ガ ク ブ ル へ ル メ ッ ト 団 作:名もなきドクター
あの夜の接触からはや三日が経ってしまう今日この頃、ようやく当てにしてた人物の消息を掴み、ほっと一息着いたのだが
ついに先方から戦闘をして具体的なデータを取るよう命じられた
多分もうそろそろ『便利屋』が依頼を受けるのだろう、我々使い捨ての一般兵はもう用済みとなり、最後の価値を絞られようとしていた
「Lさん...もうお終いなんですかね。」
「...ここまでお世話になりました。」
ここのヘルメット団一派はまるで葬式のようなどんよりとした空気であった
「はぁ、言っただろ!私が何とかするって、もうすぐここに『シャーレ』の先生が来る。あの人噂によれば色んな学生を援助してるらしい。」
「じゃあ、俺らも助けに来てくれるってことか?」
ある団員が希望を抱くが、これはちょっと違う
「...あーいや、その多分『先生』はアビドスに呼ばれて救援しに来てると思う...。」
うん、そうだもん
原作だとヘルメット団は対策委員会に撃退された上に補給受けた彼女らに追撃されて壊滅し、ついでに便利屋の登場シーンで呆気なくボコされた後消息不明だ
「「.....。」」
一同が沈黙に包まれる
「勿論ぬか喜びさせたかった訳じゃない、今度の襲撃で先生の存在を確認次第、私が直談判でみんなの事を伝えてみる。噂通りだったら、きっと私たちも助けてくれると思うんだ。」
『先生』はどんな時だって生徒の味方である
これは作中を通してずっと描かれてたことだ、だからきっと理由をちゃんと伝えて対策委員会の子達に謝れば...
「でも、危険じゃないですか?アタシらいっつもアビドスの連中を襲ってるし、簡単には近づけてもらえないっすよ!」
ヘルメット団だって良識と常識はある
実際そうだ、あんなに慎重に接した温厚なアヤネですらあの警戒度合いだ、ホシノやシロコ、セリカの態度は容易に想像が付く
「そこは私の実力を信じてほしい、私が倒れたところ見たことないだろ?必死になれば突破くらいはできるさ。」
いつもは手を抜いてるのもあるが、朝に風紀委員の基礎訓練メニューをこなし、昼は射撃場で相棒と技を磨き、放課後はイオリ先輩に他の風紀委員と一緒に訓練を受けていた身だ
そんじょそこらの奴とは鍛え方が違う...けど最近はやってないし、先輩もちょこちょこ心配のメッセージ来てるしな...
先生にみんなの問題を託せば一回ゲヘナに戻れるかな?
ちょっと不安になってきたが、まあ最悪服の内側に隠してある濃縮爆弾を出して校舎を質に取って威嚇すれば、交渉くらいはできる...
その後が怖いけど
そして正午を迎え、寄せ集め軍団が最期の突撃を開始する
二台の戦車と迫撃砲を後方に配置し、私は前線で彼女らの人数を確認する
そして、確かに校舎の二階でアヤネと一緒にいる『彼女』の姿を捉えた
「おっしゃあ!勝っても、負けてもアッシらここでお終めえだ!!!突っ込め!!!」
私とあまり関わりのない団が破れかぶれの突撃を開始したが、後衛をノノミ、前衛をおじさんとセリカ、中距離にシロコの安定の布陣によっていつも通り屍の山が築かれる
撃っても撃っても、神秘の差なのか相手は倒れない
逆にこちら側が銃弾を受けるたびに戦闘不能者が出てくる
ネームドとモブ、ゲーム以上に現実の差は巨大だった
いつものように私は最前線で出来るだけ味方のカバーを続ける
セリカが猛攻を開始すれば相手取ってそれをいなし、シロコのドローンを見れば気絶した団員の中に仲間を叩き込み、ノノミの掃射を見たら伏せるよう声を張る
ぶっちゃけ手元にアサルトライフル持ってるけど、ただのお飾りでしかない
“シロコあの防弾ネットの子を任せた。ノノミは周りに向けて弾幕を撒いて!ホシノとセリカは彼女は援護が入らないようブロック!”
凛々しくも安心する声で鬼畜な指示が出される、私をリンチにする気満々じゃん!?
「ん、アナタは大人しく私に倒されるべき。」
無表情ながら負けることを一切想定しないブルアカの顔は静かに死刑宣告をする
退路に手榴弾を撒かれ、前方からはその鋭い銃撃が開始される
ヘルメットに突き刺さる数度の衝撃、腹に七発、腕と足にそれぞれ三発
後は私が無様に地面を転がることでどうにか回避する
流石ラスボス候補の子、アサルトライフルの銃弾一発一発が重く、深く身に刺さる
これは適正のないお飾りの自動小銃でどうにかなるものじゃない
懐に暫く仕舞っていた相棒に手をかける
確かに強い、だけど先輩ほど隔絶したものは感じない
地力でも神秘でも負けているが、射撃で決して負けない!
「お嬢ちゃん、良いもの見せてあげよう!」
彼女の顔面目掛けて小銃を投げつけ、横に転がりながら相棒を抜き出す
銃の側面で投げたライフルを叩き落とされる
「ふーん、不思議な形の銃。けどアナタが負けることは、変わらない。」
それはどうかな?
