精霊の存在する世界に転生した宇宙の帝王 作:クー(無課金勢)
『地獄』
そこは、生前に大きな悪事を働いたと、閻魔大王の独断と偏見によって判断された者が送られる死後の世界。地獄に送られた者は肉体を失い、スピリッツ・ロンダリングマシンによって魂を何度も洗われ、生前の罪の度合いによって重い罰が与えられる。文字通り地獄のような責め苦を受けさせられる場所なのだ。
地獄から解放される方法は例外を除いてただ一つ。悪の心を完全に浄化し、罰を受け入れ、己の悪事を認めた上で、改心した者のみが、魂も記憶も初期化され、新たな生命体として現世へと生まれ変わることができる。生前とは完全な別人とはなってしまうが、そうして地獄から解放されることは可能だ。
そして今この時も、また一人の悪人が新たな生命体として生まれ変わろうとしていた。
「ふざけるなぁぁぁ!! オレは消えん! あの猿を殺すまで消えてたまるかぁ!!」
悪人の名はフリーザ。
銀河系一の軍隊と恐れられるフリーザ軍の帝王。銀河系中の惑星を片っ端から攻撃し、占領や破壊を行う宇宙規模の地上げ屋、その頂点に位置する存在だ。
その悪業と恐ろしさは銀河を管理する界王の耳にまで届くも、強力過ぎるその強さと軍事力から、放っておくしかないとまで言わせるほどである。まさに、『悪』そのものを体現したかのような恐ろしい存在だ。
しかし、そんなフリーザも無敵ではなかった。
かつて、己が惑星ごと滅ぼした種族の一つである、戦闘民族のサイヤ人。その数少ない生き残りにフリーザは敗北し、その魂を一度は地獄へと送られた。
本来ならば、フリーザのような自分の犯した悪事を反省するどころか、地獄へ落ちてなお、死者達をその圧倒的な力で支配するという悪事を働き続ける極悪人は生まれ変わる権利など与えられるはずがない。
しかし、とある事情により、急遽フリーザを生まれ変わらせることを閻魔大王は決定した。 そのとある事情というのが、ドラゴンボールの使用によるフリーザの復活だ。
ドラゴンボールとは、地球とナメック星という星にだけ存在を確認されている願い玉のことである。七つ集めれば巨大な龍が現れ、どんな願いでも叶えてくれる。『どんな願いでも叶えてくれる』というその言葉には限界はありつつも、偽りはない。製作者の力を超える願いでなければ、たとえ死者の蘇生であったとしても可能とする。
今回はそのドラゴンボールを元フリーザ軍の部下が集め、フリーザを生き返らせたのだ。 その上、フリーザは自らを倒した孫悟空と呼ばれるサイヤ人の男に対する復讐のため、過酷なトレーニングを行った結果、ただでさえ強力な力を持っていたにも関わらず、更なる強大な力を手に入れてしまった。
その強さは、この宇宙でもトップクラスの実力者である破壊神ビルスにも届きうる可能性すらあった。
幸い、フリーザは復讐の対象である孫悟空によって食い止められ、再度地獄へと送られたことで事なきを得た。
しかし、この件を深く受け止めた閻魔大王は、二度とフリーザという悪を蘇らせぬため、強硬手段を取ることにした。
それが、未だ改心しておらず、罪も受け入れようとしないフリーザを無理矢理にでも生まれ変わらせるという手段だった。
前例のないことではある。だが、地獄で与えられる罰程度ではフリーザには効果がない。反省どころか、更に怒りを増するだけ。改心などするはずがない。
もはや、正式な手順でフリーザを生まれ変わらせることなど不可能だった。
それに、地球のドラゴンボールは兎も角、ナメック星のドラゴンボールを使用されれば、再度フリーザが蘇る可能性すらある。
それを危惧した閻魔大王は強硬手段を取らざるを得なかった。
生まれ変わるということはある意味生き返ったとも言える。死者ならばともかく、生者を蘇らせることなどいくらドラゴンボールとはいえ不可能だろう。
勿論、フリーザ程の悪人がそれに抵抗しないはずもない。その強大な力を持って暴れ回り、地獄中に決して軽くはない被害をだした。だが、死者の魂に絶対的な権限を持つ閻魔大王の前では、たとえ宇宙の帝王であってもなすすべがなかった。
そのような経緯があり、フリーザという魂は新たな生命体となって生まれ変わった。
しかし、その時の閻魔大王は考えもしなかった。
どれほど魂が洗われ、記憶が無くなろうとも、フリーザほどの悪人の魂がたかだが一度生まれ変わった程度で悪の心が消えるはずのないことを。
そして、その強力な力を持った魂は次元の壁すら引き裂いて、世界の壁を越えていったことを。
これは、少年による愛と勇気の物語ではない。
