フラダリ転生で世界を救おうと思います   作:十二の子

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舞台を下りろ。舞台を下りるんだ、六条絵里華。


表9 Please break your world

ー*-

 

 「お母様、お父様に、わたくしは、謝らなければなりません。」

 

 エリカは、流れ続ける凶報を聞くたびに、罪悪感に押しつぶされていた。

 

 -わたくしのせいだ。わたくしがあのバトルの時に、フルール・ド・リス(フラダリ)を屈服させられていれば...!

 

 「わたくしには、前世がある…前にそう、お話ししましたよね?

 

 フルール・ド・リス…フラダリは、わたくしの前世の世界を滅ぼした人物なのです。」

 

 両親が、そして激務の中呼び出された赤穂総理が、驚きに目を見開く。

 

 「前々から、前の世界で何かあったのかと思ってはいたが…」

 

 「フランス北部を壊滅させたあの2体のポケモンは、いずれも伝説と呼ばれるポケモンです。生命を与えるポケモンゼルネアスと、死を与えるポケモンイベルタル...

 

 わたくしの世界は、フラダリとその部下による不死の軍勢と、イベルタルを組み込み生命を奪う戦略兵器によって、全人類とポケモンが滅亡しました。このままではおそらくこの世界も…」

 

 「強烈な選民思想、止めることのできない強力なポケモンと洗脳兵士による占領地域拡大、そして核兵器...エリカさんの忠告は、正しかったのだな…」

 

 額を抑えて空を仰ぐー打てる手がほとんどない。米中露の「核兵器でパリ市を燃やし尽くしてフラダリを始末し、反撃で飛んでくる350発の核兵器はなんとか迎撃する」という計画も、フラダリが(核兵器に耐えるかもしれない)ゼルネアスある限り不滅で、世界の滅亡が本当に目的なので核兵器に戦略目標を定める必要がなく対弾道ミサイル迎撃の照準ができないという前提では、ほとんど崩壊している。というか報告によればイベルタルはすでにフランス軍パリ市暫定政権派の攻撃をミサイルも機甲師団も石化しているので、そもそも核兵器の投入も無効化されかねない。

 

 「…あの日リス氏にバトルを仕掛けたのは、前世の因縁...無念を晴らすためか?」

 

 「そのつもりでした。今度こそ、勝って、止めると。

 

 わたくしは、わたくしがフラダリを倒さなくてはならない、そう思っていましたけれど…

 

 ...わたくしには、もう、勝てる自信がないのです…」

 

 あまりにも傑物過ぎる。止まらな過ぎる。バケモノ過ぎる。強過ぎる。

 

 あの世界のすべてのトップトレーナーが集まってもフラダリは倒せなかった。伝説ポケモンがまだ3体しかおらず従う部下もすべて自前ではなく洗脳兵とはいえ、最終決戦の末席にいただけのエリカに、もはや勝てるはずが…

 

 「おめおめひとりだけ別の世界で転生して、使命を果たすこともできそうにない…

 

 わたくしを…わたくしをっ...

 

 わたくしを、お赦しください…!」

 

 何のために生き残り、この世界に転生したというのだ?

 

 袖が震える。

 

 涙が袴を濡らす。

 

 「絵里華、こっちを向いて。」

 

 何を言われても仕方がないーそう顔を上げたエリカを、母は確かに、見つめ、そして一言。

 

 「絵里華、例え貴女の前世がどんなものでも、貴女の力が届かなくても、貴女は私の、大切な、大切な娘よ。」

 

ー*-

 

 「赤穂くん、ぼくがさらわれている間にいろいろあったようだが状況はすべて把握した。一つだけ、一番急いで言わなければならないことがある。

 

 赤穂くん、これだけは彼女に伝えるんだ。今から僕が言うことは、フラダリを倒す希望になるからね。

 

 エリカくんは雑魚…とまではいかなくても中堅キャラだ。いいかい?フラダリはラスボスで、とてもエリカくんが勝てるキャラじゃない…

 

 …というのが、エリカくんの世界の仕組みだ。だが、この世界では違う。」

 

 「赤穂くんには認め難いかもしれない。キミはエリカくんのことを、ポケモン世界から来た伝道者、チュートリアルガイド、あの世界のことを伝えこの世界を導く者、アドバイザー、そう捉えているのだろう?

 

 だがこう伝えるんだ。

 

『舞台を下りろ。舞台を下りるんだ、六条絵里華』」

 

 

ー*ー

 

 「貴女は」「絵里華は」「「大事な娘」」「よ」「だ」

 

 重なる声が、エリカの心にしみわたる。

 

 -そうでした。わたくしはここに生きている。大事にされて、必要にされているのです。

 

 「貴女は六条絵里華。前世で何があっても」「父さんと母さんの、大事な一人娘だ。」

 

 -そう、わたくしは、六条絵里華(エリカ)

 

 「絵里華は、絵里華の人生を生きなさい。」

 

 六条エリカの、涙が、止まった。

 

 「わたくし、決めました。

 

 わたくしはもう一度、フラダリに挑みます。」

 

 強引に涙をぬぐい、袖を振り、立ち上がる。

 

 「お母様お父様、総理、力をお貸しいただけませんか?」

 

 「ダメだ。」

 

 「貴女は、もう、ポケモンの世界からこの世界を導くという役目も、フルール・ド・リスに滅ぼされた自分の世界の仇を取る役目も、できない、そう言うのでしょう?

