家の扉をノックする。
周囲は捻くれた広葉樹や何かとカラフルなキノコが生える森で、目の前にはファンタジックな西洋風の家が建っている。
「はーい、ちょっと待ってて。」
中から若い女性の声が聞こえてきた。
扉が開く前に、一応身だしなみを整えておく。
木の軋む音と共に開かれた扉の向こう側には、誰も居なかった。
まるで自動で扉が開いたかのように、無人の玄関と廊下――大量の人形が飾られているため無人とは言えないが――が広がっていた。
呆気に取られていると、ズボンの裾を引く感触があった。
下を見ると、人形が自動で動いていた。
人形を引く糸も、何も見えない。ただ人形が動いていた。
人形は無言で私を引っ張り、家の中に招いた。
やはり、家の中には多くの人形が飾られていた。
そして、その人形たちはせわしなく飛び回り、家事をしていた。
玄関から伸びる廊下の角を曲がった先には大きめの部屋があり、その部屋には揺り椅子に揺られながら丸い眼鏡をかけて、ランプの明かりで人形に着せるのであろう小さな衣服を縫っている若い女性が居た。
彼女は短くウェーブのかかった金髪に赤いヘアバンド――にしては随分細いので恐らくリボンと思われる――を着用しており、青のワンピースのようなノースリーブと白いスカートを着用していた。
そして、彼女は私に気づくとこう言った。
「あら?見慣れない顔ね。」
一瞬の思案の後、
「もしかして..."外来人"かしら?」
外来人。
文字通りであれば、外から来た人であるということ。
「あまり状況が掴めていないのですが...恐らく、そうだと思います。」
「そう、それなら霊夢に戻してもらうのがよさそうね。」
図書館に戻ることはできるという意味だろうか。
しかし、まだここに来ることになった原因は解決していない。
「待ってください、ここに黒いスーツを着た男性と蒼い髪の女性は来ませんでしたか?」
ローランとアンジェラの特徴を簡潔に伝える。
「...うーん。もしかして、ローランさんとアンジェラさんの事かしら?」
「今、どこに居るかわかりますか....?」
「いいえ...私も、その二人の事は人伝いに聞いただけだから...。
そもそも、その二人がローランさんとアンジェラさんであるかもわからないわ。」
そうか...。
ただ、それらしき人物はここに来ている。
「一応、私も知り合いに聞いてみるから。」
「そうですか...。ありがとうございます。」
「今日はもう暗くなるから、ここに泊まっていくといいわ。」
窓から外を見ると、日はすっかり傾いていた。
・イェソド
紫の短髪青年。何かと几帳面で一時期は"毒蛇"なんてあだ名も付いていた程。
実はかなり優しい性格で、初対面のローランの崩れていたネクタイをきっちり締めなおしてあげるなど。