ガ ク ブ ル へ ル メ ッ ト 団 作:名もなきドクター
「神とは何であるか?カミ、上、東の国では上位の存在とされる。しかし、自然信仰の神はこの際除外しましょう。かの聖典に従えば、其れは父なる神、子なる救世主、人々の心に巣食う聖霊における唯一なる神である。原初の聖典においては四つのグラマトンを持って声に出してはならない者。」
「この箱庭にもデカグラマトンという十の存在がある。砂漠に棲む静観者、蛇とも鯨とも似て非なるモノ、ワタクシはソレが本当に神であるとは思えません。デウスマキナの成り損ない、その程度です。人工物であるなら、ワタクシの『作品』にも必ず共通点は存在する。」
「さて、違いを痛感して尚も寄り添い、共に歩む貴女と孤高に座する偽の神、より神々に近づけるのはどちらであるでしょうか?」
「ふふ、彼の言葉少し真似しましょう。」
「証明を始めましょう、Q.A.D.*1」
大きな舌で舌舐めずりをする彼女は観測を開始する
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さて、アビドス対策委員会で最も厄介なのは誰か?
小鳥遊ホシノだ
キヴォトス最高の神秘というのは立っているだけでダメージが入らないチート
しかし、今彼女は黒服と楽しくないお喋りをしているだろう
次点は誰だ?
ラスボス候補の砂狼シロコ、いい線だと思うよ
神秘フェチの黒服がセカンドプランにしようとするくらいだ
だけど、今は未完成で未熟だ
バイト戦士黒猫セリカはスペックの高さはあるけど違う
後方の奥空アヤネも戦闘面で言えばそうじゃない
「道を譲ってもらいますよ〜」
分速数百発の鋼鉄の嵐が吹き荒れる
アビドスの実質的No2、十六夜ノノミだ
実に満ち溢れた月を二つ抱える彼女は集団戦だろう個人戦だろうとその物量で全て押し流す戦闘スタイルを持つ
近くの岩場がその火力によって削られていく
セリカの突貫を牽制するのに二発、シロコの手榴弾を防ぐのに一発
つまり残弾は三
相棒の仕様により装填しようにも撃ち切らなければ非効率的
腰に巻いた棒状爆弾は二十弱だが出番はここじゃない
「覚悟しなさい!」「逃がさない。」
遮蔽の両側から息の合った連携で回り込みをする猫と狼
その二丁の小銃から放たれる弾丸を転がるように避けて、すかさずそれぞれに一発ずつ贈る
セリカは腹に直撃で顔を歪め、シロコは身体を逸らして回避
傷を負ってる方に追撃をかまそうとしようとすると上空からドローンが弾幕をばら撒く
片目を閉じ、冷静に頭部と足に向かう弾だけ意識して胴は我慢する
銃身を離れた45口径弾はドローンのプロペラを掠める、無力化に成功する
ハンマーを下げ、空薬莢を吐き出し装填
その間に全身にライフル弾を浴びせられた…痛い
“チェックメイトだね”
ノコノコと先生は岩の裏へと姿を見せる
「先生、油断しすぎですぜ!」
とりま人質にしようと飛びかかろうとした瞬間
ドドドドドドドドドドド
上から降り注ぐ鉛玉の雨は私を地面に打ち付ける
見上げれば白いパンツがふくよかな太ももの間から覗いていた
…パン、おっ…じゃなくてノノミが岩の上に立ってこちらを見下ろす
「少し大人しくしてくださいね〜?」
はい、やっぱ無理ゲーじゃねえか
「先生、こいつどうする?」
シロコが私の右手を踏みつけながら言う、なんかグリグリと踏み躙ってくるんだけど?
“今はホシノを優先して武装解除だけやっておこう。”
見て見ぬふりをする先生に視線を送ろうとしたが…
「そうよね、コイツは後できっちりお礼するとして早くホシノ先輩を助けなきゃ!」
セリカが私の腰に手を当てる、その時だった
ダッダッダッダ
カイザーPMCのロボットがこちらを包囲し、肩幅のデカい理事が息を切らしながら現れる
…これで予定調和かな?
