同級生の美少女四姉妹に勉強を教えていたら何故か好かれてしまった件   作:水垣するめ

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11話

 

 その日は、実力テストがある日だった。

 入学して一週間と少しが経過した今、実力テストで改めて気を引き締めさせよう、という進学校ならではの催しのようだ。

 

「あ゛ー……マジ疲れたぁ」

「実力テストがあるなんて聞いてないよぉ……」

 

 いつもの食堂にて、すたぁと明音はよほど実力テストが疲れたのか、机に突っ伏している。

 

「ほとんど中学の範囲だったろ。何がそんなに疲れることあるんだよ」

「そんなのもう全部忘れたに決まってるじゃん」

「そうそう春休みの間に全部抜けちゃいましたよ」

 

 ぐったりしている二人に対して、対する俺は問題のプリントに丸をつけていた。

 ちなみに、今日も当然の如く明音に連れてこられたわけだが、もう俺は若干諦めている。

 

「御才っちは何してんの?」

「自己採点。テスト終わりに答案が配られただろ。お前らもしとけよ」

「うっ……それは、明日やるよ……」

「わ、私も……」

 

 こいつら絶対にやらないな……。

 

「待たせたわね」

「ちょっと列が混んでたね」

 

 秋乃と姫花が昼食を乗せたトレーを持ってやってきた。

 姫花は机の上にプリントを広げた俺を見て引いた顔になった。

 

「うわ……もう自己採点してるの?」

「あはは、御才くん。本当に勉強熱心だよね……ちなみにどうだった?」

 

 秋乃がちょっとワクワクした顔で聞いてくる。

 

「ま、そんなに自慢するほどでもないがな……全部満点だ」

「やば、まじ?」

「わーお」

「す、すごいですね御才さん……」

「ちょっとドヤ顔なのがムカつくわね……」

「全部満点ってすごいよね。結構難しい問題もあったでしょ?」

「毎日起きてから寝るまで勉強すればあんなの楽勝だ」

「御才くん、テスト満点で頭いいのに言ってること脳筋すぎない?」

 

 ほっとけ。

 

 

 

 

 そして放課後。

 

「御才っちー! 帰ろうぜー!」

 

 すたぁが俺を教室に迎えにきた。

 最近、すたぁは登下校をなるべく俺と一緒にしたがる。一応は俺も信用されているということなのかもしれないが、クラス中から注目されているので、大声で名前を呼ぶのはやめて欲しい。

 最近耳に入ってきた噂では、俺は「学校でも有名な美少女四姉妹となぜか仲がいい勉強オタク」と言われているらしい。そのまんまじゃねぇか。

 

「あ、すたぁ。私も一緒に帰るー!」

 

 クラスメイトと話していた明音もすたぁが来たことでカバンを持ち、帰る体制になった。

 

「あれ、御才さん。どうしたんですか? お腹でも痛いんですか?」

「なぁ……前から思ってたんだが、なんで俺がお前らと一緒に帰らなきゃいけないんだよ」

「連れないなー御才っち。あたし達と一緒に帰りたくないわけ?」

「帰りたくない」

「あはは! 塩すぎてマジウケるんですけどー!」

「もー、御才さん。酷いですよ」

 

 すたぁはあっけからんと笑い、明音は頬をぷくっと膨らませて起こる。

 確かに、普通の男子高校生ならこの美少女二人と登下校できるなんてご褒美以外の何物でもなく、嬉しいだろう。

 だが、一緒に登下校するのを続けていれば、当然俺とこいつらが一緒に住んでいることがバレる可能性も高くなる。

 それが学校中にバレるのはマジで避けたい。だから一緒に帰りたくないのだ。

 と、その時。

 

「おい。ちょっと今のは言い過ぎじゃないか」

 

 俺たち三人の間に一人の男子生徒が割って入ってきた。

 髪を茶髪染めたチャラい感じの、制服を着崩した男子生徒だ。

 俺の記憶が確かなら、明音によく話しかけている男子生徒だ。ちなみに名前は忘れた。

 

「言い過ぎって、何が」

「二人に暴言を吐いたことだよ」

「あー。あたしたちそういう仲だから別にいいんだよ? 気にしないで」

「そうです。私達はこれが普通なので……」

 

 すたぁと明音が俺と男子生徒の間に割って入って、フォローを入れてくれる。しかし……

 

「いえや、俺に任せてくれ。ちょっと一発カマしてやっから」

 

 男子生徒はすたぁの言葉を聞かず、席に座っている俺の前に立った。

 俺は理解した。

 多分、この男子生徒は俺が明音やすたぁと親しくしていることを前から快く思っておらず、ついに我慢の限界が来て俺に絡んできたのだろう。

 そしてついでにすたぁと明音に格好いいところを見せようとしているのだろう。

 

「お前なんか、この二人には相応しくねえんだよ!」

 

 男子生徒が俺を指さして叫ぶ。

 明音はその言葉にムッとなったが、すたぁは、

 

「はぁ……?」

 

 今まで見たことがないような怒った表情で、男子生徒のことを睨んでいた。

 

「あんたさ、何サマなわけ? 横から急に入ってきていちゃもんつけてくんなよ」

「え、いや、その……」

 

 男子生徒はすたぁの眼力に押され後ずさった。

 

「あたしたちがそういう関係だって言ってんのに、無視して御才っちのこと貶すとか、ガチでない。そういうのマジで無理だからやめてくんない? てか、さっきから露骨にあたしらのこと狙ってきてるのバレバレだから」

