ガ ク ブ ル へ ル メ ッ ト 団   作:名もなきドクター

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頭に銃弾喰らってもピンピンするのはキヴォトス人だけだ

銃弾を当てられる感覚というのは奇妙だ

首がもげる程衝撃を貰ってるのに、痛いだけで済むのだ

 

「グワァー!」

 

絶賛ヘッドショットを喰らって後ろに錐揉み回転しているのは私、炸薬リトルだ

 

地面と二回ほど接触し、摩擦力の素晴らしさを実感しながら訓練場の大地と濃厚なベーゼをする

 

「おい...大丈夫か?おい!リトル!!」

 

先輩の呼び声に応えながら両手をバネにして跳ね上がる

 

「大丈夫です!」

 

尋常じゃない位おでこが熱いだけだから、多分大丈夫

 

「あ、ああ。アンタが余りにも勢い良く吹っ飛ぶから、ヘイロー付いてるのに不安になった。」

 

「慣れてるんで、本当に大丈夫です!」

 

ワカモの顔面蹴り喰らって派手に吹っ飛んだ経験があるから、あれと比べるとそんな痛くない

 

「それは慣れるものじゃないと思うぞ...」

 

こちらを哀れそうな目で見つめる先輩系褐色美少女、銀鏡イオリは風紀委員の制服を纏っていて、実に凛々しいお姿であった

 

「まあ、弾を避けるのは割と感覚に頼るものだからな。出来る奴と出来ない奴で別れるから、無理せず普通に遮蔽を使うのがいい。」

 

何故ヘッショされていたかというと、弾を避ける話の延長上で一発撃ってもらったのだ

 

何も感じず、直感で避けようと思ったらクリンヒットしたってのが結果だ

 

大人しく壁の裏や地面に這って隠れとこう

 

「んじゃ、実戦形式で一回実力を測らせてくれ。事前に言ったように手加減や心配はいらん、全力でこい!」

 

「は、はい!」

 

スカート裏のスパッツの収容に入っている相棒の存在を手で確かめる

 

この日のために射撃場を通い続け、弾薬を試行錯誤して細工を重ね、どこに予備弾薬を保持するか鏡の前で弾薬携帯ベルトと睨めっこしてきたのだ

 

連射だって練習では的に三発は当てられる様になったし、これで先輩に一泡吹かせて見せる!

 

「準備は出来てるようだし、いつでもかかって来い!」

 

凡そ歩いて十歩の距離を意識して、目を閉じて一つ深い呼吸をする

 

目を開き、先輩の姿を目に焼き付けながら銃を抜く

 

撃鉄は抜くと同時に起こし、狙うは一瞬!

 

タン!

 

ここ二週間は毎分聞いてきた銃声がゲヘナ風紀委員会の訓練場に響き渡った

 

早撃ちは確かに銃口を私に向けようとした突撃隊長の腹部に命中する

 

先輩が遅いわけじゃない、私の弾が速すぎたのだ!

 

当てた余韻に浸っていると、次の瞬間

 

頭が柘榴のように弾けた

 

「!?」

 

意識が薄れいく中で先輩の狙撃銃の銃声がやたら大きく轟いた

 

はぁ、私雑魚の癖についつい調子乗っちゃうし、こんなものか...

 

今までの負けの記憶が諦めて気絶しろと言ってくる

 

いや違う!!違うだろ!!炸薬リトル!!!

 

そんなんじゃカッコ悪い!

相棒の前でこんな弱音を吐くなんて!!先輩の時間を割いて貰ってる癖に!こんな弱音を吐くなんて!!!

 

手の間にある愛銃のグリップを握りしめ、前方に踏み込む

 

激痛目眩頭痛を主張する脳みそを忘れて、相棒と身体に刻み付けた感覚に身を任せる

 

残り五発の弾丸を浴びせてやる!それだけを考え、右腕で銃を固定して、左手を持って神速の連射を行う

 

一秒と少しの内に『小さき平穏』は五回火を噴いた

 

命中を確認する前に、私は反動とライフル弾を喰らった衝撃で後ろに倒れる

 

...銃口から上がる煙、吹きたかったな

 

後頭部で地面を感じながら、吐き気と格闘する

 

駆け寄ってきたくれた先輩が口パク...いや単純に私の耳が聞こえてないだけ...かな?

 

お姫様抱っこ...うへえ、おじさんは男の子...じゃねえや、私は女の子?

 

あれ?私って誰だっけ?

 

やっば、思考が纏まらない

 

ーーーーーーーーーーーー

 

風紀委員会の休憩所のベットは太陽の匂いがいっぱいで心地良い場所でした

特に家の床の畳に比べると...なんか比べる方が烏滸がましい気がするし、辞めとこう

 

「救急医療部って凄いですね、もうピンピンになっちゃいました。」

 

ベットの近くで椅子に座ってるイオリ先輩に素直な感想を述べる

 

「いや、多分アンタが丈夫なだけだと思う。他の奴らも気絶したら、チナツの手当てありでも一時間は寝てる。」

 

先輩曰く、倒れてから十分しか経ってないらしい

 

ベットから起き上がる

 

「先輩、訓練を再開しましょう!」

 

十分くらいだったら大したダメージでもないだろうし

 

「アホか?いや、お前は結構...なんでもない、忘れてくれ。」

 

言い淀む先輩から冗談じゃないと伝わってくる

 

「馬鹿って自覚はありますけど、そんな遠慮された方が...なんか心に来ます。」

 

「...あれで実力は測れた。モモトークに送ったから、うちの基礎訓練メニュー。」

 

「基礎訓練...キツイですか?」

 

定番と言ったら走り込みや筋トレとかだよね

 

「射撃技術だけなら多分実戦でも通用する。後は体力と経験だが...お前、私に当てた瞬間気抜いただろ?一発で相手の意識飛ばせない内はやめとけよ。」

 

「...はい。」

 

事実、当てた瞬間自分の警戒が限りなくゼロになってたし、相手が動いてくると考えてなかった

 

「励ましではないけど、あの威力だったらそこら辺のゴロツキだったら一発で意識は飛ぶ。」

 

「本当ですか!」

 

うへへ、これでもうカツアゲに怯える必要も常に爆弾を持ち歩く必要もなくなったぜ☆

 

だらしない顔で口元を歪める

 

「だ か ら!油断すんなって言ってんだろ!」

 

「痛い痛い!私病人ですよ!」

 

こちらの頭をぐりぐりしてくるイオリ先輩

そんなことしてもバカは治りませんよ...