「もうじき黒服の準備が終われば『先生』とアビドスのクソガキ共は指を咥えることしかできん!お前らの大好きなホルスが無様に死んでいくのを眺めるがいい!!何度も何度も俺の邪魔をしてきた報いだ!」
偉そうなカイザーPMCの理事が拳を震わせながら叫ぶ
“……。”
沈黙する先生と怒りの表情を浮かべる三人
「しつこい!」
「……!」
いつもうるさいセリカが無言で銃を上げ、シロコが罵倒をする
あっれぇ?これってそんな話だっけ?
これって先生が黒服に勝利していてお迎えに行くだけじゃなかったけ?
念の為助太刀用に爆弾用意したけど…やばいやつ?
もしかして私ガバった!?バタフライなエフェクト生じてしまった!?
黒服の実験ってなんだっけ?えー……
えっ?わかんね、頼りにしている原作知識が答えてくれない
さては私にわかだったな?
雰囲気不味そうだし、まあちゃんと戦ったし…
契約ではカイザー倒しちゃいけないとかはもないし
「あ〜あの、一応お詫びでここは任せてくれませんか?」
「…信じられない、恩を仇で返したくせに。」
シロコの冷たい言葉と二人の無言の視線
「えっ…?」
“私は信じるよ、色々と謎が多かったけど悪意はなかったようだから。”
踏みつけられた手を解放される
…うぅ、気まずいな
「ありがとうございます。先生のことだけ庇ってあげてください、ちょっと派手なの行きますんで。」
今回はちゃんと使っちゃいけない濃縮爆弾は内ポケットにあるし、多分大丈夫だけど
念には念をってところだ
数百もの銃口を向けられたまま、私は理事の方へと歩き出す
「なんだ?お前は…」
恐らく私の印象が薄いのだろう、急に謎のヘルメット団員が目の前に来たのに混乱する理事
マスクをずらし
「今日は良いお日柄でごわすね?」
中くらいの声を発しながら腰の爆弾を叩く
「……!?お前はぁ!」
驚きと憤怒の感情が伝わってきたので、全速力ダッシュしながらロボの集団に飛び掛かる
遮ろうとする兵士の頭をブチ抜き、浴びせられる銃弾を無視して、あれ?
いつもより多く神秘が吸われた気がした刹那
破壊とガバの女神はリトルに微笑んだ
爆風で巻き上がる砂嵐、理事の怒鳴り声
砂埃を身体に浴びながら、やけに近く感じる太陽に私は...死の恐怖を覚えた
大空を 自由に駆ける 翼をば
予想外の威力に困惑するリトルは天空の旅を終え、地面に刺さる
頭部が埋没したリトルちゃんは下半身を晒しながらバタバタしていた
窒息しちゃうう!!!
抜けたみかんの皮のようにくっきりとお尻の形をスパッツが示す、そんなことはお構いなしに全力で身体を振る
うそぉ、こんな死に方は嫌だ!
せめてイオリ先輩の胸か先生の胸で逝きたい!
口と鼻の中の砂利が不快感を与える
唐突に太腿あたりから変な温もりが伝わる
サワサワ
!?
ま、まさぐられている?
引っ張り出すには弱々しく、撫でるに近い触り方である
...えぇ、蹴るか?
サワサワサワサワ
ヨシ、蹴ろう!
鍛え上げたれた下肢を思いっきり振り上げると、しっかりと足ごたえが帰ってきた
柔らかい...けどほんの少し硬い、腹かな?
少しして、両足に大きな力が加えられる
顎に石が突っかかって痛いが、死ぬよりかマシなので我慢する
スポッとカブのように抜け、新鮮な空気が鼻腔に流入する
「ケホッ、オエ」
口の砂を吐き出し、大きくハンカチにチーンをする
「抜けた。」
「..….。」「派手に爆破しましたね☆」
“早くホシノのところに行くよ...後でちゃんと会いにきてね?”
...こちらにも笑いかける先生は、どうしてか腹部に手を当てていた
上空からプロペラの音がハッピーエンドを指し示す
私は何も言わずに立ち去ることにする
仮初の大団円をより本物に近づける、その目的を果たさなければ
私の力は依然と弱いままで、身の丈に合わない強欲さに釣り合わない
強く、もっともっと強くならなければ
しかし、浅ましくも目先を優先する私に出来ること
そんなの、一つだけだよね?
