ガ ク ブ ル へ ル メ ッ ト 団 作:名もなきドクター
芸術と言うには程遠くて
「...外出たくないなぁ。」
やあ、私だ
衝撃的な入学式によって洗礼を受けたあの日以来、外出がとにかく億劫だった
しかし、そうも言ってられない
キュルルと腹の虫は飯を督促してくる
という訳で今日も今日とて深夜にひっそり外出である
手元にあるのは心許ないハンドガン一丁、正直身体が使い方を覚えているとかいう都合のいいことは無かった
果たしてこの小さな体とハンドガン一本で今までどうして生きて来れたのか、自分でも分からない
いや...あれだ
多分連邦生徒会長の失踪がキッカケだ
まだニュースは出回ってないが、途端にキヴォトス全域の治安が悪化し、特にゲヘナは手の施しようのない程までの地獄になってる
原作知識からするとそのくらいだと思われる
犬も歩けば棒に当たるだが、
穏便にやり過ごす為には現金をある程度持ち歩いて、先ずは逃げて、ダメだった時は素直に金を出すのが一番だ
本当は全てカードに仕舞いたいが...
痛みの教訓を持って、現金の有り難さを知らされた
具体的には
スケバン「おい、ジャンプしてみろよ」
リトル「(へへへ)ぴょーん」
スケバン「舐めてんのか?」
リトル「ぉ...お金は持ってないでごわすよ!?」
スケバン「...(無言で銃を構える)」
この後素っ裸にひん剥かれた上に銃撃のフルコースを喰らい、最後に学生証を分取られて入れていたクレジット全部無断使用された
文字通り痛い目にあった上、学生証の再発行は普通に面倒だった
それ以来は常に1000クレジットの紙幣を数枚携帯している
そんな事情はどうでもよくて、食糧調達のお話だ
基本的に料理下手なリトルはコンビニ飯しか食べない、入学時はゲヘナの食堂でてぇてぇしながらフウカたんの手作りご飯とか考えていたが....
現状不登校の引きこもりにはそんなことは夢のまた夢である
とりあえず今日も人気の少ない深夜にコンビニダッシュである
買い溜めはしないのかって言う質問があるかもだが、こちらもゲヘナお馴染みの事情で、ね?
一回スーパーの袋片手に持ってたら、急に後ろから銃突きつけられて……うん、忘れよ。
(少女外出中)
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深夜のゲヘナは寒い上不気味だ
大通りはともかく、小さな道の街灯は基本的に野生のゲヘナ生によって破壊されてる
根元からポッキリ逝ってる子
ヘッドショットで電球部が無くなってる子
柱部分が歪んで電線が切れてる子
数えれば数十通りの破壊方法でお亡くなりになってる電灯がいっぱいだ
よって深夜は懐中電灯がおすすめだ
ちなみに私は真っ暗闇に隠れる派だ
理由は簡単、デカデカと光出してたらカツアゲに遭って(以下略
というわけで、最寄りのコンビニに向かってトコトコと移動していると
ダダダダダダダ
ドカーーン
はい、戦闘です
ここではよくあることなのです
リトルちゃんはか弱い乙女なので草むらで息を潜めます
実は慣れてきたから銃弾数発は全然余裕だったりするのは秘密だ
「ぶっ殺せーー!!」
「あぁ?やってみろよ!!」
ダダダダダダダ
ダダダダダダダ
「団長の仇ぃぃ!!!」
「おらあああああ!!」
ダダダダダダダ
ダダダダダダダ
おかしい、終わりませんね...?
どこかの団長さんの冥福を祈りつつリトルは草むらでスマホをいじり出す
キヴォトスは技術が発展している
銃火器関連の重工業はもちろん、IT技術も恐ろしく進んでおり、情報戦関連の部活も幾つもあって、三大校のトップにはそれぞれの情報網を持っている程である
つまりだな、ソシャゲが楽しいし、掲示板もSNSも動画も見れる充実した世界なのだ!