これは、精霊と呼ばれる少女達による恋を知る物語ではない。
これは、宇宙の帝王として生まれ変わった少女による、恐怖と絶望の物語である。
「さあ、わたし達の
◯
そこは、とある無人島。日本周辺に存在する小さな島。本来ならば、誰一人いるはずのないその場所では、ごく普通の人生を送っている者からしてみれば、非日常的な光景が広がっていた。
島の中心部にあるのは、大きな隕石でも落ちたかのような巨大なクレーター。これだけでもかなりの驚きではあるが、その上空ではそれ以上の異常が起きていた。
まず目立つのは明らかに物理法則に逆らって空を飛ぶ武装した少女達。数を見れば五十人以上はいるだろう。そして、そんな武双した少女達に囲まれ、銃口を向けられる一人の少女。
武装した少女達に比べて、赤いシャツに白いズボンといった普段着のような格好をした少女。当然、武器など持っているはずもない。何も理解していない者からすれば、無抵抗の少女を一方的に銃殺しようとしているようにも見えるだろう。
しかし、真実は真逆だった。
現在、そこでおきているのは戦闘ではなく、一方的な虐殺。そして、狩られる対象は武装した少女達だ。
「い、いや……きゃああぁぁぁ!!」
「なんで! どうしてこんことに! ひっ……イヤぁあ!!」
「や、やだ! 死にたくな……ぁあ!!」
「ば……ばけもの…………ぁ!」
どれだけ銃弾を浴びせようとも、斬りつけようとも、命に届くどころか怯む様子すら見せないクレーターの少し上空に浮遊する少女は指先から放つ赤く光る光線によって、武装した少女達の命を一人づつ、ゆっくりと奪っていく。
その様子は、まさに虐殺劇という言葉がふさわしかった。
「おやおや、良い悲鳴を上げるではありませんか。その調子ですよ。もっとわたしを楽しませなさい。貴方達の存在など、その程度でしかわたしの役に立てないのですから。せいぜい、頑張って一秒でも長く生きてくださいね」
たった今複数の人間を殺したにも関わらず、平然とした様子を見せる彼女の姿は、紫色のボブヘアーに真っ赤な瞳。透明感のある白い肌に左右対称の整った容姿。その美貌は、街を歩けば十人中十人が二度見してしまうほどだろう……その顔が返り血と醜悪な笑みに染まっていなければ。
武装した少女達の命を奪いながら、本当に楽しそうな笑みを浮かべるその様子は、美しいどころか、この世で最も恐ろしい。
そんな笑みを崩さない彼女に武装した少女達のリーダー的な存在である大人の女性が怒りをぶつける。
「何が……何が楽しい! こんな地獄のような光景を作り出しておいて、私達を殺すのがそんなに楽しいのか!」
「……はぁ、何を言うかと思えば……随分と下らないことをおっしゃるのですね」
大人びた話し方をする少女はまるで呆れたかのように肩をすくめる。
「くだらない……ですって」
「ええ、そうです。そもそも、先に手を出してきたのは貴方達ではありませんか。人を殺しに来ておいて、自分達が殺されたらそのように怒りを顕にするなど、呆れて笑うこともできませんよ。もしかして、自分達は一人も欠けずに、このわたしを倒せるだなんて甘い考え持っていたわけではありませんよね? もしそうだとしたら、軍という組織には向いていません。大人しく転職することをおすすめしますよ」
「甘い……甘いですって! 部下達を殺したおまえがそれを言うかああぁぁぁぁ!!」
少女の嘲笑うかのようなその言葉によって、頭に血が上った女性は怒りに身を任せて銃の引き金を引く。それが合図となったかのように、周りの少女達も恐怖に怯えながらも一斉に銃弾を放つ。
「正論を言われて逆上、ですか……やはり理性のない猿ですね」
しかし、届かない。
少女が腕を軽く振るうだけで、突風が巻き起こり、銃弾を弾く。さらに、それだけでは留まらず、多くの少女達がその突風に巻き込まれ、勢いよく吹き飛ばされる。吹き飛ばされた少女達は近くの山に衝突し、その体はベチャ! と生々しい音を立てて潰れる。間違いなく生きてはいるはずがない。
「貴方がやるべきだったことは、わたしを殺すのではなく、少しでも多くの情報を持ち帰ることでしたね。勝てるはずのない戦いに挑むことほど、兵力の無駄遣いはありません。そもそも、わたしに敵対するという行為自体が愚かな選択ですが、それを差し引いたとしても貴方の行動は無能と言わざるを得ません」
「黙りなさい! 化け物に何が分かるっていうの! 私達には多くの人を守るという使命があるのよ!」
仲間の仇とでも言いたげな様子で、銃から持ち替えた片手剣を手に少女に斬りかかる女性。されど、銃の効かない相手にそんな攻撃が通るはずもない。あっさりと首を掴まれ、持ち上げられる。
