道化の愉快な仲間たち   作:UBW・HF

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派閥大戦
派閥大戦~序章~


 

まず最初に、アンケートにご協力くださった皆様方、ありがとうございます。

本当に助かりました。

アンケートの結果を受け、取り敢えず書けるうちに書きたいところを書かせていただくことにしました。

書けてないオルギアス・サガなどの途中の話も、絶対に書いていきますのでどうかお許しください。

 

長くなりましたが、派閥大戦編の序章としてまずは15巻のお話からです。

書いていない重要な部分を振り返りみたいな形で話してますので、そういう事になったんだな、って思っていただければ幸いです。

 


 

そこはとある建物の一室。

誰も入らないよう厳重に閉ざされた扉の中。

当然外の光すらも差し込んでおらず、暗い室内を小さな蝋燭のだけが頼りなく照らしている。

誰かの吐いた息が流れ、蝋燭が揺れる。

緊張感が高まる中、ついにそれは幕を開ける。

 

「では、これよりリュー・リオンもとい、リュールゥに対する裁判を開始します。判決――有罪(ギルティ)

 

「「異議なし!!」」

 

「待ってください!!」

 

厳かに判決を下すアイズ、そしてそれに同意するティオナとレフィーヤ。

当然そんな判決を受け入れるわけもなく、焦ったように叫ぶリュー。

ちなみに、リューは逃げ出せないように縛られている。

 

「被告人、なにか?」

 

「弁明も弁解もまだですが!?いきなり裁かないでください!!というか、そもそも私は何の罪で裁かれるんですか!?魔女裁判でももう少し順序立てて進めますよ!?」

 

「なるほど…、反省はおろか、罪の自覚すらないと……。許しがたいわね」

 

「裁判長!被告人に極刑を求めます!」

 

「その求めを受け入れましょう」

 

「受け入れないでください!?ベート殿たちも、見てないで助けてください!!」

 

横暴な裁判官たちを前に叫ぶリュー。

だが、彼女たちがそれを聞き入れる気配はない。

もちろん、この場にはベートやヴェルフ、ガレス、ティオネの四人もいる。

だが、彼らはこのバカバカしい茶番に付き合うつもりはない。

 

「おい、クロッゾ。UNOって言ってないぞ」

 

「あ、ヤッベ」

 

「折角の勝機を無駄にしたな」

 

「じゃが、これで勝負は分からんくなったぞ」

 

「見てすらいない!?」

 

我関せずと言わんばかりにUNOをしている四人。

だが、流石にここまで言われれば無視することは出来なかったのか、カードを置いて魔女裁判を行う四人の方を見る。

 

「そうは言うけどよ、俺達だって何の裁判やってるのか知らねえし」

 

「大方ベル関係なんだろうが、面倒事になるのが分かりきっているからな。関わりたくない」

 

「どうせベルには直接関係ないじゃろうしな」

 

「ならどうでもいい」

 

「後生ですから!!助けてください!!」

 

涙目になって訴えるリューを見て、面倒くさそうにため息を吐く四人。

代表してユーリがアイズにこの行動の真意を問いただす。

 

「おいアイズ。いい加減説明しろ」

 

「あなた達は知らないのですね…。この裏切り妖精の罪深い行いを…。」

 

「どうせ下らんことだろうが一応聞いてやる。さっさと話せ」

 

「あれは昨日、偶然ベルと会った時のことです」

 

…………

………

……

 

『ベル。奇遇ですね』

 

『あ、アイズさん!』

 

場所はヘスティア・ファミリアのホームの前。

まるでベルが出てくるのを待っていたかのように、アイズはベルに声をかけた。

 

「おい、ホームの前で待ち伏せしておいて何が奇遇だ?」

「偶然ヘスティア・ファミリアのホームの近くを通りすがっただけです」

 

ベートはこの偶然に苦言を呈すが、話の本題はそこではないと言わんばかりに話を続ける。

 

『この前の決戦の時はありがとうございました。おかげで助かりましたよ。私も、この都市も』

 

『いえ、アイズさんたちが戦ってるって聞いて、僕もなにかしなきゃって無我夢中で動いてただけで…。』

 

『デメテル・ファミリアの救出やニーズホッグの撃破だけじゃないですよ。あなたがあの時鐘の音を鳴らしてくれたから。私は今こうしてここにいることが出来ているんです。本当にありがとう、ベル』

 

『――ッ!い、いえ、とんでもないです!』

 

アイズの笑顔に見惚れ、顔を赤くするベル。

平和で何よりも尊い二人のやり取り。

 

「この時のベル、本当に可愛かったんですよ。顔を真っ赤にして俯いちゃって」

「分かった分かった。で、これの何が問題なんだ?」

「問題なのはここからです」

 

二人は歩きながら話を続けている。

 

『リーネを助けてもらったり、あの決戦でも助けてもらったり、ベルには助けてもらってばかりですね』

 

『そ、そんなことは!!右も左も分からない僕がここまで来れたのはアイズさんたちのおかげです!深層に落ちた時も、アイズさんたちから教わったことを思い出せたから生き残れました!!』

 

『ベル…。そう言って貰えると助かります』

 

「問題なのはここ!ここからです!」

「はいはい」

 

『にしても、リューやクロッゾから聞いてましたが本当に彼女と二人だけで深層にまで落ちたんですね…。』

 

『はい…。本当に綱渡りの連続で、生きてるのが奇跡だって自分でも思ってます』

 

『大変な時に助けてあげられなくて、ごめんなさい…。』

 

『いや、アイズさんたちが気にすることじゃ…!それに、リューさんのお陰でこうして五体満足に戻ってこれたんですから!』

 

『そうですね…。深層に二人でどうやって凌いだんですか?あそこはモンスターも強力ですし、装備もボロボロだったんでしょう?』

 

『スライムを煮沸したり、命からがら見つけた水源で補給したり、色々と…。』

 

『水源?』

 

闘技場(コロシアム)の下に未到達領域があったんです。でも、そこに辿り着くまででもうボロボロになってて。僕なんか限界になって水の中に倒れ込んじゃいましたし。そこはモンスターもいなかったのでしっかりとした休息を取ることが出来て、何とか持ち直すことが出来ました』

 

『そうですか…。それは本当に幸運でしたね………ん?』

 

ベルのその言葉に、アイズは引っ掛かりを覚えた。

ベルは今何と言った?

水の中に倒れ込んだと言わなかったか?

