フラダリ転生で世界を救おうと思います   作:十二の子

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誤字報告ありがとうございます。


第1章 フラダリに転生したので世界を救おうと思います
裏1 前略、転生しました。


ー*-

 

 視界いっぱいに迫る、茶色。

 

ー*-

 

「代表!代表そろそろ起きてください!」

 

 肩をゆすられた。

 

 「フラダリ代表!」

 

 「ん~~~?

 

 …!?」

 

 なんて!?

 

ー*-

 

 「大丈夫ですかフラダリ代表」

 

 「あ、ああすまない。」

 

 事情が全く呑み込めない…なんだここは...俺は助かったのか…?

 

 「ちょっと代表!無理に起き上がらないでください!運ばれてきてから丸3日寝てたんですよ!?」

 

 「…む、しかし別に何処も痛くはないのだが…」

 

 「痛くなくてもどこかおかしくなってたりするかもじゃないですか。現に、ちょっと口調変ですよ?それにいつもなら、ポケモンは大丈夫か、プロジェクトの進捗はどうだ...って自分のことそっちのけで聞いてくるはずですし!」

 

 …ポケモン?フラダリって呼ばれたし、やっぱり、そう、なのか...?

 

 「…すまない、少し、その、記憶が混濁しているようだ...

 

 説明を、あと何か、スマホ...あいやいや、記録端末的なモノを、見せてくれないか?」

 

ー*-

 

 男が困惑から立ち直るには1日を要し、そして現状を把握しきるにはさらになお1日を要した。そして気鬱から立ち直るには1日では足りなかった。

 

 「…まさか俺が、コホン、私が、あのクソコラグランプリのメガカエンジシになってしまうとはな...」

 

 ・ここはゲーム「ポケットモンスター」の世界のカロス地方で、時間的には「Ⅹ・Y」の物語の少し前。

 

 ・自分は最新情報端末「ホロキャスター」の開発・運営・流通企業の「フラダリラボ」代表で、「プロジェクトY」なる秘匿プロジェクトの視察のためセキタイタウンに行ったが、なぜか意識不明でポケモンもすべて失くして帰ってきて、丸3日寝ていた。

 

 ここまでのことを説明してくれたのはフラダリラボで社長室秘書をしてくれているコルチカムだ。ちなみに男はこの社長秘書に見覚えがなく、「ゲームに出てこないフラダリの側近、つまりフレア団のことを知らない”オモテ”の側近」なのだろうと結論付けた。

 

 コルチカム女史が知らなかったことは、男ーフラダリの持っている2台のホロキャスターのうち厳重な、つまり”ウラ”のホロキャスターで閲覧できた。すなわち男が転生前の知識で知っているように、フラダリは悪の組織「フレア団」のボスなのである。

 

 ・フレア団の目標は「最終兵器」に伝説のポケモンであるゼルネアスまたはイベルタルを押し込んでその力で自分たち以外の世界のすべてを滅ぼし、争いのない世界を到来させること。

 

 ・イベルタルが見つかったとの情報を受けてオルアースの森に向かったが、イベルタルが眠っている姿である「破壊の繭」に触れたとたんに繭の表面から吸い込まれて、手持ちのボールをすべて失って吐き出された。イベルタルの起動に必要な生命エネルギーを奪おうとしたものの、イベルタルを用いたことのある古代の王の子孫であるフラダリのみが耐えたのではないかとフレア団の研究チームは考察し、暴発とさらなる犠牲者の発生を防止するためひとまずイベルタル・ゼルネアスの回収計画を中止している。

 

 「…マイナスからの再出発だな...」

 

 実は男は、いなくなってしまった手持ちポケモンの心配はあまりしていなかった。呑み込まれて出てきたのがフラダリだけだから死んだーイベルタルに消費されたと研究チームは考えているようだが、フラダリの中身だって出てきてはおらず、中身の魂は転生者のものだ。吸い込まれた命は帰ってきておらず新たな命が別世界から現れた、すなわちフラダリとその手持ちの魂もまた別の世界に入れ違いでうっかり吸い出されたのではないかと男は考えている。

 

