ー*-
「どうしたのお爺ちゃん?それで手札は全部?」
あざ笑うような声。
「マニューラ、鍵を奪いなさい。」
(もはや、ここまでか…!)
AZは、諦観をにじませつつも、最終兵器の鍵を強く握りしめたー3000年も生きたのだ、少しばかり長く生きすぎたからには、ここで死ぬのも悪くないだろう...フラエッテに会えなかったことは大きすぎる心残りだが。
その時だった。
「テールナー、だいもんじ!」
「なっ...お前らどこから...!」
セレナたちが部屋に現れ、AZの前に立つ。最後に現れたホウエンチャンピオンのダイゴを見て、さすがに4幹部は顔をひきつらせた。
「諦めろ。お前たちはぼくのメガメタグロスには勝てない。」
「ちっ...どうしようもないわね…
…とでも、言うと思った?」
モミジが、酷薄な笑みを浮かべて、そして叫ぶ。
「ヘルガー、コンソールとポケモンチャンバーに向けてかえんほうしゃ!」
ダイゴが絶句する。ポケモンチャンバー...ということは目の前の、大きなガラスケースに入った巨樹と石塊の正体はまさか。
「そういうことね…!
キリキザン、ストーンエッジ!レパルダスはあくのはどう!」
「まずいっ、そのケースを壊させるな!マーイーカ、サイケこうせん!」
コジロウが最初に気付いたーその石塊がポケモンだとすれば、ロケット団には見覚えがありすぎるフォルムだったからだ。
「おそいわよっ、クリムガンドラゴンクロー!」
「ポケモンコントロールシステム出力最大っ!」
ガラスケースの中を赤い光が満たす。そして直後、ケースにひびが入り、砕け散った。
黒い胴体、青い頭、虹色の角。
血のような赤い身体に、脈のように奔る黒いスジ。
「行けゼルネアス、イベルタル!カロスを破壊しつくすのよ!」
ー*-
「ヌメルゴンりゅうのはどう、ファイアローはがねのつばさ!」
「ポリゴンZ、type:ほのお=テラバーストでファイアローを迎撃。ギャラドスはドラゴンテールではじき飛ばせ!」
ポケモンのわざとしてほとんど反則な威力のビームが硬化した翼を赤熱させ、ファイアローが失速していく。ヌメルゴンの攻撃も効いたようには見えないーサトシはじり貧だった。サトシゲッコウガとしてゲッコウガと一心同体になっている弊害として、5体の残り戦力で総攻撃を指示できるほどトレーナーとして頭が回らないのだ。
「ルチャブル、ギャラドスにフライングプレス!いくぞゲッコウガ!」
右からフライングプレス、左からきょだいみずしゅりけん。メガギャラドスの図体では避けきれない。ポリゴンZの攻撃は全てビーム型で、軌道が予測できない攻撃は迎え撃ちにくい。
「…ちっ、ギャラドス、ルチャブルを避けろ!ポリゴンZ、over=テラバーストでルチャブルを片付けろ!」
悩んでいる暇はない。メガギャラドスにフライングプレスを受けさせるわけには絶対にいかないからこそ、より威力の高いきょだいみずしゅりけんに突っ込んでいくしかない。
ルチャブルが高威力のビームで一瞬で戦闘不能になるが、over=テラバーストの照準をあわせるためにじっとしていたポリゴンZに、サトシゲッコウガが隠し持っていた2発目のきょだいみずしゅりけんが飛ぶ。
「避けろポリゴンZ!メガギャラドスはかいこうせん!」
「ピカチュウ十万ボルト!」
空中で巻き起こる爆発。爆炎を縫ってポリゴンZが突如出現し、ピカチュウにビームが飛ぶ。ピカチュウは吹き飛ばされてタワーの端に引っ掛かり、そこでへりをギリギリつかんで落下せずにとどまったが、ビル風は今にもピカチュウを吹き落とそうとしていた。
「っ、ピカチュウ、今助け」「よそ見している暇はあるのかな?ポリゴンZ、ファイアローにtype:でんき=テラバースト」
ここでファイアローまでやられてはますます不利に...などと悩む余地はない。戦闘不能は治療すれば回復するが、さすがにプリズムタワーを垂直落下したら助からないかもしれない。
「ファイアロー、ごめん...!」
サトシゲッコウガがビルの淵へジャンプし、ピカチュウを引きずり上げる。その時にはすでにファイアローは倒れていて、そしてピカチュウもサトシゲッコウガの腕の中で気絶した。
「サトシくん、これで1対6から2対1になったな。」
(どうする...!どうすればフラダリさんに勝てる...!?考えろ、考えろ俺...!
…そういえば...?)
-近づくんじゃないギャラドス!
