森中を探し回りましたが何も見つかりませんでした。怪物も、他の生き物も、太陽と月も。残ったのは一つになった3羽の鳥たちと黒い森だけでした。
「一体何なの!?」
紫がかった白髪をボブにしている、イヌ科の動物のような耳を頭から生やし、3本もの尻尾が生えている少女が毒づく。
頭の片側には特徴的な大きい紫色のメッシュが入っており、また、よく見ると裸足で走っているようだ。
これまた特徴的なのが、その手元。手首には赤いトラバサミが嵌っていて、彼女の手と連動して開閉している。
そんな彼女―――
幻覚作用のある胞子を元気に飛ばしていた茸も、月も太陽も星も、小さな動物さえも見当たらない。光も闇熱も冷気も、何もかもが逃げ出してしまったかのように、そこにはただ背の高く、暖かい、黒い木々が無数に生えているだけだった。
そんな彼女の前に飛び出してきた者がいた。
「成美..っ!?」
慧ノ子は反射的に足でブレーキをかける。それは成美と呼ばれた少女も同じだった。
「そっちはどうだった?何かいた?」
長い2つのおさげに笠が特徴的な少女は答える。
「いや、何も...。
...いや、遠目から見ただけだから定かじゃないけど...」
「続けて?」
「見たこと無い人間と、山の仙人がよくわからない化け物と戦ってたよ...。」
見たことの無い人間に、よくわからない化け物...。
「私たちも加勢した方が良いかなぁ?」
その問いに成美は残念そうに答える。
「残念だけど...森がおかしくなってから能力が上手く使えなくって。
だから、それを頼むなら魔法使いとかの方が良いと思う...。」
森の魔法使い...魔理沙かアリス・マーガトロイド...。
「でも、あの二人なら真っ先に化け物に襲い掛かって行きそうだし、そうしてないってことは留守にして...」
無数の目線が、木々の隙間から彼女を見つめていた。
「...ッ。」
一瞬だけ怯んだその隙を、化け物は見逃さなかった。
成美はまだ気づいて居ない。怪物が、その巨大な手を伸ばす。
...黒い衣服を纏った黒い髪の人間が、目の前を横切った。
私が何か言葉を発する前に、私達は黄金色の輝きと共に半尺ほどの距離を一瞬で移動していた。
呆気に取られている間に、山の仙人――
強い衝撃波が発生し、慧ノ子は顔を腕で覆った。
...しかし、それほど強い一撃でさえも怪物を負傷させることはできなかったようで、次の行動を許してしまった。
「止めきれない....ッ!」
化物は片腕を宙へ伸ばし、地面に叩きつけた。
「!!」
周囲の地形は抉れ、地面は弾け飛んだ。
そこまでに私達を移動させただけでほとんど動きを見せず、ただ眺めていた"人間"が怪物の方へ向き直り、
「避け難い困難が来ても、崩れることは無い様に。闇の中で始めて見えるのが星であるが故...。」