その場所の水深がどれほどのものかは分からないが、当然彼を助け起こすためにリューも水の中に入っただろう。

そうなれば、二人はずぶ濡れになって……。

 

『ベル、もしかして暖を取るために二人裸で……なんて?』

 

その問いにベルは答えを返すことはなかったが、彼の表情は全てを雄弁に物語っていた。

 

…………

………

……

 

「と、いうわけです」

 

「…………。」

 

「…………。」

 

「…………え?もしかして終わりか?」

 

「そうですが?」

 

「お前らなぁ……」

 

緊急時の救命行為に対して何を言っているんだという思いが湧き上がってくるクロッゾ。

確かにそんな話は聞いていなかったが、エルフである彼女を思えば言い振らせるわけもないし、誰であろうと言いたいものではない。

ベルに恋する彼女たちからしてみれば思うことがあるのは当然だが、それを責めるのはお門違いだ。

そう思い苦言を呈そうとするが、そんなことは彼女たちも分かっている。

 

「もちろん、この行為自体をとやかく言うつもりはありません。緊急時に必要な措置だったと分かっています」

 

「だったら……」

 

「でも、何も言わないのは違うでしょう?」

 

自分たちが怒っているのはそこだと、彼女たちは頑固として譲らない。

 

「だからそれは、エルフであるこいつがこんなこと言い振らせる訳ねえだろ?」

 

「その後の証言で、被告人がベルとデートをしたことも判明しています。私達が神ヘスティアやリリルカとベルを取り合ってる間に、彼女は虎視眈々とベルの貞操を狙っていた訳です」

 

「ちょ、待ってください!言わなかったのは確かに私が悪いですが、言い方を――――」

 

「何も違わないでしょう?」

 

「違います!!私は――――」

 

「だってあなた、気持ちを自覚したでしょう?」

 

アイズのその言葉にリューは戸惑い固まってしまう。

そして次に、羞恥や気恥ずかしさなどの感情がどんどんと湧き上がってくる。

それらを爆発させる前に、確かめなくてはいけないと意気込み、アイズに尋ねる。

 

「き、気持ちとは…?」

 

「? だから、アル(ベル)のことを好きだって気持ちです。あ、もちろんライクじゃなくてラブのことですよ」

 

「え…?――――いや、ちょ、い、いつから?」

 

「「「三千年前から」」」

 

そして、三人のその言葉でついに爆発した。

 

「ああ嗚呼唖々アアぁぁァァッ!!なんで!?本当になんで!!??」

 

「いや、あれで隠してるつもりだったの?」

 

「無自覚な分、余計にタチが悪かったですよね」

 

「まあ、前世はあんな事になりましたし。今世では気持ちを自覚するまでそっとしておこうって三人で話してたんですけど…。まさかこんな形で裏切られるとは」

 

「トドメを刺すようで悪いが、俺達も知ってたぞ」

 

「ほぼ周知の事実だったな」

 

「知らぬのは本人だけじゃった」

 

「俺もこんなこと言いたかねえが、地上に戻ってから結構露骨だったぞ?何かあればすぐに顔を赤くするし、何もなくてもずっとベルのこと見てるし、呼び方変わってるし。あと心做しかベル限定で距離感が近くなった。まあ、ヘスティア様とリリ助に関しちゃ、元からあんたに警戒してたから何も変わらなかったけどな」

 

「もういっそ殺してくださいっ!!」

 

妖精の魂の悲鳴が響き渡るが、そんなものに斟酌する裁判官ではない。

一通り悶え終わったリューはやがて落ち着いたのか、息を荒くしながら弁明を始める。

ちなみに、顔は赤いままだ。

 

「……別に心配なさらずとも、この思いを彼に伝えるつもりはありません」

 

「あのね、こんな対応を取った私達が言っても説得力ないかもしれないけど、別に邪魔したり排除したりするつもりはないのよ?」

 

「本当に説得力がないな」

 

「黙りなさい、クソ狼。リーネの気持ち知ったうえであんな対応続けてるあなたが言えることじゃないでしょ」

 

「仕方ありませんよ。ベートさんはレナ・タリーさんの方が―――」

 

「ぶっ飛ばすぞ、お前ら」

 

「話が逸れてますよ」

 

茶々を入れるベートと喧嘩を始めそうになったところを、アイズが話を元に戻す。

そして、改めてリューを見つめてしっかりと話す。

 

「他者を思いやれるのはあなたの良いところですが、自分の気持ちを押し殺す必要はありません」

 

「別に、そんなつもりで言ってるわけじゃ…。第一、こんな年増に好かれてもベルだって迷惑でしょう?」

 

「そんなこと言ったら、リヴェリアは誰とも恋愛できなくなりますよ?」

 

「それ、暗にあいつが年増だって言ってないか?」

 

「まあ、実際に行き遅れておるしな。あやつとほぼ同年代と思われる元従者は結婚して子どももおるぞ」

 

「ここにいない奴を口撃するのはやめてやれ」

 

「また話が逸れてますよ。ていうか、年増って言いますけどリューさんまだ21ですよね?エルフだし、7歳くらい誤差じゃないですか?」

 

「ああ、いや、そうではなく……。」

 

「ただの言いわけでしょう?都合が悪くなったからって適当なこと言って逃げるんじゃないわよ」

 

「いや、そうでもなくて……!」

 

ティオナは厳しい言葉を投げかける。

だが、その言葉が事実である以上リューは何も言えない。

そんな彼女を見て、ため息を一つ吐くティオナ。

 

「アルに伝えたいことは伝えられた?」

 

「………ええ、しっかりと。私の慚愧も無念も、すべて受け止めてくれました」

 

「そう。なら、今はそれだけで十分でしょ。無理に自分を押し殺したり、何かを決めつける必要もないわ。今はベルと一緒に笑い合うことを楽しんで、それに満足できなくなったらアプローチしていけばいいし」

 

「ティオナ殿…。」

 

「落ち着いて、色々考えていきなさい。答えは一つじゃないし、無理に選ぶ必要もない。長い間拗らせてきたものが一瞬で全部解決する訳ないんだから、ゆっくりと考えていきましょう。その手伝いくらいなら、私達もしてあげるから」

 

穏やかに微笑むティオナ。

それに釣られるように、リューもまた微笑む。

 

「ええ、そうですね…。」

 

思えば、自分は少し答えを焦りすぎていたのかもしれない。

自覚した恋は何もかも初めてで新鮮で、それが嬉しくもあり怖かった。

彼への思いは彼への裏切りであるかのように思えて、どうすればいいのか分からなくなっていた。

でも、伝えた思いを彼はしっかりと受け止めてくれた。

ならば、自分は真剣に向き合ってくれた彼に、応えるだけだ。

ゆっくりと、自分だけの答えを探していこう。

時間はかかるかもしれないが、今はそれでいいと思う。

 

「ま、それはそれとして一回しばくけど」

 

「………え?」

 

リューは縛られたまま天井に吊し上げられる。

ハリセンを持った彼女たちに囲まれ、顔が引きつるのがわかる。

 

「あの、ティオナ殿?」

 

「私達に内緒でしたベルとのラブロマンスの代償は重いわよ?」

 

「ラブロマンスなどしてません!?」

 

「ラブロマンスをするなとは言いません。どのような行動を取るのかは個人の自由ですし。ただ、好きだと公言している友人に黙って、友人を出し抜いてデートに行くのはちょっと違うんじゃないですか?」

 

「それはすいませんでした!?」

 

「この行動に正当性はないと思います。でも、恋は理屈じゃないんですよ」

 

「え、ちょ、待っ、ベート殿!?助けて――――!!」

 

あまりの危機的状況に思わずベートたちに助けを求めるが、それは無駄だ。

彼らはこんな面倒事に関わる気など毛頭ない。

 

「ドロー4だ」

 

「ちっ、やはりドロー4を最後まで残していたか」

 

「難いことをしてくれるな…」

 

「貴様だけを先に上がらせてたまるか、ドロー4だ」

 

「だから、UNOしてないで助けてください!?って、ちょ、お、お慈悲を……あ、アァァ――――!!!」

 

