ガ ク ブ ル へ ル メ ッ ト 団   作:名もなきドクター

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予定調和と予定不調和

ある日を境に突如キヴォトスは大きく混乱に叩き込まれた

 

それ以前からも予兆はあったものの、本当にある時から急激に犯罪率が跳ね上がり、学籍のない生徒の間で違法に流出した兵器が出回り、ただでさえ治安維持で精一杯だった我が校...これはあまり正しい表現ではありませんね

 

ただでさえ治安維持だけで崩壊寸前の我が部、ゲヘナ風紀委員会は首領一人に掛かる負担の複数倍にすることで漸く形を保っていた

 

我が校で治安という概念を有しているのは唯一我々風紀委員会...と言いたいですが、癪ながら生徒会の万魔殿も一応は持っている

 

その生徒会も子供の癇癪じみた理由で嫌がらせを仕掛けてくるせいで、幹部は数週間に一回しか休憩が取れず、委員長に至っては寝る時間以外、常に銃身を熱々にしていると言っても過言ではない

 

流石に時間も経ち、暴動も少しずつ緩やかになりつつはあるものの、生徒会が動かない以上は私たちで抗議をすべきだと行政官の発言により私、火宮チナツは今連邦生徒会の本部に来ていた

 

...途中の道のりもゲヘナを思わせるような惨状であったことは省きます

 

そして偶然なのか、はたまた運命なのか、私と同じように各三大校もそれぞれ首脳部を派遣していた

 

ミレニアムのセミナー所属の早瀬ユウカ

 

因縁を抱え合えているトリニティの正義実現委員会の副部長である羽川ハスミ

 

案内された部屋で待ちぼうけていると、奥から現在の連邦生徒会を動かしていると思われる『七神リン』ともう一人、不思議な雰囲気を纏った『大人』がが現れた

 

セミナーの会計が七神リンに噛みつき、連邦生徒会長の所在を聴く

 

そして私含め三人がそれぞれの苦境を述べた

 

結果得られた回答は三つ

 

一つ、連邦生徒会長は確かに失踪している

一つ、連邦生徒会はサンクトゥムタワーの制御権を失っている

一つ、それを解決することが出来る大人が、彼女の隣にいる『先生』であること

 

そして成り行きで我々三人は、キヴォトス全体の問題を解決するために、先生を『シャーレ』の部室までの護衛をすることとなった

 

『シャーレ連邦捜索局』連邦生徒会長が失踪する前に建てた超法規的捜査機関、全ての学校自治区においての戦闘が許され、キヴォトスの全生徒を所属させることが可能

 

破格の権利と力を持った組織が作られている、その情報をこの場にいた三人は最も早く手に入れた

 

...普段はヒナ委員長への態度が酷すぎて、評価が微妙だったアコ行政官の情報網と判断力を再確認させられる

 

ともかく私たちは先生にキヴォトスを案内することとなった

 

『彼女』はとても温和でウィットに富んだ人だった

その証拠にセミナーの子は直ぐに心を開いているし、その一線を画した戦闘指揮能力で正実の狙撃手も見事に服従させた

 

かく言う私も彼女に相当絆されている自覚もある

 

キヴォトス全域の治安維持組織であるヴァルキューレ警察学校の生徒が、無法者であるヘルメット団をはじめとする不良勢力と抗争が過激するこの連邦生徒会自治区、D.Uはかつて無い混乱の最中にあった

 

元々『サンクトゥムタワー爆破テロ』に備えて、自治区から不良生徒を掃討するために集結したヴァルキューレは、運が良いのか、悪いのか、丁度連邦矯正局から脱走した凶悪犯罪者である『七囚人』の一人が扇動する暴徒とぶつかっているのだ

 

幸い掃討作戦は進んでいて、自治区中心部である中央行政区からは不良勢力は排除されていたため、シャーレオフィスのある外郭地区までは比較的に安全に向かうことが出来た

 

オフィスに向かう最中、付近のヴァルキューレが大量のスケバンとヘルメット団による連合軍で劣勢に陥っていたので、先生の指揮のもと私たちは加勢することとなった

 

不良たちの指揮官を斬首作戦で次々と倒した結果、個々人の戦闘力が高かったヴァルキューレは難なく圧勝し、今回の暴動もほぼ鎮圧に向かった

 

寄り道はあったものの、シャーレオフィスに無事に着いたその頃、遠くで巨大な爆発が轟いた

 

キヴォトスの象徴であるサンクトゥムタワーの方向で爆炎が立ち上がり、幾つもの建物が崩壊したのだ

 

取り敢えず部室に入った我々は、先生が不思議なタブレット端末を起動し、その中にいた『アロナ』と言う名前のAIが直ぐ様タワーの制御権を奪還

 

