精霊の存在する世界に転生した宇宙の帝王   作:クー(無課金勢)

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もっと残虐なフリーザ様を書きたい……


終わりの始まり

 出会いは唐突に訪れる。

 

 人ならざる者を救おうとする少年と人ならざる者であった少女。

 

 彼と彼女の出会いは偶然か、それとも必然か。

 

 それを知るものは、きっとこの世には存在しない。

 

 しかし、これだけは間違いない。

 

 少年は少女の救いを望むだろう。

 

 少女は少年の救いを拒絶するだろう。

 

 そして、少年は少女と関わっていく内に知ることとなる。

 

 この世界には、救ってはいけない者が存在することを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 四月十日

 日本の天宮市にある来禅高校は、新学年を迎える学生で溢れていた。

 

「二年……四組か……」

 

 来禅高校に通う生徒、五河士道もその例外ではなく、廊下に貼り出されたクラス表を確認して、新しい教室に入る。

 

 座席を確認している際に鳶一折紙という面識のない美少女に声をかけられたり、それをきっかけに友人である殿町宏人にからかわれたり、そのついでに変なランキングの存在まで教えられたりと、新学期の早朝にしては少々ハードな時間を士道が過ごしていた時だった。

 

「ん……あ、あれは!?」

 

 教室の扉の方を見て、殿町が大袈裟に驚いた反応を見せた。士道もそんな殿町に釣られて視線を扉の方へと移す。

 

 入って来たのは、一人の生徒だった。

 

 紫色のボブヘアーに深紅の瞳、透けるかのような白い透明感のある肌に整った容姿。どこか清楚そうな雰囲気を醸し出す女子生徒がそこにはいた。

 

 彼女が歩を進める度に既に教室に来ていた生徒達の多くが笑顔に包まれ、快い挨拶がとんでいく。その全ての挨拶に彼女は人の良い笑顔で挨拶を返すと、士道の右斜め前にある自分の席にまで近づいた。

 

「おはようございます! 天王寺さん!」

 

 すると、殿町が士道を押し出すように前に出て、はきはきとした声を上げながら、腰を90度曲げて頭を下げる。今まで見た事もない真面目な殿町の様子に士道は呆然として言葉が出てこない。

 

 そんな士道を置いて、天王寺と呼ばれた少女は殿町の挨拶に笑顔で返す。

 

「ええ、おはようございます殿町さん。今日もお元気ですね。そちらは……五河士道さんですね。今年は同じクラスですか。よろしくお願いしますよ」

 

「え、お、おう」

 

「それではわたしはこれで……」

 

 先程の折紙の時と同様、面識のない少女に名前で呼ばれたことに士道は驚きつつも返答する。挨拶を終えると、女子生徒はまるでこれで用は済んだとでも言わんばかりに二人に背を向け、自分の席に着く。

 

「う~……天王寺さんと同じクラスになれるなんて、俺は幸運だ!」

 

「な、なあ、知り合いなのか? どうして俺の名前を知ってるんだよ」

 

 異様にテンションの高い殿町を不気味がりながらも、士道は湧き上がった疑問を問いかけずにはいられなかった。すると、殿町はまるで信じられないといったような反応を見せた。

 

「嘘だろお前……天王寺さんのことも知らないのかよ。いいか、天王寺怜花(てんのうじれいか)といったら、成績優秀、スポーツ万能、その上、親があの天王寺コーポレーションの社長だっていう才色兼備の令嬢だぜ。この学校に通ってて知らない方が珍しいぞ。」

 

「え、マジか!? 天王寺コーポレーションってあの大企業のか!」

 

 本人が近くにいるというのに、思わず士道も声を上げる。

 

 それも仕方のない話だ。天王寺コーポレーションといえば日本でも有数の大企業であり、そこで販売される商品はどれも現代の科学力よりも一世紀先を行くと言われるほどの革命的なものばかりである。いくら流行に疎い士道とはいえ、流石にその名前には心当たりがあった。

 

「やっぱり驚くよな。俺も初めて聞いた時は驚いたぜ」

 

「あれ? でもどうして俺の名前を知ってたんだ?」

 

「これは噂だが……天王寺さんは全校生徒全員の名前をフルネームで記憶しているらしい。だから勘違いなんてするなよ。名前を覚えられてるってだけで、告白して、玉砕した奴なんか山程いるからな」

 

「いや、いくらなんでも名前呼ばれただけでそこまではしないだろ」

 

「うるせぇ! モテる男には分からねぇよ! 今まで女子から名前を呼ばれたことなんてなかった俺の気持ちなんてな! あんな女神みたいな笑顔で笑いかけられたら俺のこと好きだと勘違いするに決まってんだろ!」

 

「お前もその一人かよ! よくあんな堂々と挨拶できたな!」

 

 理不尽な怒りをぶつける殿町に士道はツッコミを入れる。士道は常時欲求を解放している殿町と違い、そこまで女子生徒に飢えているわけではない。だからこそ、名前を覚えられていたとしても、不思議に感じはしても、勘違いすることはない。

 