 「…まあ想像通りなら、『世界を美しいままにするためにいったん全部破壊する』なんて危険人物が、ポケモンのいない世界にメガシンカポケモンごと現れているのかもしれないわけで、それはそれで大変だけど...コホン、だが...」

 

 まあ気にしても仕方がない。転生してしまったものはどうしようもないし、別世界の命運までは知ったことではない。その前にフラダリには気にすべきことが山ほどある。

 

 ・フラダリラボのこととカロス地方のこと。ホロキャスターがカロスを席巻したおかげでフラダリラボグループはカロスの情報的な支配者になっていると言っても過言ではないが、厄介事も同時にたくさん抱え込んでしまった。

 

 ・自分自身の個人的なこと。ポケモンを中心に回っている世界で手持ち全損がまずけっこうキツイ。部下に戦わせることもできる立場だが。

 

 ・フレア団のこと。目下最大の問題。生命を過剰に与える伝説のポケモンゼルネアスと生命すべてを吸い尽くす伝説のポケモンイベルタルを3000年前の最終兵器に入れて世界を滅ぼそうとする狂った選民組織だがその能力は極めて高くおまけに高度に組織化されていて簡単には止められそうにない。

 

 男は自分のことをそれほど優れた人間とは思っていなかった。フラダリは狂った目的のために多数の研究者やしたっぱを集めて計画を押し進めながらもオモテでも新技術でカロスの政財界のトップクラスにいる、それだけの能力とカリスマがある人間だが、能力の部分は今や部下が代替できるとしても、カリスマは転生者の彼にはない。

 

 「俺...コホン、私が、『プロジェクトYは今日から中止だ!』なんて言っても、ついてこないよな...」

 

 今までのフラダリのカリスマ性についてきていたフレア団が、いきなりフラダリの皮をかぶった平々凡々な一般人にやめろと言われてもやめるわけがないし、最悪入れ替わりがバレたりクーデターを起こされる。

 

 「後任がクセロシキになるのもな...俺が導かないと危なすぎるか…」

 

 マッドサイエンティストに伝説のポケモン渡したってロクなことにならない。最悪を回避するためには「今まで通りのフラダリ」を演じ続けるのが一番無難だ。

 

 「どうせフラダリの計画は主人公たちによって失敗に終わるわけだしな...」

 

 よしんば主人公が来なくても、土壇場でチャンピオンのカルネに匿名の通報を送るとか、方法はある。大事なのは計画がすべて失敗に終わり最終兵器が自爆するその時までそのおぜん立てを原作通りすることーただ男は原作のことをそれほど細かく覚えていなかったが。

 

 「でもせっかく生きて転生できたんだもんな、死にたくはないよな」

 

 最終兵器の自爆に巻き込まれて死んだり、うっかりして逮捕されてはたまらない。何しろ本気でこの世界を滅ぼしたいわけじゃないのだからー土壇場で自らプロジェクトYを潰したら、そのあとは適当な地方に高跳びだ。

 

 今まで通りのフラダリとして政財界の要人の顔をしつつ裏ではフレア団の悪だくみを押し進めてカロスを滅亡の危機に追いやり、土壇場で計画を失敗させ会社も組織も最終兵器も盛大に吹き飛ばして高跳び...!

 

 男は悩みに悩んで、第二の人生の目標を決定したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-*-

 

 「フラダリ様、その、重大な報告があるんだゾ」

 

 「なんだクセロシキ。」

 

 「イベルタルとゼルネアスがオルアースの森で目覚めて、しばらく暴れたのちに自ら再封印したとの報告が入ったんだゾ。」

 

 「…何?」

 

 「事件にはロケット団とかいうカントーのマフィアと、サトシ、セレナ、それにミアレのジムリーダー兄妹がかかわっているようなんだゾ。」

 

 なぁにぃぃぃ!?

 

 

 

 




(もとはと言えばフラダリが現代転生して世界がポケモンに侵略される中暴れまわる話を書こうとしていたけれどそっち側はまだプロットすら不充分とか言えない)

転生者「どうせゲーム世界やし多少無茶してもええか、進行覚えとるし」

転生者「ファッ!?アニポケ世界マジ!?アニメ見とらんのやけど!?」
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