正直、その切り込み方はどうかと思うが・・・

 

姫路「う~ん、そうですね・・・・・・」

 

姫路がここで嫌悪感を現すようなら、

俺達の写真の公表は何としても避けないといけない。

最近下落気味な俺達の評価のためにも!!

 

姫路「もしそんな写真があったら――とりあえず、スキャナーを買います」

 

意気込む俺達をよそに、姫路の口から漏れた答えはちょっと変わったものだった。

 

明久「へ?スキャナー?何で?」

 

姫路「そうしないと、明久君の魅力を全世界にWEBで発信できないじゃないですか」

 

島田「それはいい考えね」

 

秀吉「明久、落ち着くのじゃ! 飛び降りなんて早まった真似をするでない!」

 

貴浩「気持ちはわかるがまだ死ぬのは早すぎる!」

 

明久「放して2人共!僕はもう生きていける気がしないんだ!」

 

秀吉「そ、そうじゃ!光一とムッツリーニじゃ!

   2人ならばこの手の話には詳しいはずじゃ!事情を説明して――」

 

明久「笑われる?」

 

貴浩「全世界へWEB発信?」

 

秀吉「違う!事情を説明して脅迫犯を見つけ出してもらうのじゃ!」

 

明久「おおっ! なるほど!」

 

そうか!まだ諦めるには早かった!

情報収集や盗撮のエキスパートとも呼ばれる

光一とムッツリーニなら脅迫犯を突き止められるかもしれない!

そうすればこの写真を取り戻すことだって・・・・・・

 

明久「ナイスアドバイスだよ秀吉!!」

 

貴浩「さすがは楓が選んだ彼氏なだけある」

 

早速相談しようと光一とムッツリーニを探す。

すると、教室の隅で小さくなって誰かと話をしている奴の姿が見えた。

そこには光一の姿も見える

 

明久「それじゃ、僕たちはムッツリーニに話があるから!」

 

姫路と島田と秀吉に手をあげて教室の隅へと向かう

 

姫路「ところで、明久君の着物姿がどうとか・・・・・・」

 

島田「ちょっと、アキ」

 

秀吉「姫路と島田!わしと話でもせんかの!?」

 

後ろでは秀吉が姫路と島田を足止めしてくれていた。

 

明久「助けてムッツリーニ、光一!僕たちの名誉の危機なんだ!」

 

貴浩「そうなんだムッツリーニ、光一、俺達を助けてくれ!!」

 

ムッツリーニと光一のいる席に倒れこむように駆け寄る。

すると、僕の行く手を遮るように大きな身体が邪魔をしてきた

 

雄二「後にしろ。今は俺が先約だ」

 

貴浩「ん、雄二?」

 

目的地に先に陣取っていたのは雄二だった。

いつものツンツン頭が少し萎れているように見えるが何かあったんだろうか?

 

明久「ムッツリーニに光一に、何の話?」

 

康太「・・・・・・・・・・・・雄二の結婚が近いらしい」

 

明久「雄二と霧島さんの結婚?僕はてっきり婚前旅行もすんだから、

   もう子供ができた事にされているのかと」

 

貴浩「そうかもしれないな」

 

雄二「・・・・・・明久、貴浩。笑えない冗談はよせ」

 

え?何、笑えないのか?

 

明久「僕達の方も大変だけど、一応雄二の方が先だからね。雄二に何があったの?」

 

雄二「・・・・・・実は今朝、翔子がMP3プレーヤーを隠し持っていたんだ」

 

貴浩「MP3プレーヤー?それくらい別に良いんじゃないのか?

   雄二だって前に学校に持ってきてたし」

 

その後、鉄人に没収されてたけど

 

雄二「いや、アイツは結構な機械オンチだからな。

   そんな物を持っていて、しかも学校に持ってくるなんて不自然なんだ」

 

霧島は光一と同じで機械オンチなのか。

 

雄二「そこで怪しく思って没収してみたんだが、

   そこには捏造された俺のプロポーズが録音されていたんだ。

   それに婚約の証拠として父親に聞かせるつもりのようだ」

 

明久「へぇ~、それは災難だったね」

 

雄二「MP3プレーヤーは没収したが、中身は恐らくコピーだろうし、

   オリジナルを消さない事には・・・・・・」

 

貴浩「・・・・・・・・・・・・」

 

雄二「そんなわけで、ムッツリーニと光一にはその台詞を録音した犯人を

   突き止めてもらいたい。さっきも言ったようにアイツは機械オンチだから、

   きっと機械に長けた実行犯がいるはずなんだ」

 

光一「明久殿と貴浩殿は?」

 

と、光一とムッツリーニが俺達の方を向いてきた。

今度は俺達の事情を聞いてくれるみたいだ。

あまり長々と言いたい話でもないし、端的に説明しよう

 

明久「実は、僕の着物姿(女性物)とウェディングドレス姿の写真が

   全世界にWEB配信されそうなんだ」

 

光一「・・・・・・・・・・・・何があったのですか?」

 

貴浩「それはさすがにはしょりすぎだろ・・・・・・」

 

その疑問はもっともだ。

 

―――――――――――――――説明中―――――――――――――――

 

明久「そんなわけで、その写真を作った犯人を突き止めて欲しいんだ」

 

貴浩「俺も明久と同じだ」

 