撃鉄を起こし、そっと得意技の準備をする
頭目掛けて四発、無視
足を止めるよう撒かれる十一発、回避
呼吸を整え、集中
狙うは一瞬、その傲慢な無表情に風穴を開けて見せる!
銃口を向けようとした、その刹那
「うへえ、少し手を止めてもらおうか?」
脳内の危険信号が鳴り響き、全力で身体を捻って横に転がる
ドン!
一見何も変わらないショットガンの射撃音
だが僅かに散弾が掠った右足は火に炙られたよりも数倍痛む
「うへえ、おじさん、その動きは見え覚えあるんだよね〜」
うへうへ言いながらホルスはその浅い目を見開く
「ゲヘナの風紀委員がどうしてヘルメット団の振りしてるのかな?」
周囲の空気が数段重くなった
や、やっっば!?
明らかに不味い!
「まあ、逸れもいると思うし、おじさんの勘違いかもだし、いいよ、今回は見逃してあげるよ。」
大人への反骨心故か、後輩を心配する気持ち故か、何故か指示に従わずシロコとの戦いに乱入するホシノ
彼女のふわふわとした語気と裏腹に辺りを支配する圧があった
「シロコちゃんも油断はダメだよ?この人多分普通にシロコちゃんを傷つけられる手段持ってるよ。」
さっきまでの戦いの高揚感は一気に失せ、底知れないホルスによって場が支配される
「......。」
冷静に考えれば、ここは引くべきだ
そう頭は言ってるのに、私は引けなかった
ここを逃せば、先生との接触が遅れる
そしたら、彼女達への約束を破るだけでなく、便利屋経由で『処分』されるかもしれない
便利屋が許しても、カイザーが末端から情報が漏れるのを嫌えば、恐らく...
学籍のない子がキヴォトスから消えても、誰にも気づかれやしないんだから
覚悟を決めろ、炸薬リトル!
「一つお願いしてもいいかな?」
愛銃を懐に戻し、まずは交渉を試みる
「......。」
シロコはやる気を失ったのか銃口を下げる
「ふ〜ん、取り敢えず言ってみてよ?」
「先生と話をさせて欲しい。」
心の中でお祈りをする
「...そう、いいんじゃないかな?」
「ホシノ先輩、そんな奴の要求呑む必要ないじゃない!」
セリカが後からやってくる
......そっか、もうみんなやられちゃったのか
はは、やっぱアビドスは強いや
「終わったみたいですね。その子はどうするのですか?」
前からもノノミがやってくる
......
......
ーーーーーーーー
「ということがあって、みんな仕方なくここを襲ってたんです!!どうか!どうか!先生助けてください!」
捕虜のように両脇をシロコとセリカに抑えられながらやってきた私は今、先生の前で土下座で魂の懇願をしている
「もう、今日の襲撃で失敗したら、私達首を切られて、いつ消されるのかも分かりません!お願いします!お願いします!」
「た“ず”げ“で”く“だ”ざい“!!!」
鼻水と涙を砂っぽい教室の床に塗りたくりながら懇願を続けるリトル
「...ッ先生!アイツら確かにいっつもアタシ達の学校襲ってたけど、こんな酷い結末はありえないよ!!」
辛辣な表面と裏腹に感化されやすいセリカも同調する
「...ん、これは助けるべきだと思う。先生。」
ノノミとホシノはただ様子を見守り、アヤネもどこか憐憫に苛まれて声を殺す
”...良く頑張ったね、わかった。後は私がどうにかするよ。“
そう言って先生はぐしゃぐしゃに濡れた私の顔をその胸に抱いた
....わぁお!どうしよ絶対シリアスな場面だけど
おぎゃ!バブみを感じるぅ!!
ふかふかと柔らかい感触、天日干しのいい匂いから微かに薫る女性の香りと混じって!
薄っすらと...うっすら...いや、結構、相当な濃度の栄養ドリンクの匂いとコーヒーがミックスされた社畜な香り.....
前世のトラウマが蘇る
”十時を過ぎると“消えない職場の電気
終電乗り遅れたら仕事とお泊まりデート
オッェェ!!
途端に咽せてしまったが、嗚咽として捉えられたのか、優しく頭を撫でられる
...
...
うん、貴重な体験...だったよ
その後、アビドス全員と先生と私で気絶したヘルメット団員の山を頑張って手当した
そして先生の伝手で複数台の輸送車が手配されて、一度全員シャーレでまともなご飯を食べさせて貰った後にシャワーを浴び、一晩を心地よいベットの上で過ごした
翌日から更生活動が個別に開始され、奉仕活動や簡単な書類仕事、先生による集団授業が行われたらしい
これで『L』も役目ごめんで漸くただの『リトル』に戻れる
多分先生これから更生と新たな学籍獲得のための援助とか頑張るんだろうけど
まだ、アビドスの問題解決してないんだよね...
脳内にチラついた過労死という三文字が消えないまま私は久々のお家でお布団に包まれた
...先生が口から栄養ドリンクを吹いて倒れる悪夢を見て朝四時に目が覚めてしまったことは....あとで手伝いしに行こ
ここまでお読みいただきありがとうございます!
はて、こっからどうやってストーリーを進めるか
取り敢えずセリカ誘拐イベは差し替えをする、理由は本気でヘルメット団を助ける先生を見て普通に信用勝ち取れたということで...
便利屋...か、推しがいっぱい居るんだよな
ちょっと描写頑張りますわ