邪神ナイアの冒涜的料理青春録   作:使命

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連載化しました。


邪神ナイア
身長 171cm
所属 ゲヘナ学園
部活 美食研究会
学年 3年生
年齢 17(?)
趣味 料理 食事
イメージCV 沢城みゆき(鶯餡子風味)

見た目

仲正イチカを大人っぽくして、鋭めの目付きに、センター分けのメンズカットにした感じ。瞳は黒に瞳孔が赤。ヘイローは真っ赤な色で歪んだ三日月に、嘲るように弓形な目が三つ。腰から触手を生やせる。

性格

クソ。"同じ人として"の人間の見方と、"商品として"の人間の見方を一切の矛盾なく同時に行う破綻者。そもそも、前世からの"男"の意識と今世の"女"の意識も混合せず存在してることから、相反する意識を矛盾なく抱く人間らしい人でなし


2. 給食部と豚の生姜焼き

 

 

 私が通うゲヘナ学園には、給食部が料理を提供する食堂がある。この給食部というのが、何とも聖人すぎる集まりなのだ。我らがゲヘナ学園の治安はクソ程悪い。スラム街やら紛争地域やらが瞬足を履いてスプリンターもかくやというスピードで逃げ出す程には。

 強盗略奪etc……。まったく、なんと非人道的なことをするのか。人に対して危害を加えたり、物を奪ったりなんど言語道断だ。肺に心臓、肝臓、腸、脳、子宮、腎臓、膵臓その他諸々。延べ合計4000万弱。人のことは大切にしよう。

 

 そんなこの場所で常識的な思考を持ち、剰え料理を提供しようというのが、部長の愛清フウカ、牛牧ジュリ筆頭のゲヘナ学園給食部だ。しかしまあ……何というか、この給食部には最大の欠点がある。

 

「……不味い」

 

 壊滅的に料理が不味いのだ。今食べてるのは唐揚げ定食だが、唐揚げは下味不足で衣も微妙。量はそこそこだが油っぽくて途中でくどくなる。給食部からすれば、数千人規模の生徒たちの給食を用意することに加え、単純な人員不足+実質まともに料理が出来るのはフウカだけという苦境のトリプル役満だ。

 

 それでも安く食べられるので皆来るのだが……

 

「……おい! なんだこの料理はふぎゅ!?」

「やあフウカ、御馳走様。久しいね」

「えっ、あ、ナイアさん! お久しぶりです!」

 

 なんか騒いでる生徒がいたので前歯を折って黙らせながら挨拶すると、フウカはにこやかに挨拶を返してくれた。めっちゃ可愛い。159㎝という絶妙な身長で見上げて来る天使。このゲヘナという暗黒で輝く良心。金輪際現れない一番星で究極のアイドル。外の富裕層に高く売れそうだ。

 

「どうでした? 今日の料理は」

「うーん。やはり下味不足だね。それと揚げ方がバラバラで油っぽい」

 

 そうですか……。とややしょんぼりした様子のフウカ。彼女自身の料理の腕前は高いのだが、一手間加えるだけで劇物を作るジュリやその他メシマズのせいだ。作る量も量だが、何よりそこが問題だ。これ以上この天使をしょんぼりさせるわけにはいかん。となると私の選択肢は

 

「そうだな……後で時間を作ってくれ。ジュリと君に一つ料理を教えよう、簡単で量作れて味が保証されてるやつ」

「いいんですか?!」

「勿論だとも。豚バラとキャベツを用意していてくれ。では私はこれで。……邪魔だよ、ここは配給制じゃないぞ。共産主義者か?」

 

 ということで約束を交わし、なんか口元抑えて蹲ってる少女を退かしながら帰路につく。材料とか買わないといけなくなったが、ジュリの失敗を前提に考えたら出費がヤバいことになりそうだ。

 

 

 ──────────────

 

 

 

「はーい。ということで今回教えるのは豚の生姜焼きでーす。質問あるかな?」

 

 教育番組のお姉さんが如く拍手をしながら言うと、フウカとジュリはノリ良く拍手を返してくれる。味よし。調理よし。大衆受けよし。食堂の代表的なメニューといえばやはりこれだろう。これにご飯と味噌汁をつければ三位一体、いと尊き父と子と聖霊もびっくりの完全無欠な昼食となる。

 

「はい!」

「はいジュリ」

「その……私たちに料理を教えて下さるのは有難いのですが、私は調理が苦手でして」

 

 苦手。苦手か。無害な食材を使って有害な劇毒を作り出すのは苦手という範疇なのか。

 

「問題ないよ。下拵えさえすれば後は焼きの工程だからね」

 

 ということでフライパンを温める間にキャベツを千切りにしておく。まな板の上で子気味いいリズムが響き、ものの3秒で1玉を切り終える。私の千切りはレボリューションだ。

 

「うそ、はやっ!」

「君たちは玉葱1個半をくし切りにしておいてくれ」

 

 残りの半玉は生姜、にんにくと一緒にすり下ろす。それを醤油、酒、味醂、砂糖を混ぜたものに加え軽く混ぜたらタレの完成。味付けはこれのみ。うん、簡単だ。簡単だよね? 