雄二「何だ。2人も俺と同じような境遇か」

 

康太「・・・・・・・・・・・・脅迫の被害者同士」

 

光一「お二人にこんな事をするとは許さねぇ」

 

貴浩「こんな事で仲間ができてもな・・・・・」

 

そうやってそれぞれの説明を終えたところで、

ガラガラと教室の扉が開く音が響いた。どうやら鉄人がやってきたみたいだ

 

西村「遅くなってすまないな。強化合宿のしおりのおかげで手間取ってしまった。

   HRを始めるから席についてくれ」

 

そう告げる鉄人は手に大きな箱を抱えていた。

きっと今言っていた強化合宿のしおりが入っているのだろう

 

康太「・・・・・・・・・・・・とにかく、調べておく」

 

光一「俺の方でも調べておきます」

 

雄二「すまん。報酬に今度お前の気に入りそうな本を持ってくる」

 

明久「僕も最近、仕入れた秘蔵の写真を十枚持ってくるよ。

   光一には今度ご飯でも作るよ」

 

貴浩「俺もムッツリーニには秘蔵本を持ってくる。光一は何か飯でも作るさ」

 

康太「・・・・・・・・・・・・必ず調べ上げておく」

 

光一「必ず成し遂げます」

 

光一もムッツリーニも快く引き受けてくれたので、

鉄人に睨まれないうちに素早く席に戻る。

俺と明久と雄二は特に目をつけられているので、

こういった時くらいは目立たないようにしないと身体がもたない

 

西村「さて、明日から始まる『学力強化合宿』だが、

   だいたいのことは今配っている強化合宿のしおりに書いてあるので

   確認しておくように。まぁ旅行に行くわけではないので、

   勉強道具と着替えさえ用意してあれば特に問題はないはずだが」

 

前の席から順番に冊子が回されてきた。

 

西村「集合の時間と場所だけはくれぐれも間違えないように」

 

鉄人のドスのきいた声が響き渡る。

確かに集合時間と場所を間違えたらシャレにならないな。

学力強化が目的とはいえ皆で泊まり込みのイベントに参加できないなんて寂し過ぎるしな。

きちんとチャックしておくか。

パラパラと冊子を捲って集合時間と書かれている部分を探す

 

今回俺達が向かうのは卯月高原という少し洒落た避暑地で、

この街からは車だとだいたい4時間くらい、

電車とバスの乗り継ぎで行くから5時間くらいかかるところだ。

 

西村「特に他のクラスの集合場所と間違えるなよ。クラスごとでそれぞれ違うからな」

 

Aクラスはきっとリムジンバスとかで快適に向かうんだろう。

そうなると俺達はやっぱり狭い通常のバスだろうか。

もしかすると補助席や吊り革かもしれない

 

西村「いいか、他のクラスと違って我々Fクラスは現地集合――」

 

『『『『『案内すらないのかよっ!?』』』』』

 

あまりの扱いに全級友が涙した。

 

鉄人は残りの伝達事項を伝え教室を出て行く。

現地集合はあまりにひどいので俺は鉄人の後を追った。

 

貴浩「鉄人先生!話があるんだけど」

 

西村「鉄人と言うな。で織村兄、話とはなんだ?」

 

貴浩「強化合宿の話なんですが」

 

西村「なんだ?」

 

貴浩「それなんですけど…知り合いの車で行く事って許可ってとれますか?」

 

西村「…まあそうだな。それならいいだろう」

 

貴浩「ありがとうございます。あともう1つあるんですが」

 

西村「今度はなんだ?」

 

貴浩「合宿初日って移動日ってことで自由日なんですよね?」

 

西村「まあそういうことになってるがそれがどうした?」

 

貴浩「せっかく卯月高原に行くんで外でまあ楽しみたいなと思いまして・・・」

 

西村「なにをするつもりだ?」

 

貴浩「まあしいて言うなら外でBBQとかしたいななんて思っていたり・・・

   後片付けとかはちゃんとしますよ。もちろんごみも全て持ち帰ります」

 

西村「・・・・・・バカなことはしないと言えるか?」

 

貴浩「・・・・・・もちろんですよ」

 

西村「最初の間が気になるがまあ良いだろう。許可してやろう」

 

貴浩「おぉ!さすが鉄人!話がわかる!」

 

俺はそう鉄人に告げると教室に戻った。

 

 

       ☆

 

 

教室に戻ると

 

雄二「貴浩どこ行ってたんだ?」

 

貴浩「合宿の事で鉄人と交渉しに」

 

明久「鉄人と?」

 

貴浩「ああ、さすがに現地集合ってのはきついからな。金額的にも」

 

秀吉「確かに卯月高原じゃと金額の負担が大きいの」

 

貴浩「ということでさ光一、頼みがあるんだが」

 

光一「わかりました。クラス全員が乗れるバスを手配しておきますね」

 

貴浩「さすが光一。話が早い」

 

楓「ありがとうございますね光一君」

 

貴浩「あとは初日だけだがあっちについたら少しBBQの許可をもらった」

 

雄二「・・・・・・よくそんな許可取れたな」

 

貴浩「ダメ元で言ったら許可もらえた」

 

明久「それならいくら勉強合宿って言っても楽しくなりそうだね」

 

こうして俺達は合宿初日どうするかを話合った。


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