 

あっジト目の先輩可愛い...

 

「そうでした!実は特別な銃弾も持ってきたんですよ。」

 

「特別な...銃弾?」

 

店長のセールスを見事に全て鵜呑みにしてしまい、家計に大打撃を受けた代わりに、多くの銃弾を使ってロマンの追求ができたのだ

 

「ちょこっと火薬を弄ってですね、発射と同時に普通の弾より二倍くらいの速度出せるんですよ!」

 

試行錯誤で何回か爆発したけど、特に怪我もしてないし、言わなくていっか

 

「...まあ、言えることは変わらない。油断だけはするなよ?委員長みたいなのもキヴォトスには何人かいるんだ。」

 

「当てた途端ブチ切れた結果、リトルが蜂の巣にされて見つかるみたいなニュースは見たくないんだ。」

 

凄く真剣な声で諭してくる先輩

 

「ってことは先輩切れたんですか!?」

 

「....比喩だよ、比喩!もしもって話だ。少しは脅威を感じたせいで手加減が上手くいかなかったけど...なんだ、その悪かった。」

 

実際私が無事で済んでるのも、先輩の自制あってだろうし、やっぱり調子乗るのは気をつけとこ

 

グギュルル

 

「...私お腹空いたんでこれから一緒に給食部に行きません?」

 

顔が赤くなりながらも昼食の誘いをする

 

「...ふふ。そうだな、折角今日は非番だし、マトモな飯食べるか。」

 

まともじゃ無いご飯食べてるのか...

あー、菓子パンとかいつも食べてそう

 

「そうだ!先輩見てください!この装填の速さ!!」

 

シリンダーを高速で回して空薬莢を弾き出し、太ももにある弾薬を突っ込む

 

空薬莢がベッドや床に落ちて甲高い金属音が鳴り響く中、装填を終えた相棒を三回転させてポッケに入れる

 

「ちょ、散らかすなボケ!」

 

「...はい、すみません。」

 

飛ばした空薬莢を拾い集めて制服の内ポッケに仕舞う

 

「...かっこいいとは思うぞ。あの五連射も三発は当たったし。」

 

しょぼんとした私を慌てて褒める先輩はやっぱり優しい

 

「おっしゃああ!!!いっぱい練習したんですよ!!」

 

あの辛かった...いや、普通に楽しかったな

 

お陰で弾薬を追加注文しそうになったから、爆発する弾頭を作る羽目になったけど、結果オーライだな

 

「はぁ、そろそろいくぞ?」

 

慈愛の籠った眼差しで促される

 

この後の給食カレーはすごく美味しかった

ただ、イオリ先輩が涙流しながらお代わりしたのは、すごく同情した

 

私も同じく久々スーパーの弁当飯脱却でお代わりしたのは言うまでもなかった

 

ーーーーーーーーーーー

 

私はリトルを舐めていたのだろう

 

それは悪意からのものでは無く、どこか庇護対象として見ていたからだ

 

臆病で慎重なように見えるようで、どこか抜けてる性格で、そうと思ったら勇敢で優しくもある、だから自分が守るべき存在だと思ってた

 

あの昼下がり、やけに小さな子にぶつかられたと思ったら急に手慣れた土下座をされてしまって、困惑しつつ中等部の子として扱った日に知った、スマホから学生証まで奪われてた事実

 

彼女は私を先輩って呼んで直ぐに信頼を寄せて慕ってくれた、あの時の温もり

 

ようやく取れた非番を使って、一緒にD.Uで買い物とゲームをした楽しかったあの日

 

帰りに風紀委員に寄ったら緊急でトリニティとの間の揉め事を内密に処理し、家に帰ったら不良に襲われたトリニティ生を保護したモモトークが届いたあの日

 

それら全てが、彼女を庇護対象としての認識を抱かせられた

 

だから、実戦形式といった癖に、私は彼女を弱い者だと認識していた

 

その結果が早撃ちを腹に受け、反射的に彼女の頭にライフル弾を叩き込んで気絶させてしまった

 

それでも、彼女は一矢報いようと、あの五連射を放った

頭への一発は愛銃で防いだが、腹と太ももに入った二発は今でも微かに痛む

 

彼女は思ったよりもひたむきで、頑丈で、強かな努力家だ

 

油断するな、か

どの口で偉そうに言ってるんだろうな?

 

口に残ったカレーの後味が、辛いようで、しょっぱいような、そんなよく分からない味だった

 

モモトークに私がカレーを泣きながら食べている写真が感謝と一緒に送られてくる

 

ふ、やっぱ深く考えてた自分が馬鹿だった

アイツは守るって程じゃ無いが、目を離すと絶対大怪我するタイプだ

 

出来るだけ気にかけておこう

 




ここまでお読みいただきありがとうございます!

今のリトルの実力
最強>>>>越えられない壁>>>上澄み>>>>リトル>>一般の不良

最強はヒナやツルギ、ゴリラ
上済みはイオリやアル社長、ワカモや正実の大きい人
くらいの想定です
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