「幻想体...ね。ねるほど。」
外の世界から来たと思われる二人組から話を聞く。
「えぇ、もしかしたらまだこの場所にいるかもしれないから。」
「帰るのはそいつらが居ない事を確認してからがいいんだ。」
幻想体が居なくなるまでは帰らないという意思表示だろう。
ずっと頭の中で『白雪を出せ』と響いていた。
それはとても冷たく無慈悲で、しばらく動くことができなかった。
ローランがなんだか妙に強かったおかげでそのままくたばるのは回避できたが、もしあの時ここに居たのが私だけだったとしたらと考えると、背筋が冷える。
「わかった、霊夢には私から話をつけておく。」
「霊夢...?」
あー、ローランは会ってなかったんだっけ。
「霊夢、この神社の巫女のことだ。」
「あぁ...」
「ところで、ここに残るっつったって、行くアテはあるのか?」
「....ないわね。」
「ないな。」
そうかそうか、無いのか。
マジ?
無いの?あるから残るって言ったんじゃないの?
うーん...紅魔館かなぁ...。
日も暮れかけてるし、空を飛べないであろう彼らを夜までに紅魔館まで連れていける自信がない。
「一応"宿"にできそうな場所は知ってるけど...二人を夜までに連れていける自信がないんだよなぁ...」
と、その時、音もなく赤と白の巫女が舞い降りてきた。
「話は聞かせてもらったわ。」
「そもそも...俺たち残れるのか?」
「もちろんよ...そんなことより、移動手段に困っているのよね?」
すると、霊夢はお社の後ろに呼び掛けた。
「紫ー!?出てきなさいよ!」
はいはい、わたわた走って出てきたのは八雲紫だった。
「あんたのスキマでこの二人を紅魔館まで連れて行ってあげなさい。」
「もう...仕方ないをねぇ。」
幻想入りしてきた二人組は何が起こったのか分からず目を白黒させている。
そんな間に紫はスキマを開いていた。
「だぁいじょうぶよ♪別に2000年間ほど取り残されるとかはないから。」
などとよく分からないことを宣って。
「そ、そうか...。」
ローランが入り、アンジェラも入る。
「それじゃあ行ってくるわね♪」
紫もその後に続き、スキマが閉じた。
「私が居なかった間に何かあったの?」
「幻想体とかいうバケモノに襲われた。」
「今生きてるってことは返り討ちにできたのね。」
「あぁ、アイツらが強かったおかげだ。」
霊夢は、ふぅん、と相槌を打ち、
「まぁ、危ないから今日は泊まっていきなさい。」
「はいよ。」
長い夜が始まった。
・2000年間取り残される
都市でW社が執り行っているサービス「ワープ列車」のこと
ネタバレを含むのでよく読まずに次の話に進むなりしてほしい
都市でどこへでも10秒で行ける
と言われている最強の列車。
だと思った?
残念、ここは都市だ。
その実情は異次元空間を2000年間走り続ける列車だ。
異次元で2000年経過する代わりに現実では10秒も経たずに移動できる...。
そんな列車。乗る前になぜシートベルトや一等席なんてものがあるのか疑問に思わなかったの?
当然気が触れてしまうので最大限痛みを味わうために肉体を切り開いて表面積を広げる人間とかもいる。
2000年で国が起きて滅んでを繰り返したことだってあるし、ねじれが人間に変装して一等席の人まで巻き込んで人体改造をした記録もある。
そんな化け物どもをどうやって元に戻すのかというと、ここでW社整理要員の登場である
W社整理要員とは、めちゃくちゃになった乗客を元の座席に戻す人たちのことである。
混ざり合った乗客をきれいに切り分けるために空間ごと切断できる武器やらを携帯している。
結構強いらしい。
ちなみに特色フィクサーが通常座席に紛れ込んでいたことがあり、2000年間みっちりと鍛えられた乗客とフィクサーに整理要員がボコボコにされて、他の翼の手を借りる羽目になったこともあるみたい。
さて、そんなこんなで乗客を席に戻すと、W社の特異点である現状復旧の出番である。
W社の特異点はテレポートやワープの類ではなく、中身の物を元に戻す技術であった。というワケだぜ。