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砂海、風悄悄と吹き荒び
白月、幽幽と照らす
天を覆い、地を掻き分ける物の怪在り
相対するは兜を被り、震えを隠さぬ者
巨象と蟻、車と蟷螂、言の葉数多あれど
蛮勇を示すに言葉は不要
天変地異に逆らうは愚かのみを以て語る
山岳に等しき体躯、一度揺れるを以て嵐を起き、無比なる声雷鳴にも勝る
其は万物を搔き消す光
其は地を這う小さき虫
其は大道を拓き、業火を運ぶ者
其は地を這う小さき虫
其は海を分け、大浪を齎す者
其は成す術無く砂に沈む者
如何を以て抗う
如何を以て生き永らえる
然れど傍観なる者未だ目閉じず
然れど語り手口を閉じる無く
紅蓮咲き誇り、咆哮を以て大蛇潜らん
一条の流星、地より昇り眼穿つ
焔、其の目を焼き焦がす
憤怒以て体躯揺らし、怨恨以て空揺らす
片目にて目障りしモノ見つめ、噛み砕かんと口開く
砂散らし、岩飲む
矮小なる者之に迎合す
牙避け、咀嚼より疾く奥へ
内より火花咲かせん、身に纏う叡智を燃やす
刹那、狂叫にて驚愕し、狂乱にて身悶える
装甲の隙間、口腔眼孔、余なく火炎迸る
然れど其は神、然れど其は神
獅子心中の虫を焼き払わんと灼熱を飲み、叩き殺さんと身を地に打つ
煉獄に灼かれ、五臓六腑掻き回されりて甚だ重傷す
最早此処にて終幕や否か、果たして万事は休するか
魂を燃やし、身を粉にして再び返り咲かん
陽より熱く、業火より激しく
憤怒、怨恨に非ず
意思、渇望にて火を起こす
二度身を内より灼かれ、遂に神倒れ伏す
息、絶えながらにして小なる者口より這い出でる
勝利の美酒を味わうより先、極光が瀕死に追いやる
正しく蛇の如き執念と狡猾さ
身を削ることなく、因縁を葬る
礫を吹き起こし、巌をも融かす熱線は仇敵を確かに捉え、塵一つ残さざれり
依然神は壁立し、勝鬨を上げ、やがて傷を繕うが為地に潜る
翌朝砂漠の沈黙を破る、小さな呻き声あり
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「.....へぇ、今度は何を企んでるの?まさか急に罪の意識に駆られたなんて冗談はやめてよね?」
ホルスの瞳は眼前の黒スーツを捉える
「クックック、ええ!そのまさかですよ。善意です、言葉の頭に偽りがつくかも知れませんが、事実アビドスの債務は私が買い取り、そして放棄しました。」
「信じられるわけないだろ!!!」
デスクを真っ二つにカチ割る小さな拳
「お前のせいで!カイザーのせいで!お前ら大人のせいで!!ユメ先輩が!その前の先輩!もその前の前の先輩も!!何代も苦しめられてきたのに!!!」
張りぼての剥がれた少女は涙を溢す
「確認して頂いても構いません。土地はカイザーグループが保有していますが、今回の一件で恐らく適正価格よりも安い値段で売りに出されるでしょうし、それこそ信じられる大人である『先生』にでも頼めばきっと買い戻してくれますよ?」
「クックック、貴女達の望んでいた青春は見事に転がり込んで来ました。お感想を聞いても?」
相変わらず不気味な笑みを貼り付けた『黒服』はその柔い心の奥を舐る
「ッ!」
行き場のない感情を抱えたまま小鳥遊ホシノは銃を下す
ブーブーブー!
「ククッ、後輩達でしょうか?それとも先生でしょうか?貴女を心配する方々の電話には違いありません。早く取った方がいいのでは?」
歯軋りをしたままホシノはその髪を揺らしてオフィスの外へと出ていった
「クックック、これはこれで中々愉快なものを見れました。さて、十の予言者の一柱...それと人工の神秘と恐怖の混じった坩堝のデータ、ええ十分元が取れました。」
手元に残った契約書を暫く眺めた彼はやがてそれを引き出しに仕舞う
その手つきはまるで記念品を触るそれだった
「しかし、また新しいデスクを買わねばですね、気に入ってたのですがね。」
quod adhuc demonstrandum:未だ証明に至らず
ここまでお読み頂きありがとうございます!
書きたいことを書く。その一環を出来た気がします
厨二全開のエセ古文調にアビドスの借金完済
これぞ二次創作だろ...多分。