同級生の美少女四姉妹に勉強を教えていたら何故か好かれてしまった件   作:水垣するめ

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3話

 

「全く寝れなかった……」

 

 翌日、俺は寝不足のまま高校に登校していた。

 なぜかといえば、昨日の出来事で頭がいっぱいだったからだ。おかげで勉強もあんまり手につかなかった。

 だが、案ずることはない。昨日ちゃんとあいつらとは生活で干渉しないでおこう、と約束を結んだからな。

 

「俺の勉強ライフは保障されたはずなんだが……」

「だが?」

「なんでお前はここにいるんだよ」

 

 明音が俺の机の前にしゃがみ込んで、俺の顔を覗き込んでいた。

 

「いや、だって私クラス一緒ですし。あ、もしかして、昨日頭の中で勉強して私が自己紹介してたの聞いてませんでしたね!」

 

 ギクっ。

 

「そうじゃねえよ。俺とお前は昨日、お互いに不干渉で行こうって約束しただろうが。昨日の今日でなんで、話しかけてくるんだよ」

「確かに姫花とはしてましたけど、私はそんな約束をするって言ってませんよ?」

「ぐっ……、バカっぽいくせに小賢しい……!」

「というわけで、私は普通に教室でも御才さんに話しかけまーす!」

「話しかけてくんな」

「そんなつれないこと言わずに」

「そもそも、なんで話しかけてくるんだよ」

「え? だってせっかく兄妹になったんですよ? 親睦を深めて……」

「わ、わー! 何を言おうとしてんだお前!」

 

 俺は慌てて大声を出して明音の声を掻き消した。教室中の視線が集まってくるが、今の発言を聞かれるよりはよっぽどマシだ。

 明音は不思議そうな顔でこてん、と首を傾げた。

 

「どうしたんですか御才さん。そんなに大きな声出して」

「お前、ちょっとこい!」

「うわぁ、御才さん!?」

 

 俺は明音を連れ出した。

 人気のない廊下までやってきた俺は、明音を壁際まで追い詰めると、ドンと明音の顔のそばに手をついた。

 

「おい、明音」

「みみみ、御才さん! これは、まさか……!」

 

 何やら明音が焦っているが、俺には余裕がない。朝の予習もしたいしな。単刀直入に要点を告げた。

 

「俺とお前らが兄妹になったってことは、誰にもバラすな」

「え? なんでですか?」

「俺は勉強に集中したいんだよ。奇異の視線を向けられたくないし、噂されたくない。それに、お前だって俺みたいなやつと兄妹って言われるのは嫌だろ?」

「? 思いませんけど」

 

 明音は至極不思議そうな顔で首を傾げてそう言った。

 

「……とにかく、一旦はバラすのはなしだ。入学したばかりで変な注目の仕方をされたくないからな」

「え、御才さんはもうされてると思いますけど……」

「とにかく、俺とお前が兄弟ってことは絶対にバラすな。いいな」

 

 余計なことを言いそうだったので、明音の言葉に無理やり被せた。

 俺の言葉に明音は胸の前で腕を組んでむむむ、と思案する。

 

「うーん、御才さんがそこまで言うなら……分かりました! じゃあ、私とお友達になりましょう!」

「は?」

「お友達になれば、学校で堂々とお話しできますよ!」

「別に俺はお前とお話ししたくない。休み時間も勉強したいしな」

「じゃあ今日から私たち、学校ではお友達ですね! えへへ、男の子の友達第一号です!」

「聞いてねえ……」

 

 ため息をつく。

 説得するのは時間の無駄だな。俺はポケットから取り出した単語帳を広げると、明音のことは無視して教室に戻ることにした。一旦は兄妹とバラさないって約束は取り付けたしな。最低限の目的は果たした。

 

「あれ、なんで急に教室の方に戻るんですか御才さん? 御才さーん! え、もしかして無視ですか!?」

 

 後の問題はどうやって明音に話しかけられないようにするかだが……骨が折れそうだ。

 

 

 