「なっ……!?」

 

 男子生徒はすたぁの出す怒気に完全に飲まれていた。

 その横で俺は……

 

(こいつ、怒ると怖いなー)

 

 と呑気にそんな感想を抱いていた。

 でも、あの怒気が俺に向けられてないからまだ正気を保てているが、俺にあれ向けられたら多分泣くな。だって俺メンタル弱いし。

 だが、その男子生徒は諦めなかった。

 俺を睨みつけると、

 

「おい、勝負だ!」

「勝負?」

「お前が負けたら二人に……いや、高坂さん四姉妹に関わるな。いいな!」

 

 男子生徒が俺に勝負を仕掛けてきた。

 

「ちょっ、そんな勝手に……」

「そうですよ、そんなの……」

「いいぜ、その勝負受けてやる」

「え、ええ!? 御才っち!? 何そんな変な勝負受けてんの!?」

「だが、代わりに俺が勝負の内容を決めさせてもらうぞ。なんのメリットもない勝負を受けてやったんだからな」

「良いだろう」

「じゃ、勝負の内容は入試の順位だ」

「あっ、あー……」

 

 すたぁが全てを察した顔で引き下がる。

 本当は今日の実力テストでもよかったのだが、早く勝負を終わらせたいし、まだ結果が出てないから不採用だ。

 代わりに、入試の結果ならすでに順位づけもされてるので分かりやすい。

 しかし、男子生徒は狙い通り、といった顔でニヤリと笑った。

 

「かったな! テストの点数で勝負してくると思ったぜ! だがな、お前が勉強オタクだかなんだが知らんが、俺もこう見えて勉強はできるんだよ!」

「できるんだその見た目で……」

 

 すたぁがそう呟いていた。お前もあんまり人のこと言えないぞ。

 

「俺の入試の順位は八位だったぜ!」

「そうか、俺は一位だ」

「……は?」

 

 男子生徒はぽかんとした後、いちゃもんをつけてきた。

 

「う、嘘だ」

「は?」

「い、一位とかそんなの嘘に決まってんだろ! 証拠でもないと信じないぞ」

 

 自分は証拠出してないくせに、面倒くさいなこいつ。

 どこに入試の成績書しまってたっけ、と鞄を漁る。あ、見つけた。

 

「ほら証拠だ。ちゃんと一位って書いてるだろ」

 

 流石に成績書を見せたら認めざるを得なかったようだ。

 男子生徒は悔しそうに唸った後、また俺を指差してきた。

 

「ぐっ……だがまだ決着はついてないぞ。今日の実力テストの点数で勝負だ!」

「いや、一回勝負なんだけど……」

 

 小学生がよくやるじゃんけんに負けた後に「三回勝負!」って言い出すやつみたいだな。

 

「てか実力テストでも……」

「おーう天草! まだいたか!」

 

 その時、担任が教室にやってきた。

 入学式にはきちんとスーツを着ていた担任は、もうジャージになっていた。

 担任はこっちへと向かってくるやいなや、突然肩を首だし、バンバンと肩を叩いてきた。

 

「お前すげーなー。実力テスト、全部満点だって!? 先生たちの間ではその話題で持ちきりだぞ!」

「い、痛いですって、背中叩くのやめてください!」

 

 俺はやめろと言うが、担任はバシバシと叩くのをやめない。

 

「細けーこと気にすんなよ!」

「細かくないわ!」

「で、今何やってんの? 勝負とか聞こえたけど」

 

 担任は男子生徒と俺を交互に見る。

 さっきの担任の話を聞いて、呆然とした顔で俺を見ていた男子生徒は目を泳がせた後、

 

「あ、いえなんでもないです……」

 

 と言ってさっさと逃げてしまった。

 どうやら実力テスト満点という話を聞いて、恐れをなしたようだ。

 

「ありゃ、どっか行っちゃった」

「てか、早く仕事に戻ってくださいよ。いつまでいるんですか」

「そうだな、もう戻るよ。…………そろそろ怖いし」

「は?」

 

 担任の謎の言葉に首を傾げると、担任は「じゃーな」と言って去っていった。

 視線?

 担任が最後に見ていた方を見ると、すたぁがそこには立っていた。

 なんですたぁが怖いんだ? まさか担任、ギャルが苦手なのか……?

 

「まぁいいか。帰るか」

「あ、じゃあ私も帰ります!」

「あたしもー!」

 

 俺たちは三人並んで通学路を歩く。

 明音は普通の距離感なんだが、なんかすたぁの肩がより近くなってるのは気のせいだろうか。

 

「あ、ちょっと待ってくれ」

 

 俺は自販機の前で立ち止まる。

 そして缶コーラを一つ買って、すたぁに投げて渡した。

 

「何これ?」

「さっきのお礼」

「さっきの?」

「俺のために怒ってくれただろ。さんきゅな」

 

 ちょっと照れくさかったので、俺は顔を逸らしながらお礼を述べる。

 するとすたぁは少し目を見開いた後「えへへー」と顔の表情を緩めて、俺の腕に抱きついてきた。

 

「お、おい腕組むなよ……!」

「えー、別にいいじゃんこれくらい! だってあたし妹なんでしょ、お兄ちゃん?」

「おい、それを外で喋るな」

「み、御才さん私は! 私にコーラは!」

「お前はほとんど突っ立てただけだろうが」

 

 そうして俺たちはわちゃわちゃと話しながらも家に帰ったのだった。




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