その部屋に、リューの悲鳴だけが無惨にも響き渡った。

 


 

アホなことが起こっている部屋から離れた場所で、ハイエルフは目的の少年を見つけた。

 

「ベル・クラネル、少し良いだろうか?」

 

そして、呼び止め声を掛ける。

話さなくていけないことがあるから。

自分たちを助けてくれた彼に、それを伝えるべきだと思ったから。

 

「“アル”と名乗る青年について、少し話したいことがある」

 

そうして、真実へ向かう足がかりを一つ、少年は得ることになる。

 

……………

…………

………

……

 

「やっと茶番が終わったか」

 

「そんな事を言うくらいなら助けてくれてもいいと思うのですが?」

 

「断る。面倒だ」

 

大きなたんこぶを作ってグチグチ言っているリューの言葉をベートはバッサリと切り捨てるが、彼女からの恨めしい視線は消えてなくならない。

とはいえ、これでこの件は一段落し、次の議題に移っていく。

 

「リューの禊も済んだことですし、次の話に移りましょうか。クロッゾの精霊について」

 

アイズの言葉を聞いて答えるように、ヴェルフの身体から炎が上がり、人の形をなしていく。

その姿は前世で見たものと同じ。

敵を焼き払い、彼らを救った勇ましい精霊のもの。

 

「改めて話すほどではないかもしれねえが、一応な。ウルスだ」

 

「……前世で見たのと全く同じ姿ね。まさかとは思うけど、寿命は?」

 

「心配すんな。何も問題ねえよ」

 

前世でクロッゾは魔剣や精霊の力を振るうたびに寿命が縮んでいった。

それを危惧してティオナは尋ねるが、それを杞憂だとヴェルフは言う。

 

「お前らと会った時、本当はもう死んでたはずなんだよ。でも、ウルスが自分の力を使って寿命を伸ばしてくれてたんだ。俺が魔剣やウルスの力を使うたびに、寿命を伸ばしてる分の力がなくなって命が削れていったように見えてただけだ。今の俺はそこら辺問題ねえし、前世でも本当は死んでたはずの命なんだ。お前らが罪悪感を感じる必要はねえよ」

 

あっけらかんと言ってのける彼に呆れと感嘆が入り混じった複雑な思いを覚えずにはいられない。

とはいえ、本人が納得しているのなら話はこれで終わりだ。

しかし、また別の路線に話は続いていたようで。

 

「あと、お前らに言っとかなくちゃな…。悪い、ヘファイストス様に話しちまった」

 

片手を上げて謝辞を示しながら、クロッゾは数日前のことを語り始める。

 

……………

…………

………

……

 

壊れない魔剣という馬鹿げたものを作り出し、前世すら超える高みにまで至ったヴェルフはそのことをヘファイストスに報告した。

前世で使っていた大剣に似たその一振り。

下界の存在であればどんな人物が見ても名剣と呼ぶその一振りも、神の目から見ればどうかは分からない。

緊張の面持ちでヴェルフは言葉を待っていたが、実際に作った魔剣は“まあまあ”という評価を得た。

鍛冶の神であるヘファイストスから賜るその評価は鍛冶師にとって何にも代えがたいものだった。

自身の成長と今後の躍進を近い、ヴェルフは拳を作った。

そして話が終わり、早速新しい剣を打とうと仕事場に戻ろうとした時だった。

 

「待ちなさい、ヴェルフ。話はまだ終わってないわよ」

 

「? どうかしましたか?」

 

「頑張ってるし、この短期間でも確かに成長を続けていってるし、その、まあ……認めてあげるのもやぶさかではないっていうか……。色々言いたいこともあるのよ。――――その、返事も……」

 

「? ………はぁ」

 

「でも、その前に確かめなきゃいけないことがあるのよ。ヴェルフ、なんであなたがその子と一緒にいるの?」

 

ヘファイストスが指差すはヴェルフの中。

彼に宿り力を貸している彼女。

ヘファイストスが誰のことを言っているのか分かったヴェルフは、首を傾げながらも確かめる。

 

「ウルスのことですか?」

 

彼に名を呼ばれた精霊は身体から湧き出て人の形をなす。

ヴェルフの首に背後から腕を回し抱きつくような姿勢を取りながらヘファイストスの方を見つめている。

その様子にヘファイストスは青筋を立てながらもなんとか怒りを抑え込み、話を聞こうとする。

 

「ええ、その子よ。あなたの血に精霊の力が混じってるのは知ってたけど、なんで直接その子が現れて力を貸すレベルにまでなってるの?」

 

「あぁっと、これはですね……。って、なんでウルスがいるって分かったんですか?」

 

「その子、私の従属なのよ。言ってしまえば、私の眷属であり分身みたいなものね」

 

「あ、そうだったんですね。そりゃまた奇妙な縁で…。」

 

「それで?なんでその子と一緒なの?」

 

ヴェルフは少し悩む。

ウルスについて話す以上、前世に触れる。

そうなれば、アルゴノゥトについても話してしまうことになる。

あの友を思えばあまり話したくはないのだが、それではヘファイストスへの不義理になってしまう。

少し悩んだヴェルフは、頭を掻きながらやがて決心を固める。

 

「ま、ヘファイストス様に黙ってもらってりゃ大丈夫か。あいつらには俺から謝ればいいし、最悪殴られよう」

 

「ヴェルフ?」

 

「おい、椿。席外せ」

 

「釣れないことを言うな、ヴェル吉。手前とお主の仲であろう?」

 

「悪いが、親友が人生全てを賭けて隠し通したことなんだ。いくらお前でも、話せねえよ」

 

その瞳には覚悟があり、友を思う心がある。

そんな感情を抱く彼を好ましく思うが、椿もこのままでは引き下がれないだろう。

 

「このままでは椿も収まらないでしょうし、私個人としても彼女には事情を知っていて欲しい。椿には主神命令で箝口令を敷くわ。絶対に外部には漏らさないと誓う。それでもダメ?」

 

「………ヘファイストス様がそこまで言うのであれば。ただ椿、覚えてろよ?」

 

「何をだ?」

 

「くだらねえことで漏らすような真似をしたら、テメエを叩っ斬る。勇者に話すなんか論外だ。テメエもテメエの工房も、テメエの作った剣も何もかも、全部燃やし尽くしてやる」

 

「………。」

 

「それだけは、肝に銘じとけ」

 

絶対に譲れない友の思いのため、ヴェルフは椿に対してそう言い切った。

もしそうなれば刺し違えてでも彼女を殺す。

そんな覚悟を持って、ヴェルフは告げる。

 

「今から話すのは俺にとって唯一無二の親友の半生だ。誰よりも優しくて、賢くて、かと思えばどうしようもないくらい愚かな奴だった。どんな英雄よりも弱いが、どんな英雄よりも強かった。人類の未来のために全てを擲って、本当に人類の未来を変えちまった凄い男だ。あいつに感謝しろよ、椿。お前が生まれて生きていることすらも、あいつのおかげなんだから」

 

「………何者だ、そやつは」

 

誇大表現としか思えないほどのヴェルフの言動に、椿は眉をひそめる。

だが、それすらも笑い飛ばすようにヴェルフは彼の名を口にする。

 

「『アルゴノゥト』。英雄時代なんて馬鹿げたもんを作っちまった、自慢の親友だよ」

 