 

 だったら私は、母として、勝ち目のない死地に」「父として、自分の子どもを国際紛争に放り出すことはできん。」

 

 「いえ。

 

 産まれも育ちも関係ない。わたくしはわたくしだから、一人のポケモントレーナーとして、フラダリを止めるのです。

 

 この世界で今2番目に強いトレーナーは、おそらく、わたくしですから。」

 

 「そうか...

 

 …絵里華にも、反抗期が来たんだな…」

 

 「総理、手出しは無用です。

 

 あなた、あなたのはじめてをもう一つもらうけど、よろしくって?」

 

 「もちろん!

 

 絵里華、父さんたちを超えていけ。」

 

 「「行け、ギルガルド!」」

 

 2つのモンスターボールから飛び出したのは、エリカの元いた世界でも最強格のポケモンとして、ワザ乱れ飛ぶチャンピオンリーグでの審判のガードにすら用いられるポケモン、ギルガルドーだが片方、様子がおかしい。

 

 「…タッグバトル、ですか…

 

 それでは総理、ジャッジをお願いします。

 

 行きますわよ、ラフレシア、キレイハナ!」

 

 「絵里華、かかってきなさい。キングシールド!」「ワイドガード!」

 

 「ならばこちらは攻撃力を上げるだけです。ダブルにほんばれ!」

 

 総理があたふたと何処かへ電話をかけているー気象庁?

 

 「ソーラービーム!」

 

 幸い、赤穂の心配するようなことにはならず、雲に空いた隙間から日の光が差し込むにとどまるーが、強力な2条の閃光が、防御体制のギルガルドの盾を直撃したーそれも、母の個体1体に集中して。

 

 だが、ギルガルドに傷ついた様子はない。

 

 「耐えますか…!」「ギルガルド、キングシールドで母さんのギルガルドを守れ。」「ギルガルド、バトルスイッチよ!」

 

 母のギルガルドが、すっと刀身を抜いたー刀身が、通常色の金色でも色違いの黒でもなく、白くくすんだ青緑で、節がある。

 

 「お母様、それはまさか...!?」「どうしたのだねエリカさん?」

 

 「…玉箋集に曰く、”御神体は長さ二尺七、八寸許り、刃先は菖蒲の葉なりにして、中程はむくりと厚みあり。本の方六寸許りは節立ちて、魚等の背骨の如し。色は全体白し”」「嫁いできたときに驚いたよ。古いものが多いと聞いていたが、この青銅剣は極め付けだったからね。」

 

 ソーラービームの第2撃...父のギルガルドが完璧に防ぎきる。

 

 「…総理閣下は、わたくしの家が、平安時代から続く由緒正しい公家であることを御存じだと思います。」

 

 ソーラービームの、拡散された第3撃...シールドフォームギルガルドといえどかばいきれない光線を、ブレードフォームギルガルドが浴びる。

 

 「ああ、家祖六条御息所が産んだ娘秋吉中宮、その第2子が臣籍降下して六条教通を名乗り藤氏長者ののち、六摂家筆頭を経て明治に至って公爵...だったか?」

 

 再び収束するソーラービーム第4撃...母のブレードフォームギルガルドの刃に、直撃。

 

 「はい…そして六条家が摂家筆頭になったのは、その始まりに理由があります。すなわち天皇家に産まれながら臣籍降下し権勢を極めた秋吉中宮の父、光源氏と、秋吉中宮の夫冷泉帝です。そして、都市伝説で語られている『冷泉帝が桐壺帝の実子ではなく桐壺帝の息子である光源氏の子』というのは、事実なのです。」

 

 そして、それを知った冷泉帝は、即位前に父である源氏に天皇位を譲ろうとするも固辞された、そのために冷泉帝は源氏を厚遇し源氏の血である六条家を厚遇したのだ...と都市伝説では語られているが、これにはまだ続きがある。

 

 「冷泉帝は、天皇にならないにしても、光源氏が本来は天皇家を継ぐのにふさわしいのだから、皇統が途絶えた時はこれを継ぐように頼んだらしい。」「そして、源氏は応えたそうよ。曰く”さらば、我が子孫、末代に至るまで、この神剣以て皇統を守護せん”

 

 それを聞いた冷泉帝は、源氏に渡そうとしていた”いざという時のための皇統の象徴”を慌てて実戦に使えるレプリカに替えた。」

 

 鉄ではない、青銅の刃が、地表にクレーターを刻むソーラービームを、するりと切り裂く。

 

 「国体護持の象徴を、国を救おうとする娘を止めるために使うことになるとは、六条教通卿も想像しなかったでしょうね…

 

 絵里華は初めて見るはずよ。これぞ、形代:神剣天叢雲剣!」

 

