同級生の美少女四姉妹に勉強を教えていたら何故か好かれてしまった件 作:水垣するめ
姫花たちが去った後、俺はたちはリビングに残っていた。
俺が自分の部屋へと戻る間際、「時間ある……?」と引き留めたからだ。
「なんだ、俺は今すぐ勉強に戻りたいんだ。手早く用事を済ませてくれ」
「ひ、ひとつ聞きたいことがあるんだ……」
「聞きたいこと?」
「あたしが匂いフェチってことを言ったら、御才っちの冤罪はなくなってたかもしんないのに、何であの時あそこまで秘密にしててくれたの?」
「別に、何となくだ」
「で、でもあのままじゃ姫花たちに鬼嫌われるって分かってたのに?」
「……ああもう分かった、正直に話す」
俺は照れくささを感じて頭をかきながらも、すたぁに説明する。
「必死に勇気を振り絞って秘密を打ち明けてくれたやつに、そんなことするなんて俺にはできなかった。それだけだ」
「……」
「それに、味方になってやるって言ったしな。ま、あいつらは全部知ってから、俺のしたことは徒労だったんだがな!」
俺の言葉を聞いたすたぁは拳をかたく握りしめながら立ち、唇を小刻みに振るわせていた。
そして……じわっ、と涙目になった。
「うっ……」
「な、何で泣くんだよ……」
「ぐすっ……だってぇ……っ!」
瞳から次々と溢れてくる涙をすたぁは、泣きながらその涙を拭う。
「今まで変だから隠してて、でもみんなは知っててそれを認めてくれて、その上御才っちにそんなことまで言われたら……誰だって泣くってぇ……! うぇぇぇぇんっ……」
「ちょ、待て、一旦落ち着けって!」
「むりぃっ……! うぇぇぇぇんっ……」
それから俺はすたぁを泣き止ませるのにしばらくかかった。
「鼻かむか」
「かむぅ……」
差し出したティッシュを受け取り、鼻をかむすたぁ。
そしてまだ目尻の赤いすたぁは、へへ、と笑顔を浮かべる。
「ありがと。あ、てゆーかさ」
すたぁは何かを思いついたかのようにピンと人差し指を立てる。
「こんだけしてくれたんだから、何かお礼するよあたし。あたしにしてほしいこととかない?」
「ないな」
「な、何でもいいよ? 本当にありがとー、って思ってるし。……何ならほっぺにチューくらいなら、するし……」
すたぁは自分で言って、顔を赤く染めた。
そんなすたぁに俺は……
「マジでいらん」
「は、はぁ!? なにそれちょっと酷くない!? あたし、けっこー可愛い方だし普通ちょっとは嬉し──」
叫ぶすたぁの頭にぽん、と手を置く。
すたぁは目を見開いて黙った。
「俺は見返りが欲しくてそんなことをしたわけじゃないんだ」
「でも、それじゃあたしの気が済まないし……」
「じゃあそうだな……お前が妹だからってのはどうだ。お兄ちゃんは妹との約束を守るものだろ? ……すたぁ?」
すたぁは俺が喋っている途中で両手で顔を覆ってしまった。
「…………やばい。今のはマジでやばい」
消え入るような呟きが返ってくる。
(そ、そんなにキモかったか……)
俺はその言葉にちょっと落ち込んでいた。
確かに、今の自分のセリフはかなり恥ずかしいと思ってたが、すたぁもドン引きしてたな……。あ、やばい死にたくなってきた。どうしよう。
恥ずかしい……確実に黒歴史だこれは。
「すまん、今のは忘れてく……」
「あ、あたし自分の部屋に戻るね!」
すたぁは俺の言葉よりも早く、俺の横を駆け抜け、自分の部屋へと戻っていった。
「そ、そこまでキモかったのか……」
俺はショックのあまり、しばらくリビングで立ち尽くしていた。
【すたぁ視点】
「やばいやばいやばい……っ!」
あたしは廊下を走り抜け、自分の部屋へと急ぎ入る。
「あぁぁぁぁぁぁっ……!!!」
そしてベッドに飛び込むと、ジタバタと悶えながら顔を枕に押し付けて叫んだ。
そうでもしないと、多分廊下まで声が響いていたかも知れないからだ。
「やばい……なにあれ、カッコよすぎない!?」
顔が信じられないくらい熱い。手でパタパタ煽っても全然収まらない。
(心臓めっちゃバクバクいってるんですけど! これって部屋の外まで聞こえてんじゃないの……!?)