ーポリゴンZ、type:ほのお=テラバーストでファイアローを迎撃。
ー…ちっ、ギャラドス、ルチャブルを避けろ!
「…これに賭けるしかない。行くぞ...!」
左手にいあいぎりの刃、左手にきょだいみずしゅりけん。そしてサトシゲッコウガはかげぶんしんで無数に増え、一気に飛び上がった。そのすべての攻撃がメガギャラドスに向いている。
「なにっ!?」
ー*-
「これは...!?マノン、どうなってるんだ!?」
「アラン!フレア団が破れかぶれで伝説のポケモンを解放して...!」
メガリザードンの背中からアランが飛び降りた時、セキタイタウンのフレア団基地があったところは焦土となっていた。倒壊した建物群の中心で、ゼルネアスとイベルタルが虹色と黒のビームを四方八方にまき散らし、ダイゴのメガメタグロスが必死に逃げまどっている。
「アランくん、いいところに来てくれたね…!
いいかい。あの攻撃が一発でも当たったらアウト、だ。覚悟を決めたまえ...!」
「もちろんです…!
それより他のみんなは?」
「あっちも苦戦してるだろうね…」
ダイゴが、足元を指さした。
-地下でも、戦いは続いている。
コントロール装置をフレア団から奪取すれば、ゼルネアスとイベルタルを御し得るかもしれない。セレナとロケット団は必死に戦っていたが、やや押され気味であった。
「全員避けて!」
「ほらほらほら、操れる確率は100%!」
ポケモンコントロールマシンのビームがひっきりなしに向きを変え、そのたびにポケモンも人間も逃げ惑う。
「ヤ、ヤバいのニャ...」
「パンプジン、ヘルガーにやどりぎの
ちっ、避けなさい!」
「ドラピオン、ミサイルばり!」
四方から迫る攻撃に、ニャースが避けることもできず戸惑ったその時を、コレアは見逃さなかった。
真っ赤なビームがニャースを直撃する。
「…まずい、やられたの...ニャッ”!」
ニャースは向き直ると、真っ赤に染まった目を剥いて爪を伸ばし、セレナのテールナーに飛び掛かる。
「そこっ!」
押さえつけられて逃げられないテールナーにビームが飛び、次にすぐとなりでわたわたしていたヤンチャムとニャースを引きはがそうとやってきたパンプジンへ。
それはセレナたちにとって、戦況が転落する瞬間だった。
「テールナー、ヤンチャムっ!」「パンプジン、しっかりしなさいっ!」
「…そうね、ポケモンたち、トレーナーに攻撃しなさい。」
迫るテールナーの爪が光るー「ひっかく」だ。セレナはじりじりと後ずさりし、その前にニンフィアが立ちふさがったが、その足元にもビームが飛び、さすがにあわてて飛びずさる。
「テールナー...」
セレナからの目配せにニンフィアは頷いて、暴れるヤンチャムをリボンで縛って抑えながらダンスの要領で器用にビームを避ける。一方セレナ本人はと言えば、今にも爪を剥いて飛び掛かって来そうなテールナーに歩み寄り、両手を広げた。
「覚えてる?はじめて会った日のこと...」
抱きしめられたテールナーの動きが止まる。
「夢を見つけた日も、うまく行かなかった日も、いっしょだったよね...」
「何をしてるの、早く攻撃しなさいっ!」「テールナー、信じてる...」「ちっ...キリキザン、シャドークロー!」
微妙な均衡の中でテールナーと抱き合っているセレナは動けない、万事休すーセレナとニンフィアが目を見開く。
直撃ー
「-ポリゴン、マジックコート!」
声が響いた。ビームが何処かへはじき返されていく。
「誰だっ!?」
「…お初にお目にかかります。フラダリラボ社長秘書、フラダリラボグループ臨時CEO代行、コルチカムと申します。名刺はこちらに...」
「…いやいらないわよ、じゃなくて、だったらアンタもフラダリ様の部下ってわけね?だったらアタシらに...」「いいえ。私は貴方方のフラダリ様ではなく、我が社我がグループのフラダリ代表の部下でございます…参りましょう、ポリゴン!」
参りましょうも何も、すでにいてワザまで使っているじゃないかー緊迫していたはずの状況も忘れて全員の気持ちが一致したその時、コルチカムが放り投げたのはモンスターボールではなくホロキャスターだった。
ホロキャスターが空中でポリゴンの映像を投影した次の瞬間、ホログラムから湧きだすかのように、無数にも思えるポリゴンが渦を成して現れる。
「なっ...なんだと、どこからこんなにもいっぱい...!?」「ポリゴンは電脳世界から宇宙空間まで自由自在なんですよ。ホロキャスターの通信は専用の高速回線と宇宙からの中継で成立していますからね。
さあ、会計処理のお時間ですよ!」
「ダサいダサいダサすぎるわ!雑魚の烏合の衆をいくら揃えても、コントロールしてしまえばこっちのもの!」
真っ赤なビームがポリゴンの渦巻きを直撃する。百匹にも達しようかというその数が身動きを制限して、当然避けられるわけがない。
「アハハ、アイツを攻撃しなさいっ!」
ポリゴンの雲霞が崩れ、整列する。
「ポリゴン、スピードスター!」
無数の星の嵐が、高笑いするアケビとそのとなりのクリムガンをまとめて吹き飛ばした。残りの3人の幹部が呆気にとられて目を剥く。
「フラダリ代表は、ホロキャスターの根幹技術が脅かされないように、わざわざホウエン一の大企業を買収されるだけではなく、傘下のPMC・フラダリに最高レベルの軍用レベルサイバーセキュリティを発注したんですよ?