そうしてクロッゾは語る。

あの愚かな親友と過ごした短い冒険の物語を。

 


 

「そう、分かったわ」

 

話を聞き終わったヘファイストスは短くそう言った。

取り乱すことも否定することもせず、ただ淡々と事実として受け入れていた。

椿は真偽を疑っていたが、主神の手前何も言わなかった。

 

「驚かないんですね」

 

「十分驚いてるわよ。ただ、それ以上に納得したってだけで。嘘もついてないし、その子がいる以上実際にあったことなんでしょう。それを疑うような真似はしないわよ」

 

「ありがとうございます」

 

「いいわよ。それにしても、難儀な運命を背負ったものね……、あなたも、ベル・クラネルも」

 

呆れたような口調でありながらも、過酷な運命に巻き込まれている彼らを思う憂いが含まれた声色だった。

 

「それを背負ってるのはベルだけですよ。俺達はただのおまけに過ぎません」

 

それに返すヴェルフも、どこか哀愁漂う雰囲気だった。

昔を思い出しているのか、今なお戦い続けている親友を憂いているのか。

それは分からないが、それは決して悪い感情ではなかった。

 

「それに、こんな運命も悪くないですよ。どれだけ過酷でも、どれだけ困難に満ちていても、あいつがいるなら俺達は笑っていられる」

 

「……そう」

 

ヴェルフのその言葉に、ヘファイストスも穏やかに微笑む。

彼らにとって、今こうして彼と笑い合っていられることが何よりも幸せなのだ。

失ったはずの未来を感受することが出来るだけで、今は十分だった。

まあ、それでは満足できないのが馬鹿なことをしでかしまくってるあの女連中なのだが。

 

「ところでヴェルフ。話は変わるんだけど……」

 

「? なんですか?」

 

「その、あの、こんなこと聞いていいのか分からないのだけど…、あなたの前世での奥方について……」

 

そして、恋に盲目な乙女がここにも一人。

クロッゾという家系が存在し、そこにウルスの血が流れている以上、ヴェルフが誰かと子をなしたのは確定事項だ。

別に、それ自体はいいのだ。

自分が知らない時代の彼の話であるし、仕方のないことだと分かっている。

だがそれでも、相手がどういう女性だったか気になってしまうのも仕方ないことなのだ。

 

「あいつがどうかしたんですか?」

 

「いえ、その……。―――ごめん、椿。代わりに聞いて」

 

「手前に投げるでないわ、主神様」

 

聞こうとしたが最後の最後で振り絞った勇気が力尽きたヘファイストスは、椿に投げた。

主神のあまりの乙女っぷりにさすがの椿も呆れ果てていたが、彼女を見捨てることも出来ないので仕方なく代わりに聞くことにした。

 

「ただの興味本位で聞くが、どのような女だったのだ?」

 

「どのようなって言われてもな…。ごく普通のヒューマンだったぞ?」

 

「そんなことを聞いているのではないわ。他にもあるだろう?性格とか、容姿とか」

 

「夫の俺が言うのもあれだが、気立ての良い美人だったな。大変な時も俺を支えてくれてた。アルゴノゥトがああなって、一時期凄い沈んでたんだが、そん時も俺を引っ張って勇気づけてくれた。そう言えば、どことなくヘファイストス様に似てたかもしれない」

 

「今も想っておるのか?」

 

「もちろん、今も大切に想ってるよ。当たり前だろ?でも、それはそれとして前世のことだしな。あいつにまでこんな奇跡が起こることはありえない。もう、会えないと思う」

 

「…………。」

 

「だけど、それをいつまでも引きずって今ある幸せを逃したら、それこそあいつにドヤされちまうからな。あいつも生まれ変わってどこかで幸せになってるって信じてる。だから、俺も俺で前を向いて生きていくさ」

 

晴れやかな表情でそう答えるヴェルフ。

そんなヴェルフに寄り添うように、ウルスは再びヴェルフの首に手を回し抱擁する。

自分だけはいつまでも一緒だと、そう言わんばかりに。

 

「ま、お主が吹っ切れておるなら問題ないか…。聞くのはこれだけでよいか、主神様よ。………おい、主神様?」

 

ヴェルフの回答に安心して別のことが気になり始めた様子のヘファイストス。

先程までは前世の妻に複雑な思いを抱いていた主神は今、眼の前にいる精霊に嫉妬しているようだ。

距離感が近い。

なにもないのだろうが、それはそれとして距離が近い。

 

「ねえ、ウルス?少し距離が近いんじゃないかしら?」

 

「――――。」

 

「ウルス?」

 

ウルスは言葉を発さないので会話はできないはずだが、神としての能力なのか問題なく会話できているようだ。

とはいえ、ウルス自身はヘファイストスの言葉を聞く気はないのか離れる気配はない。

 

「ウルス、距離が近いわ。離れなさい」

 

「――――。」

 

「喧嘩売ってる?これが最後よ。創造主として命じるわ、離れなさい」

 

その最終勧告すら聞かず、ウルスはそっぽを向く。

絶対に離れないと言わんばかりに更に強くヴェルフを抱きしめている。

そして、その様子にとうとうヘファイストスがキレた。

 

「上等よ!!その喧嘩買ってあげるわ!!創造主への敬意を思い出させてやるわよ!!」

 

「やめい、主神様!大人げない!」

 

「何やってるか分からねえけどお前も止めろよ、ウルス」

 

壁にかけてあった金槌の一つを手に取り、ウルスに殴りかかろうとしている。

そんなものがウルスに効くのかは分からないが、取り敢えず羽交い締めにして止める椿。

そして、ヘファイストスに対して挑発するような行動を続けるウルス。

ヴェルフが嗜めるが、やはり聞く気はないようだ。

 

「離しなさい、椿!一発殴らないと気がすまないのよ!」

 

「だから、やめいと言っておろうが!ああもう!ヴェル吉、主神様は手前が何とかするから帰れ!」

 

「いや、ウルスが原因なら俺にも―――」

 

「心意気はありがたいが、お主がおれば悪化する!主神様を連れてまた会いに行くから今は帰れ!」

 

「お、おう…」

 

「待ちなさい、ウルス!!」

 

「いい加減にせい!!」

 

椿の気迫とヘファイストスの乱心に追い出される形で部屋から出ていくヴェルフ。

ウルスは気が済んだのか、部屋から出るとすぐに消えていった。

何がなんだか分からないヴェルフは、頭を掻きながらヘファイストスの元を後にした。

 

 

……………

…………

………

……

 

「てな具合で、話しちまった」

 

ヴェルフは語り終えたが、帰ってきたのは重い沈黙だけだった。

どこか気まずそうに、全員が視線を彷徨わせている。

それを感じ取ったヴェルフは再び頭を下げる。

 

「本当に悪かった。せめて、一言相談するべきだったよな…」

 

「いや、別に話した事はいいのよ。仕方ないことだし。ただ、その、ねえ?」

 

「神ヘファイストスも不憫だな、と思っただけだ」

 

「ヘファイストス様が?なんで?」

 

「さすが親友というべきか…。お前、そういうところはあのバカに似てるな」

 