「勝ったぞおおおお!!!」
「おぉぉぉ!!!!」
日課の周回とログボを取り、SNSチェックしているとついに銃声が止み、代わりに獣じみた雄叫びのよる勝鬨が聞こえてくる
女の子なのに、雄叫び…
ギュルルルル
腹の獣も呼応してしまう
昼間に食べたレトルトカレーを思い出すと、あれからもう10時間以上経ってる
「早くどっかいってくれよ...。」
茂みをかき分けて覗いてみると、ヘルメットを被った集団が祝砲代わりに天に向かって銃弾を撒き散らしながら胴上げをしている
普通に危険であるがキヴォトス人には理解できないのだろう
はぁ...お腹空いた
「死に晒せええ!!!!!!」
歓声の中にやたらと響いた憎々しい怨嗟
「はっ効かねえよぉ!おらあ!」
覇気の伴った一喝にて
カーーン
甲高い金属の反射音
ガサ
何かが草むらを掻き分けた
腰のあたりに何かが当たる
「はぁ、またこれか。」
小さく愚痴を呟くと
嫌な予感と共にどこか諦めた気分になる
思い出すのは、入学式の日の惨劇
カツアゲに始まり、乱闘で踏みつけられ、爆破テロとコンビニ強盗に巻き込まれる
走馬灯が浮かぶが、どれも碌なものじゃない
次の瞬間、腹が焼け落ちた
熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱いッッッ
「痛っったああああ!???」
どうして?何故?
何故?何故?何故?何故?何故?
ワタシが何をしたって言うの??
ナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼ
銃弾は何百発と当てられた
罵声も浴びせられたし、侮辱もされた
何度も恫喝をくらい、何度も理由もなく傷つ
けられてきた
目を背けて、我慢をした
肩をぶつけられれば平謝り
恫喝されれば、財布捧げて土下座
弱き者の意思は踏み躙られ、悪党が我がもの顔で闊歩する
理不尽な仕打ちと空腹による怒りが頂点に達する
沸騰し始めた頭は、普段は決してしない方向に思考を誘う
こんなのが、楽園か?
ここは決して楽園であるはずがない!
楽園であってはならなイ!
そこで、ナニカがはち切れた
撃鉄は下ろされ、火薬は着火された
そうして少女はゆっくりと、導火線に火が伝うように、ゆっくりと一歩踏み出した
ーーーーーーーーーーーーー
ヘルメット団、キヴォトスでは最も名の知れたゴロツキ勢力の一つである
ガラガラヘルメット団
ヘルメット団の中でも中の上に位置する一味であった彼らだったが
日々ライバル関係にあるスケバンどもと鎬を削り、孤立する弱小生徒から金を巻き上げ、風紀委員やヴァルキューレから逃げ回る
そんな良くある不良の寄せ集めだ
そして、ある時を経て名を馳せ始めた彼らは突如壊滅した
後にとある事件の取材の音声記録にて
「あれは不死身の化け物なんだ!」
「何十発も...何百発も...手元にある弾全て打ち込んでも、アイツは斃れねえんだ!」
「こっちに、こっち、そう、こっちにこっちに、ああああああ!!!こっちに来るなぁあああ!!」
「悪魔だ!」
「悪魔ぁ!!ひぃぃい!?嫌だ、熱い熱い熱い悪魔ぁ!!!」
(これより先は取材対象の精神が不安定であったため削除してある)
ーーーーーーーーーー
初めに異常に気づいたのは誰それか
団長がスケバンのなけなしの反撃の手榴弾を跳ね飛ばした先にあった、道端の生い茂る雑草から妙な声が聞こえた
そして
パンと小型銃の発砲音が響いた
仲間のヘルメットに乾いた音が鳴った
ただそれだけだった
「生き残りかぁ?リンチにしてやれえ!」
団長の号令で皆の銃口が一斉に暗い藪の中から出てきた小柄の生徒に向けられた
撃った、その弾丸は確かに当たっていた
フードを被り、不鮮明なヘイローを浮かべたその生徒に
一発残らず命中した
タン
靴とアスファルトが触れ合う音がした
その生徒はこちらに一歩踏み込む
銃撃の嵐は続いた
また一歩、ソイツは進んだ
撃った、撃った
隣のやつはリロードをした
団長は怒鳴る
皆がまた撃った
何発も、何発も
だけど、ソイツは避けもせず
ただ、一歩、また一歩とこちらに向かってくる
さっきまでの勝利の興奮は冷めた
寒い夜風はそっと背筋をなぞる
気づけば、手元の愛銃は空砲音を鳴らすだけだった
奴は、直ぐ前にいた
団長が散弾銃を携えて間合いに飛び込む、ソイツの脳天目掛けて一発ぶち込んだ
やはりソイツは避けなかった
ただ、少しだけふらついただけだった
団長は強い、少なくともタイマンで負けてるのを見たことないし、そのショットガンの威力は敵でよく証明されていた
それでもソイツは、ただ
一歩前進した
ふらっとした足の運びで、直ぐにでも倒れ込みそうな雰囲気だった
それでも、奴は進んだ
団長は少したじろぎ、リロードの手が少し滞った
二発目が奴の腹に入った、どこまでも重く腹の底に響く銃声だった
俯いたまま、ソレは
また一歩踏み出した
気づけば奴は団長のすぐ側まで近付いていた
小さな手が、そっと団長の襟を掴んだ
そして、ゆっくりとソイツに
其の勢いは次第に強くなり、やがて赤熱した銃口のような色になる
誰が見ても異変であり、掴まれてた団長は必死に振り解こうとしたように見えた
次第にソレは発光を始めると、頭が急に警報を発した
ニゲロ!ニゲロ!