 それから入学一発の目の授業は特に問題なく進んだ。

 この学校は進学校なので、入学早々授業が始まるのだ。

 明音は、その明るく話しかけやすい雰囲気と、加えて美少女なので休み時間は男女問わず囲まれてしまい、俺の方には無理に俺に関わろうとはしてこなかった。

 しかし昼休みになると、また明音が俺の方へとやってきた。

 クラスメイトたちから一緒に食べないかと誘われていたが、「ごめんなさい、先約があるので!」と断っていた。

 明音はさっきと同じように目の前で俺のじーっ、と俺の方を見ている。そして口を開いた。

 

「つかぬことをお聞きしますが御才さん」

「なんだ」

 

 教科書に目を落としたまま返事する。

 

「御才さんは、学食でお昼を食べるのでしょうか」

「そうだが、それがなんだ」

「いえ、聞いただけですよ」

 

 そして明音は立ち上がると、

 

「それじゃ御才さん! 食堂に行きましょう! みんなが待ってますよ!」

「は? みんなって……おい!」

 

 明音は俺の腕を掴むと、強引に引っ張っていく。

 くっ……筋肉がないせいで女子の手すら振り解けないとは……!

 無理やり連れてこられたのは食堂だった。

 明音は俺の腕を掴んだまま、キョロキョロと食堂の中を見渡している。

 

「あ! いたいた! みんなー!」

 

 明音は何かを見つけると、また俺の腕を掴んで風の如き速さでそっちへと向かう。

 運動神経が良い明音は良いが、年中勉強漬けで体力がなく、もう限界だった俺は半ば明音に引きずられていた。

 

「ゼーッ、ゼーッ……」

「うわっ、何これ、グロッキーになってるけど……」

「わーお、顔が真っ青だ」

「お、御才っちも来たんだ! ちーす!」

 

 顔を上げると、そこには予想通り姫花と秋乃、すたぁがいた。てかなんだよ御才っちって。

 

「御才さんを連れてきました! さぁ、みんなでお昼にしましょう!」

「えー、ひめ、こいつと一緒に食べたくないんだけど……」

「奇遇だな、俺もお前とは一緒に昼飯なんか食いたくねえよ」

 

 回復した俺は失礼なことを言う姫花に向かってガンを飛ばす。

 そんな険悪な雰囲気の中、姫花と俺の間に割って入ってきたのは明音だ。

 

「まぁまぁ、そんなこと言わずに二人とも。せっかくきょうだむぐっ!」

「わー! 何言ってんのよ明音!」

 

 姫花が慌てて明音の口を塞いだ。

 

「そのことは絶対にバラしたらダメだって! 私、こんなのと、その……きょうだい……なんて思われたくないもん! 人生の汚点よ……! ひめのイメージに傷がつくわ」

「俺もバラしたくないのは同感だが、そこまで言うか……」

 

 なんでこんなに嫌われてるんだ、俺。まぁ第一印象が最悪だったからしょうがないか。

 姫花の手を口から引き剥がした明音がえー、と眉を顰める。

 

「えー、私は別に良いと思うんだけどなー」

「そーそー、あたしも別に良いよ」

「私も。隠す方が大変じゃない?」

「な、何よ。みんな私とは違う意見なの……?」

「てか、さっきから視線が刺さるから、俺もう帰っていい?」

 

 こんな美少女四人と入学したてなのに絡んでる男子生徒は何者なんだ、という視線が食堂中から降り注いでいる。一刻も早くこの場から立ち去って勉強に戻りたい。

 

「駄目です。私とお友達になった以上、まずは親交を深めないと」

「えー、何それおもろいね。じゃああたしも御才っちとお友達になろ、ね?」

「嫌だ」

「あははっ! 即拒否なんですけど! まぁもう友達だし良いんだけどね」

 

 俺のスッパリとした拒絶をすたぁはカラッと笑い飛ばし、それどころか友達認定までされてしまった。

 えぇ……。ギャルの友達判定早すぎるんですけど。

 

「ねぇ、とりあえずお腹空いたしさ、ご飯買いにいかない?」

 

 すたぁの友達判定の早さに若干引いていると、秋乃のよく通るハスキーボイスが割り込んできた。

 