ヴェルフはその言葉の意味が分からず首を傾げていたが、他の面々はそれを見て呆れ返ることしか出来ない。

一同が大きなため息を吐いた後、緩みきった雰囲気を直すように真面目な話を進めていく。

 

「神ヘファイストスに話したのは分かったけど、神ヘスティアには?」

 

「話してねえな。ヘファイストス様には聞かれたから話したけど、ヘスティア様には聞かれてねえし」

 

「あえて聞かないでいてくれてるんでしょう…。あるいは、私達が話すのを待ってるのか」

 

ヘスティアはこの都市で誰よりも慈悲深く優しい女神だ。

それを彼女たちは知っている。

そして、それと同時に人の心を知る強く聡い女神であることも知っている。

だからこそ、彼女が今の自分達の状況に何も気づかないとは思えない。

 

「どっちにしろ、今はその厚意に甘えるしかないわね。ベルにもまだ話してないし…。」

 

「とはいえ、その時は近い」

 

この半年足らずで急成長を遂げたベル・クラネルは今やレベル4。

そして、エニュオとの決戦や深層でのサバイバルを駆け抜けた今、ランクアップは近い。

 

「あくまで体感にはなりますが、ベルはおそらくランクアップに足る条件はもう満たしているはずです。レベル5に至った私と、真正面から戦うことが出来ていますしね」

 

「流石に短い間でランクアップをし過ぎたからな。神ヘスティアも不味いと思って先送りにしたんだろう」

 

「どうしたものか…。」

 

迫りくるその時を彼らは恐れる。

何がなんでも、早すぎる。

 

「正直、ベルが私達と同じ域に来るまでもっと時間がかかると思ってました。二年…、歴代最速でランクアップを果たしたとしても、一年はかかるはずだと。でも、その予想を超えてベルはここまで駆け上がってきた。私の見通しが甘かったです」

 

「こんな偉業を成すなど、誰も見通せまい。お主のせいではない」

 

「それに、ベルとその約束をしたのは私よ。責任は私にあるわ」

 

「責任云々はもはやどうでもいい。これからどうするかだ」

 

迎えるには早すぎるその時を恐れ、彼らは迷う。

話すべきだ、話さなくていけない。

ただ、もう少し後でいいのではないかと思ってしまう。

 

「ベルのおかげで、私達は助かりました。ニーズホッグだけじゃなくて、鐘の音のこともそうですし、もっと言えば、【道化行進(スキル)】のこともそうです。私はこのスキルがあったから、フィルヴィスさんを助けることが出来ました」

 

異端児(ゼノス)もそうね。フィルヴィス・シャリアを現在匿ってるのもそうだし、フィンも助けてもらった。多分、ベルがいなかったら……。」

 

「そういう意味で、私達はベルに助けられ続けた。ベルの急成長に一番助けられたのは、他ならぬ私達だ」

 

それは分かっている。

痛いくらいに分かっている。

だけど、それでも――――。

 

「正直なこと言うと、私は怖いわ。ベルに嫌われるかもしれないことが」

 

「タイミングを逃せば、一生言う機会はなくなるぞ。ベルは優しいから、きっと私達が拒めば聞いては来ないだろう。だが、それは――――」

 

「分かってるわよ、ベルに対して不誠実だって。自分でも嫌になるわよ、本当に。一回先延ばしにすれば二回目のハードルは下がっていく。二回目をすれば、三回目は更に。だから、絶対に言わないといけない」

 

「ええ…。」

 

分かっていても、恐怖はやって来る。

いつも明るく励ましてくれたアルゴノゥトは、もう自分たちの前に現れない。

都市の命運を分けたあの決戦で、彼の導きは役目を終えたのだから。

 

「アルゴノゥトに、“頑張れ”って言われました」

 

しかし、あの道化はいつも彼女たちのそばにいる。

英雄たちを、励まし続ける。

 

「“君達なら大丈夫”って、アルは言ってくれたんです。だったら、頑張るしかないですよね」

 

「―――そうね」

 

彼から貰った言葉を噛みしめるように、英雄たちは笑う。

歴史に名を残した者も、そうでない者も。

未来を憂い、人類のために共に戦った彼ら彼女らは、アルゴノゥトにとって全て等しく英雄なのだ。

 

だからアルゴノゥトは“英雄”を導く。

一緒に笑いあった友を導く。

英雄に、“頑張れ”という言葉を伝えるのだ。

 

その言葉を受け取った英雄は、応えないわけにはいかない。

 

「もしベルを傷つけたら、謝りましょう。寄り添って、時には喧嘩でもしながら、また笑い合いましょう」

 

「ああ、そうだな」

 

笑い合いながら、前を向いて歩いていく。

その未来を示すように、アイズは窓を開ける。

窓を開けた先には、英雄の都が広がっている。

 

「そう言えば、もう少しで挽歌祭(エレジア)でしたね」

 

「そうだったな。ユーリのモニュメントを初めて見た時は笑い転げたが、慣れればあれはあれで趣があるよな」

 

「他人事だと思いやがって…。」

 

「そうね。クロッゾのことも書いておけば良かったわ」

 

「冗談キツイぜ?」

 

英雄を思いながら笑い合い、時間は流れる。

そうして、挽歌祭(エレジア)当日を迎えた。

 


 

挽歌が聞こえてくる中、ベルは墓地の中を進んでいく。

助けられなかった冒険者に、鎮魂を捧げた帰りだった。

この都市に来て、半年が経つ。

 

あの時の自分となにか変われただろうか。

自分はちゃんと成長できているだろうか。

自分は、誰かの“英雄”になれているのだろうか?

 

様々な思いが駆け巡り、自問自答を繰り返す。

そんな中、一つのモニュメントに手を合わせている少女が目に入ってきた。

 

「アイズさん……」

 

黙祷を捧げ終わったその少女は名を呼んだ自分の方に振り返る。

そして、ベルを見て穏やかに微笑む。

 

「また会いましたね、ベル」

 

彼女に見惚れてしまうベル。

そんな彼を少し不思議に思いながらも、少女は問いかける。

 

「あなたも、誰かのお墓に?」

 

「は、はい、少し…。アイズさんも、挽歌祭(エレジア)で?」

 

「ええ。大英雄アルバート。私の好きな英雄のお墓に」

 

一際大きなモニュメント。

世界で最も偉大な英雄とされる彼。

その英雄を、アイズは物憂げな表情で見つめていた。

 

ベルもアイズはそのために来たのかと思っていたが、よく見ればアイズの手にはまだ花束が握られていた。

 

「もう一箇所行きたい場所があるんですが、ベルもよかったら一緒に行きませんか?」

 

「え?いいんですか?お墓参りなのに…。」

 

「大丈夫ですよ。こんなことで怒るような英雄(ひと)ではありませんから。さ、行きましょう」

 

アイズはベルの手を取り歩き始める。

挽歌は変わらず聞こえ続ける。

その歌声が、どこか寂しく感じてしまうのはなぜだろうか?

