前回、もとい去年のあらすじ。
ベルがヘスティア様に会えずに路頭に迷った。
ボロボロになったベルをアイズが拾った。
その後紆余曲折あってロキ・ファミリアに入ったよ。
ヘルメスの薬のせいで髪が伸びて、アイズたちにしょっちゅう女装させられてるよ。
今はベートと一緒に逃げ出した!
◇
「お前達は、いい加減にしろ!!なんだあの異臭を放つ食べ物は!!あんなものをいきなり放つな!!少しは常識を考えろ、常識を!!」
「チッ、リヴェリアのせいでベルに逃げられた……」
「慌てなくていいでしょ。機会なんていくらでもあるんだから」
「そうですよ。ベルが帰ってきたら早速……」
「聞いてるのか、お前達は!!」
リヴェリアの前で正座させられ、説教を受ける三人。
とはいえ、反省した様子など微塵もない。
現に今もコソコソと次の悪行を企てようとしている。
当然のようにリヴェリアの雷が落ち、拳骨を食らう三人。
レフィーヤは兎も角、アイズやティオナは前衛なだけあってそっち方面のステイタス的にはリヴェリアに勝ってるはずなのに、なんで拳骨だけはこんなにも痛いのだろう。
「反省しないなら私にも考えがある!」
「どうせ風呂掃除ですよね?」
「それともトイレ掃除?食事当番?」
「何でもやりますよ!」
どこまでも舐め腐っている。
どうせその程度の罰だろと高を括っている。
その態度が、本当に気に入らない。
「…………お前ら、一ヶ月ベルと接触禁止だ」
「「「はぁ!?」」」
リヴェリアのその言葉には、流石の三人も慌てた様子を見せる。
許可も降りていないのに正座をやめて、リヴェリアの足に縋り付く。
その瞳は完全に正気を失っている。
「リヴェリア……それは……それはあんまりです!!」
「横暴すぎるでしょ!!」
「お願いします、それだけはご勘弁をッ!!」
「喧しい、縋り付くな!!反省しないお前らが悪いんだろう!!」
縋り付いてくる三人を払い落とすように動くリヴェリアだが、当然それだけで払われるほど三人は容易くない。
リヴェリアのスカートを引き裂かんばかりの勢いでしがみつき、涙を流している。
その様子を眺めていロキとフィンの二人は、呆れてため息を溢す。
「なんじゃ、あのバカ共はまたやらかしたのか?」
「あ、ガレス」
「見ての通りだよ。またベルに女装を強要してお説教だ。今回はあまりにも目に余ったから、リヴェリアが完全に怒って接近禁止命令を出した」
「それであの有り様か……」
かつては威厳ある女王。
凛々しく静かな語り部。
英雄の思いを受け継いだ妹。
それらが今はあの有り様だ。
かつての姿は何処に行ったのかと、ガレスもため息を溢す。
「それで?肝心のベルはどうした?」
「ベートと一緒に逃げたよ。まあ夕方には戻るでしょ」
「これも毎度の如く可愛らしゅう着飾られたまんまや。また都市で噂になるで~、フヒヒっ」
「リヴェリアと話して、ロキにも接近禁止命令出そうかな……」
「やれ。儂も賛成する」
「なんでやねん!?」
「君のセクハラも目に余るからだよ。いい加減にしてくれ」
「お前さんがそんなだとアイズ達にも示しがつかんじゃろ」
「しかもロキのセクハラってなんかねちっこいし」
「見とるだけで気持ち悪くなってくる」
「ええやん、別に!!ベルたん可愛いし!反応が新鮮なんやもん!他の子供らは全員触らせてもくれんし~」
「皆慣れて耐性がついてきたんだよ。なんだい、主神のセクハラに対する耐性って。普通そんなものつかないだろう?」
「神なんて皆こんなもんやって!うちだけが特別悪いみたいな言い方すなや!」
「はぁ……28年前、選ぶ神間違えたかもなぁ……」
「この性格の悪さに救われたことも数多くあるが、それでも平時だと鬱陶しいことこの上ないからのう……」
「なんやねん、二人して!!」
今日もロキ・ファミリアは騒がしい。
本拠からはアイズたちの咽び泣く声とリヴェリアの怒号が響き、時々ロキのツッコむ声も聞こえてくる。
その声はいつもの如く、門番をしている彼らにも聞こえるほど。
「いつもながら、幹部の方々も飽きないなぁ……」
「ベルもよくあれに付き合えるもんだ」
「付き合いきれないから逃げてるんだろ?」
「逃げてるだけで拒絶はしてない。受け入れてはいなくても、受け止めてはいるんだよ」
