古い妖怪がキヴォトスに迷い込む話   作:ふぁっしょん

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書き散らし


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 腹が減るというのは、腹にものが入っているから減るのであって、そもそも入っていなければ減るものもない。そういうわけだから飯は食わない。

 そういったひとがいたから、なるほどと思って真似て、もうずいぶんと経つ。

 そのひとは酒ばかり飲んでいた。妖怪でもないくせに、ずいぶんと外れていたように思う。

 もう見なくなって随分とたつ。どこにいったのか、知らない。

 

 

 私は冷たくて硬い床に寝転んで、やはり寝心地が悪いから、そのへんの葉っぱでも毟って布団にしようと思った。

 それで外を歩いていると、なにやら妙な子供たちがいた。

 頭の上に、やはり妙なものが浮いている。ちょうど模様のようで、光っているような、なんともいえない。

 

 じろじろと見られながら、私は落ちた葉をつかんだ。

 葉はまとまって、大きな玉になった。

 それをひとつふたつみっつと用意して、掴んだ。

 葉の塊は大きく膨らんで、大玉転がしの玉のようだ。

 

 それをひっつかんで帰路を歩いていると、視線を感じた。

 どうやらさきほどの少女たちが、追いかけてきているようだった。

 追われるというのは、あまり好きではない。

 けれど用を聞くのもなんだから、私はそのまま廃墟に戻った。

 少女たちはついてくるようだった。

 

 寝床ともいえない床に葉を積むと、なんだかふかふかとして見えるが、実際のところそうでもない。

 水気のある葉に包まれていると、体が酷く冷えるものだ。

 こういうときに使える術があるから、それで葉を枯らすことにした。

 

 

 ちょいちょいと手指を回してから、軽く息を吐いて、口笛を逆から鳴らすようにして吸う。

 葉の緑色が、だんだんと失せていく。

 枯れ葉は茶色いが、この術をかけると、なんだか橙色に、そして透けてみえるようになる。

 寝心地はそう変わらないから、気にすることはない。

 

 中に埋もれていると、やはり視線を感じた。

 みると、さきほどの少女たちが、わたしを妙な目でみていた。

 気になって眠れないから、口を開く。

 

「なにか用ですか」

「よ、ようというか……」

 

 もじもじするばかりで、要領を得ない。

 少し、怯えも感じた。

 考えてみるけれど、思いつくのは物乞いくらいだ。

 枯れ葉がほしいのかもしれない。

 

「もし、これがほしいなら、あげましょう」

 

 そういって、私は枯れ葉の山から抜け出した。

 山が少し崩れて、音をたてた。

 床に少し散った。

 

 

 少女たちの横を抜けて、私が外へ出ると、少女たちも外へ出た。

 怪訝に思うけれど、答える気配もないし、私はもう一度、同じ道を辿った。

 葉を集め、玉にして、持ち帰り、枯らした。

 

 それで、その橙色の葉の山に埋もれた。

 少女たちは、先ほど用意した山に埋もれた。

 視線が消えて、私はようやく気が抜けた。

 

 ぼんやりと昔を思っていると、だんだんと睡魔が寄ってきた。

 本当の睡魔の気配はないから、比喩だ。

 瞼を閉じて、私は眠ることにした。

 

 

 外では風がびゅうびゅうと吹いている。

 そのほかに音は、少女たちの吐息だけだった。

 私は寝た。

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