確かコントロール防壁プログラムの開発責任者は、そう、クセロシキ...」
コントロールマシンの開発者とポリゴンのアンチコントロールプログラムソフトの開発者が、同じ人物ークセロシキなら、科学者としてプライドの高い彼が自分の発明であっても突破できるようなアンチソフトを作るはずがない。そしていくら相手がバトルの経験が乏しいだろう進化前ポケモンとはいえ、厳しい宇宙空間で鍛えられたポリゴン百匹以上相手ではどうしようもない…
フレア団4幹部を、絶望が包んだ。
ー*-
サトシゲッコウガは残像が見えるレベルで素早い、いあいぎりとみずしゅりけん、どっちかはあたる…!
「いあいぎりからかばえポリゴンZ!」
(…いや、ここで露見を防止したところで間に合うはずがない、失敗した...!)
「ちっ...ポリゴンZ,よくやってくれた。休むんだ。
…もう、お互い、最後の一撃しか残っていないかな?
ギャラドス、ドラゴンテール!」
「いくぞゲッコウガ、みずしゅりけんっ!」
メガギャラドスの尻尾は、サトシゲッコウガに届かなかった。まさにぶつかる寸前で、きょだいみずしゅりけんがその胴体を貫き、そしてギャラドスはサトシゲッコウガの前に倒れた。
「フラダリさん、やっぱり、俺はフラダリさんは間違っていると思います。
人とポケモンは仲良くできる。それはたとえどんなポケモンであってもです。だから、例え危険なポケモンでも伝説のポケモンでも、ゲットして言うことを聞かせようなんて間違ってます。まして、街をぶっ壊してまでなんて...!」
「…あぁ、サトシくんがそう言って反論することは予想していたよ。」「だったら、こんなことはやめて...」
「それでこそサトシくんだ!そう言いたかっただけだ。私の意見は変わらん!
ああそれと...」
フラダリがホロキャスターを掲げるーメガギャラドスとカエンジシが、変わらぬ姿で現れた。
「そうそう、言い忘れていたのだがな、これはすべてホログラムでな...」
幻影だったから強力な攻撃をしてきても実際に当たることはなかったし、こちらから接触するような攻撃を唯一攻撃できるポリゴンZにかばわせてまで防いでいたのかーサトシが愕然と崩れ落ちる。
「大人になるのだよ。責任とは理想ではなくリスクとともにあるのだ。
楽しかったよサトシくん!」
そう言ってフラダリは、プリズムタワーのテラスのふちから、身体を後ろに傾けた。
ー*-
「リザードン、ドラゴンクロー!」
アランのリザードンは指示に応えて腕を振りかぶり、そこで呆然としたー手先が石化している。
「なっ、お前、さっきかすってたのか...!」
向こうでは、ダイゴのメガメタグロスが、どこからともなく生えてきたツルに絡まれながらも必死にゼルネアスと撃ち合っているが、部は悪そうだ。
-フラダリの言うとおり、伝説のポケモンは手に負えないほど危険で、正面から挑んで阻止するのは無謀な存在だったのか...?
「ポリゴン、スピードスター!」
アランがこぶしを握り締めたその時、イベルタルへと無数の光が殺到した。
しょせんはたねポケモンの弱いワザ、いくら量が膨大でもイベルタルにとっては痛痒を感じるようなものではない。それでもうっとうしいと思ったのか、イベルタルはメガリザードンから目を離して攻撃をしてきた方向へ漆黒のビームを放った。
ポリゴンが、無機的にUFOじみた直角・直線移動で散会し、再びスピードスターを放つ。
「気を、引けている?だが...」
メガリザードンの機動力でもかすったのだ、ポリゴンごときでは限界がある。あのポリゴンの雲霞のうち何割が死ぬだろうか…
「アランさん、チャンピオンダイゴ、お待たせいたしました。」
まるでそれを恐れないかのように、粉塵でよごれた黒いレディーススーツに身を包んだ社長秘書はきっちり90度に頭を下げた。
「イベルタルとゼルネアスの注意は私が引きつけます。お二人は攻撃を!
