ガ ク ブ ル へ ル メ ッ ト 団 作:名もなきドクター
「細やかながらも健闘をお祈りします。」
それだけ言って端末は静かに沈黙した
...就活のお祈り構文にならないことを祈ろう
見上げると空を覆う程の巨躯がそこにあった
鱗を模した白銀の装甲に黄金の双眼、まるで海龍のように砂の海から顕るその動き
確かに神と言われても納得する姿だよね
「ッッッッッ!!!!!!」
嘶くその声は雷よりも一際轟き、無機質なその目は私を捉えた
身体の震えが止まらない...震えって力の入れ過ぎなんだっけ?
「はぁー、はぁー」
息を吐いて脱力をする、そうでなければ走ることすら出来そうにない
機械的に私を処理しようと口を開け、レーザー砲を剥き出される
太陽のように眩しい光は神々しく周囲を照らす
「ッ!」
歯を食いしばって砂の上を駆け出す、一歩進む度に砂が靴に入ってくる
ギュイン
おもちゃの効果音みたいに響いた着弾音
そこから発生した爆風に吹き飛ばされる
本日二度目の空の旅を迎え、比較的に柔らかば砂地に背中を打ちつける
しぶとく生き残った私を奴は見逃さなかった
背部から大量のミサイルが発射される
はは、廃墟を思い出すよ...
結局あの時と変わらず、私は逃げることしかできない
着弾地点を見極め、身体を伏せる
裂けて飛び散る鉄の破片を受けないためだ
轟々と次々に落ちてくるミサイルの爆炎を直で受ける
「”ッ“ッ””ッ“ッ””ッ“ッ”!!」
熱センサーで私を見つけられなくなったソレは、勢い良く砂漠にその身体を差し込む
掻き分けられた大地は盛り上がり、子供の砂場遊びのように砂嵐が起こされる
マズイ!埋もれたら窒息死か圧死かのどっちかで絶対死ぬ!!
無様に身体を起こし、爆心地から離れようと走り出す
しかし、走行速度よりも遥かに砂が堕ちてくる方が速かった
足が、膝が、腰...
どんどん砂に埋もれていく身体
逃げようにも、流動する砂に押されて上手く動けない
はっ!向こうが適当にカラダを動かすだけで私は死ぬのか?
はは、笑えてくるよ
大人と子供の差じゃない、それは同種においての差
これは象と蟻の差だ、絶対的な越えられない壁に遮られている
首すら動かなくなる...
ふざけるな!!ふざけるなよ!!
そんな簡単に死ねるか!
頭が...違う、これはヘイローだ
ヘイローが燃えている、そして自然とすべきことが分かった
軽く力を込めて、身に纏った砂を吹き飛ばす
私が死んだと思ったのか、ビナーは背を向ける
砂煙の向こう側にいるソイツに怒りが湧き上がる...
便利屋の時と同じように、短い銃口を第三のセフィラの頭に向ける
私はここにイる!!まだ終わってなんかいない!!
拳銃から響く砲声、砂埃を突き抜ける一発
意地の一撃は偶然にもビナーの左目に命中する
体積比では小さいが、爆炎がその輝く黄金色の瞳を覆う
「”ッ“ッ”ッ“ッ”!!」
実際は虫の一咬み程度の傷であっただろうが、それでも神は怒った
即ち本気となったということだ
羽虫は五月蝿いから払う、しかし噛み付いてくれば叩き殺す
月明かりの下は火の海になった
鉄と火薬が降り注ぎ、極光が撒き散らされる
砂が硝子に変わる灼熱、鳴り響く爆発音
....嘘だって言って欲しい
今から土下座すれば許してくれる...訳ないよね
まずは近づかなければ効力射を出せないし、せめて撃退はしないと黒服も納得しないはず
頼りになるのは脚力と愛銃、そして今持っている濃縮爆薬だ
ジャリジャリした足裏の感触と焼けた空気
劣悪な環境を走り抜け、降り注ぐ火の雨と熱線を避ける
装甲に向けて一発、無傷
側面のVLSに向けて二射、無傷
どうやってこいつと戦えってんだよ?
総力戦ボスはやっぱり一人でやれるものじゃないや
脳裏にピンク色のゴリラが横切った
もう一発眼球に当ててやろうか、そう思った瞬間
やたらとしぶといリトルに痺れを切らしたビナーは分かりやすく致命的な隙を晒した
そのどデカい口を開いて噛み付きを仕掛けて来たのだ
大チャンス!!
たっぷり爆薬食わせてやる、そう思ってタイミングを合わせて跳躍
すれ違いざまに投擲をしようとするも...
身体をくねって軌道修正をしたビナーの口にホールイン
わぉ!ご立派!!