思い出すのは、彼の初めて見る優しい笑顔と、頭を撫でられた感触。
ぎゅっ、と枕を抱きしめる。
「あんなの、好きになるしかないじゃん……!」
ずるい。本当にずるい。
匂いフェチのことを知られた時から、そんなこと全く意識してなさそうなのに、あたしの心に的確に響いてくることばっかりして。
おかげでずっと心臓は鳴りっぱなしだ。
つい昨日の夜までは、彼のことは恋愛対象として見てなかったのに。
「う、まさか御才っちにハートを射止められることになるとは……」
だって、お兄ちゃんだって思ってたんだもん……。
一番最後に姉妹になった姫花と秋乃で妹が増えるのは慣れてたし、早く御才っちのこともお兄ちゃんとして見れるようにならないと、って頑張ってた。
だけど……
「義妹って…………もう無理だよ。御才っち……」
この日、あたしは人生で初めて、恋に落ちた。
夕飯時になると、明音があたしのことを部屋まで呼びにきた。
「すたぁ、ご飯だよー」
「あ、うん。今行くね」
「あれ、すたぁどうしたの? 顔が真っ赤だよ」
「えっ!? 嘘っ!?」
慌てて顔に手を当てる。確かに熱い。
やばい。この状態で御才っちの前に行くの、超ハズい……!
何とかおさまれー!
「熱かな?」
「う、ううん。ちょっと待って、深呼吸したら治るから」
そう断ると深呼吸をする。するとちょっと気持ちが落ち着いてきた。
「どう? まだ顔赤いかな……」
「確かにもう赤くないけど……本当に大丈夫なの?」
「うん、ほんとに大丈夫。なんでもないから」
そう誤魔化してリビングへと向かう。
すると、すでに御才っちは椅子に座って、参考書みたいなのを読んでいた。
「っ!!!」
深呼吸したはずなのに、御才っちの顔を見た瞬間、また顔が熱くなってきた。しかもさっきよりも更に熱い。
「すたぁ、なに突っ立ってんの。もう食べるわよ」
「えっ」
あたしがぼーっと立ってると、姫花が声をかけてきた。
気づけばご飯はすでに配られていて、みんなはもうすでにテーブルに座っていた。
もしかしてあたし、御才っちに見惚れてた……!?
「あ、あはは……ごめんねー」
テーブルに座ろうとするが、ここで問題が発生した。
座る場所が、御才っちの隣しか空いてなかったのだ。
もちろん離れたところに移動しようと思えばできるけど、お皿を移動させるのってなんだか感じ悪いし……。御才っちに嫌われたくない。
「どうした、早く座れよ」
「う、うん……」
御才っちが急かしてくる。
これ以上は不自然だ。あたしは覚悟を決めた。
(い、行っちゃえーっ!)
覚悟ガンギまりで御才っちの隣に座った。
…………マジやばい。心臓の音聞こえてるでしょこれ!
隣に座る御才っちの顔を見る。
ドキィッ!
(やばいやばいかっこ良すぎる! てかマジでどーしよ、好きが溢れすぎて好きで爆発しそうなんですけどー!?)
もう一度御才っちの顔をチラ見してみる。
キリッとした眉に、シュッと整った鼻筋。男の子らしく突き出した喉仏。
やっぱりカッコよすぎりゅ……!
え、やっぱり御才っちってめっっちゃイケメンじゃない!? あたしの気のせい!?