 

「豚バラはそのままフライパンに置く。ご飯と合わせることも考えて豚バラは薄切りに」

「油はひかなくて大丈夫なんですか?」

「豚バラは非常に脂が多いからね。却ってギトギトになる」

 

 ジュリの質問に答えながら肉の様子を見る。やはり肉が焼かれている瞬間ほど心躍る時はない。さながら今にも蕾を開かせそうな花を見てるかのような感嘆と高揚感だ。

 

「最初は触らずに片面が焼き色がつくまで待つ。焼き色がついてきたら混ぜてしっかりと炒めるんだ。……そしてここで1つポイントだ」

 

 両面にしっかりと焼き色がついたら、フライパンの脂をキッチンペーパーで拭き取る。

 

「……? 何をしてるんですか?」

「脂を除いてるのよ。豚バラは脂が多いからこのままだとタレの味がボヤけるんだと思う」

 

 流石フウカはよく分かっている。この料理への高い理解力を持つ生徒がいて何故ここは不味くなるのか。甚だ疑問である。

 

「そしたらくし切りにした玉葱を入れる。玉葱は残った脂に絡めるようにして炒める」

 

 玉葱がしなってきたら、タレを全部入れて豚バラと玉葱とよく和えて水気がなくなるまで炒めたら、山盛りの千切りキャベツと共に皿に移して、完成だ。

 

「はい邪神ナイア特製豚バラ生姜焼き。試食してみたまえ」

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 愛清フウカ、牛牧ジュリにとって、邪神ナイアは不思議な人物だ。かの食に対する熱意のあまり行く先々で文字通り火の回る、風紀委員会公認テロ組織『美食研究会』に所属し、彼女の作る料理は絶品と聞く。給食部も残酷なことに目をつけられていたのだが、彼女の入部以降、口を効かせたらしく美食研究会からの襲撃がなくなったので頭が上がらない。

 

 170の長身にスラリと伸びた御御足。黒髪を短くメンズカットに整え、白シャツに黒のロングコートとズボンに身を包む、端正な顔にニヒルな笑みを浮かべる"男装の麗人"という言葉にそぐわしい美女だ。

 

 ある日を境に時折ここに来るようになり、料理を食べてはやや苦い顔をして感想と改善点を言って帰っていく。ここ以外で会ったことがないので、授業を受けてるのか定かではない。その指摘はいつも的確であり、徐々にだが味も改善されてきている。そんな中で今日直接料理を教えてくれるというのはまたとない機会だ。

 

「ほら、冷めないうちに」

 

 試食として差し出された生姜焼き。生姜と甘い香りが食欲を刺激する。

 

「いただきます」

「いただきます」

 

 箸で切り分けてから口に運ぶ。薄く切り分けれた生姜焼きは、その食べやすさに見合わないほど深い味わいだった。甘めのタレに生姜の辛みと香りが広がり、その濃い味に米が──生憎、試食ということで用意されてないが──欲しくなる。

 

「……美味しいです!」

「本当に。材料は普通なのにどうやってこの味を……」

 

 フウカが生姜焼きを唸りながら食べていると、ナイアは笑いながら自身も箸を伸ばした。

 

「ハハハ、大した工夫もないけどね。味付けは長年の勘とでも言っておこうか。……そして1つ。生姜焼きとはこう食べるものだ」

 

 そう言うとナイアは盛られた千切りキャベツを肉で包み、口に運ぶ。ん〜。と美味しそうに声を漏らすのを見て、2人も同様に食べてみる。

 

「……! 凄いです!」

「下拵えさえしておけば注文受けたら焼くだけで済むからね。味も良くて大量に焼ける。まさに食堂の定番だ」

 

 豚の脂と濃口のタレがキャベツに絡まり、シャキシャキとした食感がアクセントとなり、肉単体で食べると濃い生姜焼きをさっぱりとさせる。昼食後であり、さして空腹でもなかったのだがパクパクと食べ進め、皿の上は空になった。

 

「……ふう。ご馳走様でした」

「美味しかったです」

「お粗末さま。……ジュリ、満足してるとこ悪いがここからは練習の時間だ」

 

 うっ……。と目を逸らしていた事実を刺され、声を詰まらせるジュリ。反対にフウカはやる気に満ち溢れ、既に新しい豚バラを取り出している。

 

「さぁやるぞ。焼くのは無理でも下拵えまでは出来るようになってくれ。明日の分の……そうだな、300は下拵えしてもらう」

「えっ、えぇ〜! 今から300もですか!?」

「他の給食部の子にも教えれるようになるまでだ。大丈夫! そのうち人気が出て1000は最低作るようになるからね!」

「何処が大丈夫なんですかー!」

 

