ガ ク ブ ル へ ル メ ッ ト 団 作:名もなきドクター
これが単独で上がったら私がスランプったと言う事です
ここから外へと向かう道はそう多くない、ましてや余所者であれば、覚える道は大体一本
ならば追いつけない道理はない、長期戦への訓練で散々走らされたし、足の速さが一時期生命線だったからね...というか今も生命線だわ
ブーツで砂混じりのコンクリを蹴る
念の為ハンマー起こしておく
全力疾走を続けて数分、漸く視界の先に見覚えのある子の姿が映る
塀の上へ跳躍し、壁伝いで彼女の前に降り立つ
「こんにちは、もうこんばんはかな?千雨ちゃん。」
一山あるヘルメット団の中でも彼女の名前を特に覚えていたのには理由があった
卑屈な姿勢、常に周りの様子を伺う視線
食事中ですら手にあるハンドガンを離さないその剥き出しの警戒心
どれも身に覚えがあったが、何よりも印象に残っていたのは、そんな彼女が三回目の襲撃の後に吐露した夢だった
学籍を取り戻し、もう一度ちゃんと勉強したいという建前に隠された悍ましさを感じる真の目的
それは五回目の襲撃で頭に手榴弾の破片が刺さった彼女を背負って帰ったあの日だ
キヴォトス人の頑丈な肉体も神秘によって成り立つもので、体力も精神も摩耗し切った彼女は弱り切っていた
それが故に破片が突き刺さったのだ
そんな彼女を他の団員と一緒にどうにか破片を抜いた時に、漏らしたあの本音だった
『殺してやる!あの女を!!殺す!コロス!!絶対!!コロズ!!!』
朦朧とした意識で吐き出した怨恨は凄まじく、それが彼女の生きる理由となっていて、動力源となっていたのだろう
中々聞き出すにも困る出来事で、みんなが遠慮していた翌朝
彼女は、千雨は彼女が退学となった理由を話した
いじめ、だったらしい
彼女は外部進学でトリニティに入学しており、内部進学で入った良い家柄の上級生を誤って怒らせてしまった
小さな無視から始まり、どんどんエスカレートしていく陰湿なソレだった
文房具は持ち歩かなければゴミ箱に叩き込まれ、友人だった子も皆彼女を無視し、仕舞いには寮友の子も加担して寝ている時に彼女の制服をハサミで切り裂いた
正義実現委員に訴えようにも周りにいた腰巾着の巧妙な暴力によって弱らされ、時には学区外に連れ出されてリンチにされる
そんな日々に抵抗する気力も体力も無くなった彼女は倒れ込み、不登校となった
結果成績が大きく落ちたせいでそのまま退学となったらしい...それもどこか怪しい動きを感じたと言う
だからか、学籍を失った彼女は復讐のためだけにトリニティへの復学を考えている
落ちこぼれた不良の集団の中でも群を抜いて悲惨な背景を抱えた千雨を気づけば皆が気にかけるようになった
それでも十回を超えた頃には彼女も辞めてしまった
ある程度纏まった金額があり、暫くの生活と再編入用の試験には足る額はあったそうだ
そんな彼女がどうしてあのカイザーの手先達といたのか、何故か異常なまでに胸が騒いだのだ
「......お久しぶりですね、Lさん。」
生気を感じ取れない彼女の無表情な顔、少し伸びた青色の髪と水滴を模した天使の光輪
「学校...戻れたの?」
彼女は不気味な様子で微笑んだ
「いいえ、戻らなかったわ。」
あの執着がそうそう消えるものではない
なら、一体何が?
「.......。」
言うべき事が浮かばない
「殺したかったの!!あの目障りなヘイローをへし折りたかったの!でもね、ダメだった!三十マガジン分の銃弾を撃ち込んでも、爆弾であのウザったらしい口を塞いでも死なないの!」
「それでね、アイツなんて言ったと思う?『許して、ワタクシが悪かった』よ?許すわけ、無いじゃない!!」
「試したの!ナイフでその爪を剥いで!突き刺したら弾かれて!槌でその頭を砕く勢いで叩いても割れなくて...でもね!ドリルは通ったの!変な抵抗を感じながらもね、アイツの肉を削ぎ落とせたの!!」
打って変わって激情を叫び散らかす千雨
「だけどね...ふふ、変よね?必死に命乞いするアイツの声とか、痛いって喚き散らかす声を聞いたらね、私、やる気がね....失せちゃったの。あは、あはは!もう私はどうかしちゃったのかな??」
笑いながら涙を流し、嗚咽を漏らしながら顔を歪める彼女は狂気だった、正気ではない
二度の人生を通して未だかつてない衝撃を受けたリトルは頭が真っ白になる
どうすんの、これ?
通報??いや、えっ??
これ先生、大丈夫??あ、え...矯正局?
マジで、どうすりゃいい?
もう透き通る青春って言い張れねえよ?
「あっえっ、その人は今...どこにいるの?」
「あの世よ。」
.......へ?
「へ?」
「ふふ、冗談よ。今は救護騎士団に救出されてるわ。」
これ、本当どうすればいいの?
先生が心の間合いの達人だったとしてもこの一番やばい時のミカ以上に病んでる千雨ちゃんをセラピーできるの?
と言うか傷害罪?
リトルの脳は考えるのを辞めた
身体は言っている、とりま撃っとくか
衝撃で記憶が飛んでくれたら尚良し
思考放棄した結果、自身の最高記録よりも数コンマ早く『小さな平穏』を抜き出し、神速の射撃を浴びせる
トリガーを引いた瞬間、薬室に混ぜてある神秘火薬を起爆
バレルに尋常じゃない程の圧力が掛かるが、弾頭は音の速度を超えて、彼女のメットを粉砕し、ついでに壁を二枚ほど彼女を連れてままぶち抜いた
確かに落ちたヘイローを確認したリトルは、ふぅ...と一息を吐いて、吐いたが
ヤっちゃった