 

そうして彼女に手を引かれたどり着いたのは、一つのモニュメント。

他と比べれば小さく、献花の数も少ないように感じた。

子どもが多いのだろうか、野原に咲いているような小さな花が多くある。

そんな中でも、立派な花束が7つ。

そして、そこにアイズが1つ添えて8つになった。

 

「ここは…」

 

「英雄アルゴノゥトのモニュメントです。世間一般では英雄譚の主人公というより喜劇の道化として捉えられているせいか、献花の数も少ないんですけどね」

 

「ええ、知ってます…。」

 

「私が一番好きな英雄です。ベルはアルゴノゥト、好きですか?」

 

その質問にベルは少し迷った。

好きな人の好きな英雄を自分も好きだと言いたいのだが、嘘をつくわけにもいかない。

結局、性分も相まって正直に喋る。

 

「英雄譚は全部好きですし、アルゴノゥトも好きですけど一番ではないですね。むしろ、アルゴノゥトはお祖父ちゃんが好きな物語です。『儂の一番のお気に入りじゃ』って、よく言ってました」

 

「見る目があるというべきか、物好きと言うべきか。愉快なお祖父様ですね」

 

「愉快すぎて困ることも多いですけどね…。でも、自慢の祖父です」

 

半年前まで一緒に住んでいた祖父を少し思い起こす。

今は旅をしているらしいが、元気だろうか?

祖母に見つかって殺されてないだろうか?

なんて、少し的はずれな心配をしている自分がおかしかった。

 

少しの間沈黙が流れる。

アイズは変わらずモニュメントを見続けている。

その心境を推し量ることは出来ないので、何も言えない。

だけど、そんな彼女を見てベルの口からある言葉が飛び出た。

 

「僕とアルゴノゥトは、一体どういう関係なんですか?」

 

不意に出たその言葉に、モニュメントを見つめていたアイズは驚いて振り返る。

そこには不安に揺れるベルがいた。

思わず彼に手を伸ばそうとするが、ダメだ。

今の彼を手に取る資格は、彼女にはない。

 

「先日、リヴェリアさんとお会いして話をしたんです。この前の戦いのお礼にって言ってましたけど、本題はその最中に現れた『アル』と名乗る青年についてでした」

 

リヴェリアが彼の姿を目撃したのは二度。

メレンに行った時と、この前の決戦。

その時の様子から、彼が普通の人間ではないことくらい分かっていた。

 

「リリたちも目撃したそうです。僕達を救出するために深層に向かっている途中、どこからともなく現れてヴェルフとだけ話して消えていったそうです。僕が直接見た訳ではないのでハッキリとは言えませんが、その容姿は僕にそっくりだった。顔も、声も、髪の色も」

 

あの青年は、ベルの前には現れなかった。

偶然なのか、それとも何か意図があったのか。

それは分からない。

 

「リヴェリアさんは、そのことから彼を僕の生き別れの兄弟じゃないかって推測してました。でも、何らかの要因で亡くなって、アイズさんたちは生前の彼と親交があった。そして、兄弟である僕と彼を重ねているんじゃないかって。あの時現れた彼は、彼が生前宿していたスキル・魔法の影響……、あるいは血縁による何らかの下界の未知」

 

それは的はずれなものだ。

だが、それを否定する言葉を言うことは出来ない。

違うという一言すらも言い出せずに震えるしかない。

しかし、この流れだと最初の質問とは結びつかないことに気がついた。

 

「リヴェリアさんには言えませんでしたが、それはありえません。僕にそっくりな兄弟はいませんし、いるなんてありえません。それは絶対です」

 

「…………。」

 

「僕の母は身体が弱くて、僕を生んだ直後に亡くなりました。二回の出産に耐えることは、無理だったはずです。僕の父は、僕が生まれる前に亡くなりました。育ての親が父を嫌っているので詳しい話を聞いたことはありませんが、かなり放蕩な性格をしたようです。どこかで母以外の女性と子をなした可能性の有無は分かりません。でも、僕の髪色は母由来だから、腹違いの兄弟である可能性もほぼありえません」

 

「…………。」

 

「兄弟ではない親類の可能性もありえません。父の親類は分かりませんが、先程の理由から似ている人物が生まれる可能性はありえないので。母の親類は一人姉がいます。でも、その人に実子はいません」

 

「…………。」

 

「僕とは無関係な他人の空似である可能性も考えました。でも、これもありえません。だったらスキルで皆さんとの繋がりなんて生まれるはずがないから。それに、彼は僕のことをキチンと認識していたらしいですし」

 

ベルは自分の考えを一つ一つ説明し、それを自分で否定していった。

 

「こうやって考えられる可能性を一つ一つ潰していったんですが、最後まで分かりませんでした。考えられる全てを考えても、その中に答えがなければどうしようもないです。考えても答えが出なくて行き詰まった時、ふと疑問に思ったんです。なんで僕と皆さんを繋ぐスキルは【アルゴノゥト】なんだろうって」

 

思えば、それは当然の疑問。

抱いて然るべきものだった。

 

「僕が一番好きな英雄は『エピメテウス』です。もちろんアルゴノゥトも好きですが、目指している理想の英雄を挙げるなら、僕には彼しかいません。なのに、何故か『アルゴノゥト』の名を関するスキルが発現した。スキルとは、当人の思いに根ざすもののはずなのに」

 

祖父の影響を受けたのだと思っていた。

でも、きっと違うことに気がついた。

 

「『ウィーシェの断章』によれば、アルゴノゥトは白髪赤目のヒューマンだったそうです。これが正しいのかは分かりませんが、僕にはこれがただの偶然とは思えない」

 

ずっと直視するのが怖かった彼の視線を、まっすぐと見つめる。

そこにいたのは、不安に揺れる一人の子どもだった。

 

「教えて下さい。僕とアルゴノゥトは、一体なんの関係があるんですか?」

 

悲しげに揺れる彼を、抱きしめずにはいられなかった。

彼にこんな顔を、してほしくはなかった。

彼を知らず知らずのうちに既に傷つけていたことを直視させられ、思わず体が動いてしまった。

自分に彼を抱きしめる資格はないかもしれない。

でも、こうせずにはいられなかった。

 

「ごめんなさい、ベル。今のあなたにそれを話すことは出来ません。約束はまだ、果たされていないから………。」

 

「………そう、でしたね。ごめんなさい、アイズさん」

 

「謝るのは私達の方です。ごめんなさい、ベル。不甲斐ない私達を、どうか許さないで」

 

彼を抱きしめる腕に力が入る。

 

「その時になればきっと、きっとあなたと向き合ってみせます。だから、私達にもう少しだけ時間をください。あなたを傷つけながら、あなたに嫌われる覚悟すら持てない私達に、もう少しだけ猶予をください」

 

挽歌が終わる。

二人は寂しく抱きしめ合っている。

 

こんなに抱きしめても、こんなに近くにいても埋まらない距離が二人にはある。

それはきっと、他の七人も同じだ。

 

その距離が形になってしまったのか、これから暫くの間ベルとアイズ達が会うことはなくなる。

女神祭が終わるその時を過ぎようとも。

会うことはなかった。

 

[newpage]

 

女神祭が終わった次の日。

ロキ・ファミリアのホームは喧騒に包まれていた。

 

「うるっせんだよ、バカゾネスが!!」

 

「こっちのセリフだよ、クソ狼!!」

 

「アンタたち、朝からうるさいわよ!!いい加減にしなさい!!」

 

「関係ねえテメエはすっこんでろ!!」

 

「ティオネには関係ないでしょ!?」

 

「―――ッ、いい加減にしろっつってんだろが!!」

 