 逆に言えば、とてつもなく鈍いため、これから先女性関係で苦労することになるのだが、それを今の士道はまだ知らない。

 

「そういえば、天王寺はランキングでは何位だったんだ?」

 

 そこで、話題は『恋人にしたい女子ランキング・ベスト13』に移る。

 

 主催者である女子が13位であったため、微妙な順位で終了したという、なんとも可哀想なランキングである。

 

「決まってんだろ。ぶっちぎりの一位だよ」

 

「決まってんのか?」

 

「そりゃそうだろ。天王寺さんがモテないはずがない。というか、ぶっちゃけ俺が付き合いたい!」

 

「いや、お前はフラれただろ」

 

「分かってるよ! いいだろ、夢見るくらい!」

 

 そんなコントを繰り広げていると、再度、教室の扉が開き、岡峰珠惠というクラスの担任である縁の細い眼鏡をかけた小柄の女性が入ってきた。タマちゃんというあだ名で親しまれる彼女は自己紹介を終えると、ホームルームの始まりを告げるチャイムが鳴り響いたため、士道と殿町の朝の会話は終了した

 

 そんな間も、冷花はずっとニコニコとした笑みを崩さないでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現在、士道は人気のない街中を全力で走っていた。かのメロスのように太陽の沈む十倍の速さではないとはいえ、今の士道が出せる限りの全速力で走っていた。

 

 いつもならば、友人や妹と共に食事をとっている時間帯。実際に今日も士道はこの時間に妹とファミレスで食事の約束をしていた。

 

 それが、どうしてこんなことになっているのかといえば、その原因は突如この町を襲った空間震にあった。

 

『空間震』

 

 それは文字通り、空間に起こる地震であり、世界各地で突発的に発生する大爆発でもある。その原因、発生タイミングは不明とされており、士道達が暮らすこの天宮市も空間震対策として、町の至るところに緊急避難用のシェルターが設置されている。

 

 そんな空間震の発生を知らせる警戒音、空間震警報が午前でカリキュラムを終えた来禅高校を含めた天宮市中に響き渡った。

 

 当然、最初は士道も避難しようとした。

 

 しかし、頭のどこかで嫌な予感をぬぐいきれなかった士道が自身のスマホで妹の琴里の位置情報を調べると、なんとそこには、琴里が避難しておらず、昼食の待ち合わせ場所として指定したファミレスにいると出てきたのだ。

 

 それを見た士道はすぐさま学校を出て、妹を探すために走り出したのだ。

 

 そして、人気ない街中を走って、走って、走り続けて、ようやくファミレスの近くまで来たその時、

 

 

 

 士道の視界は眩い光に包まれ、それと共に発生した大きな爆発音と衝撃波に襲われた。

 

 

 

「いってぇ……一体なんだ……』

 

 強力な風圧に煽られた士道はごろごろと後ろに転がっていくも、なんとか体勢を立て直し、痛む体を起こす。突然の出来事の混乱する士道だったが、目の前の光景を見て驚愕した。

 

「あの子は……」

 

 そこにいたのは、一人の少女だった。

 

 長い黒髪に紫色を基調としたドレスのような鎧を纏い、その手には現代日本にはあまりにも不似合いな巨大な西洋剣が握られている。年齢は士道と同じくらいの年頃だろう。その顔からは幼さを感じられるが、間違いなく容姿は一般的な女子高生と比べても整っているといえるだろう。

 

 そんな少女が、士道の目の前に広がる隕石でも落ちたかのようなクレーターの上に立っていた。どう考えても普通の少女ではないことは士道にもすぐに理解できた。

 

 突然現れた少女を士道が見つめていると、少女は士道の方を一瞥し、その剣を横薙ぎに振るった。

 

 その直後、

 

 

 

「伏せなさい」

 

 

 

 そんな声が耳に届くと同時に、いきなり周囲の重力が重くなったかのように、士道に強い重圧がかかった。咄嗟のことに抵抗もできず、士道は強制的に伏せたような体勢にさせられる。

 

 突然の異変に理解ができないまま、伏せた状態で士道が周囲を見渡すと、士道のすぐ後ろにあった建物が綺麗に切断されているのを目にした。

 

「ひっ……」

 

 思わず、士道は小さい悲鳴を上げる。もし、立ったままであったならば、士道も後ろの建物と同様真っ二つだっただろう。自分の上半身と下半身が切断された光景を脳内に思い浮かべ、士道は顔を青くする。

 

 そして、そんな士道に一つの声が近づいてきた。

 

「まったく……少し様子を見てみれば、精霊を前に無防備に体を見せるなど、よほど死にたがりのおバカさんのようですね。コレがあの()()の最重要人物だとは……呆れてものも言えません」

 

「ぇ……お、おまえは!?」

 

 それは先程、士道にかけられた声と同じものだった。咄嗟に首を可能な限り曲げ、声の聞こえた方向に視線を向ける。そして、そこにいた人物を見て士道は驚愕した。

 

「て、天王寺!? 一体どうして!?」

 

