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ジガルデZ1は、その時そこにいなかったにもかかわらず、あまりにも絶大な力の波導に身震いした。
ーこれは、自分の力ではないのか?
ゼルネアスとイベルタル。本来己が克つべき2体が人の手によって倒れたことは感じていた。しかし、そのかわりに出現した気配は、いつぞやに助けられたハリマロンを通じて流れた己の力と、それに、メガシンカの力ーすなわち地球と宇宙の力だ。
「プ、プニちゃん...?」
ーそれにしたって、強すぎる。
生と死、2つのベクトルをそれぞれ持つゼルネアスとイベルタルに対し、ただただその2体を圧倒できるだけで与えることも奪うこともしない純粋なスカラーとしてジガルデは存在する。その力の波導は、「生を与えも奪いもしない、ただただ純粋で莫大な力」という本質を突き詰めていた。まるでジガルデにある種の憧憬をもたらすかのような。
-だが、まだ弱い。ゼルネアスとイベルタル2体を同時に1体で相手どれるのがジガルデという伝説であり、2体のジガルデが揃って100%になれば、「本来のジガルデ」に相当するだけの力など大したものではないのだ。
「ルル...」
”ユリーカよ…
…行かねばならん。”
肝心のZ2が人間をあまり信じていない上に本調子かも怪しい。そしてなにより、Z1自身、己の推測を50%しか信じていなかったーあのフラダリにまだまだ奥の手がない、と?
”ついてこい”
(この人間は、守らなければな...)
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「シミュレーションの結果は?」
「CEO代行、ラボに残されてたとおりっすよ…」
いつかポリゴンZの時にもいたエンジニアは、実はかなり優秀だったらしい。高速で踊るタイピングとともに円グラフが次々空中に吐き出される。
「ジガルデはカロス土着の力の神で、メガシンカエネルギーと隣国ガラルの∞エナジーは宇宙から隕石とともに降り注いだものとされてるっす。その2つは複雑な相互作用を持ってますが、相性は良くない。それに相性が良かったとしてもベクトルを持たないスカラー力だから何か指向性を持って建設的にやり遂げるのは向いてないんす。」
この世界にその兵器の概念はないが、フラダリの前世の世界に例えるなら、ゼルネアスとイベルタルをジガルデで倒すのは、隕石を核兵器で蒸発させるようなものなのだ。そして核兵器は工事などに平和利用できなくはないが戦争に使う方が適している。
「メガシンカエネルギーと巨石だけでも、ジガルデに見立てて無理に動かしてたらそのうちガタが来て派手に吹っ飛ぶっすね。ましてヒャッコクの日時計のメガシンカエネルギーと接触したらどうなるかなんて想像するのも絶望っすが…
…ま、計算上、吹っ飛ぶのが太陽系丸ごとじゃなきゃ御の字っすね。」
「要するに、2つの巨石を触れさせちゃいけない、ってことですね。」
「…しっかしわかんねえのは、なんでフラダリ前CEOがこんなことをしたかなんすよね。…まあ前々から厭味ったらしいというか粘っちいというか腹に一物持ってる印象ではあったけど、でも会った時の感じいい人ぽかったっすし。」
「…フラダリ代表のあの演説は全部ウソですよ。フラダリ代表はきっと、責任を取ろうと為されているんだと思います。」
「責任...?」
「考えてみてください、メガシンカエネルギーを、むしろ相反するはずのジガルデに見立てて、世界を破壊するために数百キロ地上を進撃?バカげています。フラダリ代表が本当にその気ならもっと他に方法があるはずです。」
アカギとかいう人物は想像神アルセウスを召喚してあやうく世界の再創造をやらかしかけたという。ならばコルチカムの尊敬するフラダリ代表が、それ以上のことをもっと巧くやれない理由はないー彼女はそう信じていた。
「全部ブラフなんです。」
だからフラダリ代表は、フレア団にはカロスの破壊の準備とミアレシティの破壊を、フラダリラボグループにはカロスの破壊の阻止とミアレシティの避難支援を命じた。全部茶番なのだ。