「あ……がぁ……はな……せ…………」
「ほっほっほ。その五月蝿い口もこうすれば静かですねぇ。安心なさい、すぐには殺しません。貴方はそこでお仲間が殺されるのをゆっくりと見ているといいですよ」
「……や……めろ」
女性の言葉を無視し、少女はもう既に十数人しかいない武装した少女達を一人一人、より痛く、苦しむように武装した少女達は丁寧に見せつけるように殺されていく。女性は仲間であり後輩でもある少女達が悲鳴を上げながら命を落としていく様子を、ただその目に焼き付けることしかできない。
そうして、数分後には武装した少女達は全滅し、残った者は隊長である女性ただ一人となった。
「こ……ころ……殺して……やる。かなら……ず……お、まえ……を……わたしが……」
「わたしを殺す……ですか。そんなできもしないことをよく言いますね。今、貴方がすべきことは妄言を吐くのではなく、命乞いですよ」
少女は掴んでいた女性を地面に放り投げる。
「さあ、やってみせなさい。無様にみっともなく、頭を地面に擦り付けて、わたしに許しを乞うのです。今のわたしは気分がいいですから、特別に許してさしあげてもいいですよ」
地面に四つん這いになる女性を見下しながら、少女は笑みを浮かべる。きっとその顔に仲間の返り血が付着していなければ、女性からは天使のようにも見えていただろう。
「はぁ、はぁ……くっ、死ねぇ!!」
されど、女性は屈しない。痛む体を無理矢理にでも動かし、少女に首元に片手剣の刃を当てる。
しかし、
パリンッ!
「そうですか……やはり、貴方達はバカですね」
「な……んで」
その刃は、少女の皮膚を破ることはなかった。
確かに当たった。今までのように当たる前に防がれていたのではなく、確実にその刃は少女の皮膚へと到達した。にも関わらず、少女の頸が今もまだ繋がったままで折れたのは剣の方。 それの意味することはつまり、
少女の皮膚が剣の刃より硬い。
「いいでしょう。そこまで死にたいのでしたら殺してあげます。それにしても、貴方達は本当大したことがなかったですね。精霊を殺そうとしている組織が、どれほどのものか知りたかったのですが、これでは弱すぎて話になりません。わざわざ空間震の真似事までして呼び寄せる必要はなかったですね。まあ、ちょうどいい運動くらいにはなりましたから、少しくらいなら感謝してあげますよ」
「う、んどう……私達を殺しておいて運動ですって!!」
「おや、また怒らせてしまいましたか? これはすいません。わたしは純粋に感謝しているのですよ。まだ実力の一割も出していないとはいえ、久しぶりに体を動かせたのですから」
「ふ、ふざけないで!! 私達は生きてる! おまえの玩具じゃない!」
「そうですか……では、それが最期の言葉でよろしいですね?」
もう動くこともできず、ただ怒りを向けることしかできない女性に血に濡れた少女は指先を向ける。僅かに指先が赤く光っていることから、先程のような光線を放とうとしているのだと分かる。
「覚えてなさい。私が死んでも、きっと私の仲間がおまえを殺す。私の死は「もう黙りなさい」……あ……無駄、じゃ……な…………」
「ええ、覚えておきましょう。ぜひとも今度は戦力を整えてわたしを殺しにきてください。もっとも、死ぬのはわたしではなく、あなた達の方ですがね」
その言葉を最後に、少女の指先から放たれた光線が、女性の頭を貫く。脳を破壊された女性はそのまま横たわり、ピクリとも動かなくなる。
こうして、数分前までは五十人程いた少女達は、その短い時間で一人残らず生涯を終えた。
現れるタイミングと目的は不明。突発的に現れては現地へと赴いた隊員達を一人残らず虐殺して去っていく。空間震が発生することから、精霊であると考えられてはいるものの、霊力は感知されないもよう。
加えて、今まで発見された精霊が例外なく所有する天使と呼ばれる武装の確認はなし。単純に所持していないのか、所持しているにも関わらず使わないのか。それは未だ不明。
規格外の強さと隊員を一人も逃がさない残虐性、そして今までの精霊にない、いくつかの謎。
あまりにも不可解な点が多すぎる彼女は、軍の研究者ですらこの星の生命体でない可能性が高いと言わせるほど。
故に彼女はこう呼ばれた。
『
異なる法則を持った世界からやってきた、存在してはいけない別世界の精霊だと。
なんか思いついたネタです。
ここから先の展開を全然考えていないので、続きはしばらく後になると思いますが、人気が出そうだったら頑張って続きを書きます。