明らかに人間が噛まれちゃいけない牙に戦慄しながらも全力で喉奥を目指す
特徴的なレーザー砲の隙間に身体を差し込み、腰ベルトの後ろにある水筒を砲門にぶち込む
起爆された神秘火薬によって口内の空気が消し飛び、酸欠状態に陥る
視野は全て赤で埋め尽くされ、爆音と咆哮の二重奏で鼓膜が消し飛ぶ
引き起こされた現象の影響は受けずとも、その結果には干渉される
朦朧とする意識の中、どうにか外へ出ようと顎に力をかけるが大岩のように固く閉ざされた口は開かない
さて、果たして本当に神の領域に踏み入った人造物に口内からの爆発程度が意味を持つのだろうか?
キヴォトスでは神秘の格差によって、下位の者が幾ら努力しても傷付かず、巡航ミサイルすら擦り傷で済む者がいる
では、ビナーとリトルの神秘の差はどれくらいだろうか?
若干歪んだ砲門に灯る光がその答えを示す
詰まるところ、少々のアクシデントがあったものの、大蛇の目的は当に達成されていた
避けようのない密閉空間、ここにて炸薬リトルの小さな身体と素早い動きは意味を成さない
その厄介な特色が消え失せ、後はお得意のレーザーで焼けばいいのだ
「ア“ア”ア“ア”!!!!!」
獣のような声で叫ぶことでしか痛みを訴えられない
逃げ場を失った熱エネルギーは口内の金属すら溶かし始める
辛うじて原型を保てていた少女の生命線であったヘイローが爆ぜる
全身隈なく光で灼かれた少女状のモノは命を落とす、その寸前
Mysteryが崩壊するその刹那、奇跡とはかけ離れた必然が起こる
爆弾とは、無傷であってはならない
一度爆ぜれば、そこで終わりである
そうだろう?
いいや、死と再生は表裏一体だ
ナニかが砕け散る
ソレは人格なのか、記憶であるか、はたまた魂であったか
とにかく少女を構成する一部がここで終焉を迎えた、筈だった
■■ダ!許■■■!■■■ハッ■■■ンド■■■■!
エラーエラーエラーエラー
システムエラー
本個体ノ崩壊ヲカクカクカカカカ
エラーエエエエラー
次工程へへ進ム
反転ヲ確認、転換終了
偽リ■■■ニ■■ノ鉄■■
再現度...■%
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半径十数キロの地面が抉れ、硬い地盤が表出する
その中心地にて、第三のセフィラはその頭部を地に付けて、さながら許しを乞う姿にも思える
振り下ろされた一撃は確かな痛みをデカグラマトンの一柱に与えた
身を地に打ちつける、激しく悶える神もどき
その電脳を揺さぶり、体内の修復にリソースを回さざるを得ない
ドコン
小さな爆発がその閉ざされた口腔をこじ開ける
『ぷはぁ!ってこれセフィラだよね!?何で私は口の中にいたのかな?』
心底困惑を隠せないまま女生徒は埃を払って歩き出す
『うむむ、思ったより損傷が酷いな。シーちゃんが動いたというには軽いけど...ッ!』
背後から危険を感じ『装甲』を起動する
『ッチ!これ...!キツイ』
熱線が自分に当たるより先に炸裂する神秘によって軽減されるが...
『あっ』
真っ向に『アツィルトの光に』抗うも、力尽きてしまう
そのまま崩れた瓦礫の中に叩き込まれていく少女
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歪む視界、響く耳鳴り
痛まないところがなく、無事な皮膚がないレベル
まさに完膚なきまでに打ちのめされたこの少女は炸薬リトルである
ビナーの一挙一動で軽々しく蹂躙され、渾身の自爆も効かず
なんなら追撃で意識を吹き飛ばされ、現在指の一本すら動かない
何で私は死んでいないのかな?
文字通り五臓六腑に衝撃を受け、全身に打撲と火傷を負ったリトルは現在、野晒しのまま砂漠に放置されていた
「イオリ先輩〜!先生〜!誰か〜!!」
到底誰かに声が届くはずがない
だって寂れたアビドスの中心部など、ヘルメット団ですら近づかないのだから
唯一開発をしていたカイザーPMCも先日に大打撃を受けて撤退し、リトルは助けを呼んだところで体力を消耗するだけなのだ
「……グス。」
私、ここで死んじゃうのかな?
アビドスの借金はどうなったのかな?
これで実は私の勘違いで、借金は残ったままでだったら無駄死にだよね
死にたくないな
折角、友達も出来て先生にも出会えたのに
あの子達に顔を見せる約束も果たせないまま…
痛い、辛い、痛い
……
……
「誰か!!!助けてぇ!!!」
「……。」
日が沈み、冷え込んでくる砂漠は体温と心の熱さえ奪う
あぁ、私ここで死んじゃうんだ……嫌だ
馬鹿!馬鹿!!
どうしてビナーと戦うなんて言ったの?
アホ!借金が残ったってアビドスは続くのに
余計な偽善振りかぶったせいで…クソッ
クソ!