ベートとティオナの喧嘩の仲裁に入ったはずのティオネも、一緒になって喧嘩を始める。

三つ巴になるそれは、ただの喧嘩と呼ぶには激しすぎるものだった。

 

「朝から何やねん!?」

 

「久しぶりにベートとティオナが喧嘩したかと思えば、ティオネもか…。それに、アイズも―――」

 

ふと部屋の隅の方を見つめてみると、どこか虚ろな目をしたアイズがそこにはいた。

 

「アイズさん、大丈夫ですか……?」

 

「うん…。」

 

「アイズさん…?」

 

「うん…。」

 

「しっかりしてください!」

 

「うん…。」

 

団員が呼びかけても決まった返事しかしない。

この半年で、彼女たちは大きく変わったと思っていたが、何があったのだろうか。

人としても成長し、粗暴で粗野な態度が鳴りを潜めていたベート。

大雑把なだけでなく、丁寧な物腰になったティオナ。

眼の前のことにだけ夢中になるのではなく、周囲を暖かく見守るようになったティオネ。

余裕が生まれ、笑顔も増えてきていたアイズ。

 

しかし、今の彼女たちはどうか。

以前に戻ったどころか、酷くなったようにさえ思う。

 

「朝から騒々しいのう」

 

「ガレス!」

 

ここ半年、ずっと彼女たちと行動を同じくしていたガレスが現れた。

髭を撫でつけ、どこか他人事のように呟いている。

ガレスまで豹変したかと気が気ではなかったが、パッと見た限りでは違うようだ。

いつものように、年長者としての落ち着きを持っている。

 

「ガレス、ここんとこベートやアイズたんたちと一緒やったやろ?どうにしてや」

 

「無茶言うな。儂にも無理じゃよ…」

 

「じゃあ、ああなった理由に心当たりは?」

 

心当たりを尋ねられると、ガレスは少し考える。

目を閉じて、なにかに思いを馳せる。

やがて目を開けてゆっくりと語り始める。

 

「大切な何かを、失ったんじゃよ…。」

 

「大切な…」

 

「なにか?」

 

意味が分からずオウム返しするロキとフィン。

その二人の声を聞いてか、ガレスは語り続ける。

 

「大切なものじゃ。自分が自分であるために、必要不可欠なほど大切なものじゃ。それを失ったからこそ、ああなったんじゃろうな。寂しさを埋めるために喧嘩で誤魔化そうとして。自分を誤魔化しきれず悲嘆に暮れて」

 

「その大切なものってなんや?」

 

「分からん」

 

「はぁ!?ここまで言うて分からんの――――」

 

分からんと匙を投げるガレスにロキは思わずツッコミを入れようとしたが、途中で言葉を失った。

 

「分からんのじゃ……。分からねばならんはずなのに……」

 

目から大粒の涙を溢すガレスの姿が、そこにはあった。

いつも泰然とし皆を引っ張る老戦士の姿はそこにはない。

そこにはただ、希望を失って悲しみにくれる一人の男がいるだけだった。

 

「大切なものじゃ…。大切なものなんじゃ…。ずっとずっと、儂の中にあった大切なものなんじゃ…。暗闇を照らしてくれるような…、悲しみを吹き飛ばしてくれるような…、大切なものなんじゃ……」

 

ガレスは泣き崩れる。

恥も外聞もなく、ただ悲しみに負けて泣き続ける。

 

「なのに、それが何なのかすら分からん…。見失った以上に、思い出せないのが何よりも辛い…。悲しくて、寂しくて、胸の奥が、痛いんじゃ…。今まで負ったどんな傷よりも、痛くて敵わん…。誰か、誰か教えてくれ…。儂らは一体、何を失ったんじゃ……?」

 

慟哭が響く。

 

「それがなければ、儂らは……」

 

『笑うことすら、出来はしない』

 

……………

…………

………

……

 

道化の行進は途絶えた。

進むべき道も、理想も失われた。

それでも英雄は進むしかない。

 

■■■■(XXXXxX)

・効果消失。■■の足跡は途絶え、希望は消えた。

 


 

あとがき

 

ここのガレスさんのシーンが、書きたかったところベスト5のうちの一つです。

書けて満足しております。

今後の更新はどうなるか分かりませんが、出来る範囲で書いていこうと思っています。

ご理解の程、よろしくお願いします。

 

それと全く関係ないんですけど、昔見たダンまち二次創作が見つからないのってモヤモヤしますよね。

書いてるうちに何となく思い出して探してたんですけど、見つからなくて。

そのせいで3時間くらい無駄にしました。

 

ベルくんがロキ・ファミリアに居て、レベル4か3くらいで。

灰にトラウマ抱えてて、モンスター殺した後に出る灰がダメで、殺さないようにモンスターの四肢切り落としてエグい惨状作り出してて。

それが冒頭にあって。

ロキのことをまな板の神様とか言ってて。

なんか輝夜さんといい感じになってる。

レフィーヤさんに修行つけることになったけど、レフィーヤさんボロボロにして泣かして。

 

みたいな小説。

皆さん知ってたら教えてくれませんか?

作者さんすらも覚えてなくて、ずっとモヤモヤしてます。

もしかして削除されちゃったかな?

面白かったから好きだったんですけどね…。

そうだったら残念です。

 

以上、あとがきでした。

 

次のページに没にした展開載せます。

どこまで活かすのか決めてないですし、全く活かさないかもしれません。

というか、色々無理があるな~って思って没にした奴なので、あんまり期待しないでください。

 


 

しかし、リューはそれでも別の角度から反論を試みる。

 

「そ、そもそも!ベルはアイズ殿のことを好きなようですし、私が好きになったところで―――」

 

「別に、他に想い人がいる人を好きになってはいけない道理なんでありませんよ。誰かを思う気持ちは、当人の自由です。だから、自分の気持ちに嘘をつかないでください」

 

「アイズ殿……。」

 

「それに――――」

 

アイズは言い悩むリューに言葉を続ける。

 

「どうせ私達全員でベルを囲むんですから、そんな嘘をつく意味なんてないでしょう?」

 

「え?」

 

「え?」

 

「え?」

 

「え?」

 

「え?」

 

「え?」

 

「え?」

 

「………え?」

 

思いがけない言葉が飛び出て呆気にとられる七人を見て呆気にとられるアイズ。

暫くの間、なんとも言えない沈黙が場を支配した。

だが、一番早く状況を理解したリューがアイズに尋ねる。

 

「ちょ、ちょっと待ってください。まさかアイズ殿は、ベルのハーレムを作るとでも言うつもりですか?」

 

「………ハーレム?」

 

「ハーレムの意味すら分かってない…?なのになんでそんな発想が出てくるのよ…!?」

 

「言い方を変えましょう。アイズ殿は自分以外がベルと仲睦まじくしていてもいいのですか?それも複数の女性と」

 

「同じだけ良くしてくれるなら構いませんよ」

 

「じゃあ、今までなんでリリ助達とベルを取り合ってたんだよ!?あれ何の争いだよ!?」

 

「正妻争奪戦じゃないんですか?」

 

「「「「「「「…………あ。」」」」」」」

 

正妻という言葉でようやく思い出した。

常日頃から全く意識したことがなかったから思い出せなかったが、そうだ。

 

