ナズーリンと名乗った鼠の少女は私達に敵意を向けているわけではなさそうだ。
だが、信用するには早すぎる。
エズラはもうすでに信用し切ってしまい、屈んで目線を合わせて笑顔で談笑している。
あの墓場から伸びる道を歩いていると、周囲に木が見えるようになってきた。
「森...か。」
「魔法の森って呼ばれてる場所さ。魔女とか妖怪が住んでるよ。」
魔女、妖怪...。
ねじれの類と考えていいのだろうか?
「魔女?魔女ってあの...魔女ですか!?」
テンションが上がりに上がっているエズラがはしゃぐ。
「私...小さな頃から魔女に会うのが夢の一つだったんです!」
「そりゃあ良かった。多分向こうも人間を取って食ったりはしないだろうから。」
舗装されているのかいないのか分からない、そんな道を歩いていると沢に行き着いた。
サワガニだと思われるカニがのんきに歩いている。
垂直に切り立った崖のような壁面は、六角柱状に割れているようであり、苔むしている。
また、沢には無数の洞穴があり、最悪ここで夜を過ごすことになっても大丈夫そうだ。
そんなことを考えながら歩いていると、足元に気配を感じた。
エズラと私は反射的に後ろへと跳躍した。
「ちぇ~。せっかく久しぶりの人間だったのに。」
などと宣い水底から姿を現したのは、水色の洋服にキャスケット帽を被った少女だった。
「探偵先生!アレ、河童ってヤツじゃないですか?」
河童。聞いたことがない。
「ご明察~!」
「河童だったら...尻子玉、抜かれちゃいますね。」
「河童は一応爬虫類なので、スティグマ工房のでいいですかね。」
「...やっぱ、高いのばっかり選ぶよな。」
コートの内側から煙管を取り出し、煙を吹かす。
エズラは鞄から特徴的な紋章が浮かび上がる、熱を帯びた緋色の剣を取り出した。
そして、水面からもう2体、河童とやらが現れた。
数的有利を相手に取られている今、私がとった行動。
それは、げっ歯類の耳を持つ少女に目線で助けを求めること。
面倒臭そうな顔をしながらも、私たちの隣に降り立ち、背中のダウジング棒を抜いた。
当然、相手は丸腰だったのですぐに降伏された。
「...何だったんでしょうね、アレ。」
その場を離れようと足を進めていると、
「ちょっと待ったァ~~ッ!」
緑のキャスケットを被った青髪の河童。
私は煙を深く吸い込んだ。エズラは剣の加熱を始めた。ナズーリンは身構えた。
「わぁ!?ちょ、ちょっと待った。」
「何も喧嘩や敵討ちをしようってわけじゃないよ。ただ私の同族が迷惑をかけてしまったみたいだから..。」
私たちは一応、構えを解いた。
「そういえば、自己紹介がまだだったな。」
聞いてない聞いてない。
「私は水棲の技師、河城にとりだ。」
・スティグマ工房
熱を発するタイプの武器の製造、販売を都市で行う工房。
結構わかりやすいし協力なので人気。