こんなことを考える自分が嫌い
……
……
「寒い、ラーメン食べたい。おしっこ漏れそう。」
……
……
「あっ……。」
じわっと暖かいものが下腹部で広がる
「やばい、なんか冷たい…」
冷めた尿が体温を奪う、負のスパイラル
……
……
「ちょっ!?不味いって!!踏ん張れ私のお腹!!」
「いや、踏ん張っちゃだめだ!」
冷えたお腹がギュルギュルと悲鳴をあげる
……
……
「……。」
人としての尊厳を全て失ったリトルは精神的な死を迎えた
しかしそのお陰で体力の消耗が防がれる
……
……
存外快眠できた自分に驚きを隠せないリトルちゃんだ
「コハルが一匹、ハナコが一匹…」
「…今日もアビドスを襲撃するぞ!」
「フウカたんが一杯、うどんが五杯…」
「相棒、今日も早撃ちの練習をしようぜ!」
「わぁ…銀行だー。よぉーし爆破しちゃうぞぉ〜」
「そう、オラこそ『無貌の爆弾魔』でごわす!恐れ慄けぇ〜」
漂う悪臭には全く気づかないように振る舞う彼女は限界寸前だった
まあ、達しちゃったモノもあったけど
……
……
二日目の夜、下がり切った体温と空腹が脳の回転を限りなく零にする
「……さん!!」
“リトル!!”
三途の川の向こうで戦友たちと先生が戦車に乗って迎えにきた気が…
「「Lさん!!」」
ガガガガガ
瓦礫が崩れる音がする
ッ!
「私はここだ!!!だずげでぇ!!!」
恥も外聞もかなぐり捨てて必死に叫ぶ
ガガガ
エンジン音が遠ざかる
「くっそぉ!!!」
こんなところで死んで溜まるか!
喰らえ!自爆ぅ!!
痛む全身を無視して、力を込める
ドコン!!
”こっちから音が!リトル!!”
……ぁ
助かる……
ガク
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ふかふかベッドに身を預け、顔は初めて見た相手にりんごをアーンしてもらう
毎日三、四人が代わる代わる上から下まで世話をしてくれる
世話役は皆あの時一緒にアビドスを襲ったヘルメット団員で、それはもう至れり尽くせりだった
リハビリをするとなれば十人もの人員が動員される
具体的には両側に二人、杖持ち一人、車椅子持ち一人、医療スタッフ二人、脱走防止四人
おかしくない?
支えが二人はわかる
杖持ちと車椅子持ちが一人ずつも、ちょっとやり過ぎだとは思うがわかる
医療スタッフ二人、あの子達から..!って感動と用心のし過ぎだとは思うがギリわかる
脱走防止四人⇦ナニコレ??
私は一体なんだと思われているのか問いただしたいが、答えが怖いので辞めとく
気分は王様なのだが、居心地は最悪に近い
天国と地獄に挟まれたってのがいい例えな気がする
ただ...それ以上にお見舞が怖い
全員私に数時間分説教していくのはどうなんだ?こっちとら重病人ぞ!
アビドス廃校対策委員会の各メンバーが二日目からずーっと一人ずつ面会時間の全てを使ってお説教と感謝と怒りをぶつけてくるの
特にホシノがすごく怖かった
どうして私の襟を掴みながら振り回すのですか?そしてなんでそのまま泣き出すのですか?
いや、まあ複雑な心情ってのは理解してるんだ
先生はガチギレしてくるし...まあ余裕で私が悪いんだけど
ただ、朝昼晩の三連続は勘弁してください
連勤明けの隈で私を叱り、寝落ち
起きて私にご飯を食べさせながら叱り、出勤
退勤した後に夜食を買ってきて食べながら叱り...健康上の都合で食べさせて貰えなかった
一生分お叱りを受けたわ
イオリ先輩に至っては無表情で私を睨むのだ
無言で、お日様が沈むまでずーっと立ってるの
その癖すっごい力で握り拳を作ってていつ殴られるのかが本当に怖かった
...途中で食い込んだ爪で病室の床を赤く染め上げた
後から聞いたけど、私がメッセージも返さず二日間音信不通になったから先生に連絡してくれたらしい
命の恩人なんだが、はい
全 部 バ レ ま し た
これ以上はノーコメントにしとこう
結果完治してリハビリを終えたのに一週間は解放して貰えなかった
なんなら先生の長期出張には私も同伴することとなった
理由は目を離すと大怪我してしまうからだそうだ
言い返せないので大人しく受け入れときます
ここまでお読みいただきありがとうございます!
誤字脱字報告は大変感謝してます
後は気長に細やか設定を書くだけですね
そして、残念ながらこの物語はここで終了です。
半分は嘘ですが、リアルのお事情により投稿頻度は激落ちくんです
感想返しだけは頑張るんで、ね?