(((((((そう言えばこいつ、元王族だった)))))))

 

前世では箱入りならぬ檻入り娘。

外界に出ることはなく、王族であるため一夫多妻が普通だと思って育ってきた。

そして今世では魔物殺しに全てを捧げてきたド脳筋のバカ。

そう言った事柄に触れることなど一切なかった。

だからこそ、長い時間を過ごしても知らないのだろう。

一夫多妻は一般的ではない、ということを。

 

「私は女王ですから多くを迎えるマネはしませんでしたが、王や英雄なら側室くらい迎えるものでは…?」

 

「…おい、どうなんだクロッゾ?」

 

「ラキアでは…どうだったけな?連中と付き合うのを嫌ってたからあんまり覚えてねえが、多分それなりの貴族だったら愛人くらいはいたと思う。王族は…よく分かんねえけど、いたんじゃねえか?」

 

「だろうな…。あぁ…、今まで以上に頭が痛いことになってきた」

 

今の今まで、アイズだけまったく別の戦いをしていたのだ。

他の女性陣がベルの唯一を勝ち取ろうとしていた中、彼女は一番になろうとしていただけ。

しかも、あの口ぶりからして最悪側室でもいいと考えている節がある。

 

「来る者拒まずと言うつもりはありませんが、ベルと当人が愛し合っていて、私達も認めるレベルの人格があれば別にいいのでは?」

 

「あぁ、いや、そういう問題では……」

 

「フィンだって一時期目指していたらしいですし」

 

「だから、そういう問題じゃ……」

 

「じゃあ、どういう問題ですか?」

 

「だから、それは……」

 

完全にペースと気勢が削がれた。

言い返そうにも、言葉が出てこない。

 

「もし、ベルが告白してきたら…?」

 

「それは……。」

 

リューはベルが自分に告白してくれる未来を想像する。

顔を真っ赤にしながら、それでも勇気を振り絞って告白するベル。

二つ返事で了承する未来しか見えない。

そして、そのままその後の未来も妄想してしまう。

彼とデートして、キスして、結婚して、子どもを作るためのそういう行為も……。

 

「ムッツリエルフが」

 

「誰がムッツリですか!?」

 

ベートの言葉に慌てて現実に戻る。

あの発言は心外だったが、それでもペースは戻ったような気がする。

咳払いをして、心を落ち着かせ話し始める。

 

「第一、私達がよくともベルがどう思うかでしょう?彼がそれを拒めばそれまでです!」

 

「クロッゾ、ベルはなにか言ってたか?」

 

「何でもかんでも俺に聞くんじゃねえよ。まあ、言ってたけど…」

 

少し過去を思い起こしながら、クロッゾは語り始める。

 

「この前酒場で他の冒険者たちと一緒に盛り上がってた時だったか?酔っ払いの一人が、言い寄ってくる女の中で誰が良いのかとか聞き始めて、ハーレム目指すのかって話になって……」

 

「で、ベルはなんて?」

 

「頭抱えて全身震わせながら『ハーレム怖い…』って言ってた」

 

「何があった!?」

 

「話聞く限り、何かあったって言うよりかは躾けられたって感じだな。ベルの祖父さんはベルにハーレム目指せって吹き込んでたらしいんだが、それを聞いたお袋さんに拳骨喰らわされたらしい。それがトラウマになったのか『鐘の音が…、鐘の音が聞こえる!!』って叫んでた」

 

「だから、何があったんだ!?」

 

未だ会ったことがないベルの母親に対する認識が少し歪んだような気がする。

息子のトラウマになるほどのことをしてやるなよと思う。

まあ、それはともかくとして。

今のベルの思いは、聞くことが出来た。

 

「ともかく、ベルはそのような思いを抱いているわけですし、ハーレムなど無謀です。一人の女性と真摯に向き合うほうが彼の気質にはあっているはずです」

 

「ベルは過去の薫陶に恐怖を覚えているだけで、ハーレムそのものに恐怖を抱いているわけではないでしょう。私達で過去の恐怖を取り除き、お義母様を説得すれば希望はあります」

 

「そこまでしますか…!?」

 

「いいですか、リュールゥ」

 

聞き分けのない子供を諭すような声色で、彼女は語る。

 

「外堀を完全に埋めて、既成事実さえ作ってしまえばこっちのものです」

 

「空恐ろしいことを真面目な顔して言わないでください!?」

 

「私が前世であの朴念仁を落とすのにどれだけ苦労したと思ってるんですか?常日頃は調子の良いことを言ってるくせに肝心なところで自己評価が低くて奥手なんですから、こっちが食うくらいの勢いでいかないと一生このままですよ?」

 

「友人と想い人のそんな話聞きたくなかった!!」

 

一通り叫んだあと、一息ついて少し考える。

ここまで来て、自分や他の彼女たちがどうだったかを思い起こしてみる。

前世の記憶があると言っても、一から十まで全部覚えているわけではない。

むしろ、印象的なこと以外は忘れていることが多い。

思い出そうとしてもまるで思い出せないが、推測を立てていく。

オルナが子をなすのは有り得ないだろう。

血統の問題がある以上、彼女がそんな真似をするとは思えない。

だが、もしかしたら彼となら……。

フィーナが子をなすのは難しかったと思う。

とても素敵な男性を巡り合えば話は別だが、戦乱で且つハーフへの差別が根強かったあの時代に、そんな人と巡り合うことが出来たのだろうか?

だが、彼ならば……。

 

そして自分のことも考えてみる。

自分が好きでもない相手と番ったとは考えられない。

今も昔もかなり潔癖な性分であることは理解している。

彼ならば身体を許しただろうが、それ以外に許したとは考えにくい。

もし仮に子をなしていた場合、今の王族には――――

 

(ないないないない!!そもそも、王族は私以外にもいましたし!)

 

エルフの在り方そのものを嫌っていた自分が誰かと番うことは殆どあり得なかっただろうが、それでも他に王族は腐る程いた。

自分以外の血族に決まっている。

うん、そうだ。

そうに決まっている。

第一、ハーフエルフは普通のエルフより耳が短い。

バレないわけがない。

 

だが、もし、遺伝子的な要因で。

見た目にも分からないくらいの特徴しか現れなかったら。

あるいは、その特徴を周囲がひた隠しにして血筋を残していったら。

 

「……あの、ちなみになんですけど、オルナ殿やフィーナ殿は…?」

 

「覚えてない」

 

「す、すいません。あの辺りあやふやで…。多分ですけど、私に子どもはいなかったと思いますよ?ハーフでしたし」

 

端的に言うだけのティオナの表情からは何も分からない。

あるいは、やることをやっていてもおかしくないと思わせるほどの何かを感じる。

レフィーヤの言葉はおそらく本当だろう。

本人が覚えていない以上、ハッキリとしたことは分からないが少なくとも彼女がそう思っていることだけは確かだ。

 

「ちゃんと血筋が残っている確証があるクロッゾ殿は別として、残る御三方は…?」

 

「どうだったか…。正直覚えておらんな。もしそういう相手がおったのなら、申し訳ないがのう」

 

「族長として子をなした筈だ。そこに愛があったのかどうかは分からん」

 

「私がフィン以外と子をなすとでも?」

 

……………

…………

………

……

 

没シーン、以上で終わりです。

ありがとうございました。

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