「そうね、とりあえずご飯を買いに……」

 

 姫花がそう言っていると、

 その時、グゥゥゥ、と誰かのお腹が鳴った。

 少しの間の静寂。

 

「ひめじゃないわよ」

「私も」

「あたしの音じゃないよー!」

「だれか庇ってやれよ……」

 

 こいつらに四姉妹の絆はないのか。腹の音が鳴った張本人が俯いて顔を真っ赤にしてるだろうが。

 しょうがないので、俺が出した音じゃないが、とりあえず手を上げると棒読みで謝った。

 

「……あー、すまん。俺の腹が鳴っちまった」

「そそそ、そうですね! 御才さんのお腹も鳴ってるし、早く買いに行きましょう!」

 

 あからさまに一人だけ動揺した明音がそう言った。分かりやすすぎだろ。

 

 

 

 食堂で各々食事を買うと、空いている席を探す。

 

「あ、あそこにしましょう」

 

 昼休みが始まってそこそこ時間が経っているので席はないかと思ったが、案外席は空いているもので、ちょうど六人がけのテーブルが見つかった。四姉妹はトレーを持ってそのテーブルへと移動していく。

 俺はもちろん他の席に行こうとした。

 

「じゃあ、俺はこれで……」

「あ! 逃しませんよ御才さん!」

「そーそー! 一緒に食べようぜ、御才っち!」

 

 しかし、明音とすたぁが俺の隣にピッタリ張り付かれて逃げることができなかった。

 

「……俺は勝手に勉強するからな」

 

 観念して席に座ると、親子丼をレンゲで食べながら教科書を開いた。

 明音とすたぁが俺の隣に座り、対面に秋乃と姫花が座った。姫花は俺から一番遠い対角線上にいる。

 

「うっわ、ご飯中も勉強するとか、どういう神経してんの? 引くわー」

 

 姫花がドン引きした顔で若干身を引いていた。勉強してるだけでなんでそんなに引かれなきゃいけないんだよ。

 

「ねぇ、御才くん、で良いよね? なんでそれだけしか食べてないの?」

 

 秋乃が俺に質問してきた。

 

「あ、私も気になりました。もしかしてダイエット中ですか?」

「そうそう、男子だったらもっと食べないと、もたないんじゃないの?」

 

 明音とすたぁも俺に身を寄せて質問してきた。暑苦しい。

 

「食べすぎると眠くなるからな」

「へー、勉強のためにお昼も少なくするなんて、本当に御才さんは勉強熱心ですねぇ」

「別に、これでも十分足りるぞ。逆にお前らの方が食べ過ぎなんじゃないか」

 

 俺は四姉妹のトレーに視線を落としてそう言った。

 明音はカレーにカツ丼、すたぁは大盛りのとんこつラーメン、秋乃は生姜焼き定食、姫花はきつねうどんだった。姫花と秋乃はともかく、前者二名は明らかに平均よりも大食いだ。

 俺の指摘に明音は顔を赤くして、すたぁはぷくっと頬を膨らませる。

 

「なっ、何を言うんですか御才さん! 私はただ運動するから、ちょっと多めに食べてるだけです!」

「そうだよ御才っち! 放課後に友達と遊ぶから少なかったら元気なくなるじゃん! そういうことなの!」

「うわ、最悪……。女の子にそんなこと言うなんて」

「そうだよ御才くん、デリカシーないよ」

 

 姫花はドン引きで、秋乃はムッとした表情になり、四姉妹から総スカンを食らった。

 

「わ、悪かったって……」

 

 流石の圧に俺は謝罪する。

 

「本当ですよもう……御才さんは反省してください!」

 

 プンッ! と明音は怒って顔を逸らしてしまった。

 しかし次の瞬間には「あ、そうだ!」と言って、笑顔で俺の方に質問してきた。

 

「御才さんはいつ家にくるんですか?」

「……は?」

「あれ? 聞いてませんでしたか?」

 

 明音はカレーを一口頬張って続けた。

 

「今週末、私たちの家に引っ越してくるんですよね?」

 

 ……全く聞いてないんですけど。

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