「そのうえで、伝説ポケモンを起こしてしまったから、最終兵器や巨石のような危険物を見つけてしまったから…
…平時なら伝説ポケモンに対抗しようとは思わないしすることもできません。」
いつぞやフーパが何頭もの伝説のポケモンをデセルシティに解き放ってとんでもない騒動を引き起こしたことがあった。その時殆どの市民はただ嵐が過ぎ去るのを待つのみであったし、騒動が収束したあとは天災が終わったことを喜ぶだけだった。
「けれど、フラダリ代表にゼルネアス及びイベルタルがゲットされ、膨大なエネルギーを秘めた巨石とともにいる今なら、2体を巨石ごと始末することができます。」
「…伝説ポケモンを自爆で殺す...ってことっすか…!?まさかそのために...!?」
「そうしなければ世界が滅ぶとなれば選択肢がないのです。フラダリ代表は、最後のボタンだけを人々に押させるつもりで...!」
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「私は好きにした、お前たちも好きにしろ...だったかな?」
ずっと、考えていた。
伝説のポケモンは危険すぎる。技術レベルの高いこの世界では地震や噴火や台風はさほどリスクにならないが、そのかわりに伝説のポケモンが起こす厄災は「人の子にはどうにもならない天災」として放置されている。そしてうっかり世界が滅びかけるすべての場面にサトシくんのような英雄が居合わせるのは期待できない。
伝説ポケモンは危険だし、よしんば話が通じても誰かの悪意で悪用されることだってあるーこのことはせっかくギンガ団が周知してくれて思想の根っこは人々に根付いたはずだ。この上さらに全世界を人質にとれば、さすがに人々は目覚めるだろう。
伝説ポケモンという恐怖におびえる時代は終わる。ゼルネアスとイベルタルはゲットしてたかだか人間の寿命100年ほど言うことを聞かせるのではなく、未来永劫に渡って安全に「処理」される。
「後世の人は、今日がカロスの夜明けの日、3000年続いた神話の終幕の日と評価するかもしれんな。」
それでもまだお花畑にポケモンとの融和を訴えるのならそれも勝手だ。選択とは突きつけるためにある。
ゼルネアスもイベルタルも巨石も日時計も、すべてだ、すべてを吹き飛ばしてくれ。それでこそ、私の転生は勝利になる。
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ヒャッコクシティ手前の荒野。
夜闇を照らして、桃紫色の巨石が悠々と進んでいく。
その行く手をふさぐように、トレーナーたちが立ちふさがった。
巨石もまた、立ち止まる。
「トレーナー諸君!
私の前に立ちふさがるか?私の崇高な目的に逆らおうというのか?
よろしい、ならば、その選択に、命を賭けてみよ!」
刹那、幾筋もの光条が、夜を引き裂いた。
「人類はこれまでにおよそ25万年もの歴史を歩んできた。しかしその歴史のうち特筆すべきは僅かこの数千年に過ぎない。
我々は25万年に渡って何をしていたのか?そのほとんどを、理解の外にあるものを恐れて、洞窟の中で小さな焚火を囲み身を寄せ合って過ごしていたのだ。太陽が昇る理由の未知よりも、烈火を吹く巨龍や生命を宿す要石の脅威こそが恐るべき『理外のもの』であった。そして我々はそれらのうちもっとも収め難きものを『幻』と、あるいは『伝説』と呼び、許しを乞い、救済の祈りを捧げた。
時は流れ、それらは次第に隠れ、我々の数は多くに増えた。恐れるものは数を減らし、世界はより掌握可能なものへとなり始めた。しかしそれでも、圧倒的なるものは決して消え去りはしなかった。まるで世界が混沌と破壊を必要としているかのように。
人類は脅威から逃げ隠れていた時代に逆戻りしてはならない。他に我々を守るものはいない、我々自身が立ち上がらなければならないのだ。
人類が安全で秩序ある世界で生きていけるように、か弱き者が日常の中で暮らす間、力ある者は神話の中に立ち、伝説と戦い、封じ込め、終末の時を遠ざけなければならない。