「おや、何を勝手に喋っているのですか? わたしは許可していませんよ。ああ。もしや言葉が理解できていませんでしたか。空間震警報が鳴ったというのに武装もしないで外を走り回っているのですから、どれほどのおバカさんかと思いましたが、知能のないお猿さんでしたか。なるほど、これは失礼しました」

 

 紫色の髪に赤い瞳、そして整った顔立ち。どういうわけか、来禅高校の制服ではなく、赤いシャツに白いズボンといったラフな格好をしていたが、そこには士道の新しいクラスメイトである天王寺怜花がいた。

 

 自分の許可なく口を開いた士道を不機嫌そうに見下ろす怜花は、これで二度目の会話となる士道に対して、侮辱とも取れる発言をする。

 

 流石にここまで言われる筋合いはないと、士道が言い返そうとしたその瞬間、

 

 ガキンッ!!

 

「……なんの用ですか? わたしの話を遮るなど、無礼ですよ」

 

「お前は、何者だ」

 

 いつのまにか怜花の背後に迫っていた少女がその手に持つ大剣を怜花に向けて振り下ろしたのだ。しかし、怜花は振り返ることもなく大剣を指一本で受け止めた。

 

「わたしはわたしですよ。あなたの方こそ、自分が何者かよく理解できていないのではありませんか? やはり欠陥品ですね。精霊などという御大層な名前を与えられているにも関わらず、この程度の実力しかないとは」

 

「なにを……言っている」

 

「いえ、お気になさらず。こちらの話です。それよりも、わたしに構っていていいのですか? あなたの敵はすぐ近くまで迫って来ていますよ」

 

 士道には怜花の言っていることは何一つ分からなかったが、怜花が指差した方向に宙に浮かぶ武装した少女達がいることに気がついた。その少女達はかなりの速度でこちら側へと近づいてきている。

 

「む、また奴らか」

 

 それを、士道と怜花を攻撃した少女も認識したようで、標的を二人から空を飛ぶ少女達に移し、まるで空を蹴るかのようにして飛んで行った。

 

 そして、数秒も経たない内に辺りには戦闘音が響き渡る。

 

 剣と剣がぶつかり合うような金属音、銃を使ったかのような発砲音、そして絶え間なく発生する爆発音。どれも、平和な生活を送っていた士道にとって聞き馴染みのないものだった。

 

「さて、それでは用事も済んだことですし帰りますか」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!!」

 

 そんな非日常的な戦闘音を全く気にしない様子の怜花は。未だ地面にへばりついたままの士道を放置して、どこかに行こうとする。

 

 いくらなんでも、この状況で『はい、そうですか』と納得できるほど士道は物分かりがよくない。必死に声を上げて怜花を引き止める。

 

「……ああ、そういえばそのままでしたね。その姿はとても無様で見応えがありますが、もういいでしょう」

 

 そう言って怜花がパチンッと指を鳴らすと、今まで士道を襲っていた重圧が消えたかのように体が軽くなる。今まで伏せていた士道は抑えつけられた力がなくなり、ようやく立ち上がることができた。

 

「それではわたしはこれで……」

 

「お、おい待ってくれよ! あの子はなんなんだ! それに彼女達のことも教えてくれ! あ、お前もなんなんだよ! 何が起きてるか分からないんだ! 頼むから説明してくれ!」

 

 再度どこかに行こうとする怜花を士道は自由になった体で引き止めようとする。

 

 しかし、怜花は士道の声を無視し、この場を去ろうとする。その様子に焦った士道が怜花の肩を掴みかかろうとしたその瞬間、

 

 ピッ!

 

「ぇ……」

 

 士道の顔スレスレを何か赤い光線のようなものが通過したかと思うと、士道の頬にパクリとなにかで切られたかのような切れ目が入った。

 

 一瞬何が起きたのか理解ができず、士道が自分の頬を手で触れると、ベタリと液体状のものが付着したのを感じた。恐る恐る自分の手のひらを確認する。そこには、少量ではあるが血液が付着していた。

 

 顔を青褪める士道に対して、振り返らずに指先だけを士道の方へと向けた怜花は冷酷に告げた。

 

 

 

「次は当てますよ」

 

 

 

 その言葉を最後に怜花はその姿を残像すら残さずに消した。怜花が一体なにをしたのか、士道はそれを理解していない。だが、これだけは分かっていた。

 

 あと数センチでも怜花が狙いをずらしていれば、今頃自分は死んでいた。

 

 その恐怖のあまり、士道はその場に崩れ落ちる。そして、一言も発することもなく、ただただ肩を震わせていた。

 

 

 

 

 

 

 これが、士道にとって初めての精霊……そして怜花との出会いだった。この時を境に士道の人生は大きく狂っていく。それは、五河士道という人間にとって愛と勇気の物語の始まりであったが、同時に地獄へと続く片道キップでもあった。




初手から自分で助けた主人公を殺そうとするフリーザ様。
これでもちょっと優しいくらいかもしれませんが、ここで主人公殺したら話が完結してしまうので勘弁してください。



感想、評価、ありがとうございます。
個人的にモチベの維持に繋がるのでとても嬉しいです。
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