思わず足が後ろについた
周りを見ると、仲間たちもそうだった
だけど、きっと全力で走るべきだったと後に思う
次の瞬間、小さな太陽が夜闇を切り裂いた
ヴァルキューレの閃光弾が炸裂したような眩しさに目を焼かれた
ただ、違うとすれば一つ
熱かった、とても熱かったんだ
焼ける灼ける灼ける焼ける焼ける灼ける灼ける焼ける焼ける灼ける灼ける焼ける
アツイアツイアツイ
「嗚呼ああ、アアアツイイイイイィィ!!」
「嫌あああああ、助ズゲデェェ嗚呼嗚呼!!!」
仲間達の絶叫が木霊する
肉の焼ける匂いがした
目が見えない、息が苦しくて
痛くて辛くて、
そして何よりも、身体が焼ける痛みが
指先から消えていく感覚が怖くて
ただ必死に叫んだ
タスケテ...と
ーーーーーーーーーーーー
元から暗い曇り夜空は、次第のその重みを増して、ついに雨が降り出した
ポタポタ、ポタポタと頭に伝う冷たい感触
それに起こされた少女、炸薬リトルはただぼーと目の前にいる大柄な女学生を眺めていた
辺り一面漂う肉の焼けた匂いは、空腹を誘うどころか却って吐き気を催す
「どうしよっか、これ。」
微かに胸の上下を見て、生存を確認しほっと一息つく
全身から言葉にならないような痛みが走る
特に頭部と腹部に走り回る鈍痛が酷かったが、それ以上に筋肉痛のような痛みが駆け巡って全く力が入らなかった
周囲の赤い地面からは白い煙が上り、ところ構わずヘルメット姿の人が転がっている
そして、直に身体に伝う水滴がすごく寒かった
「転生チートって言うには使いづらいと言うか、使ったって認識がないんだけど...。」
これ、やばくね?
恐らくキヴォトス人じゃなかったらお陀仏案件だ
でも良く考えれば、一般人も銃弾一発で死ぬし...アレ?
「もしかしてこれ、産廃か?」
「しかも、服が破けるのは不味いって...。」
なんか着るものを探したが、近くに転がってるヘルメット団員の服もボロボロな上、流石に良心を苛まれるので剥ぐのもできない
せめて顔だけでも隠そうと、目の前にいた大柄ヘルメット団員からそのヘルメットを拝借した
結局惨状を作り出した当人はよく分からないまま、素っ裸で家へと歩を進めたが
バタ
足に力が入らず、最終的にはナメクジのように雨の中を這って進んだ
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とあるトリニティ生徒Aとトリニティ生Bの会話
A「ねえねえ、ご存じですの?」
B「ご存じっと仰られても...。」
A「ゲヘナには全裸で這い回る変態がいるそうですの!」
B「まぁ!全裸ですの!?やっぱりゲヘナは野蛮で未開なのね!」
A「ええ!服を着る知能も無いですもの!」
B「うふふ、優雅なるトリニティ生では考えられるませんわぁ」
A「そうよねぇ、うふふふ」
やっぱりゲヘナは野蛮!
トリニティ最高!という高度なギャグをかまします
感想と評価を燃料に頑張るかも知れません
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二話目なので二回です
感想や評価有難うございます