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カロスの一番長い日は、前触れなく始まった。
なにしろ一部の人は、ミアレスタジアムを襲った揺れについて、「最初は、リーグ優勝発表のあまりの熱狂でスタジアムが揺れているのかと思った」とのちに述べている。
だから、最初にすべての人に異変が異変であることを伝えたのは、一斉に警報音を鳴らしだしたホロキャスターだった。
尋常でないことが起きようとしているー何しろ、伝説ポケモンが暴れてもそれがアナウンスされることはめったにないのだ。あのギンガ団事件の時でさえ強烈な時空震にもかかわらずニュースは事後だったー大きな異変があってもそれが伝説のポケモンのせいだと最初からわかることなんてそうそうない。いくらアップデートで導入されたばかりの新システムでも、それは同じ。
ただ、だからこそ、次に始まった電波ジャックの時、人々は現状を正しく認識できたと言われている。
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ミアレスタジアムを完膚なきまでに破壊しつくした巨大な根。
ミアレシティを地盤から揺らし、街のあちこちで立ち上がっていく巨大な茎。
植物の猛威から人々が逃げまどう中、ジャックされたホロキャスターで、街頭TVで、家の中のTVで、ネット放送で、その映像は流れていた。
「どうも、フレア団のボス、フラダリです。
フレア団以外の全世界の皆さん、残念ですが、さようなら。」
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そうだ、この演説には意味がある。私としての。
「皆さんの中には、ミアレシティを襲っている植物をご覧の方も多いでしょう。
この植物は伝説のポケモン、ジガルデによるもの。
この植物の根がセキタイタウンにいるゼルネアス・イベルタルに到達し次第、この世界は、3000年前のカロスで起きたように、滅亡します。
本当は、様々な憤りがあるのですが…訳を話すつもりはありません。」
…フラダリは、争いをなくそうとして助けても助けても争いがなくならず、驕った人々が要求をエスカレートさせていくばかりであることに憤っていたと記憶しているーだが私は、助けが間に合わなかった側の人間だ。
「これは宿命なのです。諸君、世界を救いたければ...
…私というラスボスを乗り越えたまえ!」
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「コルチカム秘書!これはいったい...!?」
「コルチカムさん!CEOと連絡が取れません!」
…代表...!
「代表は、フラダリ代表は、私の知るフラダリ代表は、このような方ではありません!
私たちは、私たちのやるべきことをしましょう。フレア団と戦いましょう!」
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プリズムタワー上部のテラス。このタワーで育つ巨樹は、もう1体のジガルデ・コアを回路に組み込めば”花”となり、ゼルネアスとイベルタルの力を月軌道まで打ち上げることができる。
「手荒な真似をして申し訳ない、サトシくん。」
そこで、フラダリは机と3脚の椅子、ティーセットまで用意して、悠然と座りミアレシティを見下ろしていた。
「コーヒーがいいかな?紅茶かな?ジュースも用意している。アランくんも選びたまえ。大丈夫、ジガルデコントロール班にはそう大きく揺れないように言ってある。
コレアくん、彼を解放して下がりたまえ。」
想像と違い、まさに下にも置かぬ賓客のもてなしをサトシにしようとしているのを見て、コレアが納得のいかない顔で姿を消す。それを確認してから、フラダリは立ち上がって2人のための椅子の背をわざわざ引き、座りなおして、口を開いた。
「サトシくん。それにアランくんもきっとだ。」
まさにフラダリを問い詰めようとする2人を制して、フラダリは穏やかに、しかし有無を言わさぬ重々しい口調で、すべてを変える決定的な言葉を告げた。
「私はキミたちを、信じているのだよ。」
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「私はキミたち(の主人公補正)を信じているのだよ。」
サトシの目が点になったのを見て、転生していろいろ苦労したけれど、転生したかいはあったと、快感を感じてしまった。
「私にも事情があってね。単刀直入に依頼する。ゼルネアスとイベルタルを、ゲットしてきてほしい。」
「フラダリさん、どういうことなんですか…!?」
「…放送で宣言したように、ゼルネアスの生命のパワーとイベルタルの死のパワーを組み込んでジガルデの能力で制御する兵器は、キミたちがプニちゃんと呼んでいるアレを捕まえ次第完成する。
だが起きるのは世界の滅亡ではない。ちょっとしたしかけで、ゼルネアスとイベルタルの膨大なパワーは相乗して爆発するのではなく拮抗して相殺する。その繊細な調整のために、アランくんが集めてくれたメガシンカエネルギーが役に立った。」
ありがとう。これは素直に頭を下げる。
「多少は力があふれ出すだろうが、それはジガルデが作り出した巨樹がカロス中に張り巡らせた根がアースとなって逃がしてくれる。巨樹そのものによる災害?プリズムタワーに花が咲くころにはミアレシティは地図から消えるだろうが、大丈夫だ、この日のために我が社と関係各機関はホロキャスターを含めたあらゆるシステムで以て災害時避難支援サービスを構築させた。」
コルチカムさんは優秀だ。一人も逃げ送らせはしないだろう。
「すべてが終わったらセキタイタウンのラボに向かいたまえ。これはマスターボールだ、2人に授けよう。
さあ、カロスを救ってくれ。」
「…どうして。」
どうしたかな?サトシくん。
「どうしてこんなことをするんですかフラダリさん!