「そういうもんか……大変だなぁ、ベル」
「これも平和な証拠ってことで、一つ勘弁してもらおう」
ここ最近は色々あった。
ダンジョンへの遠征やそこでの極彩色のモンスターとの戦い。
色々な不可思議に巻き込まれ続けていた。
その騒動はまだ収束していないが、こうして一時期でも穏やかな時間を過ごせるのが、せめてもの救いだ。
「さ、俺達は仕事だ。この平和な一時を守るためにも、気を引き締めていこう」
「ああ。今だけは、この時間を────ん?」
気を取り直して門番としての職務に臨もうとした時、真っ直ぐ女性が歩いてきているのが見えた。
射殺すような殺気を携えた、美しい女性が二人。
何故か自然と背筋が伸びるのが分かる。
「なにか御用ですか?」
緊張を含みながら、そう尋ねる。
だが、その女性達は静かに本拠を睨み続ける。
やがて、灰色の髪をした女性が小さく呟いた。
「ロキを出せ」
「……え?」
「ロキを出せ。三度は言わんぞ」
傲岸な口調で主神を呼ぶ彼女に、門番たちの警戒心も高まる。
「失礼ですが、
「三度は言わんと、言ったはずだ」
不意に手をかざす灰色の女。
次の瞬間、鐘の音とともに門は破壊された。
「「はぁ……」」
都市の中を走り、全力でアイズたちから逃げ切ったベートとベル。
路地裏に身を隠しながら息を整え、疲れ果てたようにため息を溢す。
「クッソ、なんなんだあいつらは。まだ鼻が馬鹿になってやがる」
「どうします、これ。絶対服や髪にも匂いついてますよ?」
「服屋のあとに風呂だ。このままじゃ満足に歩けん。行くぞ」
「は~い」
ベートに連れられ、人目を気にしながら服屋に行き、公衆浴場に直行するベル。
服屋の店員に適当な服を見繕ってもらい、それを持ってそのまま向かった。
当然、匂いが酷いので迷惑料として代金を多めに渡した。
公衆浴場にいた人に頼んで、度数の高い酒を大量に買ってきてもらって、それで服や体の臭いを何とか落とした。
これにかかった金は、絶対にアイズたちから毟り取ると決意した。
「ようやく匂いが取れたな……」
「そうですね……」
短パンとTシャツ姿で、完全に風呂上がりのオッサンと同じ風体なベルとベート。
公衆浴場の前に設置されたベンチで、二人は珈琲牛乳を飲みながらのんびりしている。
店主に頼み込んで服まで洗わせてもらって、ようやく匂いが取れたと感じた。
まだ少し濡れている髪を縛って空を見上げ、苦労を落としていくようにボーッとしている。
「ていうかお前、その服捨ててもいいぞ?どうせあいつらが無理矢理着させた奴なんだし」
「そういう訳には……アイズさんたちのものですし……」
「お前がそうやって甘やかすからあいつらがつけあがるんだろうに」
洗った服は用意してもらった袋にまとめて入れてある。
まだ濡れたままだし、本拠に戻ったらまた洗い直す必要が出てくるだろうが、今は取り敢えずこれ以上悪臭を放つことはない。
「もうそろそろ本拠に帰ります?」
「帰らん。どうせ今帰ったところでリヴェリアが説教してるだけだ。そんな所に帰っても面倒なだけだ」
「じゃあ、もう少しのんびりして……」
ベルはそう言いながら、珈琲牛乳を飲み干し勢いよく立ち上がる。
「アイズさん行きつけのジャガ丸くんのお店が近くにあるんで、行きませんか?」
「ジャガ……ああ、あの芋揚げか。そうだな、少し疲れて小腹もすいたことだし、行くか」
ベートも飲み干して、立ち上がる。
本拠のある方向が少し騒がしく思えたが、きっと気のせいだろう。
それか、またアイズ達が暴れて騒ぎでも起こしたか。
そう判断して、ベートはベルと一緒に歩いていく。
「ベルくぅ~ん!!今日も来てくれたのかい!?」
「こんにちは、ヘスティア様」
喜んだ様子でベルに抱擁をするのは、小さな体に見合わぬ
女にしては長身で胸のないロキとは正反対な神だった。
もっとも、正反対なのは容姿だけではなく性格も。
人懐っこく穏やかで温厚。
それがこの神、ヘスティアだ。
「よく来るのか、ベル」
「最初はアイズさんに連れられて来たんですけど、個人的にもそれなりに」
「うちの常連なんだぜ!ボクが失敗したのを買ってくれたり、売上が足りなくて困ってたら多く買ってくれたり、買い出しを手伝ってくれたり、この前の怪物祭でモンスターに襲われそうになったのを助けてくれたり!」