小声で「きゃー」と叫んでたら怪訝そうな目で見られたけど、全然そんなこと気にならなかった。
そのあとは夜ご飯を食べたけど、姫花のご飯はめっちゃ好きなのに、ドキドキしすぎて味が分かんなかった。
「あ、御才っち」
「お、すたぁか」
ご飯を食べた後、リビングに行こうとしたら御才っちとすれ違った。
「今からお風呂?」
「ああ。さっき明音が上がったって伝えに来てな。勉強もちょうどキリいいし、入ろうかなって」
「へ、へー」
ちょっと会話するだけでも心拍数上がってやばい。
「ん?」
すると御才っちがあたしを凝視してきた。
「え、御才っちどうかした? なんか変なとこある?」
考えてることがバレたかと思って焦るあたし。
「いや、厚着なんだなと思って」
「え、そ、そうかなー……別に普通じゃない?」
Tシャツと短パンの上にパーカーを羽織っているのが、あたしの今の格好だ。
……た、確かにちょっとだけ意識はしてるけど。
御才っちは怪訝そうなこっちを目で見てたけど、最終的に興味を失ったようだった。
「まぁいいか。じゃあ、俺は入ってくるから」
「あ、じゃああたしから皆んなに言っとくね」
「さんきゅな」
「う、うん、行ってらっしゃーい……」
お風呂に行く御才っちを見送る。
あたしはみんなが集まってるリビングへと向かった。
「もー、秋乃強いよー!」
「ふふ、このゲームではまだまだ負けないよ」
秋乃と明音はテレビで乱闘ゲームの対戦をやっていて、もうすでにお風呂に入った姫花はソファでスマホを見ながら寛いでいた。
にひ、とあたしは笑う。
「ひーめか」
あたしはいつもみたいに姫花に抱きつこうとして…………やめた。
「どうしたのよ」
姫花が振り返って、不思議そうに首を傾げた。
「だ、だって……キモいでしょ。匂い吸われるとか……」
「別にいいわよ。匂い吸って」
「……え?」
「だから良いって言ってるの。今までずっと嗅がれてきたんだもの。もう何とも思わないわ」
私がぽかんとしていると、秋乃と明音も会話に混じってきた。
「そーそー、もう慣れたよね」
「私も別に気にしないよ!」
「みんな……」
「ま、諦めただけなんだけどね」
「うっ……まじごめん……」
「謝らなくて良いわよ。ほら」
姫花を髪を手で払い、ふわりと香らせる。
良い匂い……。香りにつられて姫花に抱きつき、思いっきり空気を吸い込んだ。
「あぁぁぁぁぁぁ……幸せぇ……」
へにゃりと顔が緩むのを我慢できない。
お風呂上がりの女の子の匂いサイコー……。
満足するまで姫花の匂いを堪能すると、あたしは抱きついたまま姫花にお礼を言った。
「姫花」
「何よ」
「ほんとにキモがんないでくれてありがと……」
「当然でしょ。私たちは姉妹なんだから」
姫花はスマホを見たままだったから、表情は見えなかった。
でも、耳は真っ赤に染まっていた。
「姫花〜っ!!」
「ちょ、ちょっと力強いわよ!」
「何やってんだお前ら」
リビングにお風呂から上がった御才っちがやってきた。
タオルで髪を拭いている。Tシャツにズボンとラフな格好で、いつもより少し薄着だった。
「……っ!」
あたしはその姿を見て固まった。
「ちょっと、ちゃんと髪拭いて来なさいよ」
「男は髪が短いからこれでも良いんだよ」
「うわー、ガサツ。もしかしてドライヤーも使わないの?」
「その分勉強できるだろ」
「信じらんないんだけど……」
「男子はすごいねー」
「多分御才さんは男子の中でも特殊だと思うけど……」
みんながそう言っている間、私は……
(う、うそうそうそ……! 何これえっちすぎりゅんですけど……!? お風呂上がりのしゅきぴの威力やばすぎゆ……!!!)
ドキドキを抑えるので必死だった。
濡れた髪ってこんなにインパクトあるの!? 腕の筋肉のつきかたとかあたしと全然違くて男の子ー! って感じだし、しかも鎖骨とかくるぶし見えてて色気やば……!
(てか待って! よく考えたら好きぴと一緒に住んでるってアドすぎない!? 普通だったら見れないこんな姿も見放題じゃん最高じゃん! あたしってちょーしあわせ……)
「俺の味方はいないのかよ……。じゃ、俺は部屋に戻るから」
「え」
御才っちのお風呂上がりの姿を噛み締めている間に、御才っちは自分の部屋に戻っていってしまった。
も、もっと見とけばよかった……。
でも、一緒に住んでるんだからこれくらいもっと見れるよね。気にすることないって!
心の中で残念な気持ちを振り切るように、あたしは立ち上がる。
「あ、じゃあ次あたしは入ってくるね」
あたしはみんなにそう入って脱衣所へと向かった。
そして脱衣所の籠の前で、あたしは立ち止まった。
脱衣所の洗濯物を入れる籠には、さっき御才っちが脱いだ服が入れられていたのだ。
「……」
あたしは無言でそれを手に取る。
……スゥ。
女の子とは違う、男の子の匂い。
「やば……ちょっとクセになるかも……」
と、そこでハッと我に帰った。
「って、あたし何やってんの。これじゃガチで変態みたいじゃん!」
慌てて御才っちの洗濯物を籠に入れて、お風呂に入った。
煩悩をなくすために冷水シャワーを浴びた。
でも思ったより冷たかったから、すぐにやめてお風呂に浸かった。
あたしの煩悩が消えるのはまだ先みたいだ。
注:すたぁの御才を見る目には乙女フィルターがかかっているので美化されています。
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