 ときには怒られながらも、ヒーコラ悲鳴を上げながら下拵えを教わるジュリ。その横で苦笑を浮かべながらも順調に作業を熟すフウカ。目論見通り300、フウカの手際も合わせて550程下拵えが行われることになるのだった。

 

 

 ────────

 

 

「今日はありがとうございました」

「お易い御用だよ。ジュリもきちんと覚えてくれたし、君の負担もかなり減るだろう」

 

 辺りも暗くなり月が顔を見せ始めたころ、何時ものように黒いロングコートを羽織り笑顔を見せるナイア。外ではやや冷たい風が吹き、コートを揺らす。夜月の明かりが少女らを照らす。

 

「今度はまた違う料理を教えようか。ジュリもせめて焼きぐらいは出来るようになりなよ?」

「うっ、……はい」

「ではこれで失礼。1人の給食部ファンとして、明日の生姜焼きを楽しみにしてるよ」

 

 そう言ってコツコツと質のいい革のブーツを鳴らしながら、ナイアは夜闇に消えていく。その背中を見送った後、1つ息をついてフウカが口を開いた。

 

「……本当にあの人には頭が上がらないわね」

「はい。あの人が来てから美食研究会に襲撃されることも無くなりましたし、味も改善されてますしね!」

 

 彼女は不思議な人物ではあるが、その実とても面倒見がいい。風紀委員会からは『超特級危険人物』と評価されて警戒されているが、そのような面はほぼ見たことはない。まあ偶にシームレスに暴力に移行したり、「ギヴォトスを股にかけよう。気分はさながらセシル・ローズ」などと理解出来ないことを宣うところを目撃されているが。だが彼女の優しい笑顔を忘れたことはない。

 

「えぇ……」

 

 ────ただ、ただ一つだけ。

 

 いつもにこやかに──どちらかといえばニヤニヤとした──笑みを浮かべて優しく語りかけてくれる彼女。ふとした時、彼女の私たちを見る赤い瞳が、それこそまるで商品棚にある品物を見るような──無機質な冷たさを帯びているのは、気の所為なのだろうか? 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 闇に包まれた天上で、優しく光る月の下、コートをはためかせ少女は歩く。あぁ今宵は素敵な夜だ。詩的にもなる。綺麗な円を描く満月を見ながら帰路を辿る。夜道は危ないから1人で帰るんじゃないよ。悪いお姉さんに捕まってしまうからね。

 

「──今日は月が綺麗ですね。【這い寄る混沌】様?」

 

 ほら見たことか。折角風情を楽しんでいたのに和服に狐面を被った不審者とエンカウントだ。ご丁寧に銃まで突き付けてきやがる。おっ、いい太もも。

 

「はてさて、そんな仰々しい呼び名の人間など知らないなぁ? 狐坂ワカモ、年齢18歳。百鬼夜行連合学院所属で■年に矯正局入り後、脱獄。現在は停学中で誕生日は4月3日。スリーサイズは8……」

「……も、もう結構です」

「どうした狐に包まれたような顔して。君が私を知ってるように、私だって君のことは知ってる」

 

 何を驚いているのか。商人にとって情報とは命だ。そして男にとって女の子のスリーサイズは秘密の宝だ。今女だけど。さて──

 

「それで何の用だい? まさかさっきのは愛の告白じゃないだろうね? 残念ながら私には本命がいるのでね。君よりも飛びっきり可愛くて面白い娘だ」

「あら、貴女に好かれるなんて可哀想な人も居たものですね。……ハロハロヘルメット団、ご存知ですよね?」

「? ハロ……何だっけ」

 

 なんか何処かで聞いたことある名前だ。そういえばこの前襲撃して来たヘルメット団がそんな名前だった気がしなくもない。そも何故ヘルメット団が出てくるのか? この風貌でヘルメット団所属でもあるまいし、そんな情報はない。

 

「そこの子達が私に頼んだんですよ。"邪神ナイアに■■という仲間が攫われた、助けてくれ"。と、土下座までしてです」

 

「まあ聞く義理もないのですが、以前に一緒に破壊活動をした誼です。話を聞いてみたのですが……一つ、興味深い話がありました。曰く、連れ去られた人間は()()にされるとか?」

「証拠なしのデタラメだろうそれ。私がそんな非道いことをする女に見えるかい? そんなのは蟇蛙みたいな身体の悪魔やら虫っぽい化け物とかの所業だ。人間のすることじゃない」

 

 ガチャリ。と銃を握る手に力が籠った。はて? いったい何処の子だろうか。最近だとゲヘナの不良生徒(心臓)、トリニティ自治区の大人(皮と牙)、ミレニアムの下っ端エンジニア(脳と眼球)、レッドウィンターの失脚した生徒会長(肺と卵子)、それと…………あ! 

 

 

膵臓と肝臓が(2500万で)売れた子だ!」

 

 

 瞬間。夜の静寂を、銃声が切り裂いた。

 

 

 

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