「...もしもーし。」
木陰で眠りこけている女の子に向かって話しかける。
周囲の草は二枚の葉が抱き合って伸びており、恐らくスズランであることが予測される。おそらく春にはスズランの花が辺りを白く染めるだろう。そして、スズランの毒気はその場の空気を吸うだけでも私の身体に影響を及ぼすことも容易に想像できた。
目の前で無防備に寝ている少女はウェーブのかかった金髪をショートボブ
にしていて、その頭には赤いリボンが蝶結びで結ばれており、黒と赤のワンピースが人形を彷彿とさせる可愛らしさを醸し出している。
しかし、それにしても小柄だ。大きめの人形程度のサイズしかない。
果たして起こしたところで有益な情報は得られるのだろうか。
そんなことを考えると、目の前の人形のような少女が青い瞳を見せた。
「ん...」
「あなた、もしかして人間さん?」
いきなり話しかけてきた。
「え?ええと...広い意味で言えばそうなるのかな?」
人間から意識と脳を機械に移植されて、もう一度人間に戻された私を人間と呼べるのかはまだわからない。
「そっか...。」
「あっ!あの!」
なんだかマズい気がしたので話を変える。
「私、気づいたらここにいて...。何か知ってることとかない?」
女の子は笑顔になって、
「えぇと...確か...."幻想入り"だっけ?この間教わったの。」
「幻想入り...?」
「そう、"外の世界"から人や物が入り込んでくることだって。」
"幻想入り"、"外の世界"。
聞きなれない言葉だが、大体の意味は理解できた。
「それじゃあ...ここに黒いスーツを着た男の人とか、空みたいに青い髪の人は来なかった?」
ローランとアンジェラについて聞いてみる。
「うーん...。この丘には最近人は来てないしなぁ。」
「そっか...ゴメンね、起こしちゃって。」
「いいのいいの。あなたいい人そうだし、気に入っちゃった。」
気に入られたみたいだ。
「それじゃあ私、行くね。」
「行く?行くってどこへ?」
「え?それは...って、あ。」
忘れていた。そういえば私は今ここが何処かも知らないし、どちらに向かえば何があるのかもよく知らないのだ。
「ふふ..。おっちょこちょいな人間さん。一人じゃ心配だから」
「そう..それはありがたいけど...。」
「じゃあ決まりね?一緒に行こう~♪」
そうして歩き出した少女に、一つだけ聞き忘れたことがあった。
「ま、待って。」
「...?」
こちらを振り返り、首をかしげる。
「あなた...名前は?」
「私は"メディスン・メランコリー"よ。あなたは?」
「私は...マルクトよ。」
「それじゃ、行こう。マルクト。」
日の高い日の昼の事だった。
・マルクト
歴史の階指定司書
長い茶髪に赤のヘアバンドがチャームポイント。瞳も茶色。かわいいねぐへへ。
得物は直剣。なんだかおっちょこちょいなイメージがある。かわいいねぐへへ。