キヴォトス全域を管理するサンクトゥムタワーの制御権を手にした先生、ここで私たちはこの重大さに気づいた

 

目の前にいる彼女の意向一つで我々の学校の設備やライフインフラが停止させられるのだ

 

そんな莫大な力を手にした彼女は、計ったタイミングと感じるほど丁度良く入ってきた七神リンの言葉をあっさりと聞き入れて、そのまま制御権を連邦生徒会に譲渡してしまった

 

私たち三人は混乱から暫く立ち直ることが出来なかった

 

最初に事態を呑み込んだユウカはこれまた捲し立てるように制御権の持つ意味を説明し、先生に問いた

 

「そんな力を何故あんなにもあっさりと手放したんですか?」

 

再び三人が持った疑問を叩きつけた彼女

それに対し、先生はこれまた何ともない様子で答えた

 

“私は『先生』でしかないからね、ここが学生による自治で動いている場所なら、生徒にその権利を返すのは当然でしょ?”

 

その権力への無頓着さと、道徳がヒトの形をとった様な回答に私たちはまたもや唖然となった

 

“じゃあ、帰ろっか?みんなここまで守ってくれてありがとうね。”

 

その言葉に目を覚まされた三人は先生と一緒に七神リンの案内のもと、シャーレの部室の説明を受けた後に解散しようとしたその時だった

 

ねっとりとした挑発を含んだ声が響いた

 

「あらまあ!連邦生徒会の室長の一人と、各有力校のトップが一体何をお企みになっているのでしょうか?」

 

噂の七囚人の一人、『災厄の狐』が満身創痍の姿で現れたのである

その着物は砂塵に塗れていて、仮面は少し焼け跡が残っていた

 

緊張が走った四人の生徒と裏腹に、先生は軽々と私たちの前を出て、彼女に笑いかけて挨拶をした

 

“こんにちは、ワカモちゃん。私は今日このキヴォトスに来た教師、気軽に先生って呼んでね。”

 

無知故の暴挙とも疑ったが、ここまで来るまでのやり取りから、狐坂ワカモが一体どれだけ危険かわかっているはずの彼女は、全く警戒をせずに挨拶をする

 

「...し...失礼いたしましたわ!!!!」

 

少しの間固まっていたワカモはそれだけ言って外へと飛び出していった

 

...はぁ、短い間ながら先生については良く知れた有益な時間を過ごせたと思います

 

委員長や行政官に報告するべきことも決まった私は、解散した後ゲヘナへの帰り道を歩み始めた

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

どうもキヴォトス中を震え上がらせるテロリストの、炸薬リトルだ

 

うーん、予定と結構違うな

本来は爆破予告で狼少年をして先生を守らせるだけだった(銀行を十二ヶ所爆破済み)のに何故か凶悪テロリストにフルボッコ(主観)にされて、タワーの爆破とそれに伴う周辺の損害で懸賞首になっちゃうし

 

「懸賞金5000万って海賊漫画のソレじゃん!」

 

血を流しすぎて錯乱したのか、クロノス報道部のカメラにバッチリと決め台詞とごわす口調を披露したせいで、身長や服装はもうネット上で拡散されまくっている

 

恐らくこれからはヘルメット被って外出たら即ヴァルキューレを呼ばれるか、狩られるかのどっちかだろうな

 

これ失敗したかも、身長を誤魔化せる靴とか履いていくべきだったな

 

「今から通販で漁ってみるか。」

 

ヘルメットの修理や爆弾の補充、姿を誤魔化す変装用の靴の購入

やること山盛りだけど...

 

「痛い!痛い!痛い!!」

 

全身が痛いし、重点的に殴る蹴るの暴行を受けた頭部と腹部は今にも燃え上がりそうなくらい痛い

 

多分骨の何本かは折れてるし、さっき鏡見たら顔が真っ青の痣だらけだった

 

これ、病院行かないといけないやつだよね

だけど、こんなひどい傷は多分ゲヘナでも詳細を聞かれるよね...聞かれるか?

 

万が一イオリ先輩とばったり出会ったら絶対心配されるし、爆破テロしたのがバレちゃったら関係が終わっちゃう!!

 

仕方ない、頑張って別学区の病院に行こう...でも入院するのは不味い気がするし

 

うん、治るまで引きこもってよ

 

だってキヴォトス人だし、骨の一本や二本は勝手にくっ付くだろし、痣とかも直ぐに消えるっしょ

 

そして暫くリトルはまた不登校になった

 

出席日数大丈夫かな、私これ、留年しないよね?

最悪退学コースでガクブルヘルメット団(真)に就職しかねない

 

そんな恐怖と共に引きこもり生活を謳歌するリトルだった




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