迷ったなら"書くな"....。
だがもう迷いはない。
「これと...これと、これ。あとは...これも....」
隣で私の優秀な友達が本を拾い集めている。その大半は読めない文字で構成されている。解析にも少し時間を要しそうだ。
「はい...ありがとうございます...。」
私たちは、未だ熱の冷めない人里で、"本居 小鈴"という愛想のいい少女が働く本屋...小鈴庵の跡地で、焼け残った本を回収していた。
「これ...一体何語で書かれているの..?」
「それは...多分古代の天狗の文字で書かれた植物に関する本ですね。」
天狗...。
「少し読んでみてもいいかしら?」
「はい!大丈夫です。」
ぱらぱらとページをめくる。とてもこの世の物とは思えない植物たちが私の視線を出迎えた。やはり、一切見覚えのない文字だった。
「やっぱり読めないわね...」
それを聞いた小鈴は照れくさそうに笑って言った。
「実は私...少し前にどんな文字でも読める能力に目覚めて...」
どんな文字でも読める...。
そんな彼女を少し羨んだ。
「それにしても...本当に、復興にはだいぶ時間がかかりそうだな。」
そう言われて、再び周りを見渡す。
霊夢は人里に住んでいるであろう人と話しているし、幽香は彼女の能力で花を咲かせている。
「...私たちが、」
あることに気が付いた。それはどこからどう見ても一時の悪い考えに過ぎなかったが、それでも震える唇から声を出すしかなかった。
「本を開かなければこんなことは...」
"起きなかったんじゃないかしら"の部分は言う事ができなかった。
それでも近くにいた二人は察してくれたようで、
「まぁ...でも、あんな本が急に現れたんだから調べるしかなかったわけだし...それに、俺たちが来ても来なくても幻想体はここに来てたかもしれないだろ?」
「何があったのか...詳しくはわからないんですけど....。多分、アンジェラさんはそこまで悪くないと思います。」
二人は私をフォローしてくれたが、私は座っていた縁側から立ち上がって
「少しだけ、一人にさせて。」
そう言い放って、その場を後にした。
幻想体はやはり危険なんだ。
...当然だよね。真鍮の雄牛はTETHクラスの幻想体。
ロボトミ―の、幻想体から抽出したE.G.O.で武装した職員ですら殺せてしまう可能性がある。
...もしも、幻想郷にALEPHクラスの幻想体が出現したら、あの優しい住人達はどうなってしまうのだろう。
星と成り、死体の山の一部になって、
黒い森を守るための犠牲となり、偽の救世主に死という救済を押し付けられる。
またある者は擬態のための皮にでもなるのかもしれない。
ローランは私たちが来なくても幻想体は現れていたかもしれないと言ったが、私は覚えている。
幻想郷に来た時の、幻想体の力が抜け落ちた感覚。
それは幻想体のクラスが上位であるほど穴が開いていき、ALEPHクラスの幻想体は全員放たれてしまったと考えてもいいだろう。
自分でしたことの責任は取らなければならない。
「これもそれで、それもこれだから。」
私は川の畔で、夕陽に誓った。