 古代の青銅剣のギルガルド(ゴジノヤイバ)ーもう1つの、皇を認めるポケモンが、そこには鎮座していた。

 

 「「れんぞくぎりっ!」」

 

 目にもとまらぬ斬撃が無数の残像を描き、それはまるで巨大な刃のように迫る。近寄ることもできない。

 

 「どうすれば...っ!」

 

 相手は形代とはいえ神剣、かすっただけでも危ないのは想像がつく。

 

 「とりあえず引き離すしかありませんわ、もう一度ソーラービーム!」

 

 「キングシールドよ。」「母さんのギルガルドの後ろに隠れろ。シャドーボール!」

 

 鉄壁のシールドフォームゴジノヤイバが、背後にブレードフォームギルガルドを隠しながら迫ってくる。攻防一体のフォーメーションだ。

 

 「どうにかして、形代の防御を崩さないと…っ!」

 

 だがブレードフォームでも青銅剣部分がソーラービームを耐える、打つ手は...

 

 「…落ち着くのですわエリカ。あのギルガルドが強い理由は...」

 

 エリカは叫んだ。

 

 「キレイハナ、形代の、盾の方を狙うのですわっ!はなびらのまい!」

 

 ありえないーギルガルドは剣で攻撃を盾で防御をするポケモンだ。盾を狙って攻撃?それが正気の沙汰ではないことくらい、ポケモンをまったく知らない人間でもビジュアルでわかることだ。

 

 花弁の嵐が、ゴジノヤイバの盾を覆い隠す。

 

 「何が、目的なの?絵里華、もしやけっぱちだと言うのなら...」「母さん違うぞっ!ギルガルド、母さんのギルガルドを守るんだ!」「させません!ラフレシア、しびれごなで牽制して!」

 

 ゴジノヤイバの柄の目が、ニシシと嗤う。

 

 花弁が、盾の中央に集中する。

 

 わずかに、黒い粉が盾から散った。

 

 盾から、冷や汗が垂れたように見えた。

 

 金色の火花が盾から飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カン!何かが砕ける不協和音が響き渡り、誰もが耳を抑えた。

 

 「盾がひび割れた!?いけません、れんぞくぎり!」「援護するぞ!れんぞくぎり!」

 

 慌ててゴジノヤイバがブレードフォームにチェンジし、ギルガルドと剣先をそろえる。

 

 「今ですキレイハナ、ラフレシア、2体の刀身にソーラービーム!」

 

 間断ない刃の斬線を、極光が染め上げた。

 

 光が晴れた時、そこにはゴジノヤイバとギルガルドが仲良く伸びていた。

 

ー*ー

 「よく、やったわね…ギルガルドをあえて盾を破るなんて、どういうカラクリなの?」

 

 「ギルガルドはヒトツキからの進化系です。形代:神剣天叢雲剣が世界のポケモン化に応じてヒトツキになったとして、盾部分は進化とともにどこからともなく出現するもので、特にいわれはないはずですから。」

 

 袖に、モンスターボールを仕舞う。

 

 エリカは、目の前が暗くなった気がして、顔を上げたー

 

 -抱きしめられた。

 

 「…成長したわね、絵里華。

 

 貴女のことを、子どもだとずっと思っていたし、経験を教えてくれるチュートリアルの人物と位置付けていた。けれど、貴女の志、見せてもらったわ。」「絵里華、お前が信じたようにやれ。お前はお前を貫け!父さんと」「母は、応援しているわ。」

 

 涙が、顔から顔へ伝う。

 

 「…ありがとう、お母様、お父様。

 

 行ってまいりますわ!」





        フラダリが転生してきたので今度こそ世界を救おうと思います

                     ↓

フラダリが転生してきたのでもう一度一人のトレーナーとして立ち向かおうと思います←NEW!




 第1章:古代の王の特別なフラエッテと、その血筋を引くも魂は別物の転生フラダリの元に現れた「王冠をかぶった特別なポリゴンZ」


 第2章:ポケモン化する世界で天皇陛下の元に現れて日本の道筋を示すホウオウと、かつて極秘に日本の未来とともに託された神剣から目覚めた王を認めるポケモンことギルガルドの特別個体(ゴジノヤイバ)

 ※ゴジノヤイバ(護持の銅刃)

 ちなみに古代の多頭竜ポケモンがいたりしたら、ヤマタノオロチを倒したとされる草薙剣のポケモン化である形代:神剣天叢雲剣(ゴジノヤイバ)はめちゃくちゃに効いていた...良かったねテツノコウベ、ドラゴンを失った未来ポケモンで...

 (三種の神器はポケモン化していません。これはあくまで、エリカの祖先が国の行く末を託された形代であり、世界がポケモン化して国が揺れ動いたタイミングであり…という奇跡によって生まれた個体です)

 なんならムゲンダイマックスにも多頭竜に見立てられなくもないので特効持ち(しかも本作では王家に仇なしているので国体護持の想いを持つポケモンは強い)...と言いたいのですが…?  

※青銅は緑~白色、銅の錆は緑青です。 
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