全隊、目を集中攻撃!」
人工衛星として地球を周回しながら互いや遥か地上の通信基地へ電送をする訓練と経験を積んだ個体群なのである。いくら羽ばたいてようが駆けまわってようが大した問題にはならず、スピードスターは狙い過たず2体の両目に殺到する。伝説ポケモンならではの特殊なオーラが体表の表面でスピードスターを弾いているが、目の直前までそれが迫ること自体が眩しくてとても我慢できるものではないし視界がふさがれることに変わりはない。
イベルタルの身体の前面とゼルネアスの角の直上が、今までで一番輝いた。
2方向から半径数十メートルに及ぶ極彩の光線がポリゴンの群れを呑み込む。せいぜい10メートル立方に収まる編隊でしかないポリゴン軍団に避けきれるわけがない。
が、コルチカムは不敵に笑った。
「ポリゴン、攻撃を続けて。」
-果たして、ビームが通り過ぎた直後、みたび、まったく無傷のポリゴンの群れから無数の星がほとばしる。
「なんで...!」
「我が社の自慢の人工衛星が、こんなことで傷つくと思います?...というのは冗談でして、ポリゴンは人工的な電子生命体、はるかかつての生物の生死をつかさどるポケモンにはしばられない存在なのですよ。」
当のイベルタルとゼルネアスがもっとも困惑して、そして、コルチカムの言葉を理解したのか否かはわからないが、激昂を示したー自分たちが司っている生命のパワーから逸脱する存在をヒトごときが作っていたことに己のレゾンデートルへの冒涜を感じたのだろう。
ゼルネアスの脚が大地を蹴る。イベルタルの翼が風を煽る。そして2体は一瞬にしてポリゴンの群れへ突っ込んだ。
いけるかもしれないーアランとダイゴが互いに頷く。
「リザードン、ドラゴンクローでメタグロスを解放するぞ!」
ー*-
「メタグロス、ラスターカノン!」「リザードン、ブラストバーン!」
この場で用いることのできる最強の砲撃が、イベルタルとゼルネアスを襲う。
操られたまま操り手もいなくなり暴走していることを示す真っ赤な目がまぶたを閉じ、2体はやっと、身体をがれきの山に横たえた。
アランがダイゴに対して頷き、ポケットから取り出したボールのうち片方を投げ渡す。
「「行け、マスターボール!」」
ゼルネアスもイベルタルも息絶え絶え、外すことも迎え撃たれることもない。
マスターボールの性質上、当てさえすれば必ず捕獲できるー
-にもかかわらず、、2つのマスターボールの軌道は、空中で不自然にグイと大きく曲がり、見当違いの方向へ落ちていった。
「この時を、待っていたのだ...!」
いつの間にか現れていたその男は、背中に背負っていた珍妙不可思議なマシンをうごめかせた。ゼルネアスとイベルタルの像が消え、まったく違うところへ本物の2体が出現する。
「ゲットだ。別に私がしても構わなかったのだ、できると思っていなかっただけでな…!」
炎の如き髪をなびかせるその漢は、足元に倒れているゼルネアスとイベルタル、右手と左手をそっと近づけた。
両の手のひらから覗くマスターボールが、赤い光を放つ。
「これが、私の奥の手だ...!」
2つのマスターボールから放たれた光が地下に差し込み、そして、倒壊したフラダリラボ跡地を、激震が襲った。
「ホウエン巨石、起動...!
さあ、世界よ、私と心中せよ…!」
ゼルネアスとイベルタルが目覚め暴れし時、カロスの秩序を守るポケモン、ジガルデは姿を現し膨大な力を集めて世界を守る。
「ならばどうだろう?ゼルネアスとイベルタルを御して膨大な力を集めたなら、すべての秩序は混沌へと回帰し」
ー今、終末時計の針は、残り1秒。
ホログラムを用いてのバトルは反則中の反則ではありますが、「自分のホログラムをカエンジシにかえんほうしゃさせ、観客すべてにさも現実かのように思わせて驚かせる」こと自体はポケモンジェネレーションズのフラダリ回でやっているので、あとは攻撃が直撃した際にダメージを与えられる方法(エネルギーによるビーム)があればできはするんですよね。ただし何体も出すとその分演算が複雑な上に露見を防ぐのが面倒になりすぎるのと、物理攻撃をくらえば普通にスカッと空振りになってバレてしまうのでそれは避けるか実体であるポリゴンZが受けるしかないのが弱点。