「そうこうしてるうちに、仲良くなって……」
「今ではこれだけ親密な仲なのさ!な~ベルくん!ロキのところが嫌になったらいつでも言ってくれよ!なんだったら今すぐボクの子になってくれてもいいんだぜ?」
「あ、アハハ……機会があれば……」
抱きつかれながら困ったような笑みを浮かべるベル。
ヘスティアが異性愛としてベルを好きなのかは分からないが、かなり好意的。
ベルも満更ではなさそうに思える。
「ベル、お前こういう女が好きなのか?」
「そうなの!?ボクがタイプなのかい!?」
「そんな恐れ多いこと思いませんよ……」
目をキラキラと輝かせながらベルを見つめるヘスティア。
だが、ベルは苦笑いを浮かべている。
どうやら、そういうわけではなさそうだ。
「じゃあ、なんでボクにこんなに良くしてくれるんだい?」
「えっと……僕の育て親の一人が、ヘスティア様に大変お世話になったことがある神様で。見かけたら失礼のないように、丁寧に接するようにって言われてて……」
「ボクがお世話したこと……う~ん、あんまり心当たりないんだけど?」
「ヘスティア様はそう言うだろう、とも言ってました。平等にすべてを暖かく見守るヘスティア様だからこそ、自分は心を開いたんだって」
「あ~……まあ、気難しい子の相手をしたことなら何回かあるし、その中の誰かっぽいね。詳しくは聞かないよ」
「ありがとうございます」
「どういたしまして~あ、ジャガ丸くんはいくつ買う?」
「いつものを5つでお願いします。うち三つは持ち帰りで」
「はいよ~!ちょっと待っててね!」
屋台に戻り、いそいそとジャガ丸くんを作っていくヘスティア。
それを待っている間ベルとベートは何もすることがないのだが、ベルが注文した数を聞いてベートは呆れたようにため息を吐いていた。
「あいつらの分か?」
「はい。リヴェリアさんにこってり絞られて、落ち込んでるでしょうから」
「あいつらがそんなに簡単に凹むようなタマか。お前がそういう態度を取り続けるから、あいつらも反省しないんだろう。一回真剣に怒ったほうがいいぞ」
「いやいや……アイズさんには拾ってもらった御恩もありますし、この程度なら……本当に……」
「そういう考え方はよせ。あのバカ共がますます増長する」
そんな感じで、二人はアイズたちへの対応の仕方を少し話し合っていた。
まるでペットのしつけ方を議論する飼い主、あるいは子どもの教育方針を話し合う親。
それらに近しいものだった。
「できたよ~!」
「ありがとうございます」
「ん、感謝する」
出来上がったジャガ丸くんを受け取り、そのまま話しながら半分ほど食べ進む。
元々アイズがおやつ感覚でパクパク食べる程度のものなので、そこまで大きくはない。
出来立てならではの熱々の食感と味を楽しみながら、ヘスティアも交えてのんびりと話をする。
だが、その瞬間は訪れた。
始まりは一人の通行人の小さな悲鳴。
血と泥に塗れた彼を見て、思わず声を上げる。
次に、一人の老人の驚いた声。
この老人は彼を知っているのだろう。
15年前、この都市を牽引した彼を。
そして最後に、ベルの瞳が彼を捉える。
赤い瞳に映る彼は、紛れもない育て親。
「見つけたぞ!!!アルフィア────じゃ、ねえな。何だお前、ベルか」
「……おじさん!?」
髪が急激に伸びたベルをあの義母と勘違いしたのだろう。
驚いたような表情をしたおじがいた。
その姿は全身ボロボロ。
何があったのかは想像に難くない。
この瞬間ようやく、ベルは今起こっている騒動を知ったのだ。
自分の義母が起こした、都市最大級の騒動を。
あとがき
短いですけどこれで勘弁してください。
来週の週末くらいにはこれの続き書き上げて投稿しますんで、今はこれで勘弁してください。
如月遊さんという方に誘われて、エイプリルフールの企画に参加しています。
よろしければ、そちらもどうぞ~
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=27690908
これからやっていけるか不安ですが、頑張っていきたいです。
短いですが、以上あとがきでした。