「まぁまぁ、いいから呑みなよ~。」
隣に座っている長い茶髪の少女が酒類と思われる液体が注がれた器を差し出す。
「ありがとうございます...。」
もう大分顔が赤くなってしまっている少女はまだ酒を呑むつもりの様で、瓢箪に口をつけ、中身を口に流し込んでいる。
「それ、一体どれだけ入ってるんですか...?」
「えー?あぁ、文字どおり無限にだ。」
あまり呂律がまわっていないらしく、はっきりとしない発音でとんでもないことを言った。
「無限って...。」
先ほど差し出された器のお酒を呑み干して言う。少女は器の中のお酒が尽きたことを確認すると、手持ちの瓢箪からすぐにまた酒を注いだ。
「いーじゃんそんなことぉ~。それより、あんたはどうして幻想郷に..?」
"幻想郷"...だと思う。正確な発音はわからないのだが、恐らく幻想郷と言ったはずだ。
「知り合いを追っていたらいつの間にか...。」
「そうかぁ、知り合いかぁ~。」
にしても、この子ずっとお酒吞んでるな。
見た目は十代前半頃の、幼さの残る少女だ。
薄茶の長髪を先の方で1つにまとめていて、赤いリボンが着いている。頭の左右からは大きな捻じれた角が生えている。また、左の角にも青色のリボンが巻かれていて、シルエットに少しの変化をもたらしている。
白のノースリーブに紫のロングスカートという服装で、三角錐、球、立方体の3つの大きな分銅を腰から下げている。
「そろそろ日も昇ってくるかなー?」
見ると、山の向こうが薄明を帯びて輝いている。
「貴女は、この...えぇと、神社に住んでいるんですか?」
「私はどこにでもいるぞぉ~。」
「...どこにでも?それは――」
「ほれ。」
言葉の意味するところを質問する前に、彼女は実践して見せた。
「ほれ。」という声の後に、隣に座っていた女の子は霧散して消えた。
「...?」
目の前で起こったことが理解できずに固まっていると、少女が笑顔を浮かべながら元の姿に戻って、すでに瓢箪に口を付けていた。
「私の能力はね、"密と疎を操る程度の能力"...つまり、萃めることも、散らせることもできるの。」
「つまり...物体の密度を操れるってことですか。」
「そうそう、それで、さっきは自分の密度を低くして霧になったの。」
...本当にずっとお酒呑んでる...。
「ところで...
本当に、ずっとお酒吞んでますね。」
言わずにはいられなかった。さすがの自分でもそこまで飲み続ける事は出来ない。
「最後に素面だったの、いつですか?」
「うーん...大体百年くらい前だったかな~...?」
あまりにも現実味がない数字が出てきた。ただ、そろそろ酔いが回ってきたようで、特に気に留まることはなかった。
「...なんだか、とても長生きなんですね。」
「そりゃあ私は鬼だからな!」
鬼。まぁ、角も生えているし、その年齢でいくらでも酒を呑めている時点で薄々人間ではないと気づいていたが、鬼だなんて本でしか見たこともないような種族だなんて。
・ネツァク
芸術の階指定司書。長い緑髪をポニテっぽく纏めている性癖歪曲緑長髪飲酒無気力敬語不真面目お兄さん。