俺にはフラダリさんの考えとかこうなったわけとかは何もわからない。教えてください、どうしてこんな、カロスが壊れるかもしれないことをしておいて、救ってくれだなんて...!」
なるほど、マッチポンプのわけか。
「どうしてと言われれば、ゼルネアスとイベルタルを処理する方法がこれしかないからとしか言いようがないな。
2体は伝説のポケモンだ、普通の状態では捕獲することはとてもできない。では抵抗の一切ない休眠状態ではと言うと、繭と言うべき状態でボールがそもそも反応しない。
2体をゲットできるようにするには、最終兵器の中で覚醒させて最終兵器をフル出力で動かすことによりすべての力を使い果たさせ、しかる後にバトルを挑む、これしかない。」
そしてフル出力で動かせばカロスが滅ぶからこそ、2体同時で相殺させる。…原作では伝説のポケモンといえどもバトルをすれば勝てる相手だったが、普通に考えてビーム一本で命を与えたり奪ったりするようなバケモノに勝負を挑んだら瞬間死だ。
「…それもありますけど、そうじゃないです!」
「代表は、なぜ、俺たちを騙して...いや、周りの人間皆を騙して、世界を滅ぼすなんてたくらみを狂言でして、挙句の果てに俺とサトシにゲットさせようなんて、こんなことをしたんですか。」
…2人とも、いら立っているな。いや憤っているか、私に。
「…では、私の本心を、話すとしよう。
「そうだな、昔話になるか。そんなに長く話すつもりはない。」
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「私はカロス地方の生まれではない。生まれはトーカイ地方...私は優しい両親とかわいい妹と4人で、そこそこ幸せな暮らしを送っていた。
…だがそれはある日突然奪われた!大自然によってな!
歴史と人々の営みを数分のうちにガレキの山に変えてしまった大地、瞬く間に立ち上り竜巻となって天を突きすべてを無に帰す業火、そして...
私は妹を救えなかった!あの津波の中で、手を放してしまった!」
今も耳を離れない。ー「お兄、私がいなければ、お兄だけなら助かるから…!早く屋根に上って!私の手を放して!お願い!...私は、お兄が死んじゃうのは、イヤ!」
かわいくて、わがままで、そして俺のことを誰よりも...
…それなのに、俺は結局死んでしまった。津波は第2波のほうが高いというたったそれだけの自然の摂理で。
「だから、仇だけは取らなくてはならないのだ。
私は自然など信じない。災害には立ち向かいそして元凶を叩き潰さなくてはならない。
大地、海洋、気象、宇宙...それだけではない。気まぐれで世界を揺るがす自然、文明をいともたやすく脅かす野生...そう野生の伝説のポケモンだ!
サトシくんは一度イベルタルの暴走を見たことがあるのだろう?あれは鎮められたわけではない。むしろ大地震の前の前震みたいなものだ。イベルタルが暴れることは既に既定路線だ。
キミのことはよーく調べさせてもらった。アルセウスにしろグラードンやカイオーガにしろいつもサトシくんが鎮めてきたわけだが、いつまでも都合よく居合わせ続けられるとは限るまい?
ゼルネアスにしたって死こそもたらさないが混乱を引き起こす点ではそう変わらん。数百年のうちに必ず蘇る災厄を2つも抱えていて、どちらかでも起爆すればカロスは国家としてどころか文明としておしまいだ。そして同じようなのがお隣のガラルには1つパルデアには4つもいる。わかってくれるかね?
2体の元凶とそれをコントロールできるジガルデが人間の、私たちの手元にいる今こそが最大のチャンスなのだよ!少々当初の想定とは違うが、今ならばな。後世に禍根を残すわけにはいかんのだ!
火をつけたぞサトシくん。消したまえ、カロスが燃え尽きる前に!それがキミの役割なのだからな!」
はい、転生者がフラダリになるという内容上原作と違って善人...かと思いきや、ポケモンラスボスらしく極端な思想の持主です。「いつか災いのもとになるなら、伝説のポケモンを確保・収容・できれば破壊」と考えている人物がこの転生者です。
ポケモン世界ではポケモンはまずはパートナーだし、そもそも伝説の存在なので『危険なポケモンの処分を考えなければいけない』という話にならないわけですが、現実世界で『一度キレたら戦略核兵器なみの被害をもたらす生物がいる』なんて話になったら誰かが『暴れられる前に見つけ出して先手を打って討伐しよう』となるのは当然なわけで、転生者の考えはそういう温度差にも基づいています。
そしてよくよく考えると計画が雑なのは「まあ主人公だしスーパーマサラ人だし多少無茶ぶりしてもなんとかしてくれるやろ!」と思っているから…その代わりに